年商1億円台半ばのリフォーム会社が、BtoC中心の売上構造から次の柱を探している状況
東北地方で住宅リフォームを手がける、年商1億円台半ばの会社の話です。主な工事は、屋根・外壁、塗装、防水、水回り、外構エクステリアなど。社員として職人を多く抱えるというより、協力業者と組みながら現場を回している体制です。
これまでの集客は、チラシ、ポータルサイト、一般施主からの問い合わせが中心でした。特に築20年以上の住宅地では、大手住宅メーカーで建てた家の改修相談も多く、見積もりでは大手住宅メーカーと競合することが珍しくありません。
一方で、材料の遅れで現場が動かず、回収できない案件が2,000万円台まで積み上がる時期もありました。大きな工事の相談があっても、必ずしも利益が残るとは限りません。
相談者の言葉を借りると、「残らない仕事を十数年やってくると、さすがに少し疲れてきた」という感覚です。
この会社が探しているのは、単なる新規案件ではなく、売上の波を抑え、利益が残りやすいBtoBの柱です。 その候補として、公共入札、不動産会社経由のアパート・マンション修繕、介護施設など法人施設の改修、大手住宅メーカーの下請けが挙がっています。
BtoB案件を増やすほど、既存の強みと競合関係をどう扱うかが難しくなる
BtoBへ移るときに難しいのは、「法人案件なら安定する」と単純に言い切れない点です。
たしかに、BtoCだけに依存すると問い合わせ数や広告費、ポータルサイト内の競争、一般施主の判断タイミングに売上が左右されやすくなります。だからこそ、法人・公共・不動産・メーカー経由の案件を増やしたいという発想は自然です。
ただし、BtoBにはそれぞれ別の重さがあります。
- 公共入札は、案件金額が大きく見える一方で、書類対応、入札情報の読み込み、協力業者の新規開拓が必要になる
- 不動産会社経由の修繕は、既存の屋根・外壁・水回りの強みを活かしやすいが、継続発注に至るまで関係づくりが必要になる
- 法人施設の改修は、紹介や既存人脈から入りやすいが、対応スピードや安全面、稼働調整が求められる
- 大手住宅メーカーの下請けは、案件供給の安定感がある一方で、既存の一般施主案件と競合する可能性がある
特に今回の会社では、大手住宅メーカーで建てた家の施主から直接依頼を受ける案件が多くあります。社長も「ハウスメーカーさんとは、ほぼ8割9割競合になっている」と話していました。
そのため、同じ住宅メーカーの下請けに入ると、既存の元請け案件との関係が崩れる可能性があります。競合したら降りるのか、どのエリア・どの工種なら受けてよいのか、条件を決めないまま入ると判断が難しくなります。
BtoB化の課題は、案件を取れるかどうかだけでなく、取った案件が既存の利益構造を壊さないかを見極めることです。
公共入札の大きな可能性と、ハウスメーカー下請けへの慎重さが同時に見えている
公共入札に強い関心が向いている背景には、「今までのリフォームの延長では、利益率の改善に限界がある」という実感があります。
公共関連の話では、いわゆる建設工事だけでなく、物品納品や役務に近い案件もあり、建設業許可や500万円の縛りとは別の考え方で参加できる領域があると説明を受けていました。中には数百万円、数千万円規模の案件もあるとされ、年商1億円台の会社にとっては魅力的に映ります。
ただ、進め方は今までの住宅リフォームとはかなり違います。
「自分たちが得意な板金改修や塗装を狙うのではなく、いったん今までできることを捨てて、全然違うジャンルも含めて入札を投げていく」という考え方です。月に20件、30件と見積もりを出し、過去の落札情報や参加会社、落札金額を調べながら数をこなす。さらに、自社の既存協力業者ではなく、案件ごとに新しい業者を探す必要も出てきます。
この進め方は、うまくはまれば新しい売上の柱になります。一方で、公共入札は「案件を探す営業」ではなく、「情報収集・書類・協力業者開拓・見積もり量」を回す業務に近いため、社内の誰が担うのかを曖昧にしたまま始めると負担が大きくなります。
一方、大手住宅メーカーの下請けには別の論点があります。
この会社は、すでに大手住宅メーカーで建てた住宅の改修案件を一般施主から受けています。屋根のカバー工法、外壁の高耐久塗装、断熱や遮熱などの付加価値を提案し、350万円前後で契約するような案件もあります。同じような工事で、大手住宅メーカー側の見積もりがかなり高く出ていることもあり、元請けとしての価格競争力が強みになっています。
その状態で住宅メーカーの下請けに入ると、次の疑問が出てきます。
- 既存の一般施主案件と競合したときに、どちらを優先するのか
- 下請け単価は、材料支給なのか、手間請け中心なのか
- 年間で何棟、何件くらいの発注が見込めるのか
- 登録業者数が多すぎて、実際には仕事が回ってこないのではないか
- 元請けで取れる利益と比べて、下請けの利益率は納得できる水準なのか
社長が気にしていたのも、まさにここでした。「分母数が増えるなら成り立つのかもしれないけれど、そのバランスが分からない」という見方です。
公共入札には未知の可能性があり、ハウスメーカー下請けには安定の可能性があります。ただし、どちらも自社の現在地と条件を照らし合わせて選ばないと、売上は増えても利益が残りにくくなります。
BtoB開拓は、案件の大きさではなく既存事業との相性で優先順位を決める
BtoB案件を増やすときは、最初から「公共か、ハウスメーカーか」と二択で決めるより、選択肢を同じ物差しで並べるほうが整理しやすくなります。
特にリフォーム会社の場合、見るべき軸は次の6つです。
- 既存の一般施主案件と競合しないか
- 屋根・外壁・水回りなど、今の得意工種を活かせるか
- 営業や書類対応にどれだけ手間がかかるか
- 協力業者を新しく開拓する必要があるか
- 元請け利益と比べて、下請け・紹介案件の利益率が合うか
- 単発ではなく、継続発注につながる可能性があるか
この軸で見ると、今回のような会社では、優先順位は次のように考えられます。
| 選択肢 | 向いている点 | 注意点 | 最初に確認すべきこと | |---|---|---|---| | 不動産会社経由のアパート・マンション修繕 | 屋根・外壁・水回りの強みを活かしやすい | 管理会社・大家との関係構築に時間がかかる | 既存人脈から紹介可能な不動産会社、管理物件数、修繕頻度 | | 介護施設など法人施設の改修 | 紹介や身内のつながりから入りやすい | 稼働時間、安全面、利用者対応への配慮が必要 | 小修繕・定期点検・水回り改修など入り口案件の有無 | | 公共入札・役務案件 | 大型化する可能性がある | 書類、入札量、業者開拓、対象カテゴリ選定が重い | どの業務を誰が担うか、月何件入札するか、勝率と粗利の見込み | | 大手住宅メーカー下請け | 発注元の信用力が高く、案件供給が安定しやすい | 既存BtoC案件と競合しやすい | 競合時のルール、年間件数、単価、材料支給の有無、登録業者数 |
この会社のように、すでに大手住宅メーカー物件の一般施主案件を多く持っている場合、ハウスメーカー下請けは「安定するから入る」ではなく、「既存顧客と競合しない条件を作れるなら検討する」順番が安全です。
たとえば、同じ住宅メーカーでも、既存商圏外の支店、特定工種だけ、空き家・賃貸・法人所有物件だけ、といった切り分けができるかを確認します。単価も、材料支給で手間請けになるのか、材工で請けられるのかによって利益の見え方が大きく変わります。
公共入札については、いきなり大きな費用をかけて全面的に入る前に、支援会社やアドバイザーに次の点を確認したいところです。
- 登録や書類作成だけでなく、対象カテゴリの選定まで支援してくれるのか
- 過去の落札データをどう読み解き、どの案件を避けるのかまで示してくれるのか
- 月20件、30件の入札を出す場合、社内の誰がどの作業を担うのか
- 協力業者の開拓は自社任せなのか、紹介や候補出しがあるのか
- 10〜20%程度の落札率を前提にしたとき、粗利と事務負担が合うのか
- 小さな物品納品から始めるのか、数百万円以上の役務案件を狙うのか
公共入札は、夢のある選択肢であるほど、始める前に「勝ち筋」ではなく「運用の重さ」を見ておくことが大切です。
一方で、不動産会社や法人施設は、既存の施工領域から離れすぎずにBtoB比率を上げられる可能性があります。すでに不動産会社の社長との接点が増えているなら、アパート・マンションの外回り、屋根外壁、共用部、水回りの小修繕などから入り、継続的な相談先になる動き方が取りやすいです。
進め方としては、まず90日ほどの小さな検証期間を置くのが現実的です。
- 既存人脈の中から、不動産会社・施設運営会社・法人所有物件を10社程度洗い出す
- 屋根、外壁、防水、水回り、外構など、自社が利益を残しやすい工事だけをメニュー化する
- 小修繕・点検・見積もり相談の入口を作り、まずは単発案件を取る
- 公共入札は、対象カテゴリと月間入札件数を絞って試す
- ハウスメーカー下請けは、競合ルールと単価が確認できるまで保留または限定的に進める
BtoB化は、一気に業態転換するより、既存の強みが残る領域で小さく検証し、数字を見ながら広げるほうが失敗しにくいです。
まとめ
BtoC中心のリフォーム会社がBtoB案件を増やすとき、最初に見るべきなのは「どの市場が大きいか」ではありません。自社の得意工事、既存顧客との競合、協力業者体制、書類対応、利益率が合うかどうかです。
公共入札は、大きな案件につながる可能性があります。ただし、入札情報の読み込み、見積もり量、協力業者開拓、書類対応まで含めると、専用の運用力が必要です。
大手住宅メーカー下請けは、発注元の信用力や継続性が魅力です。ただ、すでに一般施主から住宅メーカー物件の改修を受けている会社では、競合関係の整理が欠かせません。
不動産会社経由のアパート・マンション修繕や、介護施設など法人施設の改修は、既存の屋根・外壁・水回りの強みを活かしながらBtoB比率を上げやすい入口になります。
BtoB開拓は、公共・不動産・法人施設・ハウスメーカーを並べて、自社にとって「利益が残り、続けられ、既存事業を壊さない順」に選ぶことが重要です。
自社に合うBtoB開拓ルートを整理したいときに
「公共入札に興味はあるが、どこまで費用をかけるべきか分からない」「不動産会社や法人施設を狙いたいが、営業先の優先順位が決められない」「ハウスメーカー下請けに入ると既存顧客と競合しそうで不安がある」。
こうした段階では、いきなり営業を増やすより、まず現在の売上構成、得意工事、協力業者体制、利益率、既存顧客との競合リスクを並べて整理するだけでも、次の一手が見えやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。うちの場合は公共入札なのか、不動産会社開拓なのか、法人施設なのか、まだ方向性が固まっていない段階でも構いません。
無理な営業はいたしませんので、まずは現状の整理先としてご相談ください。


























