社員職人が数名でも、協力会社と組めば一式工事まで受けられる専門工事会社の現在地
首都圏で公共工事を中心に防水工事を手がける、社員職人が数名の専門工事会社があります。アスファルト防水を得意としながら、ウレタン防水やシート防水にも対応しています。
「防水であれば一通りできます。ただ、うちが一番得意なのはアスファルト防水です」
施工品質を重視し、一現場ずつ確実に納めるのがこの会社の基本姿勢です。一方で、自社の職人だけですべての工種を施工しているわけではありません。自社で担う工程と、協力会社に任せる工程を分けることで、依頼に応じて一式工事まで対応できる体制をつくっています。
「下地やシーリングまでは自社で完結できます。外壁塗装などは協力会社にお願いしているので、一式でも受けられます」
少人数の専門工事会社では、珍しくない体制です。自社にない工種を協力会社で補えば、受注できる案件の幅は広がります。ただし、一式工事を受けられることと、一式工事で適正な利益を残せることは別の話です。
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一式で受けるほど外注費と管理負担が増え、売上ほど利益が残らない構造
一式工事では、協力会社の施工費に加えて、工程や品質をまとめる自社側の管理負担が発生します。発注者から見れば窓口は一社ですが、受注した側では複数の工種と会社を動かす必要があります。
「一式で受けられることは受けられます。ただ、その分どうしてもコストが乗ってしまいます。お客様側で手配できるのであれば、そちらでやっていただいたほうがいい場合もあります」
ここで起きやすいのが、協力会社から届いた見積金額だけを外注原価として扱い、自社の管理負担を十分に見積もらない状態です。自社施工ではない工程でも、発注者との窓口や品質責任までなくなるわけではありません。
案件が増えれば、売上は大きく見えます。しかし、外注比率が上がり、管理できる現場数を超えると、利益と品質の両方が不安定になります。
実際に、過去には足場や管理まで含む大規模修繕を一式で受け、複数の会社と取引していた別の工事会社からも、次のような話がありました。
「以前は管理も足場も、全部一式で受けていました。でも単価が下がって、やればやるほど赤字になるようになった。今は自社でできる範囲を中心にしています」
外注を増やせば売上は伸ばせますが、管理能力まで同じ速度で増えるわけではありません。 一式受注の判断を受注金額だけで行うと、「忙しいのに利益が残らない」という状況につながりやすくなります。
品質を守りたい会社ほど、対応範囲の広さと管理可能な範囲の間で迷う事情
この問題の背景には、受注機会を広げたい思いと、自社の品質を崩したくない思いの両方があります。
得意工種だけに絞れば、職人の技術を生かしやすく、品質も管理しやすくなります。一方、発注者から見れば、複数の工事をまとめて任せられる会社のほうが発注しやすい場合があります。その要望に応えようとすれば、周辺工種まで含めた一式受注が増えていきます。
ただ、施工を協力会社に任せても、元請として受けた会社には管理が残ります。品質を重視する会社ほど、協力会社に発注して終わりとは考えにくく、確認や調整に時間を使います。
「売上を大きくすることより、質の高いものをきちんと提供できるかを大事にしています」
この姿勢は、長く仕事を続けるうえで大切です。その反面、受注範囲を無理に広げると、自社が強みとしてきた品質を管理しにくくなります。
内製と外注の境目は、施工できるかどうかだけでなく、自社が品質と責任を管理し切れるかどうかで決める必要があります。 職人の人数が少ない会社では、現場数や工種が増えたときに誰が全体を見るのかまで含めて考えることが欠かせません。
得意工種・採算・管理責任の三つを基準に、自社施工と外注の境界を受注前に決める方法
自社施工と外注の分け方は、案件を受けた後ではなく、見積もりを出す前に決めておくことが重要です。基本となる判断軸は、次の三つです。
- 自社の品質を支える得意工種か
- 外注費と管理負担を含めても利益が残るか
- 工程と品質に対する責任を自社で持てるか
得意工種と品質の中核工程は自社で持つ
その会社が選ばれる理由になっている工種や、仕上がりを左右する工程は、できるだけ自社施工に残します。今回の会社であれば、得意とする防水工事や、自社で完結できる下地・シーリングなどが候補になります。
反対に、外壁塗装などの周辺工種は、信頼できる協力会社へ任せる選択ができます。大切なのは、工種の多さではなく、自社の強みと品質の中核をどこに置くかを明確にすることです。
外注見積だけでなく、自社の管理負担まで原価に入れる
協力会社へ任せる工種については、外注見積の金額だけで採算を判断しないようにします。少なくとも、次の項目を受注前に確認します。
- 協力会社へ支払う施工費
- 自社が担う工程管理や品質確認の負担
- 発注者や協力会社との調整に必要な時間
- 自社施工部分との取り合いに関する責任
- 問題が生じた場合に自社が対応する範囲
管理の負担を金額として細かく算出しにくい場合でも、「この案件を受けることで、誰がどれだけ管理に時間を使うか」は確認できます。その時間を見積もりに反映できないのであれば、一式で受ける範囲を狭める判断も必要です。
一式工事の原価は、外注費ではなく、外注費と自社の管理負担を合わせた金額です。
協力会社の確保を受注後に回さない
見積提出時点で施工体制が決まっていなければ、受注後に外注費が上がったり、予定していた会社を確保できなかったりする可能性があります。
受注前には、自社で施工する範囲、協力会社に任せる範囲、発注者側で手配してもらう範囲を分けておきます。協力会社についても、対応の可否と見積金額を確認したうえで受注判断を行います。
自社で管理しにくい工種まで無理に含める必要はありません。発注者側で別途発注できるのであれば、そのほうが全体コストを抑えられる場合があります。
発注者との責任範囲を見積段階でそろえる
工事範囲を分ける場合は、どこまでが自社の施工・管理対象なのかを見積書や打ち合わせで明確にします。特に、自社施工と他社施工が接する部分は、認識がずれると品質確認や手直しの責任が曖昧になりやすい箇所です。
受注前に整理したいのは、次の三点です。
- 自社が施工する工種
- 自社が協力会社を手配して管理する工種
- 発注者が別途手配する工種
「できるので全部受ける」のではなく、「責任を持って管理できる範囲まで受ける」という線引きが、品質と利益を守ります。
まとめ
職人が少ない専門工事会社でも、協力会社と組むことで一式工事に対応できます。ただし、受注範囲を広げるほど、外注費だけでなく工程管理や品質責任も増えていきます。
自社施工と外注を分ける際は、次の順番で整理すると判断しやすくなります。
- 自社の得意工種と品質の中核工程を決める
- 周辺工種を任せられる協力会社と費用を確認する
- 自社の管理負担を含めて採算を見る
- 管理し切れない工種は発注者による別途手配も検討する
- 施工・管理・責任の範囲を受注前に明確にする
目指したいのは内製率を上げることでも、外注を増やすことでもなく、自社の人数で品質と利益を守れる施工体制をつくることです。 一式で受けるか迷ったときは、売上額よりも、得意工種、採算、管理責任の三つに戻って考えると、無理のない判断がしやすくなります。
自社に合った施工体制を整理したい方へ
自社施工をどこまで残し、どの工種を協力会社に任せるかは、職人の人数だけでは決まりません。得意工種、案件の規模、外注原価、管理できる現場数、発注者との責任範囲を一緒に整理する必要があります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。「うちの場合はどこまで一式で受けるべきか」「何から数字を確認すればよいかわからない」という段階でも大丈夫です。
ものづくりに集中できる施工体制をつくるための次の整理先としてご活用ください。無理にサービスを勧めることはありませんので、状況を整理するところから気軽にお声がけいただけます。


























