首都圏の専門工事会社が高卒初任給22万円・休日110日・社内寮を求人票に載せようとしている状況
首都圏で住宅まわりの専門工事を手がける、20名弱規模の建設会社での話です。これまで高卒採用に取り組んできたものの、求人票を出せば自然に応募が来る状況ではなくなり、改めて条件や見せ方を整理する必要が出ていました。
社内で話し合った結果、高卒初任給は前年の21万5,000円から、今年は基本給22万円で出す方向になりました。年間休日も、従来の105日から、有給取得の考え方も含めて110日を目安に見せる方向です。
さらに、会社の2階にはワンルームの住居スペースがあり、キッチンやトイレも備えています。都心部に近いエリアでは、若い社員にとって住まいの負担は大きいため、この寮・住居支援を求人票や学校向け資料にどう載せるかも論点になっていました。
「寮の設備を整えているので、それは大きいんじゃないかと思うんです」
この言葉の通り、給与だけではなく、入社後の生活が成り立つかまで含めて求人票で伝えることが、高卒採用では重要になっています。
給与を上げても求人票の中で育つ姿と生活の安心が伝わらない課題
高卒採用で難しいのは、給与水準だけを整えても、先生や保護者、生徒本人に「この会社なら紹介しても大丈夫そうだ」と思ってもらえるとは限らない点です。
特に建設業の場合、高校側から見ると、どうしても次のような不安が残りやすくなります。
- 入社後に誰が教えるのか
- 見習い期間に何を覚えるのか
- 休日や住まいは無理のない条件か
- 途中で辞めずに続けられる環境か
- 大工だけなのか、ほかの技能も身につくのか
今回の会社でも、初任給22万円という条件は決して弱くありません。ただ、求人票に「大工見習い」「建設作業」だけのように書いてしまうと、仕事の中身や育成の道筋が見えにくくなります。
高校生本人にとっても、「一生大工一本でいく」と決め切っている子ばかりではありません。むしろ、最初は現場に興味がありつつも、入社後に複数の仕事を経験しながら自分の向き不向きを見たい子もいます。
そのため求人票では、条件の良し悪し以前に、入社後の具体像が見えるかが大きな分かれ目になります。
先生や保護者は初任給だけでなく休日・住居・教える人まで見ている
高卒採用では、生徒本人だけでなく、高校の先生や保護者が大きな影響を持ちます。先生が安心して紹介できるか、保護者が納得できるか。その視点で求人票を見直すと、単なる募集要項では足りないことが見えてきます。
今回の会社では、待遇面でいくつか大事な確認がありました。
まず給与です。高卒初任給を22万円にする場合、それが基本給なのか、手当込みなのかを明確にする必要があります。求人票では、この違いが意外と見られます。基本給22万円であれば、安定した条件として伝えやすくなります。
次に休日です。年間休日105日と110日では、数字としては5日の差ですが、先生や保護者から見ると印象が変わります。ただし、110日と書くなら、会社カレンダー上の休日なのか、有給取得推奨分を含めた見せ方なのかを整理しておく必要があります。曖昧なまま書くと、入社後の認識ズレにつながります。
住居支援も同じです。会社の2階にワンルームがあり、キッチン・トイレ付きという条件は、高校生にとってかなり現実的な安心材料になります。ただし、求人票に載せるには、月額負担、光熱費、入居条件、家具家電の有無など、最低限の条件を決めておく必要があります。
そして、最も重要なのが育成です。
この会社では、30代・40代の比較的若い親方が複数いて、現場で若手を教えられる可能性がありました。一方で、受け入れ側が社員だけでなく外部の親方になるため、会社として育成方針を持たないまま現場任せにすると、教え方にばらつきが出ます。
「若い親方に、いろいろと精力的に指導してもらえるんじゃないか」
この期待を求人票に活かすには、単に「先輩が丁寧に教えます」と書くだけでは足りません。誰が、何を、どの順番で教えるのかを、会社側で言葉にしておくことが必要です。
求人票は待遇表ではなく入社後3年間の育ち方を伝える設計図として整える
高卒採用の求人票を見直すときは、まず条件をきれいに並べるより、先生・保護者・本人が知りたい順番で整理すると進めやすくなります。
第一に、給与は高卒だけで完結させず、専門学校卒・大学卒・中途採用とのつながりも見ておくことです。高卒22万円を決めたら、20歳の専門卒をいくらにするのか、22歳の大卒をいくらにするのかを考える必要があります。
ここを決めずに高卒だけ上げると、後から既存社員や中途採用とのバランスに悩みやすくなります。求人票上は高卒採用の話でも、裏側では会社全体の給与テーブルとの整合性を見ておくと安心です。
第二に、休日は「日数」と「運用」をセットで書ける状態にします。たとえば年間休日110日とするなら、会社カレンダー、繁忙期の対応、代休や有給取得の考え方まで整理します。高校生向けには細かく書きすぎる必要はありませんが、先生から質問されたときに答えられる状態にしておくことが大切です。
第三に、寮・住居支援は強い訴求材料として扱います。特に首都圏では、家賃負担が就職先選びに直結します。
求人票や学校向け資料では、次のような項目を整理しておくと伝わりやすくなります。
- 会社からの距離、通勤のしやすさ
- 部屋の形態、ワンルームか共同か
- キッチン、トイレ、浴室などの設備
- 月額負担額
- 光熱費や共益費の扱い
- 入居可能期間
- 家具家電の有無
「会社の2階に住めます」だけでは、よい条件なのか判断しにくいものです。月いくらで、どんな生活ができるのかまで見えると、先生や保護者にとって紹介しやすくなります。
第四に、育成カリキュラムを求人票の言葉に落とします。
建設業の育成は、現場で見て覚える部分が多いのは事実です。ただ、高卒採用では「見て覚えろ」だけでは不安が残ります。今回の会社でも、親方の業務を分解し、通常4年かかるような内容を、1年目・2年目でどこまで覚えるか整理していく必要がありました。
たとえば、求人票や資料では次のように表現できます。
- 1年目は道具の名前、安全管理、材料運び、現場の段取りを覚える
- 2年目は先輩の補助をしながら、簡単な施工や墨出し、加工を経験する
- 3年目以降は本人の適性を見て、大工技能を深める道と複数技能を広げる道を選ぶ
大切なのは、完璧な教育制度を最初から作ることではありません。入社後に何を学べるかを、求人票に書ける粒度まで言語化することです。
第五に、職種を分けて出すことです。
今回の会社では、高卒求人を「大工専任」と「複数技能を身につける職種」の2種類に分ける方向になりました。これはかなり実務的な判断です。
大工になりたい子には、大工としての道筋を見せる。一方で、大工を入口にしながら、型枠、タイル、現場補助など複数の仕事を経験したい子には、幅のある職種として見せる。こうすることで、求人票の受け皿が広がります。
「大工だけで終わらず、いろんな複数の職務を経験した上で、より高いレベルに行く形を提案したらどうか」
この考え方は、今の高校生には合いやすいです。最初から職人としての将来像を決め切れない子にも、まず現場に入り、成長しながら進路を選べる会社として伝えられるからです。
まとめ
高卒採用の求人票は、給与額を上げれば終わりではありません。もちろん初任給は重要です。今回のように基本給22万円へ整えることは、大きな一歩です。
ただ、それと同じくらい、年間休日、住居支援、育成体制、職種の見せ方が見られています。特に建設業では、先生や保護者が「この会社なら若い子を任せられそうだ」と感じられる材料を、求人票の中に入れておく必要があります。
整理すべきポイントは、次の5つです。
- 給与は基本給・手当・学歴別の差を整理する
- 休日は日数だけでなく運用まで説明できるようにする
- 寮や住居支援は月額条件と生活イメージまで見せる
- 育成は誰が何を教えるかを1年目から言語化する
- 職種は大工専任と複数技能型に分けて、入口を広げる
求人票は、単なる条件表ではありません。高校生にとっては、社会人としての最初の数年を預ける会社を選ぶ資料です。先生や保護者にとっては、紹介してよい会社かを判断する資料です。
だからこそ、待遇を整えるだけでなく、入社後にどう育ち、どんな生活ができ、どんな将来を選べるのかまで見える形にしておくことが大切です。
高卒採用の求人票を自社の条件に合わせて整理したいときは
高卒採用は、求人票の書き方だけでなく、給与設計、休日の見せ方、寮・住居支援、育成カリキュラム、職種設計までつながっています。どこから整えるべきか迷う場合は、まず今ある条件を棚卸しして、先生や保護者に伝わる形へ翻訳するところから始めるのが現実的です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。高卒採用についても、「うちの場合は求人票をどう直すべきか」「大工募集と複数技能型を分けるべきか」といった段階から一緒に整理できます。
無理な営業はいたしませんので、まだ方向性が固まっていない段階でも、必要な論点を確認する場としてご活用ください。
































