前提

東海地方の30名弱の左官会社でも、4月入社の若手が夏前に全員辞める現実

東海地方で大手ゼネコンの協力会社として左官工事を担う、30名弱規模の専門工事会社の話です。年商は十億円弱あり、地域の中ではしっかり仕事を受けている会社です。それでも、若手の定着には強い悩みを抱えていました。

左官は、建設業の中でも高齢化が進んでいる職種の一つです。壁や天井、下地、仕上げに関わる仕事は、外から見える部分だけではありません。内装のように目に見えやすい左官もあれば、大手ゼネコンの現場で求められる、表に出にくいけれど品質を左右する左官もあります。

その会社の二代目にあたる50代前後の社長は、こんな趣旨のことを話していました。

「左官は昔から、見て覚える仕事でした。一通りできるようになるまで、だいたい5年はかかります。でも、今の若い人に同じやり方を求めても続かないんです」

実際、別の会社では、4月に3人の若手が入社したものの、現場で怒られたことをきっかけに、夏前には全員いなくなっていたそうです。

ここで見えてくるのは、若手の根性や適性だけの問題ではありません。熟練に時間がかかる職種ほど、従来の「背中を見て覚えろ」という育成方法が、今の若手の定着を難しくしている可能性があります。

もちろん、職人仕事には、言葉にしにくい感覚があります。鏝の角度、材料の締まり具合、仕上がりの空気感、段取りの読み方。すべてをマニュアル化できるわけではありません。

ただ、すべてを言葉にできないからといって、何も言葉にしないままでよいわけでもありません。「技術は時間をかけて身につけるもの」と「新人が何をすればよいかわからないまま置かれること」は、分けて考える必要があります。

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  • 7月12日配管工事会社京都府
  • 7月12日ビルメンテナンス佐賀県
  • 7月12日リフォーム会社茨城県
  • 7月11日総合建築福島県
  • 7月11日総合土木大阪府
  • 7月11日造園会社愛知県
  • 7月11日外構工事会社茨城県
  • 7月10日電気設備工事会社京都府
  • 7月8日総合土木愛知県
  • 7月8日工務店山形県
  • 7月8日外構工事会社群馬県
  • 7月6日工務店兵庫県
  • 7月6日電気設備工事会社神奈川県
  • 7月6日防水工事会社東京都
  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
  • 7月5日プラント工事会社福島県
  • 7月5日リフォーム会社東京都
  • 7月5日総合土木福井県
  • 7月4日外構工事会社千葉県
  • 7月2日防水工事会社茨城県
  • 6月30日ビルメンテナンス北海道
  • 6月30日ビルメンテナンス福岡県
  • 6月29日総合建築千葉県
  • 6月29日総合建築東京都
  • 6月28日配管工事会社富山県
  • 6月27日リフォーム会社山口県
  • 6月27日内装工事会社大阪府
  • 6月26日塗装工事会社秋田県
  • 6月26日配管工事会社三重県
  • 6月26日工務店宮崎県
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課題

若手が辞める本当の理由は、叱られたこと自体ではなく成長の道筋が見えないこと

若手が現場を離れるきっかけは、「怒られた」「きついことを言われた」という出来事として表に出やすいです。ただ、その奥には、もう少し構造的な問題があります。

左官のように一人前まで5年かかる仕事では、新人から見るとゴールが遠く見えます。今日やっている掃除、材料運び、養生、片付け、先輩の補助が、5年後の技術にどうつながるのかが見えにくいのです。

そこで叱責だけが強く残ると、若手はこう感じやすくなります。

  • 何ができていないのかがわからない
  • 何を直せばよいのかがわからない
  • いつになったら任されるのかがわからない
  • 自分はこの仕事に向いていないのではないかと思う

現場の先輩からすれば、「最初はみんなそうだった」「自分も怒られながら覚えた」という感覚があるかもしれません。実際、そのやり方で育ってきた世代が、今の会社を支えているのも事実です。

ただ、今の若手にとっては、怒られることそのものよりも、怒られた先に何をすれば成長できるのかが見えないことが離職につながりやすくなっています。

ある社長の言葉にあった「俺は背中を見て学べ、しかやってこなかった。でも今の人にそれはできない」という感覚は、多くの専門工事会社に共通する実感ではないでしょうか。

ここで大事なのは、若手に甘くすることではありません。厳しさをなくすのではなく、厳しさの中身を“伝わる形”に変えることです。

たとえば、仕上がりの基準を曖昧にしたまま「違う」と言われ続けるのと、「今日は鏝の当て方だけ見よう」「この範囲を時間内にきれいに均そう」と具体的に言われるのでは、受け止め方が変わります。

同じ注意でも、「なんでできないんだ」ではなく、「ここは材料が締まる前にもう一回押さえる。次はそこだけ意識してみよう」と言われれば、若手は次の行動に移れます。

若手定着の入口は、待遇や採用広報だけではなく、現場での“教わり方の設計”にあります。

背景

一人前まで5年かかる職種ほど、背中を見て覚える文化が限界に近づいている

左官に限らず、建設業の技能職は、習得までに時間がかかります。特に、仕上がりの良し悪しが感覚に依存する職種ほど、ベテランの経験値がものを言います。

だからこそ、これまでは「見て覚える」「現場で盗む」「やりながら覚える」という育成が成立してきました。新人も長く現場に残る前提があり、多少わからない時間が続いても、数年かけて仕事を覚えていく流れがありました。

しかし今は、その前提が変わっています。

若手の人数が減り、職種によってはそもそも入職者が少なくなっています。さらに、若手が「この会社で続ければ成長できそうだ」と感じるまでの時間も短くなっています。数年後にわかる価値よりも、入社から数週間、数か月の体験が定着を左右しやすくなっています。

左官会社の社長が感じていた危機感は、単に「若者が弱くなった」という話ではありません。

昔は、長く残る人が多かったから、見て覚える育成でも結果的に人が育ちました。今は、育つ前に辞めてしまうため、同じやり方では会社に技術が残りにくくなっています。

もう一つ見逃せないのは、現場全体のコミュニケーションの変化です。

大手ゼネコンの現場でも、若い監督が増え、職人に声をかけることをためらう場面があるという話が出ていました。危ない行動を見ても、ひと声かけられない。話しかけるのが怖い。そうした空気は、監督と職人の間だけでなく、職長と若手、先輩と新人の間にも起こり得ます。

一方で、現場で働く人は、声をかけられるとうれしいものです。

「ロボットがやっているわけじゃないから、声をかけてもらえるとうれしいんだよね」

この言葉は、育成にもそのまま当てはまります。新人は、注意だけでなく、自分の行動を見てもらえている実感を求めています。

若手が続く現場には、技術を教える前に、“見ているよ”“ここは良かったよ”“次はここをやってみよう”という小さな声かけがあります。

叱責中心の現場文化では、できていないことは伝わります。しかし、できたことや前進したことは伝わりにくいです。その結果、若手は「毎日怒られている」「自分は役に立っていない」と感じやすくなります。

逆に、できた行動をその場で承認する文化があると、同じ厳しい現場でも受け止め方が変わります。

たとえば、

  • 朝の準備が昨日より早くできた
  • 材料の置き方が現場の動線に合っていた
  • 片付けのタイミングが良かった
  • 指示を受ける前に次の道具を用意できた
  • 先輩の作業を見る位置が良かった

こうした小さな行動は、ベテランから見ると当たり前に見えるかもしれません。しかし新人にとっては、仕事を覚える足場になります。

定着する若手を増やすには、技術そのものだけでなく、技術に近づく行動を現場で拾い上げることが重要です。

解決

作業を段階化し、職長と先輩の声かけを育成の仕組みにすること

若手定着を考えるうえで、最初に取り組みたいのは、育成を「人柄」や「相性」だけに任せないことです。

もちろん、面倒見のよい職長や、教えるのがうまい先輩は貴重です。ただ、その人に任せきりになると、現場や班によって新人の体験に差が出ます。忙しい現場では、どうしても「見て覚えて」「邪魔にならないように動いて」という状態に戻りやすくなります。

そのため、まずは仕事を細かく分けて、若手が今どの段階にいるのかを見えるようにすることが有効です。

たとえば左官であれば、いきなり「壁を塗れるようになる」では遠すぎます。最初の数か月で見るべき行動は、もっと手前にあります。

  • 現場のルールと安全行動を守れる
  • 道具の名前と置き場所がわかる
  • 材料の準備や片付けを任せられる
  • 先輩の作業を見る位置とタイミングがわかる
  • 簡単な補助作業を一定の手順でできる
  • 下地や材料の状態について質問できる
  • 小さな範囲で鏝を使う練習ができる

こうして分けると、若手は「自分は今どこにいるのか」がわかります。職長や先輩も、「何を教えればよいか」「何を見てあげればよいか」が見えやすくなります。

一人前まで5年かかる仕事ほど、5年後のゴールではなく、1週間後、1か月後、3か月後の到達点を決めることが大切です。

次に必要なのは、できた行動を現場で承認することです。

承認というと、大げさに褒めることを想像するかもしれません。しかし、現場で必要なのは、派手な表彰よりも、日々の短い声かけです。

「今日は準備が早かったね」

「その置き方なら次の人が取りやすいね」

「今の質問はいいね。そこに気づけると次がわかる」

「昨日より鏝の動きが安定してきたね」

こうした一言は、若手にとっては大きな情報です。自分の行動のどこが良かったのかがわかるからです。

注意も同じです。

「違う」だけではなく、「次はここを見る」「この順番でやる」「ここまでできたら次に進む」と伝えることで、若手は直し方を持ち帰れます。

若手に必要なのは、ただ褒められることではなく、次に何をすれば成長できるかがわかるフィードバックです。

進め方としては、いきなり全社的な教育制度を作り込むより、まず1つの班や1つの現場で小さく始めるのが現実的です。

おすすめは、次の順番です。

  1. 新人が最初の3か月で覚える作業を10〜15個に分ける
  2. それぞれの作業について「できた状態」を一文で決める
  3. 職長と先輩が、毎日1回は具体的な声かけをする
  4. 週に1回、本人に「できるようになったこと」「困っていること」を聞く
  5. 1か月ごとに、次に任せる作業を決める

ここで大事なのは、完璧な評価表を作ることではありません。新人が“放っておかれていない”と感じられる状態をつくることです。

左官のような熟練職では、結局のところ、最後は現場で手を動かすしかありません。動画や資料だけで一人前になることはありません。ただ、現場で手を動かす前に、何を見るのか、何を真似るのか、何ができたら次に進むのかを示すことはできます。

その意味で、昔ながらの「見て覚えろ」を完全に否定する必要はありません。

むしろ、これからはこう捉え直すのがよいと思います。

“見て覚えろ”を、“何を見るかを教えてから見せる”に変える。

これだけでも、若手の受け止め方は大きく変わります。

まとめ

左官などの技能職で若手が定着しない背景には、採用難だけではなく、育成方法の変化に追いつけていない問題があります。

一人前まで5年かかる仕事であるほど、若手は最初の数か月で「続けられそうか」を判断します。その時期に、ただ怒られる、何をすればよいかわからない、成長している実感がない状態が続くと、技術を覚える前に現場を離れてしまいます。

一方で、打ち手は特別なものばかりではありません。

作業を段階に分ける。できた行動を見つける。職長や先輩が短く声をかける。次に任せる仕事を明確にする。

この積み重ねが、若手にとっての「続けられる現場」をつくります。

昔ながらの育成には、良い部分もあります。現場で本物を見ること、先輩の動きを真似ること、手を動かしながら感覚をつかむことは、これからも変わらず大切です。

ただし、若手がそこにたどり着く前に辞めてしまうなら、入口の設計を変える必要があります。

若手職人の定着は、採用した後の数週間から始まっています。技術を教える前に、成長の道筋を見せることが、これからの専門工事会社にとって大きな差になります。

若手が続く育成の形を、自社の現場に合わせて整理する

若手の採用や定着は、会社ごとに事情が違います。職種、現場の規模、職長のタイプ、先輩職人の年齢構成、元請けとの関係によって、取り組みやすい形も変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。若手育成についても、「何から整えればよいかわからない」「職長にどう協力してもらうか悩んでいる」といった段階から、一緒に整理できます。

ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、まずは自社の現場で若手がつまずきやすい場面を見える化するところから始めても十分です。無理な営業はいたしませんので、うちの場合はどう考えるべきかという段階でも、必要に応じてご相談ください。

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