売上8,000万円台に対して数名で改修工事を担い、社長自身も現場に立つ電気工事会社
関西圏で電気工事を手がける、数名規模の会社があります。商業ビルや工場などの改修工事が中心で、大型の新築案件はあまり扱っていません。自社で受け切れそうな規模の現場を選び、売上の半分ほどは元請工事です。
社内には、管理と施工を兼ねる社員と、施工を中心に担う社員がいます。社長自身も職人として現場に出ながら、採用や労務整備などをほぼ一人で進めています。協力会社には案件ごとに声をかけている状態です。
現在の売上は8,000万円台。数年後には2億円台後半を目指せるだけの受注機会があります。過去のつながりをたどれば、大手企業から仕事を受けられる可能性もあります。
それでも、社長は売上を急いでいません。
「仕事を増やそうと思えば増やせます。でも、工事は人がつくるものです。大きい工事を一つ受けて、赤字になることもあります」
この会社の成長を止めているのは営業力ではなく、受注した仕事を安全に、利益を残して完了できる施工体制です。
1週間で 19件の相談 がありました
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仕事を先に増やすほど、大型案件の赤字と既存メンバーへの負荷が膨らむ構造
仕事がある会社ほど、「受注を増やせば売上も伸びる」と考えやすくなります。ただし、施工人員が足りない状態では、売上と利益は同じ方向に伸びません。
大型案件を受けると、現場に必要な人数だけでなく、工程調整、安全管理、品質確認、資材手配、発注者とのやり取りも増えます。社長が現場と管理業務を兼ねている会社では、一件の受注が社内全体の余力を大きく奪います。
さらに、新しく人を採用できたとしても、入社直後から既存社員と同じ施工量を任せられるとは限りません。同行や指導、確認に時間が必要です。受注を先行させると、その教育時間が確保できず、現場を回すために既存社員へ負荷が集中します。
協力会社についても同様です。案件が決まってから初めて人を探す形では、技量や仕事の進め方、人柄まで確認する余裕がありません。
人数だけを見て仕事を増やすのではなく、管理と教育まで含めた「実際に受け切れる力」で受注量を考える必要があります。
売上が増えるほど、材料費や外注費などの先行支出も大きくなります。利益が出る見込みの案件でも、入金までの資金が足りなければ経営は苦しくなります。売上を上げすぎると「なかなかしんどくなる場面が出てくる」という感覚は、施工だけでなく資金繰りにも通じています。
営業経験があっても、人と信頼関係がなければ工事会社は長く残せないという実感
この会社の社長は、もともと工事以外の営業や経営実務を担っていました。その後、仕事を一度手放し、現場会社を立ち上げて職人として一から経験を積んでいます。
営業はできても、職人がどう動き、どの仕事なら受けられるのかが分からなければ、工事は円滑に進みません。その問題意識が、自ら施工を学んだ出発点でした。
現在も、採用で優先しているのは資格や経験だけではありません。
「仕事ができても、会社の輪を乱していいわけではありません。建設業は一人でつくるものではないですから」
即戦力を一人入れるより、経験が浅くても社内の関係性を大切にできる人を迎えたい。協力会社や一人親方についても、技術だけでなく、信頼して一緒に現場へ入れるかを重視しています。
募集人数も大量ではありません。まず増やしたいのは二人ほどで、当面は一年以内に一人の定着を目指しています。一方で、採用しても続かない状態があり、求人媒体への掲載だけでは応募を集めにくい状況です。そのため、就業規則などを整え、若い人にも堂々と働く環境を説明できるようにしています。
短期間で売上をつくることより、十年先にも残る会社をつくること。その時間軸に立つと、受注より先に人と組織を整える判断が自然になります。
施工能力・教育余力・現場管理力・資金繰りから受注上限を決める段階的な成長
売上目標をなくす必要はありません。ただし、売上目標から必要案件数を逆算する前に、今の体制で守るべき受注上限を決めておくことが大切です。
確認したいのは、次の四つです。
- 施工能力:社員と確保済みの協力会社だけで、無理なく配置できる人数
- 教育余力:新人への同行や指導、施工後の確認に使える時間
- 現場管理力:工程、安全、品質、発注者対応まで責任を持てる管理者の数
- 資金繰り:材料費や外注費を先に支払っても、入金まで運転できる余力
受注上限は、営業機会ではなく、この四つのうち最も余力が少ない項目に合わせて決めます。
たとえば人員を配置できても、社長以外に現場を管理できる人がいなければ、管理力が上限になります。新人を採用しても教育する時間がなければ、採用人数をそのまま施工能力へ足すことはできません。
案件を受ける前には、少なくとも以下を確認します。
- 現場責任者を明確に置けるか
- 既存現場と工程が重なっても対応できるか
- 新人教育の時間を削らずに進められるか
- 信頼できる協力会社を事前に確保できているか
- 想定粗利と先行支出を確認できているか
どれかが曖昧なら、すぐに断る必要はありません。着工時期や工期、施工範囲を調整し、自社で責任を持てる形にできるかを検討します。
人材面では、大量採用よりも「一人を採り、一人を定着させる」体制づくりが先です。求人広告を増やす前に、どのような人と働きたいか、入社後に誰が教えるか、どこまで任せるかを決めます。就業規則などの整備も、採用後の認識違いを減らす土台になります。
協力会社も、受注後に探すのではなく、比較的小さな改修工事から一緒に入り、施工品質や連絡の取り方、現場での振る舞いを確認していくほうが安心です。
採用・育成・協力会社づくりを先行させ、受け切れる力が一段上がるたびに案件規模を広げる。この順番なら、売上と利益を一緒に伸ばしやすくなります。
まとめ
仕事があるのに受けられない状況は、もどかしく感じるものです。ただ、仕事があることと、利益を残して完工できることは別です。
特に数名規模で社長も現場に出る会社では、大型案件一件の影響が会社全体へ及びます。売上を急ぐほど、既存社員の負担、新人教育の停滞、協力会社の手配不足、資金繰りの負荷が重なりやすくなります。
売上は成長の出発点ではなく、施工体制を整えた結果として伸ばしていくものです。
まずは現在の施工能力、教育余力、現場管理力、資金繰りを見える形にします。そのうえで受注上限を定め、一人の採用と定着、信頼できる協力会社づくりを進めます。急拡大ではなくても、長く残る会社に近づく成長の仕方です。
自社に合った受注上限と人づくりの順番を整理するために
「うちの施工体制なら、どこまで仕事を受けてよいのか」「採用と協力会社づくりのどちらを先に進めるべきか」といった段階からでも、経営課題を整理できます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の人材確保、組織づくり、原価管理、現場体制などを横断して整理し、実行まで支援しています。何から手をつけるべきか決まっていなくても問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、状況を整理する場として気軽にお声がけください。

































