前提

関東圏の20名弱の専門工事会社で、仕事はあるのに施工部隊が足りない状態

関東圏で専門工事と施工手配を行う、20名弱の会社の話です。

一時は施工部隊が10名以上いました。ところが、退職や人間関係のもつれも重なり、いまは現場を担う社員が5名前後まで減っています。

社長の感覚としては、仕事そのものがないわけではありません。

「協力会社がいるから、工事は何とか回せるんです。でも、社内の人間だったらすぐ動ける場面でも、外だとそうはいかない。負担も増えますよね」

この言葉に、かなり多くの中小工事会社の実感が詰まっています。

足場、内装、防水、電気、設備まわりなど、専門工事の会社では、営業課題に見えても、話を深掘りすると最後は人手不足に着地することが少なくありません。

「人がいれば、今のお客さんからでも、もう少し仕事はもらえるんです」

これは珍しい話ではありません。

むしろ今は、仕事を取りにいく力よりも、受けた仕事をきちんと回す施工力が先にボトルネックになっている会社が増えています。

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課題

外注で現場は回るが、利益と機動力が社内に残りにくい

この会社でも、協力会社はいます。

だから、今すぐ現場が全部止まるわけではありません。ここが難しいところです。

完全に人がいなければ、採用に振り切れます。逆に、社員だけで十分に回っていれば、協力会社を急いで増やす必要はありません。

でも現実は、その中間です。

協力会社に頼れば現場は回る。けれど、外注費は上がっている。結果として、売上は立っているのに会社に利益が残りにくい状態になります。

実際、現場の声としてもこんな話が出ていました。

「外注費が上がっちゃっていて、結局、会社に利益が残っていないんです、という話が多いです」

さらに、協力会社中心になると、もう一つの問題があります。

それは、社長や工事部の段取り負担が増えることです。

社内職人であれば、急な調整や細かいニュアンスも通じやすいです。品質の基準も揃えやすいです。若手への教え方も社内で積み上がります。

一方で、協力会社は別会社です。

当然、相手にも都合があります。単価もあります。得意不得意もあります。急な現場、細かい仕様、元請けごとの癖まで、毎回すり合わせが必要になります。

つまり、協力会社は大事です。ただし、協力会社だけに寄せすぎると、施工力が社内資産になりにくいのです。

背景

求人を出せば職人が来る時代ではなく、経験者ほど働き方の絵を見ている

では、自社職人を増やせばいいのか。

もちろん、それができれば強いです。

ただ、ここも簡単ではありません。

この会社では、既存の求人媒体に掲載する予定がありました。ただ、社長の感覚としては「たぶん来ないだろう」という見立てでした。

現場職の採用では、求人媒体に出すだけでは反応が鈍いことが増えています。職人向け媒体、Indeed、SNS、動画系の発信など、いろいろ試している会社もあります。それでも、思うように採れない会社は多いです。

理由はシンプルです。

職人側も選んでいます。

給与だけではありません。

  • どんな現場が多いのか
  • 仕事はきつすぎないか
  • 社長や先輩との距離感はどうか
  • 怪我をしたときに守られるのか
  • 将来、独立できるのか
  • 逆に、会社に残って長く働けるのか

こうした点を見ています。

この会社の社長も、自社の魅力についてこう話していました。

「うちの仕事はそこまでヘビーじゃないし、将来性もある。ほかの工事屋さんに話すと、それ優遇されてるんですか、って言われるくらいなんです」

ただし、問題はそこです。

良い条件があっても、外に伝わっていなければ採用には効きません。

また、未経験者を採るか、経験者を採るかでも判断が変わります。

この会社では、工事職について「経験があった方がいい。教えるなら1年はかかる」という話が出ていました。

緊急で施工力が必要な会社にとって、未経験者採用は大事ですが、即効性は高くありません。

だから社長は、こう考えていました。

「新人を入れても、すぐにはあまり意味がない。ある程度できる人、せめて10年くらいやっている選手が欲しい」

この感覚も自然です。

ただ、10年選手は市場に余っていません。

すでにどこかで働いているか、一人親方として動いているか、独立したいけれど不安を抱えているか。そのどれかです。

だからこそ、単なる求人ではなく、働き方の選択肢を見せる採用設計が必要になります。

解決

短期は協力会社、中期は経験者採用、長期は自社施工部隊の育成で分けて考える

このような状況では、「自社職人か、協力会社か」を一発で決めようとすると苦しくなります。

両方必要だからです。

大事なのは、時間軸で役割を分けることです。

まず、すぐに現場を回す必要があるなら、協力会社ネットワークの強化が先です。

急な受注、既存顧客からの追加依頼、繁忙期の山を越えるには、社内採用だけでは間に合いません。経験者を採れても、入社手続き、現場への慣れ、社内ルールの共有に時間がかかります。

そのため、短期では以下を整理します。

  • どの工種を外に出しても品質が崩れにくいか
  • どの現場は社内対応でないと危ないか
  • 協力会社に任せた場合の粗利はどこまで許容できるか
  • 急な依頼に応じてくれる会社は何社あるか
  • 元請けや顧客に対して、誰が品質責任を持つか

ここで見るべきは、単価の安さだけではありません。

安い協力会社を探すより、任せられる範囲が明確な協力会社を増やすほうが、結果的に社内の負担は下がります。

一方で、中期では自社職人を増やす必要があります。

特に、利益率を戻したい会社、品質を自社基準で揃えたい会社、将来的に元請け比率や受注単価を上げたい会社は、社内施工部隊を薄くしすぎないほうがよいです。

ただし、未経験者を大量に採るより、最初は経験者を口説ける採用の見せ方を作るほうが現実的です。

たとえば、独立志向のある職人に対しては、次のような絵を見せられます。

「1年目は社内で現場と会社のやり方を覚える。2年目は小さな現場を任せる。3年目には、独立も含めて働き方を選べる」

この会社でも、3年程度で独立を支援する構想がありました。

一方で、全員が独立したいわけではありません。

社長は、会社に残る道についても考えていました。

「独立が合う人もいれば、合わない人もいる。会社にいれば、怪我をしたときも守られる。資格を取って、現場管理や指導側に回って、長く働ける見せ方も必要だと思うんです」

これは非常に大事です。

採用ページや求人票で、独立支援だけを打ち出すと、会社に残りたい人には響きにくくなります。逆に、安定雇用だけを打ち出すと、腕に自信がある経験者には物足りなく見えます。

だから、採用上は「独立コース」と「長期雇用コース」を分けて見せるのが有効です。

特に職人採用では、次の判断軸を先に決めておくと、打ち手がぶれにくくなります。

1. 利益率を優先するなら、自社施工の比率を戻す

外注費が上がり、粗利が残りにくいなら、自社施工部隊の強化は避けて通れません。

ただし、採用費も教育費もかかります。未経験者なら戦力化まで時間もかかります。

そのため、最初から大きく採るより、利益が残る工種・現場から社内化するのが現実的です。

2. 緊急度が高いなら、協力会社を先に増やす

来月、再来月の現場が詰まっているなら、採用では間に合いません。

この場合は、協力会社の開拓を優先します。

ただし、単なる名簿集めではなく、施工品質、対応エリア、保有資格、得意現場、単価感、緊急対応可否を整理しておくことが大切です。

「誰に何を任せられるか」まで見える協力会社リストにしておくと、現場判断が速くなります。

3. 教育負担が重いなら、未経験者より経験者の口説き方を作る

「教えるのに1年かかる」という工種では、未経験者採用だけに寄せると、既存社員の負担が増えます。

特に、今いる職人が少ない会社では、教える人も現場に出ています。

この場合は、10年選手のような経験者に対して、給与だけでなく、独立支援、仕事の安定、車両や道具の扱い、将来の現場管理ポジションなどを見せる必要があります。

4. 品質を守りたいなら、社内に基準を残す

協力会社が増えるほど、品質管理の基準が必要になります。

全現場を社員で施工できなくても、社内に基準をわかっている人がいれば、外部に任せる範囲を判断できます。

つまり、協力会社を増やすほど、逆に社内の中核職人や工事責任者の重要性は上がるということです。

5. 将来の事業構想があるなら、採用は制度とセットで考える

将来的に協力会社ネットワークを広げたい。独立した職人を仲間として増やしたい。自社施工部隊から独立人材を送り出したい。

そう考えるなら、採用は単なる欠員補充ではありません。

入社後にどう育ち、どう働き方を選び、会社とどうつながり続けるのか。

ここまで設計することで、求人票の言葉も変わります。

「職人募集」だけではなく、この会社で働くとどんな未来があるのかを伝える必要があります。

まとめ

仕事はある。けれど人が足りない。

この状態では、売上を追うほど現場が苦しくなり、外注費が増えるほど利益が残りにくくなります。

だからこそ、最初に整理したいのは「採用するか、外注するか」ではありません。

どの時間軸の問題を解いているのかです。

短期で現場を回すなら、協力会社を増やす。

中期で利益率と品質を戻すなら、経験者を採る。

長期で会社の施工力を作るなら、未経験者育成や独立支援制度まで含めて設計する。

この順番で考えると、打ち手が見えやすくなります。

また、自社の魅力がすでにある会社ほど、それを外に出せていないことがあります。

「仕事が重すぎない」「将来もある」「独立も会社員も選べる」「怪我や年齢に応じた働き方も考えている」

こうした要素は、職人採用では大きな差になります。

ただし、頭の中にあるだけでは伝わりません。

求人票、採用ページ、面接での話し方、協力会社への声かけ方まで、同じ言葉で伝えられる状態にしておくことが大切です。

自社職人と協力会社の優先順位を一度整理したい方へ

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

「社内職人を増やすべきか、協力会社を広げるべきか」「経験者採用を狙うべきか、未経験者育成に振るべきか」「独立支援を採用の魅力として打ち出せるのか」といった段階から、一緒に整理できます。

まだ方針が固まっていなくても大丈夫です。

うちの場合は何から考えるべきか、今の現場体制でどこまで受けてよいのか、採用と協力会社開拓のどちらを先に動かすべきか。そうした壁打ちからでも構いません。

無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでお声がけください。

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