6人規模で年商約5億円をつくる改修工事会社が迎えた少人数経営の頭打ち
中部地方で改修工事を手がける、6人規模の建設会社があります。設立から10年以上が経ち、売上は約5億円。実質的には一部の社員が別事業を担当し、現場に出ている監督と職人を除くと、社長と取締役が営業、顧客対応、工事の打ち合わせ、経理まで広く担っています。
取引先は不動産会社や管理会社が中心です。同業他社からの下請け案件に依存せず、自社で金額を決められる直受けに近い取引を築いてきました。協力会社には相場より高めの発注ができ、利益が出たときは社員や協力会社にも還元しています。
この取引構造と関係性が、少人数でも高い施工力を維持できる理由です。粗利率はおおむね4割前後で、社長は「利益率が3割を切る仕事や、支払い条件が悪い仕事は断っています」と話します。
一方で、現在の体制では受けられる工事量に限界があり、前期には7,000万円規模の工事を断りました。売上を増やす方法がないわけではありません。
「利益率を気にしなければ、売上10億円はできると思います。ただ、それでは残るお金が減ってしまうんです」
この会社の現在地は、仕事が足りない状態ではなく、高収益の受注力を組織の処理能力が受け止めきれない状態です。
1週間で 19件の相談 がありました
- 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
- 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
- 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
- 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
- 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
- 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
- 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 8月29日総合建築宮崎県業務効率化システムの相談
- 8月28日防水工事会社静岡県業務効率化システムの相談
- 8月28日配管工事会社茨城県原価管理の相談
- 8月28日塗装工事会社茨城県案件獲得の相談
- 8月28日内装工事会社長野県協力会社探しの相談
- 8月27日配管工事会社東京都人材確保の相談
- 8月27日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月27日外構工事会社大阪府人材確保の相談
- 8月27日外構工事会社熊本県業務効率化システムの相談
- 8月26日総合建築神奈川県業務効率化システムの相談
- 8月26日配管工事会社福岡県業務効率化システムの相談
- 8月26日電気設備工事会社兵庫県案件獲得の相談
社長と取締役に集中する営業・顧客対応・現場管理が受注の上限になる構造
最大の課題は、社長と一部の中核人材の能力が、そのまま会社全体の売上上限になっていることです。
社長は顧客開拓と受注を一手に担っています。営業そのものは得意で、「営業は自分一人でよい」という考えもあります。ただし、受注後には顧客との打ち合わせ、工事内容の整理、協力会社への指示、収まりの確認まで続きます。受注だけを社長が担当しても、その後工程を渡せなければ社長の仕事は減りません。
取締役も、未経験から工事対応を覚え、現在は一部顧客から「社長は来なくていい」と言われるほど信頼を得ています。その一方で、案件対応に加えて経理全般も担っています。会社にとって頼もしい存在ですが、業務が集中している点では社長と同じです。
現状を整理すると、負荷は主に次の場所へ集まっています。
- 社長に営業、見積判断、重要顧客との関係構築が集中している
- 取締役に顧客対応、工事管理、経理が集中している
- 現場を任せられる人材が限られ、受注後の処理能力を増やしにくい
- 入力作業などの定型業務も、中核人材の時間を細かく奪っている
DXは進めているものの、現金出納帳への入力など、人が対応しなければならない定型業務は残っています。社長の感覚では、週に2〜3日、10時から15時まで働くパートが一人いれば移せる程度の仕事です。
ただし、事務作業を外へ出すだけでは、7,000万円規模の工事を新たに受けられる体制にはなりません。空いた時間が再び社長や取締役の個人対応で埋まれば、会社の上限は大きく変わらないからです。
必要なのは単なる増員ではなく、社長と中核人材しかできない仕事を残し、それ以外を段階的に移管できる組織への転換です。
売上を追って利益率を落とした過去の経験が組織拡大を慎重にしている事情
この会社が売上拡大に慎重なのは、過去に「売上は増えたのに、手元に残るお金が増えなかった」経験があるためです。
創業初期、売上を約8,000万円から1億円超へ伸ばそうと案件を増やしたところ、粗利率が大きく低下しました。
「8,000万円で4割残るのと、1億3,000万円で2割残るのでは、忙しさは増えても残るお金が少ない。これでは意味がないと思いました」
この経験から、売上額よりも利益率と最終的に残る金額を重視する経営へ切り替えています。現在の高収益は、価格決定力だけで生まれているわけではありません。顧客から任せてもらえる関係、末端に近い協力会社との直接的なつながり、利益を周囲へ還元する姿勢が組み合わさって成り立っています。
したがって、人数と案件数だけを増やすと、次のような変化が起こり得ます。
- 受注基準が緩み、粗利率の低い工事が混ざる
- 社長が細部まで確認できず、顧客対応の品質がぶれる
- 経験の浅い社員へ案件を一気に渡し、手戻りが増える
- 協力会社への発注条件や利益還元が崩れる
一方で、優秀な即戦力が一人入れば解決するとも限りません。同社では建設業経験のある社員より、未経験から育った取締役のほうが顧客評価を高めた実績があります。評価されたのは、経験年数だけではなく、「言われたことを理解し、約束どおり実行できること」でした。
社長は、人を何人か採用し、その中から周囲の仕事を見て成長する一人を見いだす考えを持っています。この考え方自体には、実際に中核人材が育った裏付けがあります。ただし、採用した後にどの業務から渡し、何をできたら次の段階へ進めるのかが明文化されていなければ、育成は社長の感覚に依存したままです。
利益率を守りながら組織を拡大するには、優秀な人を待つのではなく、中核人材が育つ仕事の渡し方を先に設計する必要があります。
高付加価値業務と移管業務を分け、未来の組織図から採用と育成を逆算する進め方
最初に行いたいのは、採用活動ではなく、現在の高収益を生んでいる業務と判断の棚卸しです。どの仕事を社長に残し、どの仕事を中核人材へ渡し、どの仕事を事務担当へ移すかを分けます。
1.利益を生む業務と、時間を消費する業務を分ける
今回の会社であれば、業務は大きく三つに分けられます。
区分 | 該当する業務 | 基本方針 |
|---|---|---|
社長に残す業務 | 重要顧客との関係構築、受注判断、価格判断、低採算案件を断る判断 | 当面は社長が担当する |
育成後に移管する業務 | 受注後の打ち合わせ、工事内容の整理、協力会社との調整、現場管理 | 案件規模を区切って段階的に任せる |
早期に移管する業務 | 現金出納帳への入力などの定型事務 | パートや事務担当へ早めに渡す |
ここで重要なのは、社長の仕事をすべて手放すことではありません。顧客から選ばれる理由や粗利率を守る判断まで移してしまうと、成長の土台が崩れます。
「社長がやらない仕事」を決める前に、「利益率を守るために社長が残す仕事」を決めることが先です。
2.現状の組織図と、2〜3年後の組織図を並べる
現在の肩書だけを並べた組織図では、必要な人材は見えてきません。現状の担当業務を記した組織図と、売上10億円を支える将来の組織図を並べます。
将来の組織図には、まだ在籍していない役割も置きます。たとえば、次のような形です。
- 社長:営業、重要顧客、受注と価格の最終判断
- 中核人材A:既存顧客の案件管理、協力会社調整
- 中核人材B:一定規模までの工事管理、若手の同行育成
- 事務担当:定型入力、書類整理、経理補助
- 現場担当:施工と日々の現場管理
役割を置いたら、そのポジションが年間どれだけの工事を担当するのかを決めます。対話の中では、中核人材を1〜2人育て、それぞれが将来的に1億円から2億円弱の案件を担うイメージが示されました。
これにより、「何人採用するか」ではなく、「何年後に、どの規模の案件を任せられる人が必要か」へ問いが変わります。
売上目標から人数を決めるのではなく、案件を任せる単位から必要な役割と人数を逆算します。
3.案件規模を区切り、任せる範囲を段階的に広げる
未経験者や経験の浅い人へ、いきなり大型案件を任せるのは現実的ではありません。中核人材への育成は、担当できる案件規模と業務範囲を段階に分けると進めやすくなります。
たとえば、次の順番です。
- 定型書類と社内処理を一人で完了する
- 社長や取締役の打ち合わせへ同席し、決定事項を整理する
- 小規模案件の顧客連絡と協力会社調整を任せる
- 社長の確認を受けながら、案件を完了まで担当する
- 一定の粗利率と顧客評価を維持し、中規模以上の案件を担当する
見るべき指標は、担当売上だけではありません。粗利率、手戻り、顧客からの評価、社長が介入した回数も確認します。売上が増えていても、社長の確認時間が減っていなければ、組織化はまだ途中です。
育成の到達点は「仕事を手伝える状態」ではなく、「利益率と顧客評価を保ちながら案件を完了できる状態」です。
4.最初の3カ月は情報収集、役割定義、実行準備に分ける
少人数の会社では、制度を一度に作り込むより、3カ月単位で確認しながら進めるほうが現実的です。
- 1カ月目:役員と社員へのヒアリング、業務と判断基準の整理
- 2カ月目:現状と将来の組織図、必要な役割、育成段階の明文化
- 3カ月目:優先する採用と業務移管を開始し、進捗を測る指標を設定
この会社で最初に採るべき人が、定型業務を担うパートなのか、将来案件を任せる候補者なのかは、組織図を作ってから判断します。中核人材の時間を定型事務が圧迫しているなら、パート採用が先です。大型案件を断る直接的な原因が現場管理者の不足なら、育成を前提とした現場人材が先になります。
採用時期は求人媒体の都合ではなく、誰の時間をいつ空け、何円規模の案件を受けられるようにするかで決めます。
まとめ
少人数で高収益を実現している建設会社ほど、組織拡大には慎重さが必要です。今の利益率は、社長の営業力だけでなく、受注基準、顧客との関係、協力会社への還元、現場対応の品質によって成り立っています。
売上だけを10億円へ伸ばすと、その強みが薄まり、過去と同じように「忙しいのに残らない」状態へ戻る可能性があります。
進める順番は明確です。
- 高収益を生む仕事と判断基準を整理する
- 社長に残す仕事と、移管できる仕事を分ける
- 現状と2〜3年後の組織図を作る
- 必要な人材、採用時期、任せる案件規模を逆算する
- 粗利率と顧客評価を見ながら段階的に権限を渡す
利益率を落とさない組織拡大とは、人を増やして売上をつくることではなく、今ある高収益の仕組みを人に移せる形へ変えることです。
利益を守れる将来の組織図から一緒に整理する
「うちの場合、社長に何を残すべきか」「事務担当と現場管理者のどちらを先に採るべきか」「10億円を支える組織がまだ描けていない」という段階でも、整理は始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。現在の業務分担と収益構造を確認しながら、未来の組織図、必要人材、育成の段階、採用時期を一緒に組み立てます。
まだ具体的な依頼内容が決まっていなくても問題ありません。状況を伺ったうえで必要な整理先をご案内し、無理に支援を勧めることはありません。




























