60名弱の建設会社に、品質への誇りや若手を育てる風土はすでにあった
複数の工事部門に加え、施工管理、積算、営業、現場支援などの職種を抱える、60名弱の建設会社での話です。若手採用を強化するため、社員13名への面談を行ったところ、社内には採用で伝えられる魅力が数多くあることが分かりました。
たとえば、職種を超えて語られていたのが「いい仕事をしよう」「品質を守ろう」という姿勢です。長い歴史のなかで培われた技術への誇りがあり、困っている人には声をかける面倒見のよさもありました。
若手のうちから現場や役割を任せてもらえることに、成長実感を持っている社員もいます。現場については、次のような印象的な言葉もありました。
「自分の家族を案内できるくらい、安全な現場にしたい」
「足場が外れて、建物の全体が見えた瞬間に達成感がある」
こうした言葉は、その会社で実際に働いた人にしか語れません。待遇や休日数だけでは見えない、仕事への向き合い方が表れています。
一方、採用ページや求人票を見るだけでは、この魅力が十分に伝わる状態にはなっていませんでした。採用で魅力が伝わらない会社に、魅力がないとは限りません。社内にある価値が、求職者向けにまだ編集されていないケースが少なくありません。
1週間で 18件の相談 がありました
- 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
- 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
- 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
- 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
- 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
- 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
- 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
- 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
- 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
- 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
- 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
- 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
- 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
- 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
- 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
- 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
- 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
- 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
- 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
- 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
- 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
- 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
- 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
- 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 7月24日塗装工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月23日電気設備工事会社愛知県高卒採用の相談
- 7月23日工務店埼玉県人材育成の相談
「施工管理を募集しています」だけでは、その会社で働く意味まで伝わらない
採用情報で伝わりにくかったのは、業務の名称ではなく、その仕事を担う意味です。
施工管理、積算、営業、現場支援といった職種名を掲載し、業務内容を箇条書きにしても、学生や若手には働く姿を想像しにくいものです。特に建設業の経験がない人には、積算と現場支援がどのように現場へ貢献するのか、施工管理が完成まで何を背負うのかが見えません。
「工程管理」「品質管理」「見積作成」と書くことは必要です。しかし、それだけでは他社との違いが出にくく、応募者の記憶にも残りません。
この会社には、品質を守る姿勢、若いうちから任せる風土、周囲が支える関係、建物を完成させる達成感がありました。それでも、求職者に届く形にはなっていませんでした。
職種名と作業内容だけでは、求職者は自分が誰の役に立ち、何を成し遂げ、どのように成長する仕事なのかを判断できません。
採用メッセージに必要なのは、きれいなキャッチコピーを先につくることではありません。社員が経験してきた具体的な出来事から、その会社で働く意味を取り出すことです。
社員は魅力を体験していても、普段の仕事を求職者向けに語る機会がない
仕事の魅力が言葉になっていない背景には、社員が自分の仕事を説明する機会の少なさがあります。
現場では、品質を守ることも、困っている人を助けることも、建物が完成したときにうれしいと感じることも、日常の一部です。当たり前になっているため、本人はそれを会社の強みだと認識していないことがあります。
社員面談では、過去・現在・これからという流れで話を聞きました。
- 入社前に何をしていて、なぜ会社を知ったのか
- 現在、どのような仕事を担当しているのか
- 仕事のどこに価値や成長を感じているのか
- これからどのような役割を担いたいのか
この順序で聞くと、抽象的な感想だけでなく、本人の体験が出やすくなります。「やりがいがあります」と答えてもらうだけでは、採用原稿には使いにくいものです。そこで、「そう感じたのはどの現場か」「どの瞬間だったか」「誰に何と言われたか」と、体験まで掘り下げます。
今回も、面談後の社内から「社員が本当にこんなことを考えていたのかと、いい意味で驚いた」という反応がありました。普段は見えていないだけで、社員は仕事について多くのことを考えています。
社員の声を集める目的は、格好のよいコメントを探すことではなく、日常に埋もれた具体的な体験から、その会社らしい価値を見つけることです。
もう一つの背景は、全職種を一つの言葉でまとめようとしてしまうことです。
「地域に貢献する会社」「技術を大切にする会社」といった全社共通のメッセージは必要ですが、それだけでは各職種の違いが伝わりません。施工管理と積算、営業と現場支援では、仕事を通じて感じる価値も、採用候補者が知りたい情報も異なります。
全社の魅力を一つにまとめたうえで、職種ごとの働く意味へ落とす。この二段階が必要です。
社員面談の体験を職種別の「働く意味」へ翻訳し、すべての採用接点で揃える
最初に行いたいのは、社員の言葉をそのまま掲載することではなく、体験、価値、採用メッセージの順に整理することです。
たとえば、「足場が外れて建物が見えた瞬間に達成感がある」という声には、単なる感想以上の情報があります。長い工程を関係者とつなぎ、品質と安全を守りながら、形に残るものを完成させる仕事だという意味が含まれています。
「若いうちから現場を任された」という声も、そのままでは情報が足りません。何を任され、周囲からどのような支援を受け、その経験で何ができるようになったのかまで確認すると、「任せっぱなし」ではなく「実務を通じて成長できる風土」として表現できます。
社員の発言は、体験した事実、本人が感じた価値、求職者に伝える意味の三段階で整理すると、誇張のない採用メッセージになります。
職種ごとに、集める体験を変える
職種別のメッセージをつくる際は、同じ質問を全員に当てはめるより、それぞれの役割に沿って体験を聞くほうが具体的になります。
職種 | 面談で確認したい体験 | 採用メッセージへ翻訳する観点 |
|---|---|---|
施工管理 | 現場を任された経験、品質や安全を守った場面、完成時の実感 | 多くの関係者をつなぎ、建物を完成まで導く仕事 |
積算 | 数量や金額の判断が工事に影響した場面、現場から頼られた経験 | 工事が始まる前から、品質と事業の成立を支える仕事 |
営業 | 顧客の相談を工事部門へつないだ経験、継続受注につながった関係 | 顧客と現場の間に立ち、仕事の入口をつくる役割 |
現場支援 | 現場の困りごとを解消した経験、複数部門を支えた場面 | 現場が安全かつ円滑に動ける状態をつくる仕事 |
これは、そのまま掲載する定型文ではありません。各社の社員から実際の体験を聞き、事実に合う言葉へ調整するための整理軸です。
全社共通の魅力を掲げるだけでなく、施工管理・積算・営業・現場支援ごとに「誰を支え、何を実現する仕事か」を言葉にします。
強みだけでなく、仕事の厳しさも一緒に伝える
採用メッセージは、魅力だけを並べればよいわけではありません。建設現場には、自然条件の影響を受ける難しさや、品質と安全を守る責任があります。若手に任せる会社であれば、裁量とともに責任も生まれます。
今回の採用方針でも、「厳しさも面倒見も本物」という考え方が示されていました。現場の現実を理解したうえで、それでも仕事に魅力を感じる人に来てもらいたい、という姿勢です。
仕事の厳しさを伝えると応募が減るのではないか、と心配になるかもしれません。しかし、実態に沿って説明することは、応募者が自分に合う仕事かを判断する助けになります。
伝えるときは、厳しさだけで終わらせず、会社がどのように支えるかまでセットにします。
- 若いうちから役割を任せるが、周囲に相談できる人がいる
- 品質への要求は高いが、困っている人には部門を超えて声をかける
- 現場には責任があるが、完成したものが形に残る達成感がある
魅力と厳しさ、任せる範囲と支援のあり方を対にして伝えることが、入社後の「聞いていた話と違う」を減らします。
採用ページから職場見学まで、同じ軸で伝える
言葉をつくった後は、採用ページだけを直して終わりにしないことが大切です。候補者は、求人票、学校訪問、会社説明、職場見学、面接など、複数の接点から会社を判断します。
活用先としては、次のようなものがあります。
- 採用ページの職種紹介
- 求人票の仕事内容
- 学校訪問で使用する資料
- 会社説明会や職場見学のトーク
- 社員インタビュー
- 面接時の仕事説明
たとえば採用ページでは「若手に任せる」と書いているのに、職場見学では担当者が仕事内容を説明できなければ、メッセージの信頼性は下がります。反対に、社員自身が体験を語れると、会社の雰囲気や一緒に働く人まで伝わります。
候補者が知りたいのは、会社の事業内容だけではありません。「自分は誰と働くのか」「入社後にどのような経験をするのか」も重要な判断材料です。
採用ページ、求人票、学校訪問資料、職場見学、社員インタビューで同じ価値を伝えると、会社の印象が一貫します。
原稿は本人確認と部門確認を経て公開する
社員の声を採用広報へ使う場合は、本人確認が前提です。面談で話した内容だからといって、そのまま顔や名前とともに公開してよいわけではありません。
原稿を整えた後、本人に表現を確認してもらいます。顔や実名を出すか、匿名にするかも本人の意向を確認します。そのうえで、部門責任者にも仕事内容や採用要件とのずれがないかを見てもらいます。
進め方としては、白紙から社員に書いてもらうより、面談内容をもとに叩き台をつくり、本人と部門から添削を受ける形が進めやすいでしょう。
社員の声は、本人の同意と現場の事実確認を経て使うことで、実感のある言葉と採用情報の正確さを両立できます。
まとめ
建設会社の採用で仕事の魅力が伝わらない原因は、魅力の不足よりも、社内にある価値が求職者向けに編集されていないことにあります。
品質や技術への誇り、困った人を支える関係、若手に役割を任せる風土、建物が完成した瞬間の達成感。こうした魅力は、経営側が考えた言葉だけでなく、社員の具体的な体験から見つけることができます。
進め方の要点は次の通りです。
- 社員面談で、仕事の価値を感じた具体的な体験を集める
- 体験を、職種別の「誰を支え、何を実現する仕事か」へ翻訳する
- 魅力だけでなく、仕事の厳しさと会社の支援も伝える
- 採用ページ、求人票、学校訪問、職場見学、面接で表現を揃える
- 公開前に、社員本人と部門責任者の確認を受ける
採用メッセージは会社の外から持ってくるものではなく、社員がすでに語っている仕事の意味を拾い、求職者に届く形へ整えるものです。
自社らしい採用メッセージを、社員の声から整理するために
「社員の話を聞いても、どの言葉を採用に使えばよいか分からない」「職種ごとの魅力をどう分ければよいか整理できない」という段階でも、取り組みは始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。採用に関しても、社員の声の整理から職種別メッセージの設計、求人票や学校訪問資料への展開まで、各社の状況に合わせて進めます。
「うちの場合は、何を魅力として伝えるべきか」という整理からでも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社だけでは言葉にしにくい部分があれば気軽にお声がけください。





























