前提

中国地方で木材販売と内装工事を手がける6名規模の会社が、後継者と一緒に次の採用を考え始めている状況

中国地方のある専門工事会社では、創業社長が長年培ってきた木材の知識を武器に、木材販売と内装工事を組み合わせて事業を続けてきました。売上は2億円前後。高級店舗やこだわりのある設計案件に、木材や造作材を納める仕事もあります。

社長は「木のことなら相談してもらえる。普通の材木屋さんより、かなり多くの種類を見てきた」と話していました。一方で、内装工事側の人員が1名退職し、今後仕事が入ってきたときに対応できるかという不安もあります。

後継者である息子さんも会社に入っており、ホームページまわりや採用の動きにも関わり始めています。社長自身も「息子のほうがやってくれて、私はできたものに目を通すくらい」と話しており、少しずつ世代交代の形が見え始めている段階です。

ここで大事なのは、後継者がいる会社ほど、採用を単なる人員補充ではなく、次の経営体制をつくる仕事として捉えることです。

経験者を1人採れれば楽になる。これは間違いありません。ただ、建設業では施工管理や番頭クラスの経験者採用は簡単ではありません。だからこそ、後継者の代で会社を伸ばすなら、「誰を採るか」「どう育てるか」「どう辞めにくい組織にするか」を、社長任せにしない体制づくりが必要になります。

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課題

経験者を探し続けるだけでは、後継者の代に必要な人材基盤が残りにくいこと

この会社の当面の悩みは、内装工事を任せられる人材の不足です。できれば施工管理や番頭に近い経験者がほしい。ただ、現実には条件に合う人がなかなか見つかりません。

人材紹介経由で候補者は来ているものの、書類を見ると転職回数が多すぎたり、経験が合わなかったりするケースもあります。一方で、社長は未経験者にも目を向け始めています。

「30歳くらいまでなら、教育でなんとかなるかなと思っているんです」

この言葉には、かなり大事な転換点があります。経験者採用一本ではなく、未経験の若手を採って育てる方向に目が向き始めているからです。

ただし、未経験者を採るなら、採用の考え方は大きく変わります。経験者であれば、過去の職歴や資格である程度判断できます。しかし未経験者や新卒の場合は、入社時点で即戦力ではありません。見るべきものは、スキルよりも、会社の仕事に興味を持てるか、地道に学べるか、現場や木材への向き合い方が合うかです。

そのため、未経験者採用は「採る力」だけでなく「育てる力」までセットで考えないと成立しません

ここを社長の経験や勘だけで回そうとすると、後継者の代にノウハウが残りにくくなります。社長が面接で魅力を語り、社長が仕事を教え、社長が合う合わないを判断する形では、人数を増やすほど限界が来ます。

後継者がいる会社では、採用そのものを後継者の実務テーマにすることが重要です。採用活動は、後継者が会社の強み・人材像・育成方針を言葉にする絶好の機会になるからです。

背景

創業社長の木材知識や人柄は強い武器だが、求人票やホームページだけでは若手に伝わりにくいこと

この会社には、採用で打ち出せる材料があります。木材に詳しいこと。こだわりのある店舗や設計案件に関わっていること。材料を納めるだけでなく、内装工事にも領域を広げてきたこと。創業社長の仕事へのこだわりがあること。

しかし、こうした魅力は、求人票に「内装工事スタッフ募集」「未経験歓迎」「給与〇〇円」と書くだけでは伝わりません。

社長自身も、採用媒体について「いろんな媒体に頼んでいるけど、こっちからの文章とかアプローチの仕方が正直わからないので、お任せになっている」と話していました。

これは多くの中小建設会社で起きています。媒体に出せば応募が来る時代ではなくなっています。しかも、求職者は求人票だけを見て判断していません。求人を見たあと、ほぼ必ず会社のホームページを見ます。そこで知りたいのは、会社概要よりも、実際の雰囲気です。

たとえば、求職者が見ているのは次のような情報です。

  • どんな人と働くのか
  • 未経験で入っても教えてもらえるのか
  • 社長や先輩はどんな考え方なのか
  • 仕事の何が面白いのか
  • 自分にも続けられそうか

ところが、社長の木材へのこだわりや、現場での判断の面白さは、社内では当たり前になりすぎていて、外に出ていないことが多いです。さらに、施工実績の写真を出せない事情もあります。大手ブランドや設計事務所が絡む案件では、勝手に実績写真を掲載できないこともあります。

この会社でも「最初はホームページに載せていたけれど、上のほうからダメと言われて、削除したものが結構ある」と話していました。

それでも、伝え方はあります。完成写真が出せなくても、仕事の考え方、木材の選び方、顧客とのやり取り、社内の人、教育の流れ、後継者が目指す方向は出せます。

採用で伝えるべきものは、有名案件の写真だけではなく、「この会社で働く意味」と「入社後に成長できる道筋」です。

特に後継者がいる会社では、ここを社長だけの言葉にしないことが大切です。創業社長の言葉は力があります。ただ、これから入る若手にとっては、将来一緒に働く後継者の考え方も同じくらい重要です。

解決

後継者を採用プロジェクトの中心に置き、人物像・発信・育成を一体で整えること

後継者がいる会社の採用は、後継者を中心にしたプロジェクトとして進めるのが自然です。社長が全部を抱えるのではなく、後継者が会社の魅力を理解し、自分の言葉で語れる状態をつくることが、事業承継にもつながります。

進め方は、大きく4つに分けられます。

1. 欲しい人物像を「元気な若手」から一段深くする

まず整理すべきは、求める人物像です。

「若くて元気な人」「まじめな人」「未経験でもやる気がある人」だけでは、求人の言葉がぼやけます。もう一段深く、どんな人なら自社の仕事に合うのかを考える必要があります。

この会社であれば、たとえば次のような観点が考えられます。

  • 木材や素材への興味を持てる人
  • 高級店やこだわりのある空間づくりに関心がある人
  • 現場だけでなく、材料や納まりの知識も学びたい人
  • 派手さよりも、手触りのある仕事に面白さを感じる人
  • 後継者と一緒に会社をつくっていくことに前向きな人

ここで重要なのは、経験の有無だけで採用基準を決めないことです。経験者なら即戦力に近いかもしれませんが、給与条件だけで動く人は、また条件で動く可能性もあります。未経験者なら育成に時間はかかりますが、会社の考え方に合えば、長く育つ可能性があります。

採用基準は、経験者用と未経験者用で分けて考えるべきです。

2. 求人票・紹介会社・ホームページで言っていることをそろえる

次に、外に出ている情報をそろえます。

ハローワーク、Indeed、人材紹介会社、ホームページで給与や仕事内容の表現が少しずつ違うと、求職者は違和感を持ちます。建設業側から見ると小さな差でも、応募者から見ると「よくわからない会社」に見えてしまうことがあります。

特に若手や未経験者は、会社選びに慣れていません。だからこそ、情報の一貫性が大事です。

求人票は単なる募集要項ではなく、会社から求職者への最初のメッセージです。どんな仕事を任せるのか、どんな順番で覚えるのか、誰が教えるのか、どんな人に来てほしいのかを、できるだけ具体的にそろえていきます。

人材紹介会社を使う場合も同じです。「いい人がいたら紹介してください」だけでは動きにくいです。自社が求める人物像、未経験者を受け入れる条件、入社後の育成イメージを伝えたうえで、紹介会社にも本気で動いてもらう必要があります。

3. 高校・専門学校・若手採用は、すぐの結果より体制づくりとして始める

未経験者や新卒を考えるなら、高校生採用や専門学校との接点づくりも選択肢になります。ただし、すぐに採れる前提で考えすぎないほうがよいです。

高校生採用は、求人票の提出時期や学校訪問の流れなど、中途採用とはまったく違う動きになります。初年度から大きな成果を狙うより、2年後、3年後を見据えて、学校側に会社を知ってもらうところから始めるほうが現実的です。

このときも、後継者が前に出る意味があります。若い求職者や先生方にとって、創業社長の実績だけでなく、「次の代がどんな会社にしていきたいか」は大事な判断材料になるからです。

後継者が採用担当として学校訪問や会社説明に関わることは、会社の未来を外に語る訓練にもなります

高校生、新卒、第二新卒、30歳前後の未経験者。それぞれで響く言葉は違います。だからこそ、全員に同じ求人を出すのではなく、対象ごとに伝える内容を変える必要があります。

4. 入社後の育成・評価・定着まで先に設計しておく

未経験者を採るなら、入社後の育成設計が欠かせません。

「現場で見て覚えて」だけでは、若手は何を期待されているのかわかりにくくなります。もちろん建設業の仕事には、見て覚える部分もあります。ただ、それだけに頼ると、教える人によって差が出ます。

最初に整えるべきなのは、難しい制度ではありません。たとえば、次のような簡単な整理からで十分です。

  • 入社1か月目に覚えること
  • 3か月目までにできるようになってほしいこと
  • 半年後に任せたい補助業務
  • 1年後に期待する役割
  • 誰が何を教えるか
  • どのタイミングで面談するか

この会社のように6名規模であれば、全員が育成に関わります。だからこそ、社長と後継者だけでなく、既存社員にも「どういう人を迎え、どう育てるか」を共有しておく必要があります。

評価も同じです。大企業のような分厚い人事制度を最初から入れる必要はありません。ただ、若手が「何を頑張れば認められるのか」が見えないと、定着しにくくなります。

採用・育成・評価は別々の話ではなく、後継者の代で人を増やすための一本の流れとして設計することが大切です。

まとめ

後継者がいる建設会社にとって、採用は単なる欠員補充ではありません。次の経営体制をつくる入口です。

創業社長の経験、人脈、技術へのこだわりは大きな財産です。ただ、それを社長の頭の中に置いたままでは、若手には伝わりにくく、後継者にも採用の型が残りません。

特に、経験者採用が難しくなり、未経験者や新卒を育てる必要が出てきた会社では、次の整理が欠かせません。

  • どんな人に来てほしいのかを、後継者と一緒に言葉にする
  • 求人票・ホームページ・紹介会社への説明をそろえる
  • 高校生や若手採用は、数年先を見据えた接点づくりとして始める
  • 入社後の育成・評価・定着まで、採用前に設計しておく

社長が忙しい会社ほど、採用は後回しになりがちです。ただ、後継者がいるなら、採用を後継者の実務テーマにすることで、会社の強みを再整理する機会にもなります。

人を採る準備は、会社を継ぐ準備でもあります。

自社の採用と育成を、後継者の代に残る形で整理したい方へ

「経験者を採りたいが、なかなか来ない」「未経験者を育てるしかないが、何から整えればいいかわからない」「後継者に採用を任せたいが、進め方が見えていない」。

こうした段階でも、まずは会社の現在地を整理するところから始められます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。採用だけを切り出すのではなく、後継者の役割づくり、若手育成、定着の仕組みまで一緒に考えることができます。

うちの場合は経験者採用を優先すべきか、未経験者育成に切り替えるべきか。後継者をどこまで採用に関わらせるべきか。まだ整理しきれていない段階でも大丈夫です。

無理に何かを進める前提ではなく、まずは状況を伺いながら、次に考えるべき順番を一緒に整理します。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでご相談ください。

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