売上の約8割を特定顧客の民間工事が占め、公共工事を次の柱に据える5名規模の会社
岐阜県を拠点とする、5名ほどの電気・土木工事会社があります。創業から数年で売上を伸ばし、現在は太陽光発電設備に伴う造成や基礎工事を元請けとして手がけています。
足元の案件は今後も見込める一方、売上の約8割が特定の電力関連企業に集中しています。そこで、特定顧客への依存を下げ、公共工事を新たな事業の柱にする準備を始めました。
すでに建設業許可を取得し、経営事項審査にも申請。市町村内だけでなく、国や省庁が発注する工事まで視野を広げ、案件情報や過去の入札データ、競合企業、施工を任せられる協力会社を調べています。
「まず入札して落札し、工事をきちんとこなしていく。その実績を積みながら、翌年の経審の点数やランクも上げていきたい」という考えです。
この会社の動きから見えるのは、公共工事への参入は、入札案件を探すだけでは進まず、資格・点数・積算・施工体制を一つの計画として整える必要があるということです。
1週間で 16件の相談 がありました
- 8月4日プラント工事会社埼玉県利益率向上の相談
- 8月4日防水工事会社京都府原価管理の相談
- 8月4日造園会社群馬県原価管理の相談
- 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
- 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
- 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
- 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
- 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
- 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
- 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
- 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
- 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
- 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
- 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
- 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
- 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
- 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
- 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
- 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
- 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
- 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
- 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
- 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
- 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
- 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
- 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
- 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
経審申請後も、入札参加資格から施工体制まで複数の準備が並行する参入初年度
公共工事への参入では、建設業許可や経審を終えれば、すぐ自由に入札できるとは限りません。発注機関ごとに入札参加資格の申請があり、希望する工種や営業区域、会社の格付けなどによって参加できる案件が変わります。
さらに、公告を見つけても、自社で施工できるか、予定価格や工期に対応できるか、必要な技術者を配置できるかを短時間で判断しなければなりません。この会社でも、次の準備が同時に進んでいました。
- 公告や仕様書を確認し、自社が参加できる案件を選ぶ
- 過去の落札結果や競合企業を調べる
- 積算方法や積算ソフトの導入を検討する
- 現場代理人や有資格者の配置を確認する
- 地域外でも施工できる協力会社を探す
- 翌年度の経審評点や格付けを見据える
社長自身に公共工事の経験があっても、現在の会社として入札から完成までを回す仕組みは、改めてつくらなければなりません。
初年度の課題は「1件落札すること」だけではなく、受注後に無理なく完工し、次年度の受注機会につながる実績を残すことにあります。
案件探索、積算、配置技術者、協力会社の確保が一本につながっていない状態
公共工事への参入準備が複雑に見えるのは、それぞれの手続きや業務が独立していないためです。
たとえば、狙いたい案件を見つけても、その工種について入札参加資格がなければ参加できません。資格があっても、格付けや地域要件によって対象外になる場合があります。参加できたとしても、積算の精度が低ければ、落札できないか、落札後に利益を確保しにくくなります。
また、受注後には現場代理人や主任技術者・監理技術者など、工事内容と契約条件に応じた配置体制が必要です。協力会社へ施工を依頼する場合も、元請けとして書類、工程、品質、安全を管理できる体制は欠かせません。
この会社は、自社の直営人員を増やす方法と、各地域の協力会社に施工を依頼する方法を並行して検討していました。ただし、全国の案件を対象にするほど、案件ごとの移動距離、配置人材、協力会社、管理負担の差が大きくなります。
そのため、単に「競争相手の少ない案件」を探すだけでは十分ではありません。参入できる案件と、利益を残して完工できる案件は別物です。
加えて、経審の総合評定値や発注機関ごとの評価・格付けは、翌年度以降に参加できる工事の範囲に関わります。会社としての完成工事高、技術職員、財務状況などは短期間で大きく変えにくいため、初年度から翌年度を見越した準備が必要です。
発注機関と工種を絞り、入札前・受注後・次年度の三段階で組む参入計画
公共工事への参入は、準備項目を順番に並べると進めやすくなります。大切なのは、全国の案件を広く探し始める前に、どの発注機関の、どの工種・規模の案件を狙うかを決めることです。
1.狙う発注機関と工事条件を先に決める
最初に、市町村、都道府県、国・省庁などの候補を挙げ、次の条件を一覧にします。
- 希望する工種
- 想定する工事規模
- 施工可能な地域
- 入札参加資格の申請時期と有効期間
- 格付けや参加要件
- 必要な技術者資格と配置条件
- 自社施工と協力会社施工の分担
発注機関によって申請時期や必要書類、資格の有効期間は異なります。まずは狙う先を絞り、各発注機関の最新要領を確認することが出発点です。
「取れそうな案件」から探すのではなく、「参加資格と施工体制を満たせる市場」を先に定めると、準備の抜け漏れを抑えられます。
2.許認可・経審・入札参加資格を一つの工程表にする
建設業許可、決算変更届、経営状況分析、経営事項審査、総合評定値通知、入札参加資格申請を、担当者と期限付きで工程表にします。
経審では、完成工事高、自己資本や利益額、経営状況、技術職員数、社会性など複数の項目が評価されます。点数だけを後から上げようとするのではなく、狙う工種の完成工事高や有資格者の配置を事業計画と結びつけて考える必要があります。
なお、格付けの方法や工事成績の扱いは発注機関ごとに異なります。経審の点数、発注機関独自の評価、工事実績を分けて確認することが重要です。
3.入札判断と積算の手順を標準化する
公告を見つけるたびに社長が一から判断していると、対象地域を広げた際に処理が追いつきません。案件ごとに、最低限確認する項目を固定します。
- 入札参加資格と格付けを満たすか
- 同種工事の実績要件を満たすか
- 現場代理人や技術者を配置できるか
- 工期中に既存案件と人員が重ならないか
- 協力会社と資機材を確保できるか
- 現地経費や管理費を含めて利益が残るか
- 過去の落札価格や参加企業に偏りがないか
積算ソフトやAIによる公告分析は、案件確認を効率化する手段になります。ただし、導入自体を目的にせず、どの確認作業を短縮したいのかを先に決めます。
積算で優先すべきなのは速さだけではなく、見落としを防ぎ、応札しない判断もできる状態をつくることです。
4.受注前に施工体制を案件単位で確認する
公共工事では、落札後に人を探し始めると調整が難しくなります。現場代理人、必要な資格を持つ技術者、協力会社について、候補者と対応可能地域を事前に整理します。
協力会社は、施工単価だけでなく、品質、安全管理、必要書類への対応、工程順守、対応地域を判断軸にします。自社が現場に常駐しない施工形態を想定する場合ほど、元請け側の管理方法まで決めておく必要があります。
この会社のように全国案件を視野に入れる場合でも、最初から全地域を対象にする必要はありません。配置人材と協力会社の体制が整った地域から入札範囲を広げるほうが、完工実績を安定して積み上げやすくなります。
5.初年度の受注を翌年度の点数と格付けにつなげる
参入初年度は、売上額だけで成果を判断しないほうが実態を捉えやすくなります。たとえば、次の項目を追います。
- 入札参加資格を取得した発注機関数
- 参加条件を満たした案件数
- 積算・応札した件数
- 落札件数と落札後の粗利
- 完工実績と工事成績
- 工種別の完成工事高
- 配置できる有資格者数
- 継続して依頼できる協力会社数
落札件数を増やすことだけに寄せると、管理負担の大きい工事や利益の薄い工事まで抱える可能性があります。初年度は、施工体制に合う案件を確実に完工し、その結果を翌年度の経審、格付け、入札計画へ反映させます。
公共工事への参入は単年度の営業施策ではなく、実績と評価を毎年積み上げて参加可能な案件を広げる事業づくりとして捉えると、判断がぶれにくくなります。
まとめ
民間工事中心の会社が公共工事へ参入する際は、許認可や経審だけで準備が完了するわけではありません。入札参加資格、格付け、案件探索、積算、現場代理人・技術者の配置、協力会社の確保までを連動させる必要があります。
整理する順番は次のとおりです。
- 狙う発注機関、工種、規模、地域を決める
- 許認可、経審、入札参加資格の工程表をつくる
- 入札判断と積算の確認項目を標準化する
- 配置人材と協力会社を案件前に確保する
- 完工実績を翌年度の点数・格付け・入札計画へつなげる
最初の落札をゴールにせず、「無理なく完工できる案件で実績をつくり、翌年度の選択肢を増やす」ところまで計画することが、公共工事を事業の柱に育てる第一歩です。
自社に合う公共工事の参入順序を整理したい方へ
公共工事への参入準備は、会社の許可業種、経審の点数、保有資格、施工地域、協力会社の状況によって変わります。「うちの場合はどの発注機関から狙うべきか」「何から整理すればよいか」という段階からでも問題ありません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、入札計画や施工体制づくりを含め、実行まで支援しています。状況を伺ったうえで必要な整理先をご案内し、無理に営業を進めることはありません。






























