前提

一人親方が多い地域で、施工を外部に頼りながら仕事を受けている専門工事会社の現在地

九州地方で専門工事を手がけるある会社では、これまで経理や事務などのオフィス部門は社内で持ち、施工は協力会社や一人親方に任せる形で現場を回してきました。

地域柄、一人親方として動く職人が多く、会社に所属するよりも自由に現場を選ぶ働き方が一般的です。相談の中でも、「ほとんど一人親方でやっている」「この時期はうちに仕事がないから別の現場に行く、という流れは止められない」という声がありました。

この体制自体が悪いわけではありません。むしろ、固定費を抑えながら現場量に合わせて動ける強さがあります。

ただ、受注量を増やしたい局面では別の問題が出てきます。外部職人中心の体制では、繁忙期の人員確保、現場品質、報告・日報、育成のコントロールが効きにくくなります。

実際に、日報の仕組みを職人にも使ってもらおうとしたものの、社員の日報だけが入る状態になり、結局Google Workspaceなど身近な仕組みに戻したという話もありました。外部の職人に社内ルールやシステムを徹底してもらうのは、思っている以上に難しいものです。

そのため、話の中心は「求人広告を出すかどうか」ではありません。これからどこまで施工機能を自社で持ち、どこを外部に残すのかを決めることです。

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    課題

    人がいないから取れない現場がある一方で、自社職人を増やしすぎると固定費が重くなること

    この会社の悩みは、とても現実的です。

    「職人がいないから、行こうと思っても行けない現場がある」

    仕事の引き合いがあっても、施工できる人がいなければ受けられません。特に下請け寄りの立場では、元請側の工程や締切に合わせる必要があります。こちらの都合で時期をずらしにくく、繁忙期に案件が重なると取り切れなくなります。

    一方で、自社職人を一気に増やせば解決するかというと、そう単純でもありません。

    自社職人は、会社にとって大きな力になります。現場品質を揃えやすくなります。日報や安全管理も浸透させやすくなります。将来の職長や施工管理候補も育てやすくなります。

    ただし、社員として抱える以上、閑散期にも給与が発生します。社会保険、道具、車両、教育時間も必要です。未経験者を採用すれば、すぐに売上をつくれるわけではありません。

    自社職人の内製化は「正解」ではなく、会社の売上規模・仕事量の波・粗利・教育力に合わせて設計するものです。

    相談者も、「内製が良いとは思っていない」「抱えられる人数は当然出てくる」「落ちないところで中の部分を増やして、アウトソースの割合を調整するしかない」と話していました。

    ここに、同じ悩みを持つ会社の本質があります。

    自社職人を増やしたいのではなく、受けたい仕事を、無理なく、品質を落とさず、継続してさばける体制にしたいのです。

    背景

    下請けの工程都合と一人親方の自由な動きが重なると、現場のコントロールが難しくなること

    この問題が難しいのは、会社の努力だけでは動かせない要素が多いからです。

    下請けの専門工事会社の場合、仕事のタイミングは元請や上位会社の工程に左右されます。繁忙期に現場が重なっても、こちらで平準化しにくい。反対に、職人側も一社専属ではなく、時期や条件に応じて現場を選びます。

    つまり、会社側から見ると、仕事量も職人の稼働も両方コントロールしづらい状態です。

    その中で、外部職人に対してアプリや日報、社内ルールを徹底しようとしても限界があります。所属していない人に対して、「必ずこのやり方で報告してほしい」と言っても、強制力は弱くなります。

    外部職人中心の体制では、仕組みを入れる前に、そもそも誰にどこまで協力を求められる関係なのかを見極める必要があります。

    また、地域によっては「職人は社員にならない」という文化もあります。会社に縛られたくない。自分で動いた方がいい。そう考える職人を、給与だけで社員化しようとしても、長く続くとは限りません。

    そのため、既存の一人親方を社員にすることだけを考えると、選択肢が狭くなります。

    現実的には、次のような複数の道を組み合わせることになります。

    • 既存の協力会社・一人親方との関係は残す
    • 自社で持つべき職種・工程を絞る
    • 経験者を少数採用して教育係をつくる
    • 未経験者を段階的に採用する
    • 協力親方に育成を一部任せる
    • 日報や管理システムは、自社職人が増えてから本格化する

    特に見落としやすいのは教育です。

    人を採っても、見る人がいなければ育ちません。未経験者が入ってきても、毎日違う現場で「見て覚えろ」だけでは定着しにくくなります。

    相談の中でも、「人を入れればいいと思ったけれど、結局見る方がいない、教える方がいないとなると辞めてしまう」という話が出ていました。

    自社職人を増やす前に決めるべきなのは、採用人数ではなく、誰がどう育てるかです。

    解決

    まず抱えられる人数と外部に残す範囲を決め、教育できる分だけ内製比率を上げていくこと

    自社職人の内製化は、一気に進めるよりも、比率を決めて段階的に上げる方が現実的です。

    最初に整理したいのは、「何人採るか」ではありません。自社で最低限持つべき施工能力はどこまでかです。

    たとえば、次の順番で考えると整理しやすくなります。

    1つ目は、仕事量の波です。

    年間を通して、どの月に現場が重なるのか。どの時期に手が余るのか。元請都合で動かせない現場はどれくらいあるのか。ここを見ずに社員を増やすと、繁忙期は助かっても閑散期に固定費が重くなります。

    2つ目は、一人当たりの生産性です。

    職人1人が月にどれくらいの売上・粗利をつくれるのか。未経験者の場合、何カ月後から戦力化するのか。教育中の期間も含めて、会社が抱えられる固定人件費を見ます。

    3つ目は、外部に残す仕事の範囲です。

    全部を内製化する必要はありません。品質を揃えたい工程、急な差し替えが効かない工程、将来の職長を育てたい工程は自社で持つ。繁忙期だけ膨らむ部分や、地域の一人親方が強い領域は外部に残す。こうした分け方が現実的です。

    4つ目は、教育係の確保です。

    未経験者を採るなら、最初に必要なのは教育できる人です。社内に経験者がいない場合は、中途で1〜2名の経験者を採り、教育係として位置づける方法があります。

    また、今協力してくれている親方に、育成を一部任せる方法もあります。

    「この子が一人前に近づくまで見てもらえないか。その分、育成の手間賃も含めて上乗せする」

    こうした形で、協力親方を単なる外注先ではなく、育成パートナーとして巻き込む会社もあります。

    未経験者をいきなり現場に放り込むのではなく、経験者・協力親方・社内ルールを組み合わせて育つ導線をつくることが大切です。

    採用対象も、経験者だけに絞る必要はありません。むしろ、地域によっては経験者採用の方が難しいことも多いです。

    未経験者、高校卒業予定者、高校を中退した若者、地域に残って働きたい人。こうした層に向けて、会社として何を約束できるかを整える必要があります。

    その際に効くのは、きれいな採用ページだけではありません。

    • 入社後に何を覚えるのか
    • 何ができたら給与が上がるのか
    • 休日や働き方をどう選べるのか
    • 職人から職長、施工管理へ進めるのか
    • 資格取得を会社がどう支援するのか

    こうした中身があって初めて、採用発信が意味を持ちます。

    ある会社では、作業ごとに動画を用意し、QRコードから確認できるようにして、できる作業が増えるたびにチェックしていく仕組みをつくっていました。全部できるようになったら給与に反映する。こうすると、本人も何を覚えればよいか分かります。教える側もバラつきにくくなります。

    内製化を進めるなら、採用と教育はセットです。

    「何人採るか」より先に、「何人までなら育てられるか」を決めることが、失敗しにくい進め方です。

    まとめ

    一人親方や協力会社中心の体制は、建設業では自然な形です。固定費を抑えられ、現場量に応じて動ける良さがあります。

    ただ、受注を増やしたい、現場品質を揃えたい、繁忙期に取りこぼしたくないという段階になると、外部頼みだけでは限界が出てきます。

    そのとき、自社職人を増やすことは有力な選択肢です。しかし、いきなり大きく採用するのは危険です。

    まず決めるべきことは、自社で持つ施工能力、外部に残す範囲、抱えられる固定人件費、教育できる人数です。

    そのうえで、経験者を教育係として入れる。未経験者を少しずつ採る。協力親方にも育成を手伝ってもらう。日報や管理の仕組みは、自社で動かせる範囲から整える。

    この順番であれば、内製化は無理な話ではありません。

    自社職人を増やす目的は、外注をなくすことではなく、会社が受けたい仕事を安定してさばける状態をつくることです。

    自社職人を増やす前に、内製化の順番を一緒に整理するという選択

    自社職人を増やすべきか、協力会社を広げるべきか、今はまだ判断しきれない会社も多いと思います。

    その段階では、採用媒体を選ぶ前に、仕事量の波、粗利、外注比率、教育係の有無、協力親方との関係を一度並べてみることが有効です。

    ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。職人の内製化についても、「何人採るか」ではなく、「どこまで自社で持つべきか」「どの順番で育てるか」から一緒に考えることができます。

    うちの場合はどう考えるべきか、何から整理すべきかわからない、という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の相手が必要なときはお気軽にご相談ください。

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