前提

復興需要が落ち着いた東北南部で、設備・重量工事の仕事量はあるが単価が合いにくくなっている状況

東北南部で設備・重量工事を手がける、20名弱規模の専門工事会社の話です。

もともとは、ゼネコン新築工事の下で、電気設備、空調設備、衛生設備まわりの重量物据付や解体を多く担ってきました。

キュービクル、トランス、ボイラー、タンク、制御盤、工場内のダクトや配管。食品工場のレイアウト変更に伴う機械撤去もあります。5メートルほどの部材で300〜500キロになるものを、現場内で解体し、搬出するような仕事です。

足元では、6月中旬から7月頃まで予定が埋まっている状態でした。仕事がないわけではありません。むしろ「逆に人が足りなくなってくる」という状況です。

ただ、経営者の実感としては、仕事量よりも“どの仕事で利益を残すか”が大きなテーマになっていました。

「東北は単価が安いんです」

この一言に、地域の空気がよく出ています。

復興需要があった時期は、新築案件も多く、県外業者も応援に来ていました。ところが需要が落ち着くと、今度はその業者も含めて仕事の取り合いになります。結果として、ゼネコン下の新築工事では相見積もりが増え、値段の叩き合いになりやすい。

「この業者はもっと安いよ、じゃあお宅はいくら下げられるの、みたいな話になっちゃうんです」

この状態で、動ける職人を出し続けるのはしんどいです。仕事は取れても、現場が終わったあとに利益が残らない。そうなると、次の投資も採用もやりにくくなります。

だからこそ、既存取引を切るのではなく、単価が合う仕事へ少しずつ比重を移すことが大事になります。

資料ダウンロード
課題

ゼネコン新築工事は職人を出しても利益が残りにくい構造になっている

この会社が感じていた一番の課題は、「新築工事を続けるかどうか」ではありません。

既存の大手設備会社との関係はあります。現場代理人によっては、希望に近い金額で発注してくれる案件もあります。そこは大事にしたい。

一方で、すべての案件がそうではありません。

ゼネコン新築工事では、元請、サブコン、その下の専門工事会社という階層になります。建築全体の予算が厳しく、物価も人件費も上がる中で、下請側にしわ寄せが来やすい。

「結局、全面的に赤字が多いんですよ。予算が決まっていて、これではちょっと出せないです、となる」

こうした現場では、専門性が高くても価格で比較されます。

しかも、重量工事は人の質に左右されます。動ける職人、段取りができる職人、現場で判断できる職人ほど、安い現場にも引っ張られます。

その結果、次のようなズレが起きます。

  • 単価が安い現場に、できる職人を出さざるを得ない
  • 夜間作業や拘束時間が長く、実質の利益が下がる
  • 他の良い案件が来ても、人が抜けずに受けられない
  • 相見積もりで価格を下げるほど、次回以降の基準単価も下がる

高速道路関連の設備工事でも、似た悩みがありました。ETC設備の更新や防雪フェンスなど、公共性の高い仕事はあります。ただし、夜間作業が多く、工事が止まることもある。暑い時期には体力面の制約も出ます。

「単価が安いのに、動ける人間ばっかりそっちに連れて行かれる。これでは合わないな、と思ったんです」

仕事の名前だけを見ると良さそうでも、実際には職人拘束と粗利が見合わない案件があります。

ここを見誤ると、売上は立っているのに資金が残らない状態になりやすいです。

背景

新築から改修・設備更新・物流設備へ需要の重心が移り始めている

この会社が「脱ゼネコンの新築工事を少しずつ進めたい」と考える背景には、地域需要の変化があります。

東北では、復興関連の大きな新築工事が一巡しました。大きな建物は建ち、これからは新築の取り合いよりも、既存建物の設備更新や、産業側の設備投資に需要が移っていきます。

実際に、経営者の口から出てきた有望領域はかなり具体的でした。

ひとつは、蓄電池設備です。

太陽光発電所の中間変電所では、キュービクルやトランスの据付がありました。以前はその仕事が多かったものの、太陽光は地域によって反対も増え、案件としては下火になってきています。

その次に伸びているのが蓄電池です。

「今、単価がそこそこいいかなと思うのが蓄電池なんです。発電所も今年に入って二、三カ所やっています」

蓄電池設備は、案件によっては一式で大きな見積もりになります。

「そのままドーンと入ってくると、一千万円単位でも見積もりを出せる。そういうのが取れると安定するんです」

もちろん、蓄電池なら何でも良いわけではありません。太陽光とセットの案件もあれば、単体の蓄電池設備もあります。発注元も、大手電気設備会社だけとは限らず、環境エネルギー系に力を入れている会社や、その間に入る電気工事会社から話が来る場合があります。

もうひとつは、公共施設の設備改修です。

文化会館のような公共施設では、建物はそのまま使い、中の電気設備、空調設備、音響設備、制御盤、動力盤を更新する案件があります。

ここで大事なのは、発注構造です。

新築ではゼネコンの下に設備会社が入ることが多いですが、公共施設の改修では、建築と電気設備・空調設備が別発注になるケースがあります。設備会社が公共工事を直接取っている場合、その下に入る重量工事会社の見積もりも通りやすくなります。

「そういうところは、うちが希望で出した金額がだいたい通るんです」

これは大きいです。

同じ設備工事でも、発注階層が変わるだけで単価の通り方が変わるからです。

さらに、今後の伸びを見ているのが自動倉庫ラックです。

物流会社が倉庫業に力を入れ、自動制御のラック設備を導入する動きが増えています。運送だけでは利益が出にくくなり、倉庫を持ち、ヤードをつくり、保管料を得る流れです。

この会社は、関東や東北の複数現場で自動倉庫ラックの組立に関わってきました。直取引ではなく、三次下請けのような形で入ることもあります。

ただ、実力には手応えがあります。

「何班も入っている中で、他の業者が夜10時くらいまで残っているところを、うちは定時で上がれるくらいのスピードでやれるんです」

現場の墨出しから対応できる。4〜5人の一班で動ける。必要なら関東の仲間も呼べる。

この力があるなら、単なる応援ではなく、一つ上の立場で現場を任される余地があります。

解決

案件を「粗利・継続性・発注階層・職人拘束・管理範囲」で選び直す

では、設備・重量工事会社が利益の残る領域へ移るには、何から整理すればよいのでしょうか。

いきなり既存の新築工事を切る必要はありません。むしろ、長く付き合ってきた設備会社や、金額を理解してくれる現場代理人は大事な資産です。

そのうえで、案件ごとに見る軸を変えていくことが現実的です。

見るべき軸は、主に5つです。

1. 粗利が残るか

まずは、売上ではなく粗利で見ることです。

たとえば、太陽光まわりの仕事は、以前は1人区2万5千円〜3万円ほどで成立していたものが、競争が激しくなると1万6千円でも厳しい水準になることがあります。

一方で、蓄電池設備や自動倉庫ラックでは、まだ需要が伸びている段階のため、単価が合いやすいケースがあります。

自動倉庫ラックでは、2週間ほどの小規模現場から、2〜3カ月続く現場まであります。4〜5人の一班で入り、1カ月で数百万円規模になることもある。宿泊費を発注側が持つ条件なら、出張でも採算が見えやすくなります。

大切なのは、人工単価だけではなく、移動、宿泊、夜間、待機、現場停止、管理負荷を含めて見ることです。

「単価が高いように見えるが、拘束が長い」案件もあります。逆に「単価は普通でも、段取りよく短期間で終わる」案件もあります。

2. 継続性があるか

次に、一度入ったあとに次の現場へつながるかです。

蓄電池設備は、今後の電力調整や再エネ活用の流れで案件が増える可能性があります。公共施設の設備改修も、老朽化した文化会館、庁舎、学校、ホールなどで継続的に出やすい領域です。

自動倉庫ラックも、物流会社や製造業の倉庫投資が続けば、現場が連続します。

「指定業者に入れれば、次やるよ、次やるよ、という話になると思うんです」

この言葉の通り、単発で終わるか、指定業者化できるかは大きな違いです。

同じ営業をするなら、1件だけの受注より、次の現場が自然に来る入口を探したいところです。

3. 発注階層が浅いか

三つ目は、発注階層です。

ゼネコン新築工事では、元請から何段も下がるほど、価格交渉の余地が小さくなります。競争も激しくなります。

一方で、公共施設の設備改修のように、設備会社が直接受注している工事では、重量工事会社の見積もりが通りやすくなることがあります。

蓄電池や物流設備でも同じです。

エンドユーザーに近い会社、設備メーカー、環境エネルギー系の施工会社、物流設備メーカーの工事部門など、どの階層から仕事が来るかで採算が変わります。

今すぐ直取引が難しくても、まずは「どの会社の下に入ると単価が合うのか」を整理するだけで、営業先は絞れます。

4. 職人拘束が重すぎないか

四つ目は、職人拘束の重さです。

大型施設や発電所、製油所、原子力関連施設などは、入場条件やセキュリティが厳しくなります。一度入ると簡単に抜けられない場合もあります。

「単発なら行ってもいいんですけど、一回入るとなかなか出られない」

「朝8時作業でも、門が詰まるからかなり早く出ないと間に合わない」

こうした現場は、表面上の単価だけでは判断できません。

通勤に片道2時間かかる。入場待ちが長い。出張でしか対応できない。家庭の事情で泊まりに行けない職人がいる。

これらは、すべて採算に影響します。

利益の残る仕事へ移るときは、単に単価の高い仕事を選ぶのではなく、自社の職人構成に合う拘束条件かを見る必要があります。

5. 管理まで担えるか

最後は、一つ上の立場で管理まで担えるかです。

自動倉庫ラックのような現場では、ただ応援で5人出すだけではなく、30人規模の現場をまとめる立場に上がれる可能性があります。

もちろん、管理に上がると手間は増えます。段取り、人員手配、安全、品質、進捗管理も必要になります。

ただ、現場のスピードに自信があり、仲間の職人を集められるなら、単価を上げる余地が出ます。

「やれと言われれば、やれます」

この一言が出る会社は、単なる人工出しで終わるのはもったいないです。

まずは、過去に実績のある領域で、次のように整理すると動きやすくなります。

  • 自社が得意な工種は何か
  • どの現場で評価されたか
  • 何人までなら自社で出せるか
  • 仲間を呼べば何人まで組めるか
  • 墨出し、工程調整、現場管理までできるか
  • 一つ上の会社が何を面倒だと感じているか

この整理ができると、営業先に対して「人を出せます」ではなく、「この範囲まで任せてもらえます」と伝えやすくなります。

それが、価格競争から抜ける入口になります。

まとめ

ゼネコン新築工事が悪いわけではありません。

ただ、復興需要が落ち着いた地域では、新築案件は取り合いになりやすく、相見積もりで単価が下がりやすい構造があります。

その中で、設備・重量工事会社が利益を残すには、既存取引を維持しながら、少しずつ比重を変えていくのが現実的です。

狙い目になりやすいのは、蓄電池設備、公共施設の設備改修、自動倉庫ラック、工場やデータセンター周辺の受変電・空調設備などです。

ただし、伸びている領域なら何でも良いわけではありません。

見るべきは、粗利、継続性、発注階層、職人拘束、管理範囲です。

この5つで案件を見直すと、「忙しいのに残らない仕事」と「次につながる仕事」の違いが見えやすくなります。

そして、現場力がある会社ほど、単なる応援ではなく、管理まで含めた立場に上がる余地があります。

価格競争から一気に抜け出す必要はありません。まずは、今ある取引の中で単価が合う仕事を残し、伸びる領域の営業先を絞り、任される範囲を少しずつ広げていく。

その積み重ねが、利益の残る設備・重量工事へのシフトにつながります。

うちの案件はどこに寄せるべきかを整理したいときは

「蓄電池や物流設備に行きたいが、どの会社に当たるべきかわからない」

「公共改修は取れているが、もっと単価が合う入口を探したい」

「今の新築案件を減らすべきか、残すべきか判断しづらい」

こうした段階でも、まずは案件ごとの採算や発注階層を整理するだけで、次の動き方が見えてきます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、人材確保、原価管理、組織づくり、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

ものづくりに集中できる建設業界へ。無理な営業はいたしませんので、「うちの場合は何から考えるべきか」という段階でも、必要に応じてお声がけください。

お問い合わせはこちら