前提

東北で15名弱の体制を維持しながら、3〜6月の仕事量に波が出ている会社の現在地

東北地方で建築一式、解体、内装、インフラ系の付帯工事などを手がける、15名弱規模の専門工事会社の話です。

主な仕事は、鉄道系・高速道路系の改修や付随工事です。加えて、アパートの原状回復、店舗・施設の内装、改修工事も一部受けています。

ただ、毎年3〜6月ごろに仕事が薄くなる時期があり、そこが経営上の悩みになっていました。社長の言葉を借りると、今の人数は「2、3ヶ月仕事がなくても、なんとかなる人数」です。

裏を返すと、仕事量が安定しないまま人を増やすと、固定費が重くなります。社長も「仕事が安定してくれれば従業員も抱えられる」という感覚を持っていました。

ここで大事なのは、単に「閑散期を埋める仕事を探す」だけでは足りない、という点です。新しい仕事を増やす前に、まずは会社をどの方向に伸ばすのかを決める必要があります。

課題

閑散期を埋める仕事探しが、会社の成長軸とずれる可能性

3〜6月の仕事が薄いと、どうしても「その時期に動く仕事はないか」と考えたくなります。民間改修、アパート原状回復、店舗内装、住宅関連の小工事などは、候補として自然に上がります。

実際、この会社もアパート改修や内装工事の経験がありました。社長も「アパートの改修とかがやっていければ、人が遊ぶこともないのかな」という見方をしていました。

一方で、将来的に売上を伸ばす軸としては、社長の頭の中ではインフラ系工事が中心でした。「今やっている工事もそうですけど、インフラ関係に携われる工事をしておけば、数年通してあるのかな」という発言がありました。

つまり、課題は「仕事が足りない」だけではありません。

本質的には、次の2つが重なっています。

  • 閑散期を埋める短期の平準化
  • 5年後、10年後に売上を伸ばす成長軸

この2つを分けずに考えると、目先の仕事は増えても、会社の強みがぼやけることがあります。逆に、成長軸だけを見ていると、今の固定費リスクや人員稼働の波が残ります。

だからこそ、「何の仕事を取るか」より先に、何を主軸にして会社を大きくするかを決めることが重要です。

背景

インフラ系は伸ばしたいが、既存取引だけでは仕事量が増えにくい構造

この会社の場合、既存の鉄道系・高速道路系の仕事は強みです。特殊な現場環境に対応してきた実績があり、建築一式、内装、解体、現場管理、協力会社の手配まで、かなり柔軟に動ける体制があります。

社長自身も「これしかできないとなると仕事が難しいので、何でもやりますという形で話をしている」と話していました。実際、対応できない工種があれば協力会社を組み合わせ、現場を収める動きもしています。

ただし、既存取引先からの仕事が、人数を増やした分だけ自動的に増えるわけではありませんでした。ある取引先については、「年中通して仕事があるわけではないので、人を増やせば増えるという見込みはあまりない」という認識でした。

ここに、建設業の中小企業らしい難しさがあります。

仕事があれば人を増やせる。けれど、人を増やさないと受けられる仕事も増えにくい。とはいえ、仕事の波がある状態で正社員を抱えるのは怖い。

そのため、この会社では現時点で大きく採用投資をするより、管理できる人材を置き、協力会社を組み合わせて現場を収める形を理想としていました。

「Aの現場があれば、うちから管理者を出す。あとは下請けを使って現場を収める。それが理想の形です」という言葉に、その考え方がよく表れています。

この前提に立つと、やみくもに住宅関連や民間小工事を増やすよりも、既存の施工対応力を活かせる相手を探すほうが自然です。たとえば、インフラ系の発注元に近い一次会社、駅・施設・店舗内装を継続的に持っている会社、改修案件を安定的に流せる会社などです。

一方で、アパート改修や店舗改修も、閑散期の平準化には有効です。ただし、24時間対応や緊急メンテナンスが求められる仕事もあり、自社の運用と合わない場合があります。社長も、過去にコンビニ系の仕事で「電話が来たらすぐ行きなさい」という条件があり、見送った経験を話していました。

つまり、新しい仕事なら何でもよいわけではありません。季節変動を埋める仕事であり、かつ自社の回し方に合う仕事であることが必要です。

解決

インフラを厚くするか、改修で平準化するかを5つの軸で決める

閑散期対策を考えるときは、いきなり「どの会社に営業するか」から入らないほうがよいです。先に、会社としてどの登り方を選ぶかを整理します。

大きくは、次の3パターンです。

1つ目は、既存のインフラ系工事を厚くする道です。鉄道、高速道路、公共性の高い施設改修など、長期的に仕事が出やすい領域に寄せていく考え方です。閑散期が完全になくなるとは限りませんが、売上規模を大きくするには強い軸になります。

2つ目は、アパート・店舗・内装改修で稼働を平準化する道です。原状回復、内装、施設改修、小規模解体など、比較的時期を分散しやすい仕事を組み合わせます。閑散期を埋める効果は出やすい一方で、単価、緊急対応、管理負荷、夜間工事などの条件を見極める必要があります。

3つ目は、インフラを主軸にしながら、改修案件を補助線として持つ道です。この会社のように、成長軸はインフラ系に置きつつ、空きやすい時期に内装・改修を入れる形です。多くの中小建設会社にとって、現実的なのはこの組み合わせです。

判断するときは、次の5つを並べて見ます。

  • 売上拡大につながるか:5年後、10年後に売上を伸ばす主軸になる仕事か
  • 人員体制に合うか:正社員を増やす前提か、管理者+協力会社で回せるか
  • 季節変動をならせるか:3〜6月など薄い時期に本当に入る仕事か
  • 利益率と管理負荷が合うか:単価だけでなく、夜間・緊急・書類・移動の負荷を含めて見合うか
  • 自社の施工対応力を活かせるか:建築一式、内装、解体、現場管理など、今ある強みが評価される相手か

この会社であれば、最初に狙うべきは「どんな工事でも単発で拾う」ことではなく、既存の強みを理解してくれる一次会社や、継続的に改修案件を持つ会社との接点づくりです。

たとえば、いま付き合いのある会社と同じように、発注元から仕事を受け、地域の現場を任せられるパートナーを探している会社です。社長自身も、同じような会社が「もう1社ぐらい」増えるのは現実的だと話していました。ここが大事です。3社も4社も増やすと、今度は自社がキャパオーバーになります。

つまり、狙うべきは大量の新規開拓ではありません。まずは相性のよい取引先を1社増やすことです。

その1社が、閑散期の仕事を少し埋め、かつ既存の強みを活かせる相手であれば、無理に固定費を増やさずに次の成長余地を作れます。

まとめ

閑散期を埋めたいときほど、「何か新しい仕事を取らなければ」と焦りが出ます。ただ、建設業では仕事の種類を増やすほど、管理負荷も増えます。夜間対応、緊急対応、工種ごとの協力会社手配、書類、品質管理など、見えにくいコストも増えていきます。

だからこそ、最初に決めたいのは案件名ではなく、会社の成長軸です。

インフラ系を厚くして売上を伸ばすのか。アパート・店舗・内装改修で平準化を優先するのか。あるいは、インフラを主軸にしながら改修を補助線として組み合わせるのか。

この整理ができると、営業先の選び方も変わります。単に仕事を持っていそうな会社ではなく、自社の体制・利益・施工対応力に合う会社を探せるようになります。

15名前後の会社であれば、いきなり人を大きく増やすより、まずは相性のよい取引先を1社増やし、稼働の波を少しならす。そのうえで、管理者を育てるのか、協力会社網を厚くするのか、一次に近づくのかを考える。

この順番のほうが、固定費リスクを抑えながら、会社を無理なく伸ばしやすくなります。

自社に合う閑散期対策を整理したいときは

「3〜6月の仕事を埋めたい」「人を増やしたいが固定費が怖い」「インフラ系を伸ばすべきか、民間改修を増やすべきか迷っている」という段階では、まず現状の仕事の波、利益、体制、協力会社の使い方を一緒に整理するだけでも、次の打ち手が見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、組織、人材、原価、デジタル活用まで横断して、建設企業の持続的成長を支援しています。

「うちの場合は、どの仕事を厚くするのがよいのか」「まだ営業先を決める前の段階だが、考え方を整理したい」という内容でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況の整理先としてご活用ください。

お問い合わせはこちら