前提

5名規模の衛生設備会社でも、塩ビ製品やユニットバスの欠品で受注判断が揺れる状況

東北地方で衛生設備工事を手がける、5名規模の専門工事会社の話です。

主な仕事は、水道・下水まわりの衛生設備工事です。トイレやユニットバスの取り付け、工場・公共施設・病院・非住宅建物の新築や増築に関わる工事が中心で、一般住宅は「頼まれたらやる」程度という会社です。

この会社では、ここ数年で仕事の見え方が大きく変わっていました。大きな案件が入ると売上は伸びます。一方で、自社の人数を超える仕事は協力会社に頼らざるを得ず、外注費を差し引くと利益は思ったほど残りません。

そこに重なっているのが、資材高騰と欠品です。

相談者は、設備工事の現場感としてこう話していました。

「うちは設備業なので、塩ビ製品関係を使うことが多いんです。材料がないから、とりあえず確保しようという動きがすごかったんですよ。ユニットバスも関係あるので、人ごとじゃないぞと思いました」

いま起きている問題は、単に材料が高いことではありません。材料が高く、しかも確保できるか分からない状態で、昔の予算や見積もりを前提に仕事が動いてしまうことです。

この前提がずれると、受注してから利益が削られます。場合によっては、受けた瞬間から赤字が見えている案件にもなります。

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  • 6月26日工務店宮崎県
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  • 6月19日総合建築鳥取県
  • 6月19日配管工事会社東京都
  • 6月18日総合土木東京都
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  • 6月16日配管工事会社青森県
  • 6月16日総合建築神奈川県
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課題

2年前の設計見積もりと現在単価が合わず、受けるほど赤字に近づくこと

一番の課題は、発注者側の予算や入札条件が、いまの材料価格に追いついていないことです。

相談者は、地元の案件で次のような経験をしていました。

「入札したら、向こうが想定していた金額と全然違ったんです。『なんでそんな金額になるんだ』という感じで言われたんですけど、見積もりを取っているのが2年前とかなんですよ。2年前と今の建設費は、どう考えても違いますよね」

これは、多くの建設会社で起きているはずです。

発注者や設計側は、過去に取った見積もりをもとに予算を組んでいる。ところが、施工会社が実際に見積もるタイミングでは、材料単価も納期も変わっている。そこで金額差が出ると、「高い」「予算に合わない」「いったん保留」となります。

その結果、現場側では次のようなことが起きます。

  • 受注する前提で段取りしていた案件が延期になる
  • 金額を出し直した瞬間に案件が止まる
  • 発注者予算に合わせると利益が残らない
  • 材料確保を急がないと、後から納期も単価も読めなくなる
  • 自社で抱えきれず外注を使うと、さらに利益が薄くなる

相談者も、「建設費が思った以上に高くて、トントンと保留しましょうみたいな話が出ている」と話していました。

施工会社から見ると、やるものだと思って動いていた案件が、価格差を理由に止まる。逆に、止められたくないからと無理に合わせると、今度は自社が赤字をかぶる。この板挟みが、資材高騰局面の本当のしんどさです。

背景

発注者予算の更新が追いつかず、欠品と価格上昇が現場の段取りを崩していること

背景には、見積もりの前提が短期間で変わりすぎていることがあります。

以前であれば、多少の単価変動は会社側の努力や段取りで吸収できたかもしれません。しかし、塩ビ製品や衛生設備機器、ユニットバスのように、設備工事で使う主要な材料が高騰・欠品すると、吸収できる幅を超えます。

相談者の言葉にあるように、「材料がないから、とりあえず確保しよう」という動きが出る時点で、通常の見積もり感覚では危うくなっています。

材料が確保できない場合、問題は単価だけではありません。

材料が入らなければ、工程が組めません。工程がずれれば、職人の手配も変わります。自社職人で回せない場合は協力会社を頼ることになり、その外注費も読みにくくなります。

この会社では、売上が通常5,000万〜6,000万円規模のところ、大型案件が入ると1億円台に伸びることもあります。ただし、増えた分の多くを協力会社に出すと、「売上は良く見えるけれど、利益にはあまりなっていない」という状態になります。

ここに資材高騰が重なると、さらに判断が難しくなります。

売上を追うだけでは危険です。材料費、外注費、工期のずれを織り込んだ後に利益が残るかを見ないと、受注した案件が会社の体力を削ることがあります。

また、発注者側にも事情があります。自治体や一般企業の予算は、すぐに組み替えられないことがあります。2年前の見積もりをもとに予算化され、そのまま入札や発注に進むこともあります。

ただ、施工会社側からすれば、「その予算では今はできません」と言わざるを得ない場面が増えています。

ここで大事なのは、単に「値上げしてください」と伝えることではありません。

いつの単価を前提にした金額なのか、どの材料がどれだけ変わったのか、材料確保の期限はいつなのかを、発注者が判断できる形に直すことです。

発注者が建設費の現状を十分に把握していない場合もあります。だからこそ、施工会社側が見積もりの前提条件を言語化しておく必要があります。

解決

最新単価・材料確保・見積条件をそろえてから、受注可否を決める進め方

赤字受注を避けるには、見積もりを「金額提示」だけで終わらせず、前提条件と受注判断をセットで管理することが重要です。

特に設備工事のように、塩ビ製品、衛生器具、ユニットバス、空調機器などの材料影響が大きい工事では、次の順番で整理すると判断しやすくなります。

1. 過去見積もりをそのまま使わず、最新単価で必ず見直す

まず、過去に出した見積もりや、発注者側が持っている設計見積もりを前提にしないことです。

2年前、1年前、半年前の単価でも、いまの実勢と合っていない可能性があります。特に、材料価格の変動が大きい品目は、見積もりのたびに確認する前提にした方が安全です。

確認したいのは、次のような項目です。

  • 主要材料の最新仕入単価
  • 納期が読みにくい材料の有無
  • 代替品の可否
  • メーカーや商社の価格改定予定
  • 材料発注後のキャンセル条件

「前もこのくらいだったから」で積算すると、差額はすべて自社負担になります。材料の変動が大きい時期ほど、見積もりの更新頻度を上げる必要があります。

2. 発注者には「値上げ」ではなく「前提の違い」として説明する

価格交渉でこじれやすいのは、発注者側から見ると「急に高くなった」と見えるからです。

そのため、説明では感覚ではなく、前提の違いを示すことが大切です。

たとえば、次のように整理します。

  • 発注者予算はいつ取得した見積もりをもとにしているか
  • 現在の主要材料単価はいくらか
  • どの材料で差額が出ているか
  • 欠品・納期遅延の可能性がある材料は何か
  • 工期変更や代替品選定が必要か

相談者が話していたように、「ここ直近での見積もりを取ってから入札にしないと厳しい」という状況は、施工会社だけの都合ではありません。発注者にとっても、古い予算のまま進めると、入札不調や工期遅延につながります。

価格変動を説明するときは、発注者を責めるのではなく、「この条件なら実行できる」「この条件だとリスクが残る」と判断材料を渡す形にすると、話が前に進みやすくなります。

3. 見積書に有効期限と条件を明記する

材料価格が動く時期には、見積書の条件明記が欠かせません。

特に、見積有効期限が曖昧なままだと、数か月後に「この金額でお願いします」と言われたとき、自社が苦しくなります。

見積書には、少なくとも次の条件を入れておきたいところです。

  • 見積有効期限
  • 材料単価は見積作成時点の価格であること
  • メーカー価格改定時は別途協議すること
  • 欠品・納期遅延が発生した場合は工程を協議すること
  • 代替品を使用する場合は仕様確認を行うこと
  • 契約前の材料確保は別途条件確認が必要であること

見積条件は、自社を守るためだけのものではありません。発注者との認識違いを減らし、後から揉めないための共通ルールです。

小規模な会社ほど、口頭の信頼関係で進める場面が多いものです。ただ、材料価格が大きく動く時期は、信頼関係がある相手ほど、条件を文書に残しておいた方がよいです。

4. 材料確保のタイミングを社内ルールにする

欠品があると、「とりあえず押さえたい」という気持ちになります。ただし、契約前に材料を確保しすぎると、案件が延期・中止になったときに在庫や資金負担が残ります。

そのため、材料確保は勢いではなく、社内ルールで判断するのが安全です。

たとえば、次のような基準を決めます。

  • 契約書または発注書を受けてから正式発注する
  • 長納期品は内示段階で発注可否を個別判断する
  • 発注者に材料確保期限を伝える
  • キャンセル不可材料は、発注者承認を取ってから手配する
  • 価格変動が大きい材料は、見積時点で「確保期限」を明記する

材料を早く押さえることと、会社の資金を守ることはセットで考える必要があります。欠品対応は、現場判断だけにせず、受注条件と連動させることが大切です。

5. 受ける案件と見送る案件の判断軸を持つ

資材高騰時は、すべての案件を取りにいくほど危なくなります。

特に、自社人数を超える仕事を受け、協力会社に大きく依存する場合は、売上は増えても利益が残らないことがあります。相談者も、「1億ぐらい売上が出ても、残りは下請けに出しているので、うちの利益になっていない」と話していました。

受注判断では、次の5つを確認したいところです。

  1. 最新材料単価で見ても粗利が残るか
  2. 外注費を入れても利益が残るか
  3. 材料確保と工期に無理がないか
  4. 支払いサイトと先行支出に耐えられるか
  5. 今後も続けたい取引先・工種か

この5つのうち、複数が厳しい案件は、金額交渉をするか、条件を変えるか、見送る判断も必要です。

「忙しくなる案件」と「会社に利益を残す案件」は同じではありません。資材高騰局面では、受注前にこの違いをはっきりさせることが、赤字受注を避ける近道です。

もちろん、付き合いのある取引先の仕事を簡単に断れない場面もあります。その場合でも、無条件で受けるのではなく、「この単価なら」「この工期なら」「この材料が確保できるなら」と条件をそろえてから判断することが大切です。

まとめ

資材高騰と欠品が続く中では、過去の感覚で見積もりを出すほど、会社側のリスクが大きくなります。

特に、設備工事のように材料の影響が大きい会社では、塩ビ製品、衛生器具、ユニットバスなどの単価や納期が変わるだけで、利益も工程も大きく変わります。

発注者側の予算が2年前の見積もりをもとにしている場合、現在価格と合わないのは自然なことです。そこで無理に合わせると、赤字受注になりかねません。

大事なのは、最新単価で見積もりを更新し、価格変動の理由を説明し、見積有効期限や材料確保条件を明記したうえで、受ける案件と見送る案件を判断することです。

売上を増やすこと自体は悪いことではありません。ただ、材料費と外注費を差し引いた後に利益が残らなければ、会社の体力は増えません。

資材価格が読みにくい時代だからこそ、見積もりは「金額を出す作業」ではなく、「会社が無理なく実行できる条件を整える作業」として見直す必要があります。

見積もりと受注判断を自社の基準に戻すために

資材高騰や欠品の影響は、会社ごとに出方が違います。衛生設備、空調、内装、外装、足場など、工種によって材料の動きも、発注者への説明の仕方も変わります。

「うちの見積条件はこのままでいいのか」「どの案件なら受けてよくて、どこから危ないのか」「材料価格の変動を発注者にどう説明すればよいのか」と感じている場合は、一度、自社の案件ごとの収支と見積条件を整理してみるだけでも判断しやすくなります。

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