前提

関東圏の20名弱の専門工事会社で、若手は前向きでも部長・課長クラスが新しい動きに慎重だった状況

関東圏で専門工事を手がける、20名弱規模の会社の話です。社内で今後の案件づくりについて話し合ったところ、集まった15名ほどのうち、前向きだったのは30代前半の若手数名でした。

一方で、部長・課長クラスの反応は違いました。

「仕事を広げても、今の体制では手が回らないですよね」

「今受けている仕事はどうするんですか」

会社としては、4月・5月の仕事が薄くなる時期を埋めたい。年間を通して仕事量を安定させたい。社長にもその思いはあります。ただ、役職者4〜5名が慎重な姿勢を崩さないため、社内の空気はなかなか前に進みませんでした。

この会社で起きていたのは、単なる“やる気の差”ではなく、若手の挑戦意欲とベテラン管理職の現実感がぶつかっている状態です。

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課題

若手に任せたい気持ちはあっても、育てながら現場を回す余裕がないこと

この会社の一番の悩みは、若手が前向きなのに、その意欲を次の担い手づくりへつなげきれないことです。

社長は「育てないと成長しないのはわかっている」と話していました。一方で、続けて出てきた言葉はとても現実的です。

「教えながら現場を回していくのが、今の状況だとなかなか厳しいんです」

建設業では、この感覚を持つ会社は少なくありません。若手に経験を積ませたい。任せないと育たない。それは分かっている。けれど、現場には納期があり、品質があり、元請けや取引先との関係があります。

若手に任せた結果、現場が止まる。手戻りが増える。結局、部長や課長が後始末をする。そうなると、管理職側は「それなら最初から自分たちでやった方が早い」と考えやすくなります。

若手育成が進まない会社では、若手の能力不足だけでなく、“任せた後に誰が責任を持つのか”が曖昧なままになっていることが多いです。

背景

経験豊富な管理職ほど、忙しくなる未来と責任の増加を先に見てしまうこと

ベテラン管理職が慎重になるのには理由があります。

若手は「社長が行くなら、自分たちも行きましょう」と言える。まだ全体の難しさを細かく知らない分、前を向きやすい面があります。これは悪いことではありません。むしろ会社にとって大事な芽です。

ただ、40代以上の管理職は違います。過去の失敗、繁忙期のしわ寄せ、急に案件が増えたときの段取り、職人の手配、現場管理の負荷を知っています。

だからこそ、新しい案件や新しい取引の話が出た瞬間に、次のように考えます。

  • 今の仕事を誰が見るのか
  • 追加案件が来たときに誰が捌くのか
  • 若手に任せた現場の責任は誰が取るのか
  • 忙しくなるだけで、自分たちの処遇は変わるのか

この会社でも、管理職側からは「人がいない」「忙しくなる」「育てながらやる余裕がない」という反応が出ていました。

社長から見ると「やりようはあるだろう」と感じる。管理職から見ると「現場の負荷が増えるだけではないか」と感じる。このズレが、組織の動きを止めます。

ベテランが動かない背景には、現状維持の気持ちだけでなく、責任だけが増えることへの警戒があります。

解決

若手に丸投げせず、管理職の責任範囲と任せる案件を小さく切ること

若手を育てるには、「若手に任せる」と大きく言うだけでは足りません。必要なのは、任せる範囲を小さく切り、管理職の役割を明確にすることです。

この会社の場合、いきなり大きな案件を取りに行くのではなく、もともと4月・5月の薄い時期を埋めることが目的でした。であれば、若手育成も同じです。いきなり一人前の現場責任者にするのではなく、季節・規模・工程を絞って任せる方が現実的です。

たとえば、次のように切り出せます。

  • 4月・5月の比較的小さな工事だけを若手主担当にする
  • 見積・段取り・現場確認のうち、まず一工程だけ任せる
  • 部長・課長は同行や最終確認に役割を絞る
  • 失敗時の責任ではなく、判断前の相談ルールを決める
  • 任せた案件数や育成への関与を管理職の評価に入れる

ここで大事なのは、若手に「やってみろ」と渡すことではありません。若手が挑戦でき、管理職が過度に背負い込まない形に仕事を分解することです。

管理職には、現場を全部抱える役割から、若手が判断できる状態をつくる役割へ少しずつ移ってもらう必要があります。そのためには、評価や責任の設計も変える必要があります。

たとえば、部長・課長に対して「反対するなら、閑散期にどう動くのか考えてほしい」と伝えるだけでも、会話の質は変わります。この会社でも、社長は実際にその話をしました。

「断るなら、その分どう動くのか考えてください。仕事がない時期に拾ってきてください」

これはとても大事な一歩です。反対意見を否定するのではなく、現状を維持するなら維持するなりの責任を持つ。新しく動くなら、負荷が集中しない形を設計する。その土台ができます。

管理職を動かすには、気合いではなく、“現状維持にも責任がある”ことと、“育成に関わることが管理職の仕事である”ことを揃える必要があります。

まとめ

若手が前向きで、ベテラン管理職が慎重になる会社は、決して珍しくありません。

若手には勢いがあります。管理職には経験があります。どちらかが正しく、どちらかが間違っているわけではありません。問題は、その2つをつなぐ役割分担がないまま、新しい案件や育成の話だけが進もうとすることです。

特に中小の建設会社では、現場を回す人と育てる人が同じです。だからこそ、育成は精神論では進みません。

次の担い手を育てる第一歩は、若手に任せる案件を小さく切り、管理職の確認範囲・責任範囲・評価をセットで決めることです。

4月・5月のように仕事量が落ちる時期があるなら、その時期を若手育成の実践機会にすることもできます。小さな案件、小さな工程、小さな判断から始める。そこで管理職が支える。そうすれば、現場を止めずに次の担い手を育てる道が見えやすくなります。

うちの管理職と若手の役割をどう整理するかを考えるときに

若手は前向きだけれど、部長・課長が動かない。管理職に任せると現状維持になり、若手に任せると現場が不安になる。そんな状況では、採用・育成・案件の取り方・管理職評価を分けて考えるより、まとめて整理した方が進めやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、会社ごとの状況に合わせた次の一手を一緒に考えます。

「うちの場合、若手にどこまで任せていいのか」「管理職の責任や評価をどう変えればいいのか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の場としてご活用ください。

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