本社との協力合意はあるものの、取引先の各支店では紹介活動が進んでいない状態
ある専門工事会社では、規模の大きな取引先と協力関係を築き、その取引先が持つ顧客網から新たな案件を紹介してもらう営業活動を進めていました。
本社同士では方向性を共有できています。しかし、実際に顧客と接点を持つ各支店・営業所の活動量が上がりません。
「本社側も支店の動きが悪いことは認識している。でも、うまく動いてもらえない」という状態です。
候補企業のリスト自体はあります。既存取引先や重複企業を除き、優先度の高い企業も抽出していました。それでも、春先からリスト精査を続けた割に、紹介数やアポイント数は伸びませんでした。
対象企業は、すでに取引先の営業担当が訪問している上位層と、まだ十分に接点を持てていない約700社の層に分かれていました。特に後者については、誰が、どのように接触するのかが定まっていません。
本社間の合意と、支店の現場で実行できる営業フローは別物です。チャネルがあるだけでは、紹介は自然に増えません。
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「各支店で進めてください」だけでは、対象リストがあっても実行強度が上がらない状況
このケースの課題は、支店に協力意識がないことではありません。対象顧客、具体的な進め方、紹介に必要な道具、担当範囲が支店単位まで落ちていないことです。
候補リストには担当者情報がなく、取引先側で誰がどの企業を把握しているのかも整理されていませんでした。リストを渡された支店からすると、次のような疑問が残ります。
- 自分の支店では、どの企業を担当するのか
- 既存の関係先に何を確認すればよいのか
- どの部署・役職につないでもらえばよいのか
- 相手にはどのようにサービスを説明するのか
- 興味を示した後は誰に引き継ぐのか
現場から見れば、紹介活動は通常業務に追加される仕事です。手順が曖昧なまま「リストを確認して声をかけてください」と依頼されても、優先順位を上げにくいのは自然なことです。
「やってください、では今までと変わらない」という言葉が、この問題を端的に表しています。
動いてもらえない原因を意欲の問題にすると、依頼や催促が増えるだけです。まずは“動ける状態になっているか”を確認する必要があります。
対象顧客・紹介ツール・業務負荷・責任分界の4点が支店任せになっていた構造
活動が止まる背景は、主に4つに分けて整理できます。
1.支店ごとの対象顧客が明確になっていない
全社共通の候補リストがあっても、各支店にとっての対象企業が明確でなければ、営業活動にはつながりません。
今回も、元のリストから既存取引先や重複を除外するところまでは進んでいました。一方で、担当支店、接点の有無、過去の訪問状況、次のアクションまでは揃っていませんでした。
全社リストは営業の材料であり、支店別の行動リストになって初めて実務で使えます。
2.紹介しやすいコンテンツや会話の型が不足している
取引先の営業担当が、自社の商品やサービスを詳しく説明できるとは限りません。紹介先から質問されたときに答えられないと感じれば、声をかけるハードルは上がります。
必要なのは立派な提案書だけではありません。「どのような企業に、何を切り口に話すか」が短時間で分かる資料やトークです。
対話の中でも、「紹介しやすいコンテンツやツールを準備する必要がある」という整理がされていました。
紹介者に求めるのは受注までの説明ではなく、見込み顧客が次の会話に進むきっかけづくりです。
3.通常業務の中で紹介活動を進める負荷が見えていない
各支店の営業担当には、既存顧客への対応や本来の販売目標があります。その中で、担当者情報のないリストを調べ、接点を探し、説明内容まで考えるのは負荷が高い仕事です。
「どう確認すれば、たどり着きたい情報を取れるのか分からない」という状態では、リストがあっても手が止まります。
ここでは、担当者の姿勢を問うよりも、調査や資料作成をどこまで自社側で引き取れるかを考えた方が前に進みます。
4.紹介後を含めた責任分界が曖昧になっている
上位の見込み顧客には取引先の営業が訪問する一方、まだ接点のない約700社には誰も動かない。このような空白が生まれていました。
取引先が紹介する範囲と、自社が直接開拓する範囲が決まっていなければ、双方が「相手が動く領域」と考えてしまいます。
紹介チャネルが止まる大きな要因は、誰が紹介するかだけでなく、誰が調べ、誰が接触し、誰が追いかけるかが決まっていないことです。
本社合意を支店別の対象リストと実行フローに変え、短い単位で継続可否を判断する進め方
立て直しでは、取引先への催促から始めるのではなく、合意、対象、道具、実行管理の順番で営業チャネルを組み直すことが重要です。
1.本社・支店・自社で実態を揃える
最初に、自社と取引先本社だけで話を完結させず、実際に動く支店担当者を交えて現状を確認します。
確認したいのは、次のような項目です。
- 支店が現在持っている顧客情報
- すでに訪問・紹介した企業
- 接点はあるがアポイントに至っていない企業
- 支店では対応しにくい企業
- 紹介時に不足している資料や情報
- 自社から直接連絡してよい範囲
今回も、「実際に動く人と直接会い、リストや状況を把握した方が早い」という話が出ていました。
現場が動かない理由は、本社への確認だけでは見えません。実行担当者を含めて、止まっている工程を特定することが出発点です。
2.本社とは協力依頼ではなく、業務の境界まで合意する
本社との合意内容には、紹介への協力だけでなく、次の点まで含めます。
- 取引先が紹介する顧客層
- 自社が直接開拓する顧客層
- 顧客情報を共有できる範囲
- 支店から自社への引き継ぎ方法
- 紹介後の連絡と進捗報告の担当者
たとえば、すでに取引先が訪問している上位層は紹介を依頼し、未接触の層は本社の了承を得たうえで自社が開拓する、といった分担です。
「協力してもらう」ではなく、「どこまでを誰が担当するか」まで合意できると、実行段階の停滞が減ります。
3.全社リストを支店別の行動リストへ変える
リストは企業名を並べるだけでなく、少なくとも以下の情報を持たせます。
- 担当支店・担当者
- 既存取引の有無
- 過去の接触状況
- 想定する窓口
- 次に行うアクション
- 実施期限
- 実施結果と次回対応
優先度も、単なる企業規模だけでなく、「既存接点がある」「ニーズを確認しやすい」「紹介後に自社で追客できる」といった実行可能性で分けます。
上位層と未接触層を同じ方法で追う必要はありません。すでに関係がある企業には紹介依頼、接点がない企業には自社からの掘り起こしなど、層ごとに営業動線を変えます。
4.紹介者向けの最小限のツールを用意する
支店担当者には、次のような紹介セットを渡します。
- 対象企業の特徴をまとめた1枚資料
- 顧客に伝える短い紹介文
- 電話や訪問で使える会話例
- よくある質問への回答
- 興味があった場合の引き継ぎ方法
紹介担当者が詳しい説明をしなくても、「こういう課題があれば一度話してみませんか」と声をかけられる状態をつくります。
良い紹介ツールの基準は情報量の多さではなく、取引先の担当者が迷わず一言目を出せることです。
5.活動量と結果を分けて確認する
成果だけを見ていると、チャネルが悪いのか、単に実行されていないのかを判断できません。定期確認では、少なくとも以下を分けて追います。
- 対象企業数
- 接触した企業数
- 担当者と会話できた数
- 紹介につながった数
- 面談・見積もりにつながった数
- 次回対応が決まっている数
トークや対象企業の切り分けを変えながら、短い単位で一周ずつ検証します。うまくいった支店の進め方は、他支店へ横展開できます。
6.改善しても動かなければ、自社開拓への切り替えを判断する
チャネルは、すぐに「使えない」と判断する必要はありません。ただし、支店別リスト、紹介ツール、役割分担、進捗確認を整えても活動量が上がらない場合は、継続方法を見直します。
判断軸は次の4点です。
- 必要な接触件数が実行されているか
- 接触後の紹介率や面談化率に可能性があるか
- 管理・支援にかかる工数が見合っているか
- 同じ時間を自社開拓に使った場合より成果が期待できるか
紹介キャンペーンなどの施策を行う場合も、感覚で金額を決めるのではなく、1件の紹介や受注に使える費用を確認してから設計します。
支援しても実行されないチャネルは維持せず、本社の了承を得て自社から対象企業へ接触するなど、営業動線そのものを切り替える判断が必要です。
まとめ
販売代理店や取引先の支店が動かないとき、問題を「協力姿勢が足りない」と捉えるだけでは改善しにくいものです。
今回のように、候補リストがあり、本社も課題を認識しているのに紹介数が伸びない場合は、実行の設計に目を向けます。
立て直しの要点は、支店別の対象顧客を決め、紹介しやすいツールを用意し、通常業務の負荷を減らし、誰がどこまで担うかを明確にすることです。
そのうえで活動量と面談化を定期的に確認し、改善しても成果が見えなければ、自社開拓へ切り替えます。
本社との関係を大切にしながらも、現場任せにしない。営業チャネルを立て直すうえでは、この両立が欠かせません。
自社に合った営業チャネルの整理から始めたい方へ
「取引先とは話ができているのに、各支店で止まっている」「紹介と自社開拓の境界をどう決めるべきか分からない」という場合は、対象リストや役割分担を整理するところから始められます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大をはじめ、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断し、実行できる形に落とし込む支援を行っています。営業施策を増やすだけでなく、誰が、どの顧客に、どの手順で動くかまで一緒に整理します。
「うちの場合はどのチャネルを残すべきか」「何から確認すればよいか」という段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。
































