岡山県の少人数専門工事会社が、有名案件の写真を出せないまま採用発信を見直す局面
岡山県で木材の販売と内装工事を手がける、社員5名ほどの専門工事会社の話です。創業から約20年、代表は長く木材に携わってきた方で、息子さんも会社に入り、次の体制づくりを進めている段階でした。
扱っている仕事は、一般的な量産型の内装というより、木の知識や納まりの難しさが問われる領域です。代表は「木のことなら100種類くらいは分かる。相談されれば、いろいろ答えられる」と話していました。実際に、高級店舗やこだわりのある設計事務所向けに、質の高い木材や家具を納めてきた実績があります。
一方で、採用に向けてホームページを見直そうとすると、すぐに壁に当たります。
「いろんなところに納めているんですけど、その写真を載せられないのがネックなんです」
有名ブランドの店舗や、品質の高い仕事に関わっていても、元請けや顧客の都合で写真・社名・実績名を出せない。最初はホームページに載せていた写真も、後から「これは出せない」と言われ、削除していったそうです。
実績はあるのに、採用サイト上ではその実績を見せきれない。 これは、専門工事会社ではかなり現実的な悩みです。
完成写真と実績名を出せないため、採用サイトで魅力を証明しにくいこと
採用サイトで一番見せやすいのは、完成写真や有名案件の名前です。見た瞬間に「こんな仕事をしている会社なんだ」と伝わりますし、求職者にも分かりやすい材料になります。
ただ、下請け・協力会社として関わる仕事では、そう簡単に公開できません。特に店舗、商業施設、ブランド案件、設計事務所案件では、写真の使用許可や社名の掲載に制限がかかることが多くあります。
この会社でも、代表はこう感じていました。
「載せられる部分が減ってきたので、どうなんかなと思いながら」
ここで起きている問題は、単に写真が少ないことではありません。完成写真を出せないことで、会社の技術力・こだわり・仕事の面白さまで見えなくなってしまうことです。
求職者は、求人票だけでは判断しません。給与や休日、勤務地を見たあと、多くの場合は会社のホームページや採用ページを見に行きます。そのときに知りたいのは、会社概要だけではありません。
求職者が見ているのは、たとえば次のようなことです。
- どんな人と働くのか
- 現場でどんな判断をしているのか
- 未経験でも学べそうか
- 社長以外の社員はどんな雰囲気か
- 仕事に誇りを持てそうか
- 自分が入った後の姿を想像できるか
採用サイトで伝えるべき中心は、施工実績そのものではなく「この会社で働く実感」です。 完成写真が出せない会社ほど、ここを丁寧に作る必要があります。
木を知る強みはあるのに、サイトには社長以外の空気と仕事の過程が出ていないこと
この会社には、採用で伝えるべき材料がないわけではありません。むしろ、かなりあります。
代表は、木材の種類、材質、使いどころ、設計者のこだわりへの対応に強みを持っています。単に材料を売るだけでなく、施工や納まりまで分かったうえで提案できる。これは、木材販売だけの会社とも、一般的な内装施工会社とも違う立ち位置です。
ただ、その強みは外から見ると分かりにくいものです。
木に詳しい。高級店に納めている。設計事務所から相談される。難しいものに対応できる。これらは社内では当たり前でも、採用サイト上で言葉や写真になっていなければ、求職者には伝わりません。
特に少人数の建設会社では、採用ページが社長のあいさつと事業内容だけで止まりがちです。しかし求職者が知りたいのは、社長の思いだけではありません。
社長以外の人の顔、社員同士の空気、仕事を覚える過程、現場での会話が見えないと、求職者は入社後の自分を想像しにくいのです。
実際、別の専門工事会社でも、有名な大型案件に関わっていながら実績名を前面に出せないケースがありました。その会社では、完成写真ではなく、職人や番頭の言葉、現場での役割、仕事の流れ、会社の雰囲気を採用サイトに落とし込むことで、採用につながりました。
「何も出せない」と思っていても、深く聞いていくと、出せるものはあります。
たとえば、完成後の店舗写真は出せなくても、仕事の考え方は出せます。顧客名は出せなくても、どんな難しさに向き合ったかは語れます。現場全体の写真は使えなくても、社員の声や会社の雰囲気は伝えられます。
採用広報で本当に必要なのは、有名案件の名前を借りることではなく、自社の仕事の本質を自分たちの言葉で出すことです。
完成形ではなく、仕事の過程・人・判断を採用コンテンツの主役にすること
施工実績を公開できない会社は、採用サイトの作り方を「完成写真中心」から「過程中心」に切り替えると、伝えられる情報が一気に増えます。
大事なのは、まず公開できるものと公開できないものを分けることです。顧客名、店舗名、外観、完成写真、設計者名などは出せない場合があります。一方で、仕事の考え方、社員のインタビュー、素材へのこだわり、教育の流れ、社内の雰囲気、代表や後継者の言葉は、整理すれば出せることが多いです。
採用サイトで見せるべき軸は、次の4つです。
1つ目は、仕事の過程です。 どんな相談から始まり、どこで難しさが出て、どんな判断をして納めるのか。完成写真がなくても、「この会社は考えて仕事をしている」と伝わります。
2つ目は、素材や施工へのこだわりです。 この会社でいえば、木の種類を知っていること、材質を見て提案できること、設計者の意図を読み取れることが強みです。求職者にとっては、単なる内装工事ではなく「学べる仕事」に見えてきます。
3つ目は、社長以外の人柄です。 息子さん、現場を支える社員、材料を扱う人、工事に関わる人。それぞれが何を面白いと感じているのかを出すことで、会社の空気が伝わります。
4つ目は、入社後の成長イメージです。 未経験者を採るなら、最初に何を覚え、誰について学び、どんな仕事を任されていくのかを見せる必要があります。経験者を採る場合も、「ここなら自分の経験をどう活かせるか」が見えることが大切です。
採用サイトやSNSに落とし込むときは、次のようなコンテンツが考えられます。
- 代表と後継者が語る「うちが木にこだわる理由」
- 社員インタビュー「入社して最初に覚えたこと」
- 仕事紹介「完成写真ではなく、納まりまでの考え方を紹介」
- 写真コンテンツ「道具、材料、打ち合わせ、社内の雰囲気」
- 短い動画「木材を見る視点」「現場前の準備」「若手に教えていること」
- SNS投稿「今日の材料」「この木を選ぶ理由」「現場で大事にしている判断」
ここで重要なのは、見栄えのよい写真を並べることではありません。求職者が知りたい順番で、会社の空気と仕事の面白さを伝えることです。
求人媒体やSNSは入口です。そこで少し興味を持った人は、採用サイトを見に来ます。その採用サイトに、社長の理念だけでなく、社員の表情、仕事の過程、学べる内容、会社の考え方がそろっていれば、応募前の不安はかなり減ります。
「完成形だけにこだわらなくていい」という考え方は、施工実績を出せない会社ほど大切です。
むしろ、完成写真だけでは伝わらない魅力があります。難しい相談にどう向き合うか。木をどう選ぶか。若手にどう教えるか。現場でどんな会話があるか。そうした情報のほうが、採用では強く効くことがあります。
採用サイトは、作品集ではなく「一緒に働く人へのラブレター」として作るほうが伝わります。
まとめ
施工実績を公開できないことは、採用広報では確かに不利に見えます。特に、有名案件や高品質な仕事に関わっている会社ほど、「これを出せたら伝わるのに」と感じる場面は多いはずです。
ただ、採用で伝えるべき魅力は、完成写真だけではありません。
出せない実績を無理に出すのではなく、出せる範囲で仕事の過程・人・判断・こだわりを見せることが大切です。
少人数の専門工事会社には、大きな会社にはない距離の近さがあります。社長や後継者の考えが近く、仕事の全体像が見えやすく、素材や納まりへのこだわりを直接学べる環境があります。
その魅力は、きれいな完成写真よりも、社員の言葉や日々の仕事の切り取り方で伝わることがあります。
「写真が出せないから採用サイトは作れない」ではなく、写真が出せないからこそ、自社の中に眠っている言葉と場面を掘り起こす。そこから始めると、採用サイトやSNSの見せ方は大きく変わります。
採用サイトで何を見せるべきか迷ったときの整理先
施工実績を出せない会社ほど、採用サイトづくりの前に「自社の何を魅力として伝えるのか」を整理することが大切です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、組織づくり、現場体制、原価管理、デジタル活用まで、建設業の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。
「うちの場合、写真が出せない中で何を見せればいいのか」「採用サイトとSNSをどうつなげればいいのか」「社長以外の魅力をどう言葉にすればいいのか」といった段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況の整理先としてご相談ください。






























