前提

埼玉県の10名規模の内装工事会社で、工事管理ソフトとExcelが混在している状態

埼玉県でオフィス内装を中心に手がける、従業員12名ほどの専門工事会社の話です。

現場はオフィス内装が中心です。たまに店舗もあります。案件ごとに内容が変わるため、同じ内装を繰り返し作る仕事ではありません。

社内では工事管理ソフトのようなものも使っています。一方で、Excelや個別の管理表も残っています。担当者の感覚としては、まだ大きく破綻しているわけではありません。

「工事管理ソフトとかExcelだったり、やっぱりバラバラしてるので、効率よくできるのかなと思っていて」

この言葉に、かなり現実味があります。

いま困り切っているわけではない。けれど、少し先を考えると不安がある。特に、施工管理を増やして仕事量も増やしていくなら、今の管理のままで持つのか。

デジタル化を考えるタイミングは、業務が限界を迎えたときだけではありません。むしろ「今はできているけど、増えたら不安」という段階が、いちばん整理しやすい時期です。

資料ダウンロード
課題

今は回っているExcel管理も、施工管理と案件が増えると確認漏れが出やすくなること

この会社では、バックオフィス側の入力業務が毎日重くのしかかっている、という状態ではありませんでした。

「大変ではない。ちゃんとできてる」

そう話されていました。

ただし、その直後に出てきた言葉が大事です。

「施工管理の方が増えた時に、単純に仕事も多くなるので。その時に今はできてるけど、というのはあるかもしれない」

ここに、Excel管理や個別管理の難しさがあります。

少人数のうちは、多少バラバラでも回ります。誰が何を見ればよいか、社内でなんとなく分かっています。社長との距離も近く、担当者同士の連絡もこまめに取れる。確認したければ、すぐ聞ける。

しかし、施工管理が増え、案件が増え、見積・工事管理・原価・出面・請求まわりの入力が増えると、同じやり方のままでは少しずつ負荷が変わります。

起きやすいのは、次のようなことです。

  • 同じ情報を、工事管理ソフトとExcelに二重入力する
  • 現場ごとの原価や利益率を見るタイミングが遅れる
  • 見積時の想定と、実際の工事原価の差が追いにくくなる
  • 誰か一人だけが、正しい入力場所や確認方法を知っている状態になる
  • バックオフィス側が、現場に確認しないと処理できない項目が増える

これらは、いきなり大きな問題として表に出るとは限りません。

最初は「ちょっと確認が増えた」「前より入力に時間がかかる」「あの案件の数字、どこを見ればいいんだっけ」という程度です。

でも、案件数が増えた後に整理しようとすると、現場も事務も忙しくなっています。すると、業務改善に手をつける余裕がなくなります。

Excel管理そのものが悪いわけではありません。問題は、会社の人数や案件数が増えたときに、今のExcelが“共通の管理基盤”として耐えられるかどうかです。

背景

社長との距離が近く連絡も早い会社ほど、仕組み化が後回しになりやすいこと

この会社は、社内の風通しが悪いわけではありません。

むしろ逆です。

「小さい会社なので、みんな本当によく顔も合わせますし、連絡もすごいこまめに取るので」

「社長との距離はすごく近くて、何でも言える」

こうした会社は、建設業の中でも強いです。現場の判断も早い。困ったときの相談もしやすい。案件ごとに仕様が変わる内装工事では、こうした柔軟さがそのまま競争力になります。

一方で、距離が近い会社ほど、仕組み化は後回しになりがちです。

なぜなら、仕組みがなくても人間関係で解決できてしまうからです。

「この原価は誰に聞けばよいか」

「この見積の前提はどこに残っているか」

「この工事の利益率は、いつ確定するのか」

「出面や外注費は、どのタイミングで反映されるのか」

少人数のうちは、担当者の記憶や会話でつながります。けれど、人が増えると、会話だけでは追いきれない情報が出てきます。

特に内装工事のように、案件ごとに仕様や段取りが変わる仕事では、完全なマニュアル化は難しいです。

相談の中でも、こうした声がありました。

「オフィスの内装なので、全く同じ内装を作ってるわけではない。だからマニュアル化ができない部分がどうしても難しい」

これはその通りです。

すべてをマニュアル化する必要はありません。現場判断が必要な仕事を、無理に型にはめると逆に動きにくくなります。

ただ、工事管理や原価管理で大切なのは、現場の判断を奪うことではありません。

属人的な現場判断は残しながら、会社として必ず見たい数字と、必ず残す情報だけをそろえることです。

たとえば、案件ごとに最低限そろえたい情報はあります。

  • 見積時の想定原価
  • 実行予算
  • 外注費・材料費・労務費
  • 追加変更の有無
  • 現場ごとの粗利
  • 請求・入金の状況
  • 誰がいつ入力・確認したか

このあたりがバラバラになると、会社が大きくなったときに数字を見るスピードが落ちます。

デジタル化の本質は、紙やExcelをなくすことではなく、現場・施工管理・バックオフィスが同じ数字を見られる状態をつくることです。

解決

いきなりシステム導入ではなく、業務棚卸しと管理したい数字の切り分けから始めること

工事管理や原価管理のデジタル化は、いきなりシステムを入れるところから始めないほうが進めやすいです。

先にやるべきことは、業務の棚卸しです。

どの業務が、誰の手で、どのタイミングで、どのツールに入力されているのか。ここを見える化します。

特に確認したいのは、次の4つです。

1. いま使っている管理表と入力先を全部並べる

まず、工事管理ソフト、Excel、スプレッドシート、紙、メール、チャットなど、案件管理に関係するものを全部出します。

この時点では、良し悪しを判断しなくて大丈夫です。

大事なのは、同じ情報を複数の場所に入れていないかを見ることです。

たとえば、工事名、担当者、見積金額、原価、外注費、請求予定日などが複数の表に入っている場合、どれが正なのか分からなくなります。

「最新はどれか」を人に聞かないと分からない状態は、案件が増えたときに負荷になります。

2. 経営として見たい数字を決める

次に、何を管理したいのかを決めます。

ここが曖昧なままシステムを探すと、機能の多さに引っ張られます。

中小建設会社でまず押さえたいのは、難しい経営指標よりも、現場単位の数字です。

  • 案件ごとの粗利がいつ見えるか
  • 見積時の想定と実績原価が比べられるか
  • 追加変更が利益に反映されているか
  • 施工管理ごとの担当案件数と負荷が見えるか
  • 請求漏れや原価計上漏れが起きにくいか

このあたりが見えるだけでも、経営判断はかなり変わります。

特に、施工管理を増やす予定がある会社では、個人別の売上を見たいというより、まずは案件ごとの利益と進捗を同じ粒度で見られる状態を目指すのが現実的です。

3. 属人化している作業を洗い出す

次に見るべきは、「あの人しか分からない作業」です。

たとえば、バックオフィスの担当者だけが知っている入力ルール。特定の施工管理だけが持っている原価の把握方法。社長だけが判断している追加請求の基準。

こうした作業は、悪いものではありません。少人数の会社では自然にそうなります。

ただ、人が増える前に少しだけ言語化しておくと、後が楽です。

ポイントは、完璧なマニュアルを作ろうとしないことです。

まずは、次の程度で十分です。

  • この情報は誰が入力する
  • このタイミングで更新する
  • この数字は誰が確認する
  • 迷ったら誰に確認する
  • 最終的にどの表・どの画面を正とする

属人化をゼロにするのではなく、確認先と判断基準をそろえることが第一歩です。

4. 既存ツールで足りる範囲と、専用システムが必要な範囲を分ける

最後に、システム導入の要否を判断します。

ここで大切なのは、Excelをすぐ捨てるかどうかではありません。

Excelで足りるものは、Excelでよいです。小回りが利きます。現場ごとの特殊な計算にも対応しやすいです。

一方で、次のような状態があるなら、専用システムや業務に合わせた仕組みを検討する価値があります。

  • 同じ情報を何度も入力している
  • 原価や利益率の確認が月末・工事後に寄っている
  • 施工管理ごとに管理方法が違う
  • 見積と実績の差が追いづらい
  • バックオフィスが毎回現場に確認しないと処理できない
  • 案件が増えたときに誰か一人に入力が集中する

このような状態がある場合、単に便利なシステムを入れるだけでは足りません。

自社の業務に合わせて、どの情報を一元化するかを決める必要があります。

判断軸は「何をデジタル化するか」ではなく、「どの数字を、誰が、いつ見られるようにしたいか」です。

まとめ

工事管理や原価管理のデジタル化は、業務が回らなくなってから始めるものではありません。

今回のように、今は何とか回っている。バックオフィスも「大変ではない」と感じている。けれど、施工管理を増やしたら仕事量も増える。そのときに今のままでよいのか不安がある。

この段階こそ、ちょうどよい整理のタイミングです。

大切なのは、いきなりシステムを入れないことです。

まずは、工事管理ソフト、Excel、個別の管理表、紙、メールなどを並べます。次に、会社として見たい数字を決めます。案件ごとの粗利、見積と実績原価の差、追加変更、請求状況、施工管理の負荷。そこから、属人化している作業を洗い出します。

そのうえで、既存ツールで足りる範囲と、専用システムが必要な範囲を切り分けます。

デジタル化の目的は、現場を縛ることではありません。施工管理が増え、案件が増えても、現場・事務・経営が同じ数字を見ながら動ける状態をつくることです。

Excelで十分な部分は残してよいです。逆に、二重入力や確認漏れが起きやすい部分は、早めに仕組み化したほうが後で楽になります。

「今はできているけど、増えたら不安」くらいの時期に、業務棚卸しだけでも始めておく。これが、中小建設会社にとって現実的なデジタル化の入口です。

自社の工事管理をどこから整えるか迷ったときは

工事管理、見積、原価、出面、請求まわりは、会社ごとに流れが違います。

既存のExcelを活かしたほうがよい会社もあります。市販のシステムで十分な会社もあります。業務が特殊な場合は、自社に合わせた設計が必要になることもあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

「うちの場合は、まだExcelでよいのか」「何から棚卸しすればよいのか」「施工管理を増やす前に整えるべきことは何か」という段階でも大丈夫です。

無理にシステム導入を前提にする必要はありません。状況を伺ったうえで、今の業務に合う整理の仕方から一緒に考えます。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでご相談ください。

お問い合わせはこちら