首都圏西部の専門工事会社が、6月中旬に10校前後の高校訪問を組もうとしていた状況
首都圏西部で木造建築まわりの専門工事を手がける、30名弱規模の会社の採用活動です。これまでも高校求人は出していましたが、訪問した学校は限られており、実際に回ったのは工業系の一部高校だけでした。
一方で、会社側には新しい動きもありました。18歳の新入社員が入社し、社内には若い親方や30〜40代の職人もいる。さらに、会社の建物内に若手向けの住まいを整えようとしており、「高校生にとって安心できる材料」は少しずつ揃ってきていました。
ただ、採用活動としてはまだ整理途中です。会社案内は昔のものしかなく、訪問先リストもこれから絞り込む段階でした。社長からは「どの学校を回るべきか」「どんな格好で行けばよいのか」「若い社員を連れて行ってよいのか」といった、実務に近い悩みが出ていました。
高校訪問は、求人票を持って学校を回れば自然に応募が来る、というものではありません。特に中小の建設会社の場合、先生に会社名を覚えてもらい、安心して生徒に紹介してもらうまでには、訪問先の選び方と伝える内容の設計が必要になります。
工業高校だけを回っても、先生の記憶に残る採用活動にはなりにくい
高校訪問でよく起きるのは、「工業高校を回ったが反応がない」「求人票は出しているが応募につながらない」という状態です。
この会社でも、最初は工業系の高校が候補の中心でした。もちろん、建設系学科がある高校は重要です。ただし、建設会社を志望する生徒は、工業高校だけにいるわけではありません。
実際には、普通科や総合学科の高校にも、進学より就職を考えている生徒、体を動かす仕事に向いている生徒、地元で働きたい生徒がいます。先生も、そうした生徒の進路先を探しています。
そのため、高校訪問では「工業高校かどうか」よりも「就職者数が多いか」「建設系への進路があるか」「自社との接点があるか」を見る必要があります。
今回の会社でも、候補校リストを見ながら、次のような観点で優先順位を付けていきました。
- 就職者数が一定数いる高校
- 建設・ものづくり系に進む生徒がいる高校
- 若手社員やOBの出身校
- 部活動などで先生との接点をつくりやすい高校
- 地元就職や体を動かす仕事との相性がありそうな高校
会長からは「西側のエリアのほうが可能性がありそうだ」「小金井や久留米方面も見てみたい」という話が出ていました。ここで大事なのは、最初から正解の学校だけを当てにいくのではなく、20校前後を候補にして、訪問しながら濃淡を見極めることです。
高校訪問は一度で結果が出る活動ではありません。まず先生に会い、学校ごとの空気を知り、「ここは来年も行くべき」「ここは優先度を下げてよい」と判断できる状態をつくることが、最初の成果になります。
先生が見ているのは会社説明ではなく、卒業生を預けても大丈夫かという安心材料
高校訪問でやってしまいがちなのが、会社の歴史や施工実績を一方的に説明して終わることです。もちろん会社の信頼性は大事です。ただ、高校の先生が知りたいのは、そこだけではありません。
先生が本当に見ているのは、「この会社に生徒を送り出して大丈夫か」です。
たとえば今回の会社には、先生に伝えるべき材料がいくつもありました。
まず、今年入社した18歳の社員がいます。これは非常に大きい材料です。若手OBが元気に働いている姿は、どんなパンフレットよりも先生に伝わります。
実際に、担当者からは「今年入った子は、できれば母校に連れて行きたい」という話がありました。社長は現場の都合を気にしていましたが、会長は「彼は社交性があるので、1日一緒に回ってもらったほうがいい」と前向きでした。
この判断はとても重要です。若手社員が同行すると、先生との会話は一気に具体的になります。
「入社してまだ数か月ですが、現場で元気に頑張っています」
「若い親方のもとで、少しずつ仕事を覚えています」
「住まいの面も会社で支援できるように準備しています」
こうした話は、会社側だけが話すよりも、卒業生本人がそこにいるだけで説得力が変わります。先生にとっては、目の前の卒業生が会社の教育力そのものの証拠になるからです。
また、住まいの支援も大きな安心材料です。今回の会社では、会社建物の一部にワンルーム型の住まいを用意しようとしていました。キッチンやトイレなど最低限の生活設備があり、周辺相場より負担を抑えられる可能性もあります。
高校生本人だけでなく、保護者にとっても「住む場所がある」「生活面を見てもらえる」という情報は大きな意味を持ちます。求人票や訪問資料には、条件が固まり次第、住まい・教育・若手の定着事例をきちんと載せるべきです。
さらに、服装や資料の印象も軽く見られません。今回の話では、社長は「ワイシャツ、ネクタイ、上に会社のジャンパー」という形を想定していました。これは建設会社らしさと礼儀の両方が伝わる、よい落としどころです。
高校訪問では、全員がスーツで固める必要はありません。むしろ、会社名入りの作業着やジャンパーを清潔に着て、名刺と求人票を持って訪問するほうが、現場の会社らしさが伝わります。若手社員も、汚れた作業着ではなく、学校に行って恥ずかしくない整った服装で十分です。
訪問先リスト、若手同行、先生向け資料をそろえてから学校を回る
高校訪問で成果を出すには、気合いだけで回るのではなく、準備の順番を決めることが大切です。
まず取り組みたいのは、訪問先リストの整理です。工業高校だけに絞らず、就職者数や建設系進路の有無を見ながら、優先順位を付けます。そこに、自社の若手社員の出身校、部活動のつながり、過去に採用できた学校、地域の評判などを重ねていきます。
判断軸は、次のように置くと整理しやすくなります。
- 今年必ず行く学校:若手社員の母校、過去接点がある学校
- 優先して行く学校:就職者数が多く、建設・ものづくり系と相性がよい学校
- 試しに行く学校:普通科・総合学科でも就職者が一定数いる学校
- 来年以降に回す学校:進学中心で、建設系就職との接点が薄い学校
次に、アポイントの取り方です。すべての学校で事前アポが取れるとは限りません。6月の段階では、飛び込みに近い訪問になることもあります。ただし、若手社員の母校だけは事前に電話を入れるべきです。
「御校の卒業生が今年入社し、元気に働いています。本人も一緒にご挨拶に伺いたいのですが、進路ご担当の先生はいらっしゃいますか」
この一言があるだけで、学校側の受け止め方は変わります。先生にとっても、卒業生の近況は関心の高い話題です。会社説明ではなく、卒業生の報告として入ることで、面談の空気が柔らかくなります。
訪問当日に持参する資料も、先生向けに絞る必要があります。立派なパンフレットがなくても、最低限、以下は用意したいところです。
- 高卒求人票のコピー
- 仕事内容がわかる簡単な資料
- 若手社員の育成の流れ
- 住まいの支援や休日、給与などの条件
- 会社の写真、現場写真、作業風景の写真や動画
今回の会社では、社内の住居整備や組み立て作業の動画を撮っていました。こうした素材は、先生に会社の雰囲気を伝える材料になります。高校生向けには、文章だけよりも、実際の職場や住まいが見える写真・動画のほうが伝わりやすいです。
訪問時に話す内容は、会社紹介を短くし、先生が生徒に紹介しやすい情報を中心にします。
たとえば、次のような順番です。
- 今年から高卒採用を強めていること
- 若手が実際に入社し、育成を始めていること
- 若い親方や先輩が教える体制があること
- 住まいの支援を整えていること
- 大工だけでなく、本人の成長に応じて複数の仕事を経験できること
大切なのは、先生に「この会社なら、あの生徒に合うかもしれない」と思ってもらうことです。そのためには、抽象的な理念よりも、若手がどう育っているかの実例を伝えるほうが効果的です。
また、訪問後の記録も欠かせません。学校ごとに、会えた先生、反応、就職希望者の傾向、来年も行くべきかをメモしておきます。高校訪問は、今年の応募だけでなく、来年以降の関係づくりでもあります。訪問後に整理しておくことで、次回の訪問が「はじめまして」ではなくなります。
まとめ
高校訪問は、工業高校を何校か回れば終わりという活動ではありません。中小の建設会社ほど、先生に会社名を覚えてもらい、「この会社なら生徒を預けられる」と感じてもらう必要があります。
そのためには、訪問先を感覚で選ばず、就職者数、建設系への進路、OBの有無、若手社員の出身校を見ながら優先順位を付けることが大切です。
そして訪問時には、会社の説明よりも、若手が育っている実例、住まいの支援、教育体制を伝えることです。特に、入社1〜3年目の若手OBが同行できる場合は、先生にとって非常に強い安心材料になります。
服装は、清潔感のある会社ジャンパーや作業着でも問題ありません。むしろ、現場の会社らしさが伝わります。資料は完璧でなくても、求人票、育成の流れ、住まいの情報、写真や動画をそろえるだけで、先生が生徒に説明しやすくなります。
高校訪問の目的は、求人票を置いてくることではなく、先生の頭の中に会社の居場所をつくることです。その積み重ねが、数か月後、あるいは翌年の紹介につながっていきます。
高校訪問の前に、訪問先と伝える材料を一度整理してみる
「どの学校から回ればよいかわからない」「若手社員を同行させてよいのか迷う」「先生に何を話せばよいのか整理できていない」という段階でも、採用活動は十分に見直せます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題を、求人票づくり、高校訪問、若手育成、住まいの支援、組織づくりまで横断して整理し、実行まで伴走しています。
高校訪問で大切なのは、派手な採用広報よりも、自社にある安心材料を先生に伝わる形に整えることです。うちの場合はどの学校を優先すべきか、何を資料にすべきか、若手をどう活かすべきかを整理したい場合は、次の一手を一緒に考えることができます。
無理な営業はいたしませんので、「まず何から整えるべきか」という段階でも大丈夫です。必要に応じて、お問い合わせはこちらからご相談ください。
































