前提

橋梁系の公共工事が売上の大半を占め、15名弱の体制で県外現場もこなしている会社の現在地

近畿地方のある専門工事会社では、橋梁まわりの耐震補強や補修に近い工事を中心に、公共工事関連の仕事が売上の大半を占めていました。

一時期は20名近い体制でしたが、現在は15名弱。うち数名は外国人材です。現場は地元だけではありません。隣県、さらに中国地方や東海方面まで出ることもあります。

社長の言葉は率直でした。

「公共工事がほとんどなんですけど、この頃少なくなってきたんです。土曜も休みになって、売上も下がるし、従業員の給料もしんどくなるんですよ」

いま起きているのは、単に採用できない問題ではなく、年間を通じた仕事量と利益の波が、職人の収入と定着に直結している問題です。

建設業では、採用の話に目が向きやすいです。

若手がいない。日本人の若手が少ない。外国人材も辞めるかもしれない。そうなると、どうしても「人を入れないと」と考えたくなります。

ただ、この会社の場合、社長はそこを冷静に見ていました。

「まずは仕事を取らないとですね。採用にお金をかけるより、仕事を取って流れを作って、外注を使いながら増やせると思ったら従業員を増やす方が現実的かなと」

この順番は、とても大事です。

仕事量が読めないまま人を増やすと、固定費だけが先に増えます。逆に、人を増やさないまま新規案件を取りすぎると、既存顧客への対応が崩れます。

その間で、どこから整えるか。ここが経営判断のポイントになります。

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課題

公共工事依存と土曜休みで稼働日が減り、職人の収入低下が離職につながっている

この会社の悩みは、仕事がまったくないことではありません。

公共工事はゼロではない。既存の取引先もある。施工できる工種もある。書類対応もできている。

それでも苦しいのは、仕事量の波が大きく、利益が残る受注が減っているからです。

社長はこう話していました。

「受け負い仕事が減ってきて、同業者の手伝いをする感じになってきてるんで、利益が少ないんですよ。出た分でしか払えないのが現実ですね」

元請けに近い形、または条件のよい受け方で仕事が取れているときは、職人の給与も守りやすくなります。

しかし、仕事が減り、応援や手伝いの比率が増えると、売上はあっても利益が薄くなります。利益が薄いと、土曜休みで稼働日が減った分を会社が補いにくくなります。

その結果、職人側にはこう見えます。

「働く日が減った」 「給料が下がった」 「他に行った方が収入が安定するかもしれない」

会社への不満というより、生活の問題です。

職人の離職理由が給与に見えているとき、その根っこには受注量・利益率・稼働日の設計があることが多いです。

ここを見ずに採用だけ進めても、また同じ理由で辞めてしまう可能性があります。

もちろん、人材確保は重要です。

ただ、このケースでは「人が足りないから仕事が取れない」というより、まず「安定して給与を払えるだけの仕事と利益をどう作るか」が先にありました。

背景

耐震補強だけでは案件が限られ、補修工事には可能性がある一方で既存顧客への対応余力も気になる

背景にあるのは、工種と取引構造の偏りです。

この会社は、橋梁系の耐震補強に強みを持っています。ただ、耐震補強は「耐震化されていない箇所を施工する」仕事です。対象が限られます。

一方で、橋梁や道路構造物の補修は、定期的に発生します。部材によっては数年ごとに交換が必要なものもあります。社長もそこに可能性を感じていました。

「補修工事は、今ある橋を全部補修するんでね。永遠にあるんですよね」

ただし、話は単純ではありません。

橋梁補修といっても工種は広いです。床版、伸縮装置、断面修復、防水、足場、交通規制、耐震補強。似ているようで、必要な資格者や施工体制が変わります。

社長もそこをよく分かっていました。

「同じ耐震と言いながら、そこに参戦できるかというと工種が違うんです。建設業は工種が多すぎるんでね」

さらに、受注先の問題もあります。

公共工事の一次側を既存顧客が取れなくなっている。大手が入ってくる。既存の一次会社との関係もある。新しい取引先に行きたいが、角が立つ動きは避けたい。

このあたりは、専門工事会社ならではの現実です。

新規開拓は必要でも、既存顧客との関係を崩す営業は長続きしません。

もうひとつ、対応余力の問題もあります。

社長は、新しい取引先を一気に増やすことにも慎重でした。

「ガツガツ新しいところに行って仕事量が増えると、今のメンツだとしんどいんです。新規のお客さんは最初に力を入れないといけない。そうしたときに今のお客さんに迷惑がかかるなと」

これは、とても現実的な感覚です。

仕事がほしい。けれど、取りすぎると回らない。回らないから外注に頼る。外注で品質や段取りが崩れると、既存顧客の信頼に響く。

仕事量を増やす判断は、売上だけでなく「誰が見るか」「既存顧客に迷惑をかけないか」までセットで考える必要があります。

解決

採用を急ぐ前に、年間の空き月・利益が残る工種・外注で試す順番を決める

この状況で最初に整理したいのは、採用計画ではなく、仕事量の設計です。

もちろん、若手採用や外国人材の定着は大切です。ただ、いま人を増やしても、年間を通じて食わせる仕事がなければ会社も本人も苦しくなります。

まず見るべきは「どの月に仕事が薄くなるのか」「どの工種なら利益が残るのか」「どの取引先なら既存顧客とぶつかりにくいのか」です。

進め方は、大きく4つあります。

1. 年間の仕事量を月別に並べて、暇になる時期を見える化する

この会社では、川まわりの仕事は季節の影響を受けます。秋から春にかけて動きやすい一方、時期によっては施工が難しい領域もあります。

社長も「この時期から暇になったりする」と話していました。

まずは、過去2〜3年分で十分です。

月別に次の項目を並べます。

  • 売上
  • 粗利
  • 自社職人の稼働日数
  • 外注費
  • 応援仕事の比率
  • 主な工種
  • 主な取引先

きれいな資料でなくて構いません。

目的は、忙しい月ではなく「給与を守りにくい月」を見つけることです。

ここが見えると、補修工事や別工種を狙うべき時期がはっきりします。

2. 「売上がある仕事」ではなく「給与原資が残る仕事」を分ける

仕事が少ないと、どうしても売上を優先したくなります。

ただ、応援仕事や手伝い仕事が増えると、売上は立っても利益が薄くなりがちです。結果として、職人の給与を守る原資が残りません。

ここでは、案件をざっくり3つに分けると見えやすくなります。

  • 自社の強みが出て、利益が残る仕事
  • 稼働は埋まるが、利益は薄い仕事
  • 実績づくりや関係づくりとして受ける仕事

すべてを高利益にする必要はありません。

ただ、「稼働を埋めるための仕事」と「会社を安定させる仕事」を混ぜて見ないことが大切です。

職人の給与を上げたいなら、売上総額よりも、給与原資になる粗利の安定が先です。

3. 補修工事への展開は、工種を広げすぎず「今の強みと近い入口」から探す

補修工事には、年間を通じた可能性があります。

ただし、補修と一口に言っても幅が広すぎます。いきなり大手が強い領域や、資格者・管理体制が大きく変わる領域に入ると、負担が大きくなります。

この会社の場合も、「耐震補強に近い補修」「既存の橋梁経験を説明しやすい補修」「二次で入りやすい補修」から考える方が現実的です。

新しい工種を選ぶときは、市場の大きさよりも、自社の施工実績を相手が理解しやすいかで見る方が進めやすいです。

たとえば、次のような観点です。

  • 既存の職人で対応できる範囲か
  • 追加で必要な資格者や管理者は誰か
  • 既存顧客と競合しない入口があるか
  • 短期の応援ではなく、継続案件につながるか
  • 施工実績として次の営業に使えるか

「何でもできます」では伝わりません。

「橋梁系でこの範囲なら、既存の体制で対応できます」と言える形に絞る方が、相手も相談しやすくなります。

4. 採用は、外注で仕事量を試してから判断する

社長が話していた「外注を使いながら仕事を増やして、いけると思ったら従業員を増やす」という順番は、今の局面に合っています。

仕事量が不安定なときに正社員を増やすと、固定費が重くなります。

一方で、外注だけに頼ると、品質・安全・段取り・顧客対応の面で不安が残ります。

だからこそ、外注は「採用の代わり」ではなく、採用してよい仕事量かどうかを見極める試験期間として使うのがよいです。

見るポイントはシンプルです。

  • 3〜6か月続けて仕事が埋まるか
  • 外注費を払っても粗利が残るか
  • 既存顧客への対応が崩れないか
  • 自社職人が管理に回れるか
  • 同じ工種で繰り返し受注できるか

ここを満たしてから採用に進むと、採用後のミスマッチも減ります。

採用は攻めの一手ですが、仕事量が読める状態で打つ方が、会社にも職人にも優しい判断になります。

まとめ

公共工事への依存が強い会社では、仕事が減ったときの影響が一気に出ます。

土曜休みや週休二日化で稼働日が減る。受注が減る。利益が薄い応援仕事が増える。給与が下がる。職人が辞める。

この流れは、どこか一つだけを直しても止まりにくいです。

採用の前に、年間の仕事量を平準化し、利益が残る受注を増やし、外注で試してから自社採用に進む順番を作ることが大切です。

特に、既存顧客との関係を大事にしてきた専門工事会社ほど、新規開拓は慎重になります。

それは弱さではありません。信頼で仕事をしてきた会社ほど、当然の感覚です。

だからこそ、いきなり大きな取引先を狙うより、既存の施工実績を説明しやすく、既存顧客ともぶつかりにくく、年間の空き月を埋められる工種・取引先を探す方が現実的です。

職人の給与を守るには、給与表だけでなく、仕事の取り方を変える必要があります。

そして、仕事の取り方を変えるには、まず自社の波を見える化することです。

どの月が薄いのか。どの仕事が利益を残しているのか。どこまでなら外注で回せるのか。どの段階で採用に踏み切るのか。

この順番が見えると、次の一手はかなり考えやすくなります。

仕事量の波と採用の順番を一緒に整理したいときは

公共工事や特定工種に依存していると、社長の努力だけでは読みにくい波が出ます。

「仕事を取りたいけれど、取りすぎると回らない」 「採用したいけれど、食わせる仕事が続くか不安」 「補修工事に広げたいけれど、どの入口が現実的かわからない」

こうした段階でも、整理できることはあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

まずは、年間の仕事量、利益が残る工種、外注と採用の順番、既存顧客への影響を一緒に棚卸しするところからでも十分です。

無理に何かを進める前提ではなく、「うちの場合は何から考えるべきか」を整理する場としてご相談いただけます。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでお気軽にお声がけください。

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