前提

東北で年商1億円台の住宅リフォーム会社が、民間リフォーム一本の利益低下から公共役務を検討している現在地

東北地方で住宅リフォームを手がける、年商1億円台半ばほどの会社がありました。屋根・外壁、塗装、防水、水回り、外構などを幅広く扱い、地域の戸建て住宅を中心に仕事を積み上げてきた会社です。

ただ、足元では民間リフォームだけで売上と利益を安定させる難しさが出ていました。大きめの工事の話はあるものの、工事金額が大きいからといって利益率が高いとは限らない。材料の納期遅れもあり、受注していても動かせない案件が数千万円規模で残っている。そうした状況の中で、社長は公共役務・入札に強い関心を持っていました。

社長の言葉を借りると、「今の延長線上の民間工事だけで、この状況を挽回できるのか」という感覚です。

ここでいう公共役務は、いわゆる一般競争入札の大きな公共工事だけではありません。修繕、物品、役務、比較的小さな業務委託に近いものまで含めて、自治体や公共系の発注情報から案件を拾っていく考え方です。

この会社が見ていたのは、いきなり施工管理技士を常駐させるような大型公共工事ではなく、現体制でも取り組める可能性のあるニッチな公共役務・修繕案件でした。

資料ダウンロード
課題

得意工事を増やす発想のままでは公共役務の勝ち筋を見誤りやすい

公共役務・入札で最初にぶつかる課題は、住宅リフォームの延長で考えると、案件の探し方を間違えやすいことです。

この社長も、最初は自社の得意な屋根、板金、塗装、防水、水回りなどを公共案件の中から探す感覚を持っていました。しかし、入札に詳しい外部の話を聞く中で、「自分たちができる工事を探す発想をいったん捨てる必要がある」と受け止めていました。

これは極端に聞こえますが、公共役務ではかなり重要な視点です。

住宅リフォーム会社が公共案件を見ると、どうしても「自社の職人・協力業者でできるか」「普段の見積もり感覚で合うか」「今の施工部隊をどう絡ませるか」を考えます。もちろん実行段階では必要な視点です。ただ、入口からそこに縛られると、案件数が一気に狭くなります。

社長も次のように話していました。

「自分たちができる工事をターゲットにすると、ほとんど該当するものがない。全然関係ないジャンルも含めて、まずは見積もりを投げていく考え方らしいんです」

つまり、公共役務に参入するなら、“施工会社として待つ営業”ではなく、“案件を探し、組める業者を探し、入札を回す営業”に変わるということです。

ここを曖昧にしたまま始めると、次のようなズレが起きます。

  • 得意工事だけを探して、そもそも入札件数が増えない
  • 現場目線で見積もり精度を上げすぎ、応募数が伸びない
  • 落札してから協力業者を探すことになり、実行リスクが高まる
  • 書類や登録、過去落札情報の調査に時間を取られ、通常業務を圧迫する
  • 支援会社やアドバイザーの説明を、成果に直結する支援かどうか見極めきれない

公共役務は「新しい販路」ではありますが、実態としては新しい業務オペレーションを社内に持つことに近いです。ここを軽く見ないほうが、結果的に進めやすくなります。

背景

公共役務は「工事を取りに行く」のではなく案件探索・書類・協力業者開拓を回す事業に近い

公共役務に魅力を感じる背景には、民間リフォームの利益構造に対する疲れがあります。

この会社では、地域のハウスメーカー住宅に住むお客様から直接依頼を受けることが多く、屋根カバー工法や外壁塗装などでハウスメーカーと競合する場面も多くありました。自社では付加価値の高い仕様で350万円ほどの提案をしている一方、ハウスメーカー側の見積もりが900万円台になるようなケースもあり、価格差や粗利構造への違和感も持っていました。

ただし、民間元請けとして直接受注できても、材料遅延、職人手配、広告費、現場管理、粗利確保のバランスは簡単ではありません。社長の「本当に残らない仕事を十数年やってくると、ちょっと疲れてきた」という言葉には、同じような感覚を持つリフォーム会社も少なくないはずです。

そこで公共役務に期待が向きます。

特に社長が関心を持っていたのは、次のような点でした。

  • 建設工事ではなく、役務や物品の枠で参加できる案件がある
  • 建設業許可や500万円の制限に必ずしも縛られない領域がある
  • 小さな物品納品から、数百万円・数千万円規模の案件まで幅がある
  • 県内外の発注情報から、地元で実行できる案件を探せる場合がある
  • 過去にどの会社が、いくらで落札したかを調べられる
  • 競争が激しい案件ではなく、入札者が少ないニッチ案件を狙える可能性がある

一方で、この期待には前提があります。公共役務は、住宅リフォームのように問い合わせを受けて現調し、仕様を詰めて契約する流れとは違います。

社長が聞いていた進め方は、かなり量を重視するものでした。たとえば、1か月に20件、30件と入札に参加し、まずは数をこなしていく。見積もり精度を必要以上に高めるよりも、入札経験を増やす。過去の落札情報を調べ、案件のクセをつかむ。そうした動き方です。

ここで大事なのは、公共役務の営業は、現場力だけでなく情報処理力と探索力が成果を左右するということです。

さらに、案件のジャンルを広げるほど、新しい協力業者の開拓が必要になります。自社の既存協力業者だけで回すのではなく、案件ごとに実行できる会社を探し、条件を合わせ、落札後に履行できる体制をつくる必要があります。

つまり公共役務への参入は、単に「公共案件を取る」話ではありません。案件を探す人、書類を見る人、過去落札情報を調べる人、協力業者を開拓する人、落札後に履行管理する人をどう担うかという話です。

この会社は、現時点では人件費をいきなり増やす余裕があるわけではなく、「やりながら体制を整える」考えでした。その進め方自体は現実的ですが、だからこそ最初に見るべき判断軸を決めておく必要があります。

解決

参入前に案件の量、粗利、実行体制、支援者の中身を小さく検証する

公共役務・入札は、可能性だけで判断せず、最初に小さく検証するのが現実的です。特にBtoC中心のリフォーム会社が始める場合、見るべきポイントは大きく4つあります。

1. 自社の得意工事ではなく「入札できる案件数」を見る

最初に確認したいのは、屋根・外壁・水回りといった自社の得意領域に限定した案件数ではありません。むしろ、自社が新たな協力業者を組めば実行可能な案件が、月にどれくらいあるかを見るべきです。

公共役務では、得意工事にこだわりすぎると入口が狭くなります。一方で、何でも狙うと履行リスクが高まります。

そのため、最初は次のように案件を分類すると見えやすくなります。

  • 自社と既存協力業者で対応できる案件
  • 新しい協力業者を1社見つければ対応できる案件
  • 書類や資格要件が重く、現時点では避ける案件
  • 金額は魅力的だが履行管理の負担が大きい案件
  • 入札者が少なく、調査する価値があるニッチ案件

ポイントは、「できる・できない」ではなく「何をそろえればできるか」で見ることです。これにより、公共役務を単なる思いつきではなく、営業開拓の対象として扱いやすくなります。

2. 入札件数を増やす前に、落札後の粗利構造を仮置きする

公共役務では、まず数を打つ考え方が必要になる場面があります。とはいえ、見積もりを大量に出せばよいわけではありません。

最低限、案件ごとに以下は仮置きしておきたいところです。

  • 落札見込み価格
  • 協力業者への外注費
  • 自社でかかる書類・調査・管理工数
  • 現場確認や移動の負担
  • 支払いサイトと資金繰りへの影響
  • 不履行や仕様違いが起きた場合のリスク

特に住宅リフォーム会社の場合、普段の見積もりには現調・仕様提案・顧客対応の感覚が染みついています。公共役務では、見積もりの精度だけでなく、落札後に本当に残る粗利があるかを早い段階で見る必要があります。

「10万、20万の案件もあれば、数百万円、数千万円の案件もある」という幅があるからこそ、金額の大きさだけで判断しないことが大切です。

3. 書類対応と過去落札情報の調査を、誰が担うか決める

公共役務では、案件を探すだけでも時間がかかります。さらに、公告、仕様書、参加資格、提出書類、過去落札情報、落札企業、落札金額を見ていく必要があります。

ここを社長がすべて抱えると、通常業務との両立が難しくなります。かといって、現場の人に任せればよいとも限りません。社長が聞いていた話の中にも、「現場の人間が細かく考えすぎると失敗する」という趣旨がありました。

この表現の良し悪しは別として、意味するところは分かります。公共役務の初期段階では、現場品質の作り込みよりも、案件情報を整理し、入札可否を判断し、必要な協力業者を探す作業の比重が高いからです。

最初は、次の役割を分けておくと進めやすくなります。

  • 案件を検索し、一覧化する役割
  • 参加条件を確認する役割
  • 過去落札情報を調べる役割
  • 協力業者候補に当たる役割
  • 最終的に入札可否を判断する役割

小さな会社では兼務で構いません。ただ、公共役務は社長の気合いだけで回すより、最低限の役割分担を決めたほうが続きます

4. 支援会社やアドバイザーは「登録代行」ではなく「落札に近い実務知見」で見る

公共役務に参入する際、行政書士や入札支援会社、顧問的な人材に相談する場面も出てきます。このとき注意したいのは、支援内容の見極めです。

社長も、「普通の行政書士さんに頼むと無難な手続きにしかならないのではないか」「売上に直結する裏側のアドバイスがほしい」と感じていました。

ここは非常に重要です。行政手続き、許認可、経営事項審査、入札参加資格申請などの支援と、実際にどの案件を狙い、どの価格帯で入り、どの協力業者を組むかという支援は、似ているようで違います。

支援者を選ぶときは、次の点を確認したほうがよいです。

  • 入札参加資格や書類手続きだけでなく、案件選定まで見られるか
  • 過去落札情報の読み方を具体的に教えられるか
  • ニッチ案件の探し方に実務経験があるか
  • 建設工事と役務・物品の違いを理解しているか
  • 協力業者開拓や履行体制まで話が及ぶか
  • 自社規模に合わない大型案件を勧めすぎないか
  • 費用に対して、どこまで伴走してくれるかが明確か

「絶対に成果が出る」「素人でもできる」といった言葉だけで決めるのではなく、自社の案件探索・入札・履行までのどこを支援してくれるのかを分解して確認することが大切です。

特に年商1億円台の住宅リフォーム会社であれば、いきなり大きな固定費をかけるより、まずは3か月ほどで案件調査と試験入札を行い、手応えを見てから体制を厚くする進め方が合いやすいです。

まとめ

住宅リフォーム会社にとって、公共役務・入札は新しい売上の柱になる可能性があります。民間工事だけでは利益が残りにくい、材料遅延で現場が動かない、広告やポータルサイトに依存した集客に限界を感じる。そうした会社にとって、公共発注情報から案件を拾う発想は、検討する価値があります。

ただし、公共役務は住宅リフォームの延長線上にそのまま乗るものではありません。

得意工事を探す営業から、案件を探し、協力業者を組み、書類と入札を回す営業へ変わる。ここが最大の違いです。

始める前に整理したいのは、次の4点です。

  • 月に何件ほど、自社が狙える案件があるか
  • 過去落札情報から見て、粗利が残る価格帯か
  • 新しい協力業者を開拓してでも実行できるか
  • 書類・調査・入札・履行管理を誰が担うか
  • 支援者が手続きだけでなく、落札に近い実務まで見られるか

公共役務は、過度に怖がる必要も、過度に期待しすぎる必要もありません。まずは小さく調べ、小さく入札し、自社に合う案件の型を見つけることが、現実的な一歩になります。

公共役務・入札を新しい柱にする前に、自社の勝ち筋を整理する

公共役務や入札に関心があっても、「うちの規模で本当にできるのか」「どの案件から見ればよいのか」「支援会社の話をどう判断すればよいのか」が曖昧な段階は多いと思います。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行に向けた進め方づくりを支援しています。公共役務・入札についても、いきなり決め打ちするのではなく、既存事業とのバランス、自社の体制、案件の見方、外部人材の活用余地を一緒に整理できます。

「何から見ればよいか分からない」「今聞いている提案が自社に合うのか整理したい」という段階でも大丈夫です。無理な営業ではなく、まずは状況の整理から進められます。

お問い合わせはこちら