内装・改修を手がける30名弱の会社が、営業と一級施工管理技士の採用を同時に進めている状態
関東圏で内装・改修工事を手がける、30名弱の専門工事会社のケースです。営業人材の採用を優先しつつ、良い人がいれば一級施工管理技士も採用したい、という状況でした。
採用人数としては、将来的には複数名ほしいものの、現実には一度に多く入っても教える体制が追いつきません。社内では「3か月に1人くらい増えてくれれば」という感覚があり、年間では数名を着実に採用していくイメージです。
一方で、現場も営業も余裕があるわけではありません。既存メンバーが外回りや同行に出たくても出られない場面があり、採用の緊急度は高い。ただし、採った後に育てきれなければ定着しない。ここに、建設業の中小企業らしい難しさがあります。
この会社では複数の人材紹介会社や媒体に声をかけ、営業職と施工管理職の求人票を整えようとしていました。ところが、紹介会社側から求められたのは、単なる仕事内容や年収条件だけではありませんでした。
「会社の雰囲気、働き方、評価制度、求職者におすすめできる魅力を知りたい」
ここが、求人票を出すだけの採用と、紹介会社に本気で動いてもらう採用の分かれ目になります。
求人票の条件だけでは、大手と比べられる施工管理や営業人材に届きにくい
一級施工管理技士や営業経験者は、どの会社もほしがっています。特に一級資格者は、大手企業や条件の良い会社との取り合いになりやすく、年収レンジだけで勝負しようとすると中小企業は不利になりがちです。
もちろん、年収や休日、勤務地、仕事内容は大事です。ただ、人材紹介の現場では、候補者に求人を勧めるのは紹介会社の担当者です。担当者が候補者に対して、
「この会社は、こういう人には合うと思います」
と自分の言葉で話せなければ、求人票は紹介会社の社内に置かれたままになってしまいます。
実際、候補者側も条件だけを見ているわけではありません。施工管理職であれば、社長や現場メンバーとどれくらい近い距離で働くのか、裁量はあるのか、現場の進め方は合いそうかを見ています。営業職であれば、既存顧客との関係性、扱う商材、社内の支援体制、数字への向き合い方を気にします。
そのため、求人票に「施工管理」「営業」「内装改修」「経験者歓迎」と書くだけでは、他社との差が伝わりません。候補者に届く前に、紹介会社の担当者が推薦しにくい状態になっていることが多いのです。
この会社でも、ある候補者から他社を優先され、「滑り止めのように見られているのでは」と感じる場面がありました。これは条件の良し悪しだけでなく、会社の魅力や合う人材像が十分に伝わっていないサインとも言えます。
紹介会社の担当者が候補者に語れる情報は、社長の考え方や定着している人の共通点にある
人材紹介では、企業担当と候補者担当が分かれていることがよくあります。企業担当が会社から聞いた内容を、候補者担当に伝え、そこから候補者へ求人が紹介されます。
つまり、会社の魅力が曖昧なままだと、途中で情報が薄まります。求人票に書かれている条件しか伝わらず、候補者から見ると「よくある建設会社の求人」に見えてしまいます。
では、何を言語化すればよいのでしょうか。
この会社の場合、採用の話を掘っていくと、次のような情報が見えてきました。
- 社長との相性がかなり重要である
- 施工管理は社長や主要メンバーと直接仕事をする距離が近い
- スキルだけでなく、貢献意欲や柔軟さを重視している
- 定着している人には「何でもやります」という姿勢がある
- 内装やインテリアに興味がある人は、営業職でも入り口になり得る
- 即戦力だけでなく、ポテンシャル層も検討したい
特に印象的だったのは、「うちで残っているのは、だいたい何でもやりますという人」という趣旨の言葉です。
これは、単なる精神論ではありません。中小の建設会社では、職種の線引きが大企業ほど明確ではないことがあります。営業でも現場理解が必要ですし、施工管理でも顧客対応や社内調整が求められます。だからこそ、専門スキルだけでなく、周囲と連携しながら前に進める姿勢が重要になります。
このような情報は、求人票の「求める人物像」に一文だけ書いても伝わりません。紹介会社の担当者が候補者に話せるように、背景まで含めて整理する必要があります。
たとえば、次のような形です。
- どんな事業を伸ばそうとしているのか
- なぜ今、営業や施工管理を採りたいのか
- 入社後、最初に任せる仕事は何か
- どんな人が社内で評価されているのか
- 逆に、どんな人はミスマッチになりやすいのか
- 社長は採用で何を見ているのか
- 既存社員はどんな理由で定着しているのか
人材紹介の担当者がほしいのは、きれいな採用コピーだけではありません。候補者に推薦するための“話せる材料”です。
求人票を磨く前に、紹介会社が推薦しやすい会社の見せ方を整える
人材紹介で応募を増やすには、求人票を作る前に、まず会社の見せ方を整えることが大切です。ここでいう見せ方とは、見栄えの良い採用ページを作ることではありません。
紹介会社の担当者が、候補者に対して「この会社はあなたに合う可能性があります」と言えるだけの情報を渡すことです。
整理する順番は、次の流れが現実的です。
1. まず「採りたい人数」ではなく「受け入れられる人数」を決める
採用計画では、どうしても「何人足りないか」から考えがちです。ただ、建設業の場合は、入社後の教育や同行、現場理解に時間がかかります。
この会社でも、最初は10名ほど不足している感覚がありましたが、実際には一度に採るのではなく、3か月に1人、年間数名のペースが現実的でした。
採用で大事なのは、人数目標を大きく掲げることより、入社後に育てきれる採用ペースを決めることです。紹介会社にも、「今すぐ何人でも」ではなく、「まずは営業1名、施工管理は良い方がいれば検討」という温度感を伝えた方が、紹介の精度は上がります。
2. 即戦力採用とポテンシャル採用で、ペルソナを分ける
営業職や施工管理職では、即戦力とポテンシャル層を同じ求人票でまとめすぎると、紹介会社が候補者を探しにくくなります。
たとえば即戦力であれば、次のような経験が手がかりになります。
- 内装、改修、リノベーションに近い経験
- 不動産管理、賃貸管理、建物管理に関わる経験
- 法人顧客との折衝経験
- 現場と顧客の間に立った調整経験
一方でポテンシャル層であれば、経験業界よりも次のような要素が重要になります。
- コミュニケーションが取りやすい
- インテリアや空間づくりに興味がある
- 決まった仕事だけでなく、周辺業務にも前向きに関われる
- 社長や現場メンバーとの距離が近い環境を苦にしない
この2つを分けておくと、紹介会社の社内でも求人が流通しやすくなります。広めに受ける求人を1つ置きつつ、特定の経験者に刺さる求人も別に用意する。こうした出し方の方が、候補者担当にも伝わりやすくなります。
ポイントは、候補者に直接届く求人だけでなく、紹介会社の担当者が扱いやすい求人にすることです。
3. 年収や条件以外の「候補者が知りたい情報」をまとめる
施工管理や営業人材に対しては、年収条件だけでなく、会社のリアルな情報を整理して渡す必要があります。
特に紹介会社に共有したいのは、次のような項目です。
- 会社の雰囲気
- 社長の考え方
- 働き方の実態
- 評価される行動
- 入社後の育成方法
- 社内で定着している人の特徴
- 今後伸ばしたい事業領域
- 外部と連携して進めている改善活動
この会社では、DXや業務改善に取り組んできた資料もありました。こうした取り組みは、候補者にとって「古いやり方のままではなく、変わろうとしている会社」と伝わる材料になります。
ただし、資料をそのまま全部渡せばよいわけではありません。紹介会社の担当者が話しやすいように、要点を絞って、採用向けの言葉に直すことが必要です。
4. 紹介会社の担当者との相性を見極める
人材紹介では、会社選びだけでなく担当者選びも重要です。同じ紹介会社でも、担当者によって紹介数や候補者理解は大きく変わります。
実際に、ある会社ではしばらく紹介がほとんどなかったものの、担当者を変えたことで毎月安定して候補者が紹介されるようになった、という話も出ていました。
これは珍しいことではありません。担当者が会社の魅力を理解し、候補者に熱量を持って伝えてくれるかどうかで、紹介数は変わります。
そのため、最初から完璧な担当者に出会える前提にしない方がよいです。開始後は、次の観点で見ていくと判断しやすくなります。
- こちらの事業内容を理解しようとしているか
- 候補者の質に対して改善提案があるか
- こちらが伝えたペルソナを反映してくれるか
- 求人票以外の魅力を候補者に伝えようとしているか
- 紹介が少ない理由を一緒に考えてくれるか
合わない場合は、紹介会社そのものを切る前に、担当者変更を相談するのも一つの方法です。紹介会社を口説くというより、担当者が推薦しやすい状態を一緒に作る感覚が近いです。
5. 紹介状況を見ながら求人内容を変えていく
求人票は、一度作って終わりではありません。開始後にどんな人が紹介されるかを見ながら、少しずつ調整していくものです。
この会社でも、紹介された候補者をスプレッドシートで管理し、どの媒体から、どんな人が来ているかを見えるようにする流れを作ろうとしていました。明らかにペルソナから外れる候補者は確認前に除外し、面接判断が必要な人だけを社内で見られるようにする設計です。
この運用をしておくと、紹介会社との会話が具体的になります。
「営業経験者は来ているが、年齢層が高すぎる」
「施工管理経験者は来ているが、内装改修の経験が少ない」
「未経験でも、接客や調整経験がある人は面接してみたい」
このように、実際の紹介状況をもとに求人票やペルソナを変えていくと、紹介会社側も動きやすくなります。
最初から正解の求人票を作ろうとするより、応募開始後に改善できる仕組みを持っておく方が、採用は前に進みます。
まとめ
建設会社が人材紹介で応募を増やすには、求人票の条件を整えるだけでは不十分です。特に施工管理や営業人材は、大手や同業他社との比較になりやすく、年収だけで選ばれるわけではありません。
大事なのは、紹介会社の担当者が候補者に推薦しやすい状態を作ることです。
そのためには、次の整理が必要になります。
- 受け入れられる採用ペースを決める
- 即戦力とポテンシャル層のペルソナを分ける
- 社長の考え方や会社の雰囲気を言語化する
- 定着している人の共通点を採用基準に落とす
- 紹介会社の担当者との相性を見極める
- 紹介状況を見ながら求人内容を改善する
求人票は、採用活動の入り口です。ただ、その前に会社として何を大事にしていて、どんな人が合い、どんな人が定着しているのかを言葉にしておく必要があります。
そこまで整理できると、人材紹介会社は単なる求人の掲載先ではなく、候補者に会社の魅力を届けるパートナーになっていきます。
人材紹介で応募を増やす前に、自社の魅力と言語化すべき採用基準を整理する
「求人票は出しているのに、なかなか紹介が増えない」「紹介会社に何を伝えればよいかわからない」という段階では、求人票そのものよりも、採用したい人材像や会社の見せ方を整理することが先かもしれません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材定着、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行を支援しています。人材紹介会社への伝え方、求人票の改善、採用ペルソナの整理なども、現場の実情に合わせて一緒に考えることができます。
「うちの場合は、何から整理すべきか」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要な論点を整理する場としてご活用ください。
































