前提

10年以上続く大型工事を抱えながら、社長が営業・積算・現場管理まで担う専門工事会社の現在地

中国地方で内装系工事を手がける、10名弱の専門工事会社があります。施工は外部スタッフや協力会社の力も借りながら進めていますが、顧客との関係づくり、見積もり、材料の拾い、現場管理、追加工事への対応といった主要業務は、60代の社長に集中しています。

実際、仕事の話をしている最中にも現場から電話が入り、補修の段取りや担当者、追加工事の扱いについて、その場で社長が判断していました。会社として仕事を受けていても、日々の実務は社長個人の経験と判断で動いている状態です。

一方で、現在進んでいる大型の改修計画は、全体で10年以上に及ぶ見込みです。社長は「来年、再来年までは今のやり方でも持つと思う。ただ、その先に本体工事が始まったら、一人では向き合えない」と話していました。

事業承継を考える理由は、引退時期が迫ったからだけではありません。社長一人で回すには、案件の期間と業務量が大きくなっているためです。

後継者候補についても、身内に限定する考えはありません。30代前後の経験者を迎え、まずは2〜3年ほど社長と一緒に仕事をしながら引き継ぐ構想があります。

ただし、ここで整理しておきたいのは、誰を後継者にするかより先に、現在の社長が担っている仕事を、そのまま一人へ渡せるのかという点です。

1週間で 17件の相談 がありました

  • 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
  • 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
  • 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
  • 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
  • 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
  • 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
  • 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
  • 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
  • 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
  • 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
  • 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
  • 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
  • 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
  • 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
  • 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
  • 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
  • 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
  • 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
  • 7月24日塗装工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月23日電気設備工事会社愛知県高卒採用の相談
  • 7月23日工務店埼玉県人材育成の相談
  • 7月23日防水工事会社和歌山県人材育成の相談
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課題

現社長と同じ万能さを次の一人に求める限り、バトンタッチが進まない構造

この会社の大きな課題は、後継者候補がいないことだけではありません。営業、積算、現場管理、顧客対応を一人でこなせる人を探そうとしていることです。

「社長のところは、見積もりから営業、現場まで全部社長がやっている。それを後継者一人に望んでも、たぶん無理だと思う」

この言葉に対し、社長自身も次のように受け止めていました。

「何もかも自分の仕事にしていたら、会社は大きくならない。分業して、人に任せない限り、ワンオペには限界がある」

社長は長年の経験によって、顧客の意図を会話から読み、図面から材料を拾い、現場の納まりを考え、協力会社を動かし、採算まで判断しています。個別に見ると別々の業務ですが、社長の中では一連の仕事としてつながっています。

ところが後継者を探す段階になると、この一連の能力が「社長として当然できること」として、一人分の採用要件になりがちです。営業力のある人に積算精度まで求め、現場に強い人に経営判断や顧客開拓まで期待すると、候補者は極端に少なくなります。

後継者不足に見える問題の一部は、実際には「一人に任せようとする役割が大きすぎる」という組織設計の問題です。

事業承継は、現社長の代わりを一人見つける取り組みではありません。社長に集まっている機能を分け、誰がどこまで担えば会社が回るのかを設計し直す取り組みとして捉える必要があります。

背景

外部スタッフ中心の体制と個人でつながる顧客関係が、社長への業務集中を強めた経緯

社長への業務集中には、この会社なりの合理的な背景があります。

もともと仕事量に波があり、固定人員を増やすよりも、外部スタッフや協力会社と組んだほうが経営しやすい時期が続いていました。社長も「以前は分業するほどの仕事量がなかった」と振り返っています。

そのため、営業や見積もりを担う社員を置かず、社長が案件を取り、必要な施工体制を外部で組む形が定着しました。少人数でも大きな案件に対応できる一方、社内に判断を引き継ぐ相手が育ちにくい構造でもあります。

顧客との関係も、会社の仕組みより社長個人の信用に支えられています。

「お客さんはついている。ただ、それは人と人でつながっているだけ」

この状態では、社長が同席しなくなった途端に、顧客が誰へ連絡すればよいのか分からなくなります。後継者側も、過去の経緯、顧客ごとの注意点、見積もりの考え方を知らないまま前面に立つことになります。

また、現在の社長世代が身につけてきた営業方法と、次世代が無理なく続けられる営業方法には違いがあります。社長自身も、家庭を犠牲にするような働き方を次の世代へ求めることには迷いを感じていました。

「自分は家庭を犠牲にした面もある。でも、今の若い人たちにそこまでできるかと言えば、難しいと思う」

これは若い世代の覚悟の問題ではありません。長時間働き、社長がすべての連絡を受け、個人の人脈で案件を維持する運営方法を、そのまま承継条件にできないということです。

引き継ぐべきなのは現社長の働き方ではなく、顧客から選ばれてきた理由と、工事を成立させる判断基準です。

解決

社長業務を四つに分け、複数人への分業と2〜3年の並走で承継する進め方

最初に行うべきことは、後継者の肩書を決めることではなく、社長業務の棚卸しです。少なくとも、次の四つに分けると整理しやすくなります。

  • 営業:顧客との関係維持、案件情報の収集、受注条件の調整
  • 積算:図面確認、材料拾い、外注費の見込み、見積金額の決定
  • 現場管理:工程調整、協力会社への指示、品質確認、追加対応
  • 経営判断:受注可否、利益と取引関係の優先順位、人員配置、投資判断

ポイントは、業務名だけを書き出して終わらせないことです。それぞれについて、次の内容まで言葉にします。

  1. 何を見て判断しているか
  2. 誰から情報を得ているか
  3. どの条件なら社長確認が必要か
  4. どこまでなら担当者だけで決めてよいか
  5. 判断結果を誰に伝えるか

たとえば見積もりであれば、単価表を渡すだけでは足りません。「この顧客では何を見落としやすいか」「遠方工事の高速代や宿泊費をどう扱うか」「利益を削ってでも守る取引は何か」といった、社長が暗黙に使っている判断基準まで整理します。

顧客情報も、会社名と担当者名だけでは引き継げません。過去の工事、見積もり時の注意点、連絡の順序、現場で重視されること、協力会社との関係まで残しておくと、後継者が社長の記憶だけに頼らず動けます。

業務承継の中心は、作業手順の共有ではなく、社長の頭の中にある判断材料の言語化です。

次に、一人の万能な後継者ではなく、複数人で経営機能を持つ体制を考えます。この会社であれば、営業と顧客対応を担う人、積算と現場管理を担う人を分ける形が現実的です。代表者になる人がすべての実務で一番優れている必要はありません。

社長も「営業と現場管理の二人でやらせないと、一人では相当難しい」と話していました。

ここでの判断軸は、誰が一番社長らしいかではなく、次の三点です。

  • 顧客や協力会社から信頼を得られるか
  • 自分にない能力を持つ人と役割分担できるか
  • 判断に迷ったとき、会社として守る基準に立ち戻れるか

役割を分けた後は、権限を段階的に移します。最初は社長同席で顧客対応や見積もりを行い、次に担当者が案をつくって社長が確認します。その後、一定金額や一定条件までは担当者が決裁し、例外案件だけを社長へ上げる形に変えていきます。

並走期間として想定されている2〜3年は、単なる見習い期間ではありません。

  • 前半は、社長の判断を横で見て理由を理解する期間
  • 中盤は、候補者が判断し、社長が修正する期間
  • 後半は、候補者が主担当となり、社長が例外時だけ支える期間

というように、担当範囲を変えていく必要があります。

「一緒に働いた年数」ではなく、「社長がいなくても決められる範囲がどこまで増えたか」で承継の進捗を見ます。

採用や社内登用を進める場合も、最初から「次期社長」とだけ掲げるより、任せる役割と裁量を明確にしたほうが候補者との認識を合わせやすくなります。社長になるか、営業責任者や工事部門の責任者になるかは、並走しながら見極めても構いません。

後継者を先に一人へ決め切るより、経営を担えるチームを先につくるほうが、事業承継の選択肢は広がります。

まとめ

社長が営業、見積もり、材料拾い、現場管理、顧客対応を担ってきた会社では、同じ能力を持つ一人を探しても、なかなか承継は進みません。

必要なのは、社長の代役探しではなく、社長業務の再設計です。

営業・積算・現場管理・経営判断を分け、判断基準と顧客情報を言語化し、複数人へ段階的に権限を渡すことが承継準備の土台になります。

2〜3年の並走期間が取れるのであれば、その時間を「仕事を見せる期間」だけにせず、担当者が自分で判断する範囲を広げる期間として使うことが大切です。

次の世代へ渡すのは、社長と同じ働き方ではありません。会社が顧客から信頼されてきた理由と、利益を残しながら工事を納めるための判断の仕組みです。

社長業務の棚卸しから、承継できる体制を一緒に整理するために

「自社の場合、社長の仕事をどう分ければよいか」「後継者候補はいるが、何から任せればよいか」といった段階では、採用だけでなく、組織体制や権限移譲まで含めて整理する必要があります。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。事業承継についても、後継者探しだけでなく、社長業務の棚卸し、役割分担、教育体制づくりまで一緒に検討できます。

まだ方針が固まっておらず、「うちの場合は何から考えるべきか」という段階でも問題ありません。無理に話を進めることはありませんので、今の体制や将来像の整理先としてご活用ください。

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