前提

公共案件を増やすために、膨大な入札仕様書を読む負担の軽減が必要な弱電工事会社

首都圏を拠点に、防犯設備や弱電工事を手がけるある建設会社では、公共案件の獲得を増やそうとしていました。

入札情報は継続的に届きます。ただし、通知された案件が自社に合うとは限りません。公告を確認し、入札説明書を読み、必要に応じて仕様書を取り寄せます。そのうえで、必要機器や施工条件、入札資格を見ながら、参加するかどうかを判断します。

発注機関によって、書類の出し方も異なります。

「公告と説明書と仕様書が、一気に出るところもあれば、段階を踏むところもあります」

説明書には概要しかなく、参加の意思を示してから仕様書を受け取る案件もあります。一般競争入札だけでなく、見積依頼に近い情報が混ざることもあります。

案件情報を集めるだけでは、入札件数は増やせません。大量の書類から“自社が対応できる案件”を短時間で見つける仕組みが必要です。

そこで検討されていたのが、仕様書をクラウド上に蓄積し、生成AIに読み込ませる仕組みでした。必要機器や施工条件を抽出し、将来的には入札難易度まで整理したいという構想です。

1週間で 15件の相談 がありました

  • 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
  • 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
  • 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
  • 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
  • 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
  • 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
  • 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
  • 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
  • 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
  • 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
  • 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
  • 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
  • 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 8月29日総合建築宮崎県業務効率化システムの相談
  • 8月28日防水工事会社静岡県業務効率化システムの相談
  • 8月28日配管工事会社茨城県原価管理の相談
  • 8月28日塗装工事会社茨城県案件獲得の相談
  • 8月28日内装工事会社長野県協力会社探しの相談
  • 8月27日配管工事会社東京都人材確保の相談
  • 8月27日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月27日外構工事会社大阪府人材確保の相談
  • 8月27日外構工事会社熊本県業務効率化システムの相談
  • 8月26日総合建築神奈川県業務効率化システムの相談
  • 8月26日配管工事会社福岡県業務効率化システムの相談
  • 8月26日電気設備工事会社兵庫県案件獲得の相談
  • 8月24日総合建築京都府高卒採用の相談
  • 8月24日電気設備工事会社岐阜県人材育成の相談
  • 8月24日塗装工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月24日空調設備工事会社兵庫県利益率向上の相談
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課題

「防犯カメラ」では漏れ、「カメラ」では関係のない案件まで拾う検索の難しさ

最初にぶつかったのは、検索キーワードの問題でした。

「“防犯カメラ”で検索すると、見守りカメラは拾えないかもしれない。でも“カメラ”にすると、医療用やデジタルカメラまで出てきます」

公共案件では、同じ用途の機器でも呼び方が統一されていません。防犯カメラ、監視カメラ、見守りカメラなど、発注機関や仕様書によって表記が変わります。

一方で、「カメラ」という大きなくくりで探すと、施工領域の異なる案件まで大量に混ざります。通知件数を増やしても、関係のない案件を人が除外する作業が増えるだけです。

さらに、対応可否は品名だけでは決まりません。

  • 自社の入札資格区分で参加できるか
  • 公告、説明書、仕様書のどこまで公開されているか
  • 指定された機器を取り扱えるか
  • 設置場所や施工条件に対応できるか
  • 自社施工と協力会社を含めた体制を組めるか
  • 規模や参加企業を踏まえ、現実的に取りにいく案件か

こうした条件が、複数の書類にまたがって書かれています。

AI導入の本当の課題は、仕様書を短く要約することではありません。社内で行っている案件判断を、AIが参照できる形に変えることです。

背景

案件を見送る理由が社長の経験の中にあり、仕様書の呼称も統一されていない状態

この会社では、案件を見た経営者が「これは取りにいく」「今回はやめておこう」と判断していました。

金額帯や機器台数だけで機械的に決めているわけではありません。入札資格、発注機関、施工条件、必要機器、競争相手になりそうな企業などをまとめて見ています。

「やりながら、“これはやめておこう”というときに理由を言っていけば、判断基準を仕組みに落とせますよね」

ここに、自動化へ向けた重要な材料があります。

完成された判断基準を最初からつくろうとしても、現場では例外が出ます。それよりも、実際の案件を見ながら、参加・見送りの判断と理由を残すほうが現実的です。

もう一つの背景が、製品や機器の呼称の揺れです。仕様書上の名称と、自社で扱っている製品名や普段の呼び方が一致するとは限りません。

たとえば、仕様書に書かれた呼称が違っても、実際には自社の取扱製品で代替できる場合があります。逆に、名称は似ていても、求められる性能や用途が異なる場合もあります。

過去に対応した公共施設や交通インフラの案件、取扱製品、仕様書、採用した機器を結びつけられれば、AIは過去の判断を参照しやすくなります。

必要なのは、AIに仕様書だけを渡すことではなく、過去案件・取扱製品・判断理由を一緒に蓄積することです。

解決

クラウド上の対応表づくりから始め、要約・要件抽出・案件評価へ段階的に広げる進め方

最初から「受注確率を自動判定する仕組み」を目指す必要はありません。まずは、人が仕様書を読む時間を減らし、判断材料をそろえるところから始めます。

進め方は、情報基盤の整理、要約と要件抽出、案件評価、精度改善の4段階に分けると運用しやすくなります。

1.仕様書と社内情報を同じクラウド上で参照できるようにする

最初に、AIが参照する情報の置き場所を決めます。すでに利用しているクラウドストレージがあるなら、新しいツールを増やすより、そこを起点にしたほうが社内で定着しやすくなります。

整理する情報は、主に次の4種類です。

  • 公告、入札説明書、入札仕様書
  • 過去に参加した案件と落札結果
  • 自社の取扱製品、対応できる工事、施工体制
  • 参加・見送りの判断と、その理由

書類を保存するだけでなく、案件名、発注機関、公開日、書類の種類、判断結果を一覧にします。

AIの精度は、モデルの種類だけではなく、参照する社内情報が整理されているかどうかで大きく変わります。

2.呼称の揺れを吸収する対応表をつくる

次に、仕様書で使われる名称と、自社の製品・施工領域をつなぐ対応表をつくります。

たとえば、「防犯カメラ」を中心語にする場合でも、監視、見守り、映像監視など、同じ用途で使われる呼称を追加します。同時に、医療用や撮影用など、自社の対象外になる用途も記録します。

最初から完璧な辞書をつくる必要はありません。

「まず“カメラ”で広く拾って、何が出てくるかを見てもよいかもしれない」

この進め方であれば、実際に出てきた案件を見ながら、対象語と除外語を増やせます。仕様書上の呼称、自社内の呼称、対応する製品を一つずつ結びつけていきます。

検索漏れを防ぐ言葉と、不要案件を除外する言葉をセットで蓄積することが、案件評価の土台になります。

3.最初のAI活用は、要約と要件抽出に絞る

情報基盤ができたら、まずAIに次の項目を抽出させます。

  • 案件の概要
  • 必要な入札資格
  • 必要機器と数量
  • 機器に求められる性能
  • 設置場所と施工条件
  • 提出書類と期限
  • 仕様書だけでは判断できない点

この段階では、AIに参加可否を決めさせません。抽出結果と元の書類を人が確認します。

特に、公告、説明書、仕様書が別々に公開される案件では、情報が不足したまま評価される可能性があります。「現時点では仕様書未入手」と表示できるようにしておくことも大切です。

初期段階のAIには、結論を出させるより、判断に必要な情報を漏れなく並べさせるほうが向いています。

4.人の判断結果を蓄積し、対応可否と難易度の評価へ進める

要件抽出が安定したら、次に案件評価へ広げます。

評価項目は、自社が実際に確認している条件に合わせます。入札資格、取扱機器との適合、施工条件への対応、体制、過去の類似案件などです。

AIの出力は、たとえば次のように整理できます。

  • 対応可能性が高い
  • 条件確認後に判断
  • 現状では対応が難しい
  • 情報不足のため評価保留

そのうえで、最終判断は人が行います。AIの評価と人の判断が違った場合は、その理由を残します。

難易度や受注確率を出すのは、この履歴がたまってからです。参加案件、見送り案件、落札結果を蓄積すれば、「類似案件ではどの判断が多かったか」を参照できるようになります。

受注確率は最初からAIに推測させるのではなく、自社の評価結果と実績を蓄積した先で扱う指標です。

まとめ

膨大な入札仕様書をAIで読み解く仕組みは、AIツールを導入するだけでは完成しません。

最初に整理したいのは、仕様書の置き場所、製品や工事の呼称、過去案件、参加・見送りの判断理由です。そのうえで、要約、要件抽出、対応可否、難易度評価へと段階的に広げます。

最初から完全自動化を目指さなくても構いません。

人が確認できる要約から始め、判断結果をAIへ戻し続けることが、実務で使える案件評価につながります。

自社の入札判断を仕組みに変えるための整理から

入札業務の自動化を考えていても、「どの仕様書から整理すればよいか」「社長の判断基準をどう言語化すればよいか」で止まることがあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場や組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行を支援しています。入札仕様書の管理方法や案件評価の進め方など、まだ構想段階でも一緒に整理できます。

無理に導入や契約を勧めることはありません。「うちの場合は何から始めるべきか」を確認する場として、気軽にお声がけください。

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