数千万円規模の新築電気工事で、初めての案件にも踏み出したい会社の現在地
千葉県を拠点に、首都圏の病院、工場、オフィスビルなどの新築電気工事を手がける、ある専門工事会社があります。主な立ち位置は、電気設備会社から工事を請ける二次請けです。
建物用途の制限はほとんどありません。ただし、マンションは利益を出しにくいため極力避け、技術力を生かせるビルや工場を中心に受注してきました。
案件は数千万円規模になることもあります。そこで経営者から出たのが、こんな率直な言葉でした。
「今までやったことのない規模の案件が来たとき、いくらで見積もりを出せば受注できるのか、ものすごく悩むんです」
見積もり依頼は、本来なら仕事が広がる入口です。一方で、経験のない大型工事では、うれしさより先に手が止まることがあります。
「見積もり依頼が来ると、ちょっとうっとなるんです。でも、これを乗り越えないといけない」
大型案件を増やすには、案件を取ってくる力だけでなく、見積もりを組み立てて受注可否を判断する力も必要です。
1週間で 15件の相談 がありました
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
- 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
- 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
- 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
- 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 8月29日総合建築宮崎県業務効率化システムの相談
- 8月28日防水工事会社静岡県業務効率化システムの相談
- 8月28日配管工事会社茨城県原価管理の相談
- 8月28日塗装工事会社茨城県案件獲得の相談
- 8月28日内装工事会社長野県協力会社探しの相談
- 8月27日配管工事会社東京都人材確保の相談
- 8月27日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月27日外構工事会社大阪府人材確保の相談
- 8月27日外構工事会社熊本県業務効率化システムの相談
- 8月26日総合建築神奈川県業務効率化システムの相談
- 8月26日配管工事会社福岡県業務効率化システムの相談
- 8月26日電気設備工事会社兵庫県案件獲得の相談
- 8月24日総合建築京都府高卒採用の相談
- 8月24日電気設備工事会社岐阜県人材育成の相談
- 8月24日塗装工事会社福岡県人材確保の相談
- 8月24日空調設備工事会社兵庫県利益率向上の相談
高すぎる失注と安すぎる赤字の間で判断が止まる見積もりの壁
難しいのは、正確な原価を出すことだけではありません。自社の採算を守りながら、発注者が受け入れられる金額を探ることです。
電気工事や内装工事は、扱う部材の点数が多く、工程や施工条件も案件ごとに変わります。面積と材料だけで概算しやすい工種と比べると、過去に近い案件がなければ金額の拠り所をつくりにくくなります。
実際、この会社では自社の見積もりと相手の想定額に、数千万円単位の差が出たこともありました。
「高いと思われて、その後の話がなくなるのは避けたい。でも、安く取って大きな損失を出すわけにもいかないんですよね」
この迷いは、単価表がないことだけから生まれるものではありません。次の三つが一つの金額に混ざっていることが原因です。
- 工事を完了するために必要な原価
- 初めて扱う規模や条件に伴う不確実性
- 発注者が想定している予算や相場感
これらを分けないまま「いくらなら取れそうか」から考えると、値下げの余地も、撤退すべきラインも見えなくなります。
見積金額を一発で当てようとするほど、根拠のない強気か、過度な値下げのどちらかに寄りやすくなります。
部材と工程が多い一方で、社内に過去案件の物差しがまだ少ない構造
見積もりの判断が難しい背景には、会社の成長段階があります。
体制が整った工事会社であれば、積算部門があり、過去案件の原価や歩掛、受注時の掛け率が蓄積されています。「この条件ならこの金額で出す」「この採算に届かなければ受けない」という目安も共有されています。
一方、成長途中の専門工事会社では、最終判断が経営者に集まりがちです。現場を理解しているからこそ、抜けている部材や工程にも気づきます。その分、考える項目が増え、判断が重くなります。
「出来上がっている会社なら、見積もりに対して出す金額や、合わなければやらないという基準があると思うんです。うちは、まだそこがありません」
ただし、この段階で大企業と同じような厳格な基準をつくればよいとは限りません。初めての取引先や今後につながる案件なら、通常より利益が薄くても受ける判断はあり得ます。
この会社でも、「まだ固い基準はいらない。探りながら、どうしても欲しい案件ならやる選択肢もある」という考えがありました。
必要なのは、すべての案件を同じ基準で切ることではなく、採算の下限と例外を認める条件を分けることです。
原価・工数・リスクを分け、概算から受注判断まで段階的に詰める進め方
初めて扱う大型工事では、最初から確定見積もりをつくろうとしないことが大切です。見積もりを「概算」「条件確認」「正式見積もり」「受注決裁」の段階に分けると、価格だけで勝負する状態を避けやすくなります。
1.まずは原価、工数、リスクを別々に積み上げる
最初に、自社がコントロールできる数字から整理します。少なくとも、次の区分は分けておきたいところです。
- 主要部材と付帯部材の仕入原価
- 工程ごとの人工数と労務費
- 外注費、運搬費、機材費
- 現場管理や移動など、案件固有の間接費
- 図面変更、工期制約、数量変動などのリスク分
- 会社として確保したい利益
特に大型工事では、「一式」の中に何が含まれているかが曖昧だと、受注後に原価が膨らみます。部材が多い工事ほど、金額を細かく見せることより、社内で積算根拠を追える状態にすることが重要です。
2.完全一致ではなく、条件ごとに類似案件を探す
同じ規模、同じ建物用途、同じ施工条件の案件がなくても、比較はできます。
たとえば、過去案件を次の要素に分けます。
- 病院、工場、オフィスビルなどの建物用途
- 新築か改修か
- 自社の請負範囲と商流上の立ち位置
- 工期と投入人数
- 部材構成と施工上の難しさ
一件の過去案件をそのまま当てはめるのではなく、「人工はこの案件」「主要部材はこの案件」「管理負担はこの案件」と、部分ごとに参照します。
類似案件との比較は、正解の価格を探すためではなく、見積もりの抜けと異常値を見つけるために使います。
3.概算見積もりを“ジャブ”として発注者に返す
発注者の予算感が分からないまま、時間をかけて正式見積もりを完成させても、大きく外れれば双方の手戻りになります。
そこで、図面や仕様が固まり切っていない段階では、前提条件を明記した概算として返します。そのうえで、次のように擦り合わせます。
「現時点の資料と施工範囲では、この程度を想定しています。ご予算との開きがあれば、仕様や範囲も含めて一度整理させてください」
概算には、対象範囲、除外項目、未確定事項、金額が変わる条件を添えます。これなら、単に高いか安いかではなく、「何を変えれば予算に近づくか」を話せます。
予算を聞くことは値下げの準備ではなく、見積もりの前提をそろえる作業です。
4.受注可否は、採算の下限と戦略上の理由を分けて決める
見積もりを出す前に、最低限の決裁基準を置きます。最初から細かな規程にする必要はありません。
まずは、次の四点を案件ごとに確認できれば十分です。
- 想定原価をどこまで把握できているか
- 原価が上振れしても耐えられるか
- 必要な職人や協力会社を確保できるか
- 利益が薄くても受ける戦略上の理由があるか
初回取引や将来の継続案件を見込んで例外を認める場合も、「なぜ今回は受けるのか」を残しておきます。理由が曖昧なまま受けると、次回も同じ条件を求められやすくなるためです。
基準は受注を断るためのものではなく、攻める案件と守るべき採算を区別するためのものです。
5.受注後の実績を、次の大型案件の物差しにする
初めての大型工事では、見積もりと実績に差が出ること自体は避けにくいものです。大切なのは、その差を次に残すことです。
見積金額、実際の材料費、投入人工、外注費、粗利、想定との差が出た工程を一案件ごとに記録します。失注した場合も、分かる範囲で価格差や判断理由を残します。
見積もりの基準は、最初から完成させるものではなく、案件ごとの見積もりと実績を照合しながら育てるものです。
まとめ
初めて扱う大型工事では、「相場はいくらか」だけを考えても、見積もりは決めきれません。
原価、工数、リスク、発注者の予算感を分けて整理し、概算から会話を始めることが現実的です。そのうえで、採算の下限と戦略的に受ける条件を分けて決裁します。
一発で適正価格を当てるのではなく、前提をそろえながら見積もりの精度を上げ、自社の判断基準を蓄積していくことが、大型工事に踏み出す近道です。
大型工事の見積もりと受注判断を、自社の基準に変えるために
大型案件を増やしたくても、見積もりや原価判断が経営者一人に集中していると、受注の入口で動きが止まりやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、案件獲得だけでなく、原価管理、組織体制、協力会社、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
「うちの場合、どこまで見積もり基準をつくるべきか」「まず何の数字から整理すればよいか」という段階でも構いません。無理にサービスを勧めることはありませんので、社内で判断しにくい点の整理先として気軽にお声がけください。




























