前提

電気工事会社は売上規模が違う会社と比べても利益率の実態が見えにくい業種です

電気工事会社の経営数字を見るとき、最初に揃えたい前提があります。売上1億円の会社と100億円の会社を、同じ「電気工事業」という括りだけで比べても、経営の良し悪しは判断しにくいということです。

関東圏のある電気工事会社の数字を見ながら、こんな話が出ていました。

「社長目線だと、同業の利益率って分かっているものなんですかね。うちは利益率が低いな、みたいな」

それに対する答えは、かなり現場感のあるものでした。

「まず分からないです。儲かっていないか、儲かっているかぐらいしか分からない」

これは、多くの中小電気工事会社に近い感覚だと思います。決算書はある。税理士から説明も受けている。けれど、自社の営業利益率が同規模帯の中で高いのか低いのか、どの費目が重くなっているのかまでは見えにくいのです。

特に電気工事業は、官庁工事、民間元請、民間下請、マンション、店舗、工場、病院、オフィスなどで工事の性格が大きく変わります。材料をどこまで持つか。現場代理人を置くか。協力会社を多く使うか。自社の電工を抱えるか。ここが違えば、同じ売上でも利益構造はまったく変わります。

だからこそ、利益率を見るときは、単年度の黒字・赤字だけでなく、同規模帯の会社との比較と、5期程度の推移をセットで見ることが大切です。

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課題

「儲かっていない気がする」の正体は営業利益率だけを見ても切り分けきれません

電気工事会社の利益率低下は、営業利益率だけを見ても原因を決めきれません。営業利益率が下がっている理由が、悪い下がり方なのか、将来に向けた投資なのかを分けて見る必要があります

たとえば、営業利益率が以前より落ちている会社があったとします。表面だけ見ると「収益性が悪化している」と見えます。

ただし、その裏側で人件費が増えている場合、意味は一つではありません。

  • 採用を増やして、将来の施工力を厚くしている
  • 既存社員の給与を上げて、定着に投資している
  • 働き方改革に合わせて、無理な利益確保をやめている
  • 一方で、現場の原価管理が甘くなっている
  • 採算の悪い取引先構成から抜け出せていない

同じ「利益率低下」でも、中身はまったく違います。

実際に、数字を見る場面でも「人件費が上がって営業利益率が下がっているなら、会社の利益を社員に還元しているとも考えられる」という話がありました。建設業では人材確保が経営課題になっています。電気工事は資格と経験が必要で、今日資格を取ったから明日から一人前に動ける仕事ではありません。

そのため、利益率が少し下がっていても、社員の給与や採用に投資しているなら、短期的な悪化だけで判断しない方がよいケースがあります

一方で、材料費、外注費、未成工事支出金、完成工事未収入金、工事未払金の動きが乱れている場合は、見方が変わります。現場ごとの採算、請求・入金・支払いのタイミング、取引先別の利益率まで見ないと、改善すべき場所が分かりません。

背景

電気工事業は工事規模・材料負担・外注比率で利益構造が大きく変わります

電気工事会社の数字が読みにくい背景には、工事の受け方と現場の組み方の違いがあります。材料を持つ会社なのか、施工人員を出す会社なのか、現場管理まで担う会社なのかで、決算書の見え方が変わるためです。

たとえば、現場代理人を抱えて大型工事を管理する会社は、照明器具や配電盤など金額の大きい材料を自社で持つことがあります。その場合、完成工事高に対する材料費の比率が高くなります。

一方で、材料費が低く、外注費も低い会社であれば、自社の電工を多く抱えて内製している可能性があります。逆に、外注費が完成工事高の3〜4割程度まで大きい会社であれば、協力会社を使って施工体制を組んでいる可能性が高くなります。

ここで重要なのは、材料費や外注費の多寡そのものに良い悪いをつけるのではなく、その会社の役割と一致しているかを見ることです。

現場管理を担う会社なのに材料費の動きが不自然。自社施工を強みにしているはずなのに外注費が急に増えている。売上は横ばいなのに未成工事支出金だけが大きく減っている。こうした変化は、工事量や採算、取引先構成の変化を示していることがあります。

特に5期推移では、次のような項目を並べて見ると、単年度では分からなかった動きが見えてきます。

  • 営業利益率:本業でどれだけ利益が残っているか
  • 材料費:大型材料を自社で持つ工事が増えているか
  • 人件費:採用・賃上げ・配置の変化が起きているか
  • 外注費:協力会社依存が強まっているか、自社施工化しているか
  • 未成工事支出金:期末時点の仕掛工事が増減しているか
  • 完成工事未収入金:請求済みだが未回収の金額が滞留していないか
  • 工事未払金:支払いを遅らせて資金繰りを保っていないか

建設業では、決算期をまたぐ工事が多くあります。たとえば12月決算の会社が、翌年5月竣工の1億円工事を抱えている場合、期末時点では工事が途中です。売上・利益・仕掛の出方は年度によってぶれます。

そのため、1期だけで「赤字だから悪い」「黒字だから良い」と判断すると、実態を見誤ることがあります。大型工事の仕掛が多い期は利益が出にくく、翌期に利益が出ることもあります。逆に、見かけ上は黒字でも、未収入金と未払金のバランスが崩れている場合は注意が必要です。

解決

同規模帯比較と5期推移で「利益率低下の理由」を3つに分けて見ることです

利益率の低下を見抜くには、まず自社を同規模帯の中に置き直すことです。絶対評価ではなく、同じ完成工事高レンジの会社と比べることで、自社の現在地が見えます

たとえば営業利益率1.0%の会社があったとします。一般的な感覚では「低い」と見えるかもしれません。しかし、同じ売上1億〜1.5億円規模の電気工事会社の平均が0.8%なら、その会社は同規模帯では平均以上です。

反対に、売上規模が大きく、財務内容も安定しているのに、同規模帯の平均より営業利益率が継続して低い場合は、何かを見直す余地があります。

進め方は、次の順番が現実的です。

1つ目は、営業利益率の5期推移を見ることです。上がった下がっただけでなく、売上の伸びと一緒に見ます。売上が伸びているのに営業利益率が下がっているなら、工事量の増加に原価管理が追いついていない可能性があります。売上も利益率も下がっているなら、取引先構成や受注単価の見直しが必要かもしれません。

2つ目は、人件費の増加が投資か負担かを分けることです。人件費が増えて利益率が下がっている場合、採用や賃上げによる前向きな投資の可能性があります。ただし、人数が増えていないのに人件費だけが大きく増えている場合や、現場の生産性が伴っていない場合は、配置や工数管理を見直す余地があります。

3つ目は、材料費と外注費の比率から、工事の中身を確認することです。材料費が高い会社は、管理側・元請側として大きな材料を持っている可能性があります。外注費が高い会社は、協力会社を多く使っている可能性があります。どちらが良い悪いではありません。自社の強みと受注内容に合っているかが判断軸です。

4つ目は、完成工事未収入金、工事未払金、未成工事支出金のバランスを見ることです。未収入金が大きく滞留しているのに、未払金も大きく膨らんでいる場合、資金繰りや回収条件に課題があるかもしれません。未成工事支出金が年々減っている場合は、将来売上につながる仕掛工事が減っている可能性もあります。

最後に、取引先別に見ます。技術力があっても、採算の悪い取引先ばかりを受けていると、利益は残りません。これは電気工事会社ではよく起きます。営業力や紹介ネットワークが限られているため、昔からの取引先に依存し、単価や条件を変えにくい状態です。

その場合、改善策は単に「原価を削る」ではありません。むしろ、次のような整理が必要です。

  • どの取引先・工事種別で利益が残っているか
  • どの工事で手戻りや追加人工が出ているか
  • 材料を持つべき工事と、持たない方がよい工事は何か
  • 自社施工を伸ばすのか、管理機能を伸ばすのか
  • 賃上げ・採用投資を続けるために、どの単価帯を狙うべきか

利益率の改善は、費用を削る話だけではなく、どの仕事を取り、どの体制でこなし、どこに人を投資するかを決める話です。

まとめ

電気工事会社の利益率低下は、単年度の決算書だけでは判断しにくいものです。売上規模が違う会社と比べても、自社の実態は見えません。

まず見るべきは、同規模帯の電気工事会社と比べた営業利益率・生産性・安全性の位置づけです。そのうえで、5期推移で材料費、人件費、外注費、完成工事未収入金、工事未払金、未成工事支出金の動きを確認することが大切です。

利益率が下がっていても、それが社員への還元や採用投資なら、将来に向けた前向きな判断かもしれません。一方で、原価管理の甘さや採算の悪い取引先構成が原因なら、早めに受注の取り方や現場別の管理を見直した方がよいです。

「儲かっていない気がする」を、「どこで利益が落ちているのか」「何を変えれば改善するのか」に分解できると、次の一手がかなり考えやすくなります

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ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

電気工事会社の場合も、決算書の数字だけでなく、工事種別、取引先構成、材料費・外注費・人件費の動き、採用投資の考え方まで含めて見ることで、改善の方向性が見えやすくなります。

「うちの場合は利益率が悪いのか分からない」「同業と比べてどこに課題があるのか整理したい」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは現状の整理先としてお声がけください。

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