前提

60名弱・複数部門を抱える建設会社を支えてきた「面倒見の良さ」

ある建設会社では、施工管理、積算、現場支援、営業など複数の部門があり、若いうちから現場や役割を任せる文化が根づいていました。社員からも、困っている人への声かけや、先輩に支えてもらった経験が語られています。

品質や技術への誇りも強く、若手を育てる土台がないわけではありません。むしろ、良い先輩が若手を気にかけ、実務を任せながら育ててきたことが、この会社の成長を支えてきました。

一方で、その良さは制度ではなく、個人の善意や力量に支えられていました。部門に配属された後は、そのまま各現場に育成を委ねる形が多く、定期的な面談も「あるようで、ない」という状態です。

社員からは、次のような感覚も見えていました。

「自分が何を任されていて、今どの段階にいるのかがよく分からない」

これは、先輩が若手を見ていないという話ではありません。見ているつもりでも、確認する時期、担当者、相談方法が決まっていないため、若手には支援が見えにくくなっていたのです。

1週間で 18件の相談 がありました

  • 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
  • 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
  • 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
  • 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
  • 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
  • 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
  • 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
  • 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
  • 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
  • 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
  • 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
  • 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
  • 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
  • 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
  • 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
  • 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
  • 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
  • 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
  • 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
  • 7月24日塗装工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月23日電気設備工事会社愛知県高卒採用の相談
  • 7月23日工務店埼玉県人材育成の相談
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課題

配属先・上司・担当現場によって初期フォローと成長速度が変わる状態

課題は、若手の育成品質が「誰につくか」に左右されることです。

面倒見の良い先輩につけば、仕事の進め方を教えてもらえます。困ったときにも声をかけてもらえ、少し背伸びした役割にも挑戦できます。しかし、担当現場や上司が変われば、同じ会社に入った若手でも、相談のしやすさや成長速度に差が出ます。

特に差が生まれやすいのが、入社直後のフォローです。

  • 誰が仕事を教えるのか
  • 分からないことを誰に聞けばよいのか
  • いつ振り返りをするのか
  • 次に何ができるようになればよいのか
  • 現場の指導者と合わない場合、別の誰に相談できるのか

こうした点が決まっていなければ、若手自身が周囲の様子を見ながら判断することになります。本人から相談を出しにくい場合は、問題が表面化するまで時間がかかります。

若手が辞めるかどうかだけを見るのではなく、配属後の1カ月、3カ月、6カ月で必要な支援を受けられているかを見る必要があります。

また、建設業では、現場ごとに条件も難易度も異なります。施工管理と積算、営業では、習得すべき仕事も違います。そのため、「すべての指導内容を同じにするのは難しい」という疑問が出るのも自然です。

ここで標準化したいのは、個別の技術指導や任せ方のすべてではありません。標準化の対象は、育成の節目、確認項目、担当者、相談ルートという最低限の受け入れ基盤です。

背景

良い先輩の教え方が共有されず、中堅の橋渡し役も不足している構造

属人的なOJTが続いてきた背景には、「現場で覚える」という建設業らしい育ち方があります。

実際、この会社にも「若いうちから任せてもらったことで成長できた」「昔ついた先輩の教え方が良かったから乗り越えられた」という経験がありました。任せる文化そのものは、失うべきものではありません。

ただし、その経験が個人の思い出にとどまり、次の育成担当者へ引き継がれていませんでした。良いOJTの実践例は社内にあるのに、再現できる形に整理されていないことが属人化の中心です。

もう一つの背景が、若手とベテランの間に立つ中堅層の不足です。

ベテランには、技術や現場経験があります。一方、若手の中には、上位者には直接相談しにくい人もいます。指導する側も、これまでの伝え方が現在の若手にどう受け取られるのか分からず、接し方に迷うことがあります。

社員からは、「自分は我慢できるけれど、次の若手は厳しいかもしれない」という趣旨の声もありました。これは世代間の善悪ではなく、仕事の教え方やコミュニケーションの前提が変わっているということです。

技術を教える上司だけでなく、日常的な疑問を受け止め、若手とベテランをつなぐ橋渡し役が必要になっています。

ただし、その役割を同じ中堅社員へ次々に載せれば、通常業務との両立が難しくなります。実際に、「役割を増やすほど、同じ人の仕事量だけが増えるのではないか」という懸念も出ていました。

したがって、育成制度は立派な仕組みを一度につくるのではなく、対象と役割を絞って始める必要があります。

解決

育成ロードマップと1on1、OJT担当者、相談ルートを小さく運用する仕組み

必要なのは、良い先輩の面倒見をなくすことではなく、会社の仕組みとして再現できる状態に変えることです。

会社が保証すべきなのは、全員を同じ速度・同じ方法で育てることではなく、誰が配属担当になっても必要なフォローを受けられることです。

1.入社1カ月・3カ月・6カ月・1年以降の育成ロードマップをつくる

最初に、入社後の節目を決めます。ロードマップは細かな作業マニュアルではなく、「この時期に何を確認するか」を揃えるための目安です。

時期

主に確認すること

入社1カ月

配属後の印象、担当業務の理解、困っていること、相談相手の有無

入社3カ月

初期のつまずき、教わった内容の理解、現在任されている仕事、次に経験する業務

入社6カ月

できるようになったこと、現場や上司による指導の差、今後伸ばす領域

入社1年

1年間の成長、本人の現在地、次年度に任せる役割、必要な支援

1年以降

3年、5年などの節目で、役割や成長の方向を振り返る

年数は昇格や役割付与を機械的に決める基準ではありません。成長が早い人は、目安を飛び越えて構いません。

ロードマップは若手を年次で縛るものではなく、会社がフォローを忘れないための共通の目印です。

部門ごとに仕事内容が違う場合も、節目そのものは共通化できます。そのうえで、施工管理、積算、現場支援、営業など、各部門の確認項目を加えていく形が現実的です。

2.定期的な1on1を「まず実施する」ところから始める

面談は、最初から高度な技法を求める必要はありません。「やっているようで、やっていない」状態をなくすことが先です。

1on1では、少なくとも次の点を確認します。

  • 今、どの仕事を担当しているか
  • 何ができるようになったか
  • どこで困っているか
  • 誰に相談できているか
  • 次に何を任せるか

ここで大切なのは、評価を言い渡す場だけにしないことです。本人の状況を知り、次の育成へつなげる場として運用します。

1on1の目的は、若手の本音を無理に引き出すことではなく、困りごとが大きくなる前に会社側から確認できる機会をつくることです。

面談内容を長い文章で残す必要はありません。実施日、確認した内容、次に任せること、フォロー担当者を簡潔に記録すれば、次回の面談や担当変更にもつなげられます。

3.技術を教えるOJT担当者と、相談を受けるチューターを分ける

現場の上司が、技術指導、日常相談、人間関係の調整まで一人で担う必要はありません。

役割を次のように分けると、若手も相談先を理解しやすくなります。

  • 部門責任者:育成方針と任せる仕事を決める
  • OJT担当者:現場で仕事を教え、日々の習得状況を見る
  • チューター:若手に近い立場で、日常的な疑問や相談を受ける
  • 橋渡し役:若手とベテラン、現場と会社側の間をつなぐ

肩書を増やすことが目的ではありません。既存のリーダーや中堅社員について、「誰が、誰の、どの部分を見るのか」を明確にすることが重要です。

相談ルートも一本に限定しないほうがよいでしょう。現場の指導者に言いにくい内容を、その指導者本人へ相談するよう決めても機能しません。

業務はOJT担当者、日常の悩みはチューター、配属や人間関係に関する相談は部門責任者や社内窓口というように、複数の入口を用意します。

4.育成担当者の負担を抑えるため、対象と期間を絞る

制度をつくっても、担当者の負担が大きければ続きません。通常業務を抱える社員へ、曖昧なまま「若手育成も頼む」と渡すのは避けたいところです。

最初の1年間は新入社員だけを見る、初年度は確認項目を絞るなど、対象を限定して始めます。推進役も大人数にせず、変えていきたい意向のある少人数を中心にする方法があります。

月1回の短い打ち合わせで、次の点を確認すれば十分です。

  • ロードマップどおりに面談できたか
  • 若手が相談先を理解しているか
  • OJT担当者だけに負担が偏っていないか
  • 配属先によるフォローの差が出ていないか
  • 良かった教え方を他部門でも使えないか

最初から全社制度を完成させるのではなく、対象を絞って運用し、良かったやり方を会社の標準へ追加していく進め方が現実的です。

5.標準化する部分と、現場に任せる部分を分ける

OJTを標準化すると、現場の裁量が失われると感じることがあります。しかし、書いたものに指導を縛りつける必要はありません。

会社として共通化するのは、次の部分です。

  • 育成の節目
  • 面談の実施
  • 最低限の確認項目
  • OJT担当者とチューターの役割
  • 相談ルート
  • 記録と振り返りの方法

一方、案件の状況に応じた仕事の任せ方、本人の成長速度に合わせた挑戦、現場固有の技術指導は、各部門や担当者の裁量を残します。

「何を教えるか」を一律にするのではなく、「育成から漏れない仕組み」を共通化することが、建設会社に合ったOJT標準化です。

まとめ

若手の育ち方が配属先や上司によって変わる会社には、育成力がないのではありません。良い先輩の教え方や面倒見が、個人の中にとどまっている状態です。

その強みを会社のものに変えるには、次の順序で整理すると進めやすくなります。

  1. 入社1カ月、3カ月、6カ月、1年以降の節目を決める
  2. 節目ごとに1on1を実施する
  3. OJT担当者、チューター、橋渡し役を明確にする
  4. 若手が使える複数の相談ルートをつくる
  5. 対象を絞って始め、良い教え方を標準へ加える

属人的なOJTの標準化とは、優れた先輩の個性を消すことではなく、その良さがどの配属先でも若手へ届く状態をつくることです。

すべてを一度に整える必要はありません。まずは現在いる若手について、「誰が見ているか」「次の面談はいつか」「本人は誰に相談できるか」の3点を確認するだけでも、育成の見え方は変わり始めます。

自社に合う育成の節目と役割分担を整理するために

OJTの標準化は、会社の規模、部門構成、現場の動き方によって適した形が変わります。「うちの場合は誰をチューターにすべきか」「現場の負担を増やさず、何から始めればよいか」という段階から整理しても問題ありません。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、人材、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、育成ロードマップや面談体制の設計から実行まで支援しています。建設業界の経営者の懐刀として、ものづくりに集中できる組織づくりを一緒に考えます。

状況を伺ったうえで整理先を考えるため、無理にサービスを勧めることはありません。何から手を付けるべきか決まっていない段階でも、気軽にお声がけください。

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