橋梁の耐震補強を中心に、20名規模から14名ほどまで絞られた専門工事会社の現在地
関西圏に拠点を置く、橋梁まわりの耐震補強を主力にしてきた専門工事会社の話です。
以前は20名近い体制でしたが、現在は14名ほど。うち数名は外国人材です。日本人の最年少は40代前半。公共工事の比率が高く、売上の大半を橋梁系の耐震補強が占めています。
ただ、ここ数年で状況が変わってきました。
「公共事業が少なくなって、うちの一次請けのお客さんたちも全然取れない状態になっていて」
「土曜日が休みになって、仕事が少ない上に売上も下がる。従業員の給料もしんどくなる」
この言葉に、同じ感覚を持つ会社は少なくないと思います。
仕事が減る。稼働日も減る。職人の収入も下がる。すると退職が出る。人が減るから、大きく受けにくくなる。
この会社の悩みは、単に“新規営業をしたい”ではありません。既存のお客さんを大事にしながら、年間を通して仕事量を安定させたいという悩みです。
だからこそ、営業の打ち手も慎重になります。
新しい取引先を増やせばよい、という単純な話ではありません。今のメンバーで無理なく対応できる量か。既存取引先に迷惑がかからないか。一次請けとの関係に角が立たないか。そこまで含めて考える必要があります。
新規開拓を急ぐほど、既存顧客への対応品質が落ちる不安
この会社が一番気にしていたのは、新規の仕事を取りに行った結果、今のお客さんに迷惑をかけてしまうことでした。
新しい会社に入ると、最初はどうしても力が入ります。
現場対応も丁寧にしたい。良い印象を残したい。少し無理をしてでも応えたい。これは自然なことです。
ただ、現場の人数が限られている会社では、その分どこかにしわ寄せが出ます。
相談の中でも、こんな言葉がありました。
「ガツガツ新しいところに行って仕事量が増えると、今のメンツだとちょっとしんどい」
「新規のお客さんに力を入れたときに、今のお客さんに迷惑がかかるなと」
これはかなり現実的な感覚です。
受注だけ増やしても、施工体制が追いつかなければ信用を失います。外注を使って回すとしても、品質や安全、書類対応まで任せきれるとは限りません。
とくに公共工事や橋梁系の補修・耐震工事では、現場対応だけでなく書類、施工管理ツール、元請けとのやり取りも重くなります。
小規模な専門工事会社にとって、新規開拓の失敗は「取れないこと」だけではありません。取れすぎて既存顧客の信頼を崩すことも失敗です。
ここを見落とすと、営業活動が会社を楽にするどころか、現場を苦しくします。
紹介待ちとホームページだけでは、取りたい相手に届きにくい構造
この会社も、何もしていなかったわけではありません。
ホームページをリニューアルしました。以前付き合いがあった会社にも改めて声をかけています。耐震や補修に強い会社を紹介してもらうルートも探っています。
ただ、なかなか前に進みません。
「ホームページは変えたてなので、まだそんなに反響はないです」
「新しいところは、飛び込みで行くのはなかなか難しい」
「紹介してもらう予定なんですけど、その人が忙しくてなかなか動けない」
この停滞感も、建設業ではよくあります。
ホームページは必要です。会社の実績や工種を伝える名刺代わりになります。けれど、ホームページを作っただけで発注者や元請けから自然に問い合わせが来るとは限りません。
紹介も大事です。建設業では今でも強い入口です。けれど、紹介者の都合に左右されます。待っている間に数か月が過ぎることもあります。
さらに、営業先の選び方も難しいところです。
大手ゼネコンや大手発注者とつながれれば安心、という考え方はあります。ただ、急に大きな相手とつながっても、今の体制で対応しきれるとは限りません。
相談者も、そこは冷静に見ていました。
「いきなり大きいところにつながっても、僕らには戦略外かなと。仕事をやるよと言われても対応しきれないのは分かっているので」
この感覚はとても大切です。
販路開拓は“大きい会社とつながること”ではなく、自社の体制に合う発注者を順番に増やすことです。
橋梁の耐震補強を中心にしてきた会社なら、いきなり別世界の大手案件を狙うより、まずは近い工種・近い商流・近い地域で、二次請けとして入りやすい会社を探すほうが現実的です。
たとえば、次のような相手です。
- 橋梁補修や維持修繕を扱っている中堅元請け
- 耐震補強の一部工種を外注している専門工事会社
- 公共工事の受注実績があり、協力会社を探している地場ゼネコン
- 既存一次請けと直接ぶつかりにくい地域・工種の会社
- 繁忙期が少しずれる補修・保全系の会社
この会社の場合、橋梁の耐震補強が主力でした。一方で、補修工事にも関心がありました。
「耐震補強は、耐震していないところをやっていく工事。補修工事は今ある橋をすべて補修するので、永遠にある」
「補修工事は年間通してあるので、その辺のお客さんにもうちょっとアピールしていこうかなと」
ここに、新規開拓の方向性が見えます。
今の強みを捨てて別工種へ飛ぶのではありません。耐震補強で積み上げた橋梁まわりの経験を、補修・維持管理の文脈で見せ直すという考え方です。
大手一択ではなく、二次請けで入りやすい会社から小さく試す進め方
新規取引先を増やすときは、最初に「どこに営業するか」よりも、どこまで受けられるかを決めておくほうが進めやすくなります。
この会社のように、既存顧客を大事にしながら販路を広げたい場合、いきなり受注拡大を狙いすぎないほうが安全です。
まず整理したいのは、次の4つです。
1つ目は、受けられる工事の範囲です。
橋梁の耐震補強が得意なのか。アンカー、はつり、断面修復、付属物まわり、補修の一部まで対応できるのか。自社施工できる範囲と、外注を使えば対応できる範囲を分けます。
ここを曖昧にしたまま営業すると、相手にとっても発注しづらくなります。
「何でもできます」より、「橋梁まわりのこの範囲なら、公共工事の書類対応まで含めて動けます」のほうが伝わります。
2つ目は、既存商流とのぶつかりを避ける線引きです。
既存の一次請けが取っている発注者に、いきなり直接営業すると角が立つことがあります。建設業では、ここを雑に扱うと後々やりにくくなります。
そのため、営業先を選ぶときは次のように分けるとよいです。
- 既存取引先と競合しやすい会社
- 既存取引先と地域や工種が重なりにくい会社
- 既存取引先のさらに先ではなく、別ルートで案件を持つ会社
- 二次請けとして入っても関係がこじれにくい会社
大切なのは、既存顧客を奪う動きに見えないようにすることです。
営業の言い方も工夫できます。
「既存のお取引先に迷惑をかける形ではなく、橋梁補修や耐震の一部工種で、手が足りない現場があれば協力できます」
このくらいの温度感で入ると、相手にも伝わりやすくなります。
3つ目は、施工実績の見せ方です。
ホームページを作っても、発注側が知りたい情報が見えなければ問い合わせにはつながりにくいです。
見せるべきなのは、きれいな会社紹介だけではありません。
小規模な専門工事会社なら、次のような情報が効きます。
- 主な対応工種
- 公共工事での対応経験
- 橋梁、道路、河川、高速道路などの施工対象
- 書類対応や施工管理ツールへの対応可否
- 対応可能エリア
- 自社職人と協力会社を含めた施工体制
- 繁忙期・対応しやすい時期
この会社は、県外の現場にも多く出ていました。兵庫、和歌山、岡山、場合によっては東海方面まで動くこともあるとのことでした。
一方で、出張や宿泊を若手が好まないという事情もありました。
だからこそ、ホームページや営業資料では「全国どこでも行きます」と広げすぎるより、対応しやすい地域・時期・工種を明確にするほうが、無理な案件を避けやすくなります。
4つ目は、受注量を増やしすぎない段階設計です。
最初から年間契約や大口案件を狙う必要はありません。
むしろ、最初は小さく入るほうがよいです。
たとえば、次のような入り方です。
- 応援・スポット対応から入る
- 一部工種だけ請ける
- 繁忙期の不足分だけ協力する
- 既存顧客の少ない時期に合わせて新規案件を入れる
- 1社あたりの受注上限を決めておく
新規開拓の目的は、いきなり売上を跳ねさせることではなく、年間の谷を埋めることです。
相談者も「リターンは安定です」と話していました。
「1年通して安定すれば、もうちょっと会社らしくなれる。給料も上げてあげられる」
この目的から逆算すると、営業先も変わります。
大きな案件をくれる会社より、年間で少しずつ声をかけてくれる会社。繁忙期と閑散期の波をならしてくれる会社。既存顧客とぶつからず、二次請けで入りやすい会社。
そういう相手を選ぶほうが、会社に合っています。
まとめ
小規模な専門工事会社の新規開拓は、勢いだけでは進めにくいです。
既存の一次請け・元請けとの関係があります。現場の人数にも限りがあります。外注を使うとしても、品質や安全まで考える必要があります。
だからこそ、順番が大事です。
まず、自社が無理なく受けられる工事範囲を決める。次に、既存商流とぶつかりにくい営業先を選ぶ。そのうえで、施工実績を発注者目線で見せ直す。最後に、小さく受けて関係を育てる。
この流れなら、既存のお客さんに迷惑をかけずに、新しい取引先を増やしやすくなります。
ホームページも紹介も、単体では限界があります。
ただ、使い方を変えれば力になります。
ホームページは、営業後に相手が確認する資料として整える。紹介は、待つだけでなく「どんな会社を紹介してほしいか」を具体化する。営業先は大手一択にせず、二次請けで入りやすい会社や近い工種の発注者から探す。
販路開拓は、会社を大きく見せる作業ではありません。今の体制で守れる信用を、少しずつ広げる作業です。
この考え方なら、無理に背伸びせず、既存顧客との関係も守りながら次の仕事の流れを作っていけます。
うちの商流に合う開拓先を整理したいときは
新規取引先を増やしたいと思っても、「どこに声をかけるべきか」「既存のお客さんとぶつからないか」「今の人数で受けてよい量はどこまでか」は、社内だけでは整理しにくいことがあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、採用、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで、建設業の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。
新規開拓についても、いきなり大きな営業施策を進めるのではなく、既存商流、施工体制、対応工種、エリア、繁忙期の波を見ながら、無理のない進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は、どの会社から当たるべきか」「ホームページを作ったが、どう営業に使えばよいか」「既存のお客さんに角が立たない進め方を整理したい」という段階でも大丈夫です。
無理な営業はいたしませんので、状況整理の場として気軽にお話しください。






























