既存社員の給与を確保しながら、3年ほどかけた経営再建を見込む専門工事会社の現在地
ある専門工事会社では、将来の事業継続を見据えて採用を考えていました。一方で、既存の仕事を続けても利益がほとんど残らず、現在の従業員の給与を支払いながら会社を正常な状態へ戻すことが先決になっています。
経営者の言葉は率直でした。
「採用するには金銭的な余裕が必要ですが、今の会社にはその余裕がありません」
金融面に詳しい外部の支援者と契約し、資金面から立て直す方針は決まりつつあります。ただし、正常化には3年ほどかかる可能性も見込んでいます。
それでも将来の人材確保を諦めたわけではありません。採用ホームページには力を入れており、「興味を持った人に見てもらえれば、応募につながるかもしれない」という期待もあります。
ここで整理したいのは、採用するか、完全に何もしないかという二択ではありません。既存社員の給与確保に不安がある段階では積極採用を止めつつ、将来の応募を受け止める採用ホームページは維持する、という分け方ができます。
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人手が必要でも、新規採用による人件費を吸収できない状態
採用の難しさは、応募を集められるかどうかだけではありません。応募があり、実際に入社となれば、新たな人件費が毎月発生します。
既存社員の給与を何とか支払いながら経営を続けている会社では、採用できたこと自体が資金繰りをさらに厳しくする可能性があります。採用ホームページへの反応が出ても、安心して雇用できるとは限りません。
採用可否は「人が必要か」ではなく、「採用後も既存社員を含めた給与を継続して支払えるか」で判断する必要があります。
特に注意したいのは、新しく仕事を取れば人件費を賄えるだろう、という見込みだけで採用を先行させることです。受注が増えても、既存事業と同じように利益がほとんど残らなければ、資金繰りの改善にはつながりません。
一方で、採用を完全に忘れてしまうと、経営が落ち着いた後に受け皿を一から作り直すことになります。そのため、今は費用をかけて応募を増やす段階なのか、採用情報だけを残す段階なのかを切り分けることが大切です。
資金繰りが厳しい時期に止めるべきなのは、採用に関するすべての取り組みではなく、人件費の裏付けがないまま採用人数を増やす動きです。
採用の問題に見えて、実際には利益が残らない事業構造の問題
この会社では、採用以前に解決すべき課題がはっきりしていました。既存の仕事を続けても利益がほとんど残らず、資金面の見通しも立っていない状態です。
改善の方向として挙がっていたのは、次の3点でした。
- 新しい仕事を獲得する
- 既存事業の利益率を改善する
- 固定費を削減する
ただし、これらを同時に進めればよいわけではありません。新規受注が増えても利益率が低ければ、忙しさだけが増えることがあります。固定費を削減できても、既存事業から継続的に利益が残らなければ、採用後の給与を支える土台にはなりません。
経営者自身も、「的を絞った行動をしたいので、まずは金融関係、資金面を中心に動きたい」と考えていました。この優先順位は、採用を後回しにする消極策ではありません。採用した人を無理なく雇い続けるために、先に給与の原資を整える判断です。
採用は一度きりの支出ではなく、入社後も人件費を支払い続ける経営判断です。だからこそ、採用人数を考える前に、現在の仕事で利益が残っているか、固定費を含めた支出を賄えているか、新しい仕事の見通しがどこまで確かかを整理する必要があります。
財務改善を優先し、4つの基準を満たしてから採用を再開する進め方
今の段階では、積極的な採用活動よりも資金面の正常化を優先するのが現実的です。ただし、採用ホームページまで閉じる必要はありません。
「採用活動を強めること」と「将来の応募を受け止める場所を残すこと」を分けて考えると、資金繰りと人材確保を両立しやすくなります。
当面は、採用ホームページを維持しながら、経営の立て直しに経営資源を集中させます。応募があった場合も、応募が来たことだけを理由に採用を決めず、次の4つの基準から判断します。
1.資金繰り
既存社員の給与を支払ったうえで、新しい人件費を継続的に負担できるかを確認します。一時的に手元資金があるかではなく、採用後も給与の支払いを続けられる見通しがあるかが判断軸です。
既存社員の給与確保に不安が残る間は、原則として採用を先行させないことが安全です。
2.既存事業の利益率
売上や受注件数ではなく、既存の仕事から利益が残っているかを見ます。採用によって施工量を増やしても、利益率が改善していなければ、人件費を吸収しにくい状態は変わりません。
まずは、現在の仕事を続けた結果として会社に利益が残る状態を目指します。新規受注についても、仕事量だけでなく、採用後の給与を支えられる利益が見込めるかで判断します。
採用再開の前提は、仕事があることではなく、その仕事から人件費を支えられる利益が残ることです。
3.固定費
固定費を削減できる余地がある場合は、採用前に整理します。新しい人件費を加えても支出全体が無理のない範囲に収まるかを確認するためです。
大切なのは、固定費削減だけで採用原資をつくろうとするのではなく、利益率の改善とあわせて見ることです。固定費を抑えても利益が残らない状態では、採用を継続的に支えることは難しくなります。
4.受注見通し
新しい仕事を獲得できそうだという期待だけではなく、採用後に任せる仕事が継続する見通しまで確認します。採用直後の一件だけを前提にせず、その後も人件費を負担できる受注が見えているかを整理します。
不確かな将来受注を前提に採用するのではなく、資金繰りと利益の裏付けができてから動くことが重要です。
この4項目は、感覚だけで判断せず、定期的に同じ順番で確認すると整理しやすくなります。
- 既存社員の給与を安定して支払えているか
- 既存の仕事から利益が残っているか
- 固定費を含めた支出を賄えているか
- 採用後の仕事と売上の見通しが立っているか
4項目を満たせる状態が見えてきたら、採用活動を再開するタイミングです。逆に、いずれかに大きな不安が残る場合は、採用ホームページを受け皿として維持しつつ、財務改善を優先します。
まとめ
資金繰りが厳しい建設会社では、将来の人手不足を心配して採用を急ぎたくなることがあります。しかし、既存社員の給与確保にも不安がある状態で採用を先行させると、新たな人件費が経営再建の負担になりかねません。
今は積極採用を止め、資金繰り、既存事業の利益率、固定費、受注見通しの4点を整えることが優先です。
一方で、採用ホームページのように、将来の応募を受け止める場所までなくす必要はありません。費用をかけて応募数を増やす活動は控えながら、会社や仕事に関心を持った人が情報を確認できる状態は残しておけます。
採用を止めるか続けるかではなく、「今は何を止め、何を残すか」を分けることが、再建中の現実的な採用判断です。
採用再開は、時期だけで決めるものではありません。既存社員の給与を安定して支払い、仕事から利益が残り、固定費を賄い、採用後の受注見通しまで立った段階で判断します。この順番なら、経営再建と将来の人材確保を無理なくつなげられます。
採用を再開できる状態か、一度整理してみませんか
「財務改善をどこまで進めれば採用を再開できるのか」「採用ホームページは残してよいのか」など、自社だけでは線引きしにくいこともあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の資金面や原価管理、人材確保、組織づくりを横断して整理し、実行まで支援しています。まだ採用を始める段階ではなく、「うちの場合は何から整理すべきか」という状態でも問題ありません。
採用を勧めることを前提にせず、現在の経営状況に合わせて、財務改善と人材確保の優先順位を一緒に整理します。無理に契約やサービスを勧めることはありませんので、今後の進め方を考える一つの機会としてご活用ください。

































