前提

60歳を迎え、10年後の引退を考え始めた8名規模の外構工事会社

九州北部で戸建て住宅の外構工事を手がける、8名規模の建設会社があります。創業から30年近く。大手住宅会社を中心に複数の取引先を持ち、現場は登録制の協力組織に所属する20〜30名ほどの職方と一緒に動かしてきました。

経営者は現場作業に出ることこそ減ったものの、現地確認や見積もり、取引先との調整を担っています。社員の中心は40〜60代です。直近では、年齢による引退と自己都合による退職で2名が離れました。

経営者自身も60歳を迎え、こう話しています。

「会社を存続させるために、私のような立場になる人間を、そろそろ選んでいかないといけません」

希望する引退時期は、おおむね10年後です。一方で、現時点では「この人に任せたい」と思える候補者はいません。

後継者が決まっていなくても、引退時期が見えているなら、事業承継の準備は始められます。むしろ候補者探しより先に、社長が現在担っている役割を整理することが出発点です。

1週間で 16件の相談 がありました

  • 8月4日プラント工事会社埼玉県利益率向上の相談
  • 8月4日防水工事会社京都府原価管理の相談
  • 8月4日造園会社群馬県原価管理の相談
  • 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
  • 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
  • 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
  • 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
  • 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
  • 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
  • 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
  • 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
  • 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
  • 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
  • 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
  • 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
  • 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
  • 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
  • 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
  • 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
  • 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
  • 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
  • 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
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課題

後継者を採用しようとしても、任せたい仕事と育成期間が見えていない状態

この会社の悩みは、単に「若い人が採れない」というものではありません。

紹介や公共職業紹介、専門学校への求人などを続けていますが、採用した人が長く定着するとは限りません。

「すぐ辞めるわけではないんです。でも、2、3年で辞めることが結構あります」

事業承継には時間がかかります。会社に入って2〜3年で退職してしまう状態が続けば、仕事を覚えてもらうところまでは進んでも、経営を任せる段階には届きません。

加えて、「後継者候補」という言葉が大きすぎることも、候補者選びを難しくします。求めているのが優秀な職人なのか、見積もりができる管理者なのか、取引先と交渉できる営業責任者なのか。それとも、資金繰りや採用まで含めて会社全体を預けられる経営者なのか。ここが曖昧なままでは、採用基準も育成内容も定まりません。

この会社の場合、経営者の仕事には少なくとも次の役割が含まれています。

  • 戸建て外構工事の現地確認
  • 見積もりの作成と採算判断
  • 複数の住宅会社との関係維持
  • 受注した現場の振り分け
  • 20〜30名規模の協力職方との調整
  • 受注量と施工体制のバランスを見た経営判断

これらを一人の後継者が最初からすべて担うのは現実的ではありません。

「社長になれそうな人」を漠然と探すのではなく、見積もり、取引先対応、協力会社の差配、経営判断という仕事に分け、何をどの順番で任せるかを決める必要があります。

背景

社長個人に蓄積した見積もりと人間関係に、受注減少と人材定着の問題が重なっている状況

後継者が見つかりにくい背景には、建設会社特有の「見えにくい仕事」があります。

図面から数量を拾うだけなら、手順として教えられるかもしれません。しかし実際の見積もりでは、現地条件、住宅会社ごとの進め方、職方の得意分野、施工時のリスクまで見ながら金額を判断します。経営者の頭の中にある経験則が大きいほど、引き継ぎには時間が必要です。

元請けとの関係も同様です。この会社は、大規模な住宅団地の仕事をきっかけに、大手住宅会社から地場の工務店まで取引先を広げてきました。ところが、住宅着工や地域の案件数が減り、以前は回ってきた仕事が届きにくくなっています。

売上も、以前の3億円台から直近は2億円台後半まで減少しました。経営者は「最低限、前の状態には戻したい」と考えています。

仕事量が減れば、後継者を採用・育成する余力も小さくなります。反対に、受注が特定の取引先や経営者個人の関係だけに依存していれば、候補者から見ても引き継いだ後の見通しを立てにくくなります。

協力職方との関係も、会社の重要な財産です。30年近く続く協力組織は、名簿を渡せば引き継げるものではありません。「誰に、どの工事を、どの条件で頼むか」という日々の判断と信頼があって成り立っています。

事業承継で引き継ぐのは役職や株式だけではありません。見積もりの判断基準、元請けとの信用、協力会社との関係、安定して現場を確保する力まで含めて承継する必要があります。

解決

10年を「役割の分解・候補者選び・権限移譲・受注基盤の承継」に分ける準備

10年の準備期間があるなら、後継者を一度で決めるより、段階を分けて進めるほうが現実的です。大切なのは、候補者探しと会社側の受け入れ準備を並行させることです。

1年目|社長の仕事を棚卸しする

最初に整理したいのは、「社長がいなくなると止まる仕事」です。

外構工事会社であれば、見積書の作成件数だけでなく、その前後にある判断まで書き出します。

  • 現地調査では何を確認しているか
  • 見積金額を調整するときに何を見ているか
  • 受ける工事と断る工事をどう判断しているか
  • 元請けごとに誰と、どの頻度で話しているか
  • 協力職方への割り振りを何で決めているか
  • 問題が起きたとき、誰にどの順番で連絡しているか

この棚卸しをすると、後継者に求める役割が見えます。同時に、一人へ引き継ぐ仕事と、社員や外部へ分担できる仕事も分けやすくなります。

最初の1年は、後継者を決める期間ではなく、「何を引き継ぐのか」を会社として言語化する期間にします。

1〜3年目|社内育成と外部採用を並行して見極める

候補者の選び方は、社内育成か外部採用かの二択に急いで絞る必要はありません。

社内候補には、既存社員だけでなく、協力会社との関係や現場の流れを理解している人も含めて考えられます。会社の文化や取引先を知っている点は強みです。一方で、経営を担う意思があるか、見積もりや数字の管理まで広げられるかは別に確認する必要があります。

外部採用では、年齢や経験年数だけでなく、次のような適性を見ます。

  • 外構工事や住宅工事の経験を見積もりへつなげられるか
  • 元請けと協力会社の双方に丁寧に向き合えるか
  • 数年かけて経営を学ぶ意思があるか
  • 現場だけでなく、受注量や採算にも関心を持てるか

経験者であることは有力な条件です。ただし、「経験者だから後継者になれる」とは限りません。まず管理業務を任せ、その働き方や本人の意思を見ながら候補者としての可能性を確かめていくほうが、お互いに無理がありません。

社内か社外かは出身で決めず、会社を引き継ぐ意思、数字を見る力、元請けと協力会社から信用を得る力で判断します。

3〜5年目|見積もりと取引先対応を部分的に任せる

候補者が見えてきたら、社長の仕事を一つずつ移します。最初から最終決裁を渡すのではなく、難易度と影響範囲を段階的に上げます。

たとえば見積もり業務なら、次の順番が考えられます。

  1. 過去の見積書と実績原価を一緒に確認する
  2. 候補者が作成し、社長が修正する
  3. 一定金額以下の工事は候補者が判断する
  4. 工事完了後に見積もりと実績の差を振り返る
  5. 主要取引先の案件も候補者が主担当になる

取引先対応も、まずは社長との同行から始めます。その後、日常連絡、現場調整、受注条件の確認へと担当範囲を広げます。

協力職方に対しても、後継者候補を突然「次の社長」と紹介するのではなく、現場の割り振りや打ち合わせを一緒に行い、仕事を通じて関係をつくってもらいます。

権限移譲は肩書を渡すことではなく、判断を任せ、結果を一緒に振り返る回数を増やすことです。

5〜10年目|社長が前に出なくても回る取引関係をつくる

承継の後半では、候補者が会社の代表として取引先や協力会社と向き合える状態を目指します。

判断の基準になるのは、「社長が休んだときに何が止まるか」です。見積もりが止まるのか。元請けへの回答が止まるのか。職方の手配が止まるのか。止まる業務があれば、そこが次に移すべき権限です。

同時に、受注基盤も整えます。この会社では、大手住宅会社との取引が複数あるものの、取引先ごとの仕事量には差があります。過去の関係だけに頼らず、どの取引先から、どの程度の現場数を安定して受けたいかを明確にする必要があります。

候補者が引き継ぎたいと思える会社にするには、売上規模だけでなく、次の状態が重要です。

  • 複数の元請けから継続的に相談がある
  • 受注量に応じて協力職方を確保できる
  • 見積もりの根拠と採算が確認できる
  • 特定の個人がいなくても取引が継続する
  • 将来の人員構成と必要人数が見えている

後継者育成と受注基盤づくりは別々の課題ではありません。引き継いだ後も仕事が続く状態をつくることが、後継者に会社を託すための条件になります。

まとめ

後継者候補がいない状態で10年後の引退を考えると、「まず誰かを採用しなければ」と思いがちです。しかし、人を探すだけでは事業承継は進みません。

先に必要なのは、経営者が担っている仕事の棚卸しです。見積もり、元請け対応、協力会社の差配、採算判断を分ければ、候補者に求める役割と育成の順番が具体的になります。

そのうえで、社内育成と外部採用を並行して検討します。候補者が見えてきたら、小さな判断から任せます。取引先や協力職方とも早い段階から接点をつくり、社長個人との関係を会社との関係へ変えていきます。

そして、安定した受注基盤を並行して整えます。引き継ぐ人にとっても、「この会社なら先を描ける」と思えることが大切です。

10年あるから先送りできるのではなく、10年あるからこそ、役割の整理、候補者の見極め、権限移譲、関係承継を無理なく積み重ねられます。

10年後から逆算した承継準備を一緒に整理するために

事業承継は、「後継者を社内で育てるべきか、外から採るべきか」がまだ決まっていない段階でも整理できます。まずは社長が担う業務、引き継ぎに時間がかかる取引関係、今後必要な受注量と人員体制を並べると、次の一手が見えやすくなります。

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