前提

埼玉県の設備系専門工事会社で、13名いた工事部が人間関係のこじれで5名規模まで減った状態

ある関東の設備系専門工事会社では、工事部に一時13名ほどの職人がいました。ベテランの部長、課長クラスがいて、若手も入り、女性職人のチームづくりにも挑戦していました。

ところが、現場の人間関係が少しずつ崩れていきました。

女性職人が入ったことで若手の採用にはつながったものの、職場内の交際、別れた後のトラブル、女性同士の不仲、ベテランとの距離感、派閥のようなまとまりが重なりました。最終的には、せっかく入った若手や気の利く職人も離れていきました。

社長の言葉が印象的です。

「俺はこっちにいるから、リアルタイムに何が起きているかわからない。基本、答えしかわからないんだよね」

工事部の人数が減ると、採用の問題に見えます。もちろん採用も必要です。ただ、その前に見たいのは、人が辞める前に現場の変化を拾える管理体制です。

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課題

少人数の工事部ほど、人間関係の問題が一気に退職とハラスメントリスクへつながる

工事部の人間関係は、表面上は「相性が悪かった」「本人が合わなかった」で片づけられがちです。

でも実際には、もう少し複雑です。

今回の会社では、もともと役職者がいました。部長、課長、10年選手の職人もいました。つまり、完全な無秩序ではありません。それでも、現場内の関係性が崩れたときに止めきれませんでした。

問題は、誰か一人の性格だけではありません。現場リーダーの役割、相談ルート、就業上の線引き、トラブル時の初動が曖昧なまま、少人数の工事部が濃い人間関係で回っていたことです。

特に職人組織では、仕事中だけでなく、移動中、休憩中、現場後の飲み会、送別会、私的な連絡まで距離が近くなりやすいです。

良いときは家族的な強さになります。悪いときは、逃げ場のない空気になります。

そして社長が把握する頃には、もう退職、休職、解雇検討、訴えの可能性という「結果」になっていることがあります。

背景

女性職人や若手を増やすほど、現場任せの空気では受け入れ体制が追いつかなくなる

女性職人を増やしたい。若手を入れたい。将来の工事部を作り直したい。

これは前向きな取り組みです。実際、女性がいることで「ここなら入りやすそう」と感じる人もいます。採用上の魅力にもなります。

ただし、受け入れ体制がないまま人数だけ増えると、現場の空気は揺れます。

今回も、女性職人が入ったこと自体が悪かったわけではありません。むしろ、会社としては大事に育てようとしていました。問題は、受け入れる側のルールが追いついていなかったことです。

たとえば、次のようなことです。

  • 職場内の交際や私的な接触について、どこまでを会社として注意するのか
  • 送別会や飲み会を誰が管理するのか
  • 直属の上司に言いづらい相談を、誰に上げればよいのか
  • 女性職人や若手が孤立したとき、誰が最初に気づくのか
  • ベテラン職人が現場で強い影響力を持ちすぎたとき、誰が止めるのか

工事部が少人数だと、1人の言動が組織全体に響きます。10年選手の一言で空気が決まることもあります。若手同士の関係が崩れると、同じ現場に組ませることも難しくなります。

社長が「工事部が弱い」と感じるとき、人数不足だけでなく、現場内の関係性を管理する仕組み不足が起きていることがあります。

解決

社長が全部を見るのではなく、兆候が上がる仕組みを工事部に組み込む

社長が全員の人間関係を毎日見るのは現実的ではありません。現場に出ていない時間もあります。複数現場が動けば、なおさらです。

だからこそ、社長が見るべきなのは全員の細かい会話ではなく、トラブルの兆候が上がる仕組みです。

まず整理したいのは、現場リーダーの役割です。

部長、課長、職長、ベテランがいる場合でも、役職名だけでは足りません。誰が何を見るのかを分けます。

  • 工程と品質を見る人
  • 安全と勤怠を見る人
  • 人間関係や体調変化を見る人
  • 新人、女性職人、若手のフォローを見る人
  • トラブル時に社長へ上げる人

特に大事なのは、人間関係を見る役割を明文化することです。

「最近あの2人の会話が減った」 「若手が休憩中に一人でいる」 「送迎車の中で空気が悪い」 「女性職人が特定の人と組むのを嫌がっている」

こうした小さな変化は、現場にいる人しか拾えません。ただ、拾った人が「これは社長に言うほどではない」と思うと、何も上がりません。

次に、相談ルートを2本にします。

直属の上司に相談するルートだけだと、その上司自身が問題に関係している場合に詰まります。工事部長とは別に、社長、総務、別部門の責任者など、直属以外に話せる逃げ道を用意しておくとよいです。

そのうえで、就業ルールも整えます。

難しく作り込む必要はありません。最初はA4数枚でも構いません。少なくとも、次の線引きは決めておきたいところです。

  • ハラスメントにあたる言動の禁止
  • 現場外での私的な接触、飲み会、送別会の扱い
  • 職場内の交際が業務に影響した場合の対応
  • SNSや個別連絡でのトラブル対応
  • 相談を受けた上司の報告義務
  • 事実確認が終わるまでの配置転換や出勤調整

ここで大切なのは、社員を縛るためではありません。会社が守る線を先に示すことです。

女性職人や若手を受け入れるなら、なおさらです。

「うちは人間関係で揉めたら、誰に言えばいいか決まっている」 「現場の外で起きたことでも、仕事に影響するなら会社が扱う」 「若手や女性だけに我慢させない」

この状態を作るだけで、入社後の安心感は変わります。

トラブルが起きたときの初動も決めておきます。

最初にやることは、犯人探しではありません。まずは安全確保です。被害を訴える人、相手方、周囲の職人を一度分けます。そのうえで、時系列を確認します。誰が、いつ、どこで、何を見聞きしたのか。LINEや通話履歴など、残っているものがあれば確認します。

この初動が遅れると、現場の噂が先に走ります。派閥もできます。社長が聞く頃には、事実と感情が混ざっています。

だから、工事部にはシンプルな報告基準を置いておくとよいです。

たとえば、次のどれかがあれば当日中に社長へ報告する、という形です。

  • 退職をほのめかす発言が出た
  • 特定の人と同じ現場に入りたくないと言われた
  • 暴言、威圧、身体的接触、性的な言動の訴えがあった
  • 若手や女性職人が孤立している
  • 現場外の飲み会や私的接触が業務に影響している

社長がすべてを直接管理するのではなく、社長に上げる基準を現場に渡す。ここが現実的な一歩です。

まとめ

工事部の人間関係トラブルは、採用難の会社ほど重く響きます。

やっと入った若手。期待していた女性職人。仕事ができるベテラン。そうした人が、人間関係のこじれで一気に離れていくのは本当にもったいないです。

ただ、これは「人を見る目がなかった」という話だけではありません。

少人数の工事部では、関係性が近い分、トラブルも近くで起きます。だからこそ、役割、相談ルート、就業ルール、初動対応、兆候の報告基準を先に整えておくことが大切です。

社長が現場のすべてを見られなくても、兆候が上がる仕組みがあれば、退職や大きな問題になる前に手を打てます。

採用を強める前に、まず「入った人が安心して残れる工事部」になっているか。ここを一度見直すだけでも、次の採用の意味が変わってきます。

うちの工事部では何から整えるべきかを一緒に整理する

工事部の人間関係、若手や女性職人の受け入れ、現場リーダーの役割、相談ルートづくりは、会社ごとに事情が違います。

「うちの場合、誰をリーダーに置くべきか」 「就業ルールをどこまで決めればよいか」 「採用より先に組織を整えるべきか」

このあたりは、社内だけで考えると堂々巡りになりやすいところです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、まずは現状の整理から伴走します。

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