関西圏のプラント系工事会社で、事業所ごとの協力会社管理が強く残っていた状態
ある関西圏のプラント系工事会社では、長年、事業所ごとに協力会社との関係を築いてきました。
協力会社の動員力は強い。現場も回っている。メンテナンス工事では、決まった時期に大きな人数を集める必要があります。数百人単位の動員が必要になることもあります。
そのため、協力会社との結びつきは会社の生命線でした。
一方で、管理の仕方は事業所ごとにばらつきがありました。ある拠点では会社としてルール化されている。別の拠点では、長年いる担当者や番頭格の人が「だいたい分かっている」状態で回している。
話の中で印象的だったのは、次の言葉です。
「現場に持っていけば、回っているからいいじゃないですか。そう言われるんです。でも、回らなくなったらどうするのか、という話なんです」
今は回っている。
だから問題に見えにくい。
しかし、実際には特定の人の経験、顔、判断、段取りに会社が支えられていることがあります。
所長ではなく、その下にいる番頭格の人に仕事が集中していること
この会社で大きかったのは、所長ではなく、その下の層でした。
「所長は転勤するから、どうってことないんです。その下が動かないんです」
この言葉は、多くの工事会社に当てはまります。
現場代理人、工事部長、番頭、古くからいる主任、協力会社の親方と太い関係を持つ担当者。肩書きは会社によって違います。
ただ、実態は似ています。
その人に聞けば、協力会社の事情が分かる。
その人が電話すれば、人が集まる。
その人が見れば、危ない現場が分かる。
その人が見積を見れば、粗利が残るかどうかが分かる。
こうした人がいる会社は強いです。これは間違いありません。
ただし、会社としては同時にリスクもあります。強い人がいることと、会社に仕組みがあることは別だからです。
「その人に相談すれば、なんとかなる。そういう組織だったと思うんです。でも、それじゃいつまでも続かない」
この感覚は、後継者不在が進む専門工事会社ほど切実です。
5人、10人の協力会社が高齢化する。親方が引退する。後継者がいない。そうなると、これまでのように「あの人に頼めば大丈夫」だけでは、動員も品質も安全も読みにくくなります。
合併や世代交代の場面で、暗黙知のままでは説明も引き継ぎもできなくなること
この会社では、過去に別会社との統合も経験していました。
統合すると、文化の違いが一気に表に出ます。
片方の会社は、事業計画や協力会社管理を会社として整理する文化がある。もう片方は、事業所ごとの現場力で回してきた文化がある。
どちらが正しい、という話ではありません。
現場力で回してきた会社には、現場に近い判断の速さがあります。協力会社との信頼関係も深いです。細かい事情を知っている人がいるから、急な動員にも対応できる。
一方で、統合や世代交代が起きると、急に困ります。
「ここに書いてあることと、こっちに書いてあることが違う。これを一緒にしないといけない」
「少なくとも、外から来た人間には分からない。読んで分かるようにしよう、という話をしていました」
ここに、仕組み化の本質があります。
仕組み化とは、現場を縛ることではありません。
現場で実際に動いている良いやり方を、他の人にも渡せる状態にすることです。
特に、協力会社管理では差が出ます。
どの協力会社に、どの工種を頼めるのか。
繁忙期に何人まで動員できるのか。
安全面で注意が必要な会社はどこか。
単価交渉は誰が握っているのか。
支払い条件や年間の仕事量の見通しはどう伝えているのか。
これらが頭の中だけにあると、引き継ぎができません。事故やトラブルが起きた時にも、説明が難しくなります。
「今、きちっとしておかないと、何かあった時に説明がつかない」
これは大企業だけの話ではありません。
10名、20名、30名規模の専門工事会社でも同じです。むしろ小規模な会社ほど、社長や番頭の影響が大きいため、属人化の影響は強く出ます。
現場のやり方を否定せず、動いているルールを書き出して会社の標準にしていくこと
最初にやるべきことは、大きな制度を作ることではありません。
いま現場で実際に動いていることを、丁寧に書き出すことです。
「現実に動いているルールを、みんなできちっと整理して、書き出して、統一すればいいんじゃないか」
この進め方が現実的です。
たとえば、まずは次の5つを棚卸しします。
- 協力会社ごとの得意工種、動員可能人数、繁忙期のクセ
- 見積・原価・追加変更の判断を誰がどう見ているか
- 品質や手戻りが起きやすい場面と、その防ぎ方
- 安全面で必ず確認しているポイント
- 社長、番頭、現場担当者だけが知っている取引先との約束事
ここで大事なのは、最初からきれいなマニュアルを作ろうとしないことです。
現場の人は、紙のための紙を嫌います。
「もう勘弁してくれ」「仕事は回っているんだからいいじゃないか」と感じる人もいます。
だからこそ、進め方は軽く始めた方がよいです。
まずは、社長や番頭が普段やっている判断を横で聞く。
協力会社に電話する前に、なぜその会社を選んだのかをメモする。
見積を見た時に、どこを見て「これは危ない」と判断したのかを残す。
会議資料ではなく、次の担当者が読んで動けるメモにする。
それで十分です。
次に、事業所ごとの違いを比べます。
同じ工種でも、A事業所とB事業所で協力会社の選び方が違うことがあります。安全書類の確認方法が違うこともあります。原価の見方が違うこともあります。
違いがあること自体は問題ではありません。
問題は、なぜ違うのかを会社が説明できないことです。
地域差なのか。
顧客の要求なのか。
協力会社の体制なのか。
昔からの慣習なのか。
ここを整理すると、残すべき現場判断と、会社で統一すべきルールが分かれてきます。
また、後継者がいない協力会社が増えている場合は、統合や外部人材の登用も選択肢になります。
実際に、複数の小規模会社をまとめて一社にし、外から経営人材を入れる動きも出ています。これは特別な話ではありません。親方の年齢、職人の人数、主要取引先、財務状況を見ながら、仕事を守るために会社の形を変えるという考え方です。
ただし、統合ありきで進める必要はありません。
まずは、社内と協力会社の状態を見えるようにすることです。
誰が引退すると困るのか。
どの協力会社が抜けると工程が止まるのか。
どの原価判断が社長にしかできないのか。
ここが見えるだけで、次の一手はかなり考えやすくなります。
まとめ
現場任せで回っている会社は、決して弱い会社ではありません。
むしろ、現場に近いところで判断できるからこそ、長く仕事を守ってきた会社が多いです。
ただ、社長、番頭、熟練者、協力会社の親方が高齢化していく中で、「今は回っている」だけでは引き継ぎが難しくなる場面が増えています。
大事なのは、現場の力を否定しないことです。
現場で動いている判断を拾う。
協力会社との関係を見えるようにする。
事業所ごとの違いを整理する。
読めば分かる標準を少しずつ作る。
必要であれば、協力会社の統合や外部の経営人材も検討する。
この順番で進めると、会社に無理が出にくいです。
属人化をなくすのではなく、属人化している強みを会社の財産に変える。その感覚が、これからの工事会社には大切になりそうです。
自社の現場任せを、どこから仕組みに変えるか整理したいときは
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
「うちは社長が全部見ている」「番頭がいなくなったら協力会社との関係が不安」「事業所ごとにやり方が違って、どこから標準化すればいいか分からない」といった段階でも大丈夫です。
まずは、いま現場で何が回っていて、何が人に依存しているのかを一緒に整理できます。無理な営業はいたしませんので、状況の棚卸し先として気軽にご相談ください。
































