15名規模の通信設備工事会社が、社長60歳を目安に考える5年後の承継
甲信越地方で通信設備工事を手がける、15名規模の会社があります。通信関連施設内の電力設備や配線を扱う、専門性の高い工事が中心です。
社長は50代半ば。腰の不調もあり、以前のように現場へ出ることは減りました。現在は事務所で会社全体を見る時間が長くなっています。
「今の状況を維持しながら、次の世代に移行していかなくてはいけないと思っています」
承継の目安は、およそ5年後です。社内には、以前から右腕として信頼している後継者候補がいます。本人にも「いずれはお前がやることになる」と伝えており、引き継ぐ意向そのものは共有できています。
仕事面の不安は比較的小さい状況です。地域内で対応できる会社が限られる専門工事であり、社長が交代しても受注量は大きく変わらないと見込んでいます。
一方で、社長には別の心配があります。
「ほかの社員をうまくまとめてもらえれば大丈夫だと思うんです。ただ、そういうところがあまり得意ではないように見えるんですよね」
後継者候補と仕事がそろっていても、社員との関係まで自然に引き継がれるとは限りません。5年後の承継で大切なのは、肩書ではなく、経営を担える状態を段階的につくることです。
1週間で 16件の相談 がありました
- 8月4日プラント工事会社埼玉県利益率向上の相談
- 8月4日防水工事会社京都府原価管理の相談
- 8月4日造園会社群馬県原価管理の相談
- 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
- 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
- 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
- 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
- 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
- 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
- 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
- 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
- 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
- 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
- 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
- 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
- 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
- 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
- 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
- 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
- 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
- 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
- 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
- 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
- 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
- 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
- 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
- 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
「いずれはお前が」という合意はあるものの、5年間の移行計画が決まっていない状態
この会社では、誰に引き継ぐかはおおむね見えています。しかし、「いつ、何を、どこまで任せるか」はまだ決まっていません。
候補者に承継の意向を伝えることは、大切な第一歩です。ただ、そのまま5年が過ぎると、社長交代の直前になって一気に権限を渡す形になりやすくなります。
特に気になるのが、社員との関係です。
社員から見た後継者が、現在の社長の右腕であることと、次の経営者として認められることは同じではありません。仕事ができても、社員の相談を受け、意見をまとめ、必要な判断を示す役割は別に経験する必要があります。
事業承継が止まりやすいのは、後継者がいないときだけではありません。候補者がいることで安心し、具体的な権限移譲が始まらない場合にも準備は止まります。
この会社の場合、確認したいのは次の4点です。
- 5年後のどの時点で代表としての役割を渡すのか
- 社内の判断を、どの順番で後継者へ移すのか
- 社員が後継者へ相談し、判断を仰ぐ関係をどうつくるのか
- 主要業務と取引先対応を、どこまで一人で担える状態にするのか
「5年後に交代する」という目安だけでなく、そこへ至る途中の状態を決める必要があります。
仕事の安定が見込めるからこそ、承継準備の焦点が社員との信頼形成に移る構造
この会社には、事業承継を進めるうえでの安心材料があります。
主要な仕事は、社長個人の営業力だけで獲得しているものではありません。元請会社が受注した地域内の工事を、専門性のある同社が担う取引構造です。そのため社長は、「私から代わったからといって、仕事量が減ることはないと思います」と見ています。
これは大きな強みです。承継後の受注減少を過度に心配せず、社内の移行に時間を使えます。
その一方で、仕事が継続することと、組織が同じように動くことは別です。現在は、社長が事務所にいることで、日々の相談や最終判断が社長へ集まりやすい状態だと考えられます。夕方には社員が事務所へ戻ってくるため、社長が社員の様子を把握し、必要な声をかける機会もあります。
こうした日常の積み重ねは、役職表には表れません。しかし、社長交代後の組織運営には強く影響します。
社員との信頼は、承継日にまとめて渡せるものではありません。後継者が社員の相談を受け、自分で判断し、その結果に向き合う期間をつくることで少しずつ形成されます。
社長が感じている「社員をまとめるのが得意ではないかもしれない」という不安も、性格だけの問題として扱わないほうが整理しやすくなります。
まだ後継者として判断する場面が少ないだけかもしれません。あるいは、社長が最終的に決める現在の体制では、社員側にも後継者へ相談する習慣がない可能性があります。
後継者本人だけを変えようとするのではなく、社員が誰に相談し、誰が決めるのかという組織の流れを、5年間で切り替えていく課題として捉えることが大切です。
5年後から逆算し、権限・社員・主要業務・取引関係を段階的に引き継ぐ計画
最初に決めたいのは、5年後の肩書ではなく、承継時点で後継者が一人で担えるようになっているべき役割です。
引き継ぎ項目は、大きく4つに分けると整理しやすくなります。
- 社内の意思決定
- 社員との関係構築
- 主要業務の管理
- 元請会社などとの取引関係
承継計画は「社長の仕事を教える計画」ではなく、「後継者が自分で判断し、社員と取引先がその判断で動ける状態をつくる計画」です。
1年目は、承継時期と役割の共通認識を具体化する
「いずれはお前が」という伝え方から一歩進め、5年程度を目安に承継したい意向を明確に共有します。
そのうえで、現在社長が担っている判断を書き出します。特別な経営判断だけではありません。社員から日常的に相談されること、仕事の優先順位を決めること、元請会社との調整なども含めます。
ここでは、すぐにすべてを任せる必要はありません。後継者本人と、次の点をそろえることが先です。
- 本人が承継をどう受け止めているか
- 何に自信があり、何に不安があるか
- 5年間で経験する必要がある判断は何か
- 社長が最後まで担う役割は何か
本人の承継意思と、5年間で身につける役割を言葉にすることが、最初の土台になります。
2〜3年目は、日常の判断と社員対応を実際に任せる
社員との信頼形成は、懇親の機会を増やすだけでは進みません。後継者が業務上の相談を受け、判断する経験が必要です。
社長がすぐに答えを出すのではなく、まず後継者が考える範囲を決めます。後継者の判断に不安がある場合は、判断前に社長へ確認する期間を設けても構いません。
大切なのは、社員から見ても「この件は後継者が判断する」と分かる状態にすることです。任せると言いながら社長が毎回判断を上書きすると、相談先は社長のまま変わりません。
判断した内容と理由を簡単に残し、社長と振り返る方法も有効です。正解か不正解かだけではなく、何を見て決めたのかを確認できます。
権限移譲は、仕事を丸投げすることではありません。任せる範囲を決め、判断を振り返り、次に任せる範囲を広げる進め方が現実的です。
3〜4年目は、主要業務と取引先対応の前面に立ってもらう
この会社は、承継後も仕事量が大きく変わらない見込みです。ただし、取引関係が自動的に引き継がれると考えず、後継者が前面に立つ期間は設けたほうが安心です。
元請会社とのやり取りや主要業務の調整について、社長が同席する状態から、後継者が主に対応して社長が補足する状態へ移します。その後、後継者だけで対応し、社長には結果を共有する形へ進めます。
仕事が安定している会社ほど、この移行を落ち着いて試せます。社長が在任している間なら、判断に迷ったときも戻って確認できます。
最終年は、社長が不在でも回る期間をつくる
承継直前には、社長が日常の判断へ入らない期間を意識的につくります。社長は完全に離れるのではなく、例外的な案件や重要な判断だけを確認します。
この段階で見るのは、後継者本人だけではありません。
- 社員の相談が後継者へ集まっているか
- 後継者の判断で業務が進んでいるか
- 元請会社との連絡に滞りがないか
- 社長が介入しなくても社内調整ができるか
課題が見つかった場合も、承継前なら修正できます。
承継日は準備の開始日ではなく、すでに実質的な移行が終わっている状態を確認する日と考えると、5年間の使い方が明確になります。
まとめ
後継者候補が社内にいて、本人にも将来の承継を伝えていることは、大きな前進です。ただし、それだけでは社員との関係や経営判断まで引き継がれません。
今回のように仕事の継続性が高い会社では、社内の承継準備へ時間を使える強みがあります。
5年後を見据えるなら、今から整理したいのは、承継時期、権限移譲、社員との信頼形成、主要業務と取引関係、経営判断の訓練です。
一度にすべてを任せる必要はありません。小さな判断から渡し、結果を振り返り、任せる範囲を広げていく。社員にも後継者の役割が見えるようにする。その積み重ねが、無理のない事業承継につながります。
5年後の承継に向けて、何から渡すかを整理するために
「後継者候補はいるが、具体的な移行計画までは作れていない」「社員との関係づくりを、どう進めればよいか分からない」という段階でも、整理を始められます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。事業承継についても、現在社長に集まっている判断や役割を確認し、後継者へ渡す順番を一緒に組み立てます。
まだ方針が固まっていなくても問題ありません。会社の状況を伺いながら次の整理先を考えます。無理に支援を勧めることはありませんので、5年後に向けた準備の棚卸しとしてお声がけください。






























