前提

神奈川県の電飾・装飾工事会社が「50人を越さない規模」を意識している状況

ある神奈川県の電飾・装飾工事会社では、クリスマス装飾や季節装飾を中心に、販売施工や現場対応を続けてきました。社員数は30名台。うち一定数は取引先の現場に出向に近い形で入り、取引先の文化の中で育っているメンバーもいます。

社長は18歳からこの会社に入り、現場も会社の歴史も見てきた方です。急拡大よりも、今の取引先との関係を大切にしながら、会社を次につないでいく意識が強い印象でした。

一方で、会社としては明確に意識している線があります。

今のところは、50人を越さないレベルでやっています。50人を越すと、いろいろ置かなきゃいけないものも出てくるので

この言葉には、中小建設会社に共通する現実があります。人を増やせば売上の上限は上がる一方で、管理・教育・制度対応・間接コストも一緒に増えるということです。

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中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード
課題

働き方改革で人は必要になるのに、人数を増やしても利益率がついてこない悩み

この会社の悩みは、単に「採用したい」ではありません。同じ仕事量をこなすためにも、以前より人が必要になっていることです。

社長は、昔の現場の感覚をこう振り返っていました。

若い時は、何十時間も通しでやるようなことが当たり前にありました。でも今は、それができなくなっている。だから人が必要になるんです

働き方改革や労務管理の流れを考えると、長時間労働に頼って繁忙期を乗り切るやり方は続けにくくなっています。特に電飾・装飾のように、クリスマス前後など季節の山が大きい仕事では、繁忙期に人手が足りなくなる場面が出ます。

ただし、人を増やしたからといって、そのまま利益が増えるわけではありません。

人を増やさざるを得ないんですけど、だからといって仕事量が増えるかというと微妙です。売上は伸びても、利益はそこまで伸びていかないイメージです

ここが大事な点です。売上を伸ばす判断と、利益を残す判断は同じではありません。

人数を増やすと、採用費、教育期間の人件費、資格取得、工具・車両・保険、現場管理、事務処理が増えます。新人が一人前になるまでの期間は、会社の利益にまだ十分貢献しません。相談企業でも「会社の中身を覚えてもらうには1年レベルがかかる」という感覚がありました。

つまり、人数を増やす前に見るべきなのは「仕事があるか」だけではありません。増員後に、利益率がどこまで下がるか。繁忙期以外に人をどう活かすか。誰が教育し、誰が管理するか。ここまで含めて判断する必要があります。

背景

クリスマス装飾の山と取引先出向の構造が、人員判断を難しくしている

この会社では、仕事の山がはっきりしています。クリスマス装飾が一番多く、季節装飾では高所作業なども発生します。繁忙期には人が必要です。しかし、年間を通して同じ仕事量があるわけではありません。

このような会社で正社員を増やすと、繁忙期は助かります。一方で、閑散期の稼働をどう作るかが課題になります。繁忙期の山だけを基準に正社員を増やすと、年間の利益率が崩れやすくなります。

さらに、この会社には取引先に人を出している構造があります。約20名が取引先の現場で働き、入社してすぐ取引先に預けるような形になることもあるそうです。

社長は、理想としてこう話していました。

毎年若い子を入れて、取引先に行っているメンバーと入れ替えられるといい。育った人間が戻ってきて、即戦力になれば一番いい

ただし、ここにも難しさがあります。取引先で育った人材は、技術は身についていても、自社のやり方に慣れているとは限りません。逆に自社で育てた人材は、自社でも手放しにくくなります。

また、外注や職人ネットワークにも限界があります。外注先の職人も高齢化しており、いつまでも同じ体制で頼れるとは限りません。

つまり、この会社の人員判断は、単純な採用数の話ではありません。正社員、取引先常駐、外注・協力会社の三つをどう組み合わせるかが、成長規模を決める論点になっています。

解決

人数を増やす前に「利益が残る成長幅」と「任せられる体制」を決める

人を増やすかどうかは、感覚ではなく、いくつかの線を引いて考えると整理しやすくなります。特に中小建設会社では、売上目標より先に、利益率・繁忙期・管理負荷・制度対応の許容範囲を決めることが大切です。

まず見るべきは、増員後の粗利です。人数を増やすと、売上は増えやすくなります。ただ、教育期間や間接コストを含めると、利益率は一時的に下がります。

そのため、次のように整理します。

  • 1人増やした場合、年間で必要な売上と粗利はいくらか
  • 一人前になるまでの期間を何か月で見るか
  • 繁忙期以外に任せられる仕事があるか
  • 現場を教える人、見る人の負荷が増えすぎないか
  • 50人前後を超えたときの制度・管理対応を受け止められるか

次に、繁忙期の山を分けて考えます。クリスマス装飾のように山が明確な仕事は、すべてを正社員で抱える必要があるとは限りません。年間を通して必要な中核人材は正社員で育て、季節の山は協力会社や外注先との組み合わせで吸収する考え方もあります。

ただし、外注先に丸投げできる業種ではない場合もあります。相談企業でも、イルミネーションを専門で扱う会社は少なく、類似工事の会社に業務を教えながら協力してもらう必要がありました。ここでは、協力会社も「探す」だけでなく「育てる」対象になります。

また、管理者負荷も見落とせません。人数が増えると、社長や専務が現場も教育も調整も見る状態では限界が来ます。増員の前提として、現場を任せられる人、後輩を教えられる人、取引先との調整ができる人を分けて育てる必要があります。

この会社のように、50人を一つの線として見ている場合は、次の二択を明確にすると判断しやすくなります。

一つは、50人未満で利益率と取引先関係を守る成長です。急拡大はせず、中核社員を育て、外注・協力会社を厚くして繁忙期を乗り切る形です。

もう一つは、50人超を前提に、管理者・教育制度・採用導線を整えて成長する形です。この場合は、売上拡大だけでなく、評価制度、教育担当、現場責任者、事務管理まで含めて設計する必要があります。

どちらが正解という話ではありません。大事なのは、自社がどの規模までなら利益と品質と人間関係を守れるのかを、先に決めることです。

まとめ

働き方改革の流れの中で、建設会社は以前のように長時間労働で現場を回すことが難しくなっています。同じ仕事量でも、人が必要になる場面は増えています。

ただし、人数を増やせば利益が増えるとは限りません。採用、教育、管理、制度対応、閑散期の稼働まで含めると、売上ほど利益が伸びないことは十分に起こります。

特に、季節の山が大きい会社、取引先常駐の人材が多い会社、外注先の高齢化が進んでいる会社では、成長判断が複雑になります。

整理すべきは、シンプルです。

何人まで自社で抱えるのか。どこから協力会社を使うのか。誰が育て、誰が管理するのか。50人前後の線を越えるなら、何を整える必要があるのか。

この順番で見ていくと、「人を増やすべきか」ではなく、どの規模なら自社らしく利益を残せるかが見えやすくなります。

自社に合う成長規模を整理したいときに

人数を増やすか、協力会社を広げるか、まず管理者を育てるか。建設会社の成長判断は、売上計画だけでは決めにくいものです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。人員計画や利益率、協力会社活用、教育体制を含めて、「うちの場合はどの規模を目指すのが自然か」という段階から一緒に考えることができます。

何から整理すべきかわからない段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、状況の棚卸し先として必要に応じてご相談ください。

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