東海地方を本社に首都圏進出から約1年、社長が月の半分を東京で過ごす内装仕上げ会社
東海地方に本社を置く、5名弱の内装仕上げ会社があります。売上規模は2億円弱。クロス、床、塗装などの仕上げ工事を手がけ、商業施設やホテル、高齢者施設を中心に、1件あたり数百万円規模の現場を積み重ねています。
施工は協力会社が中心で、自社は営業、見積もり、段取り、現場管理を担う体制です。本社周辺では長年付き合ってきた職人が揃い、複数県の現場まで対応できています。
一方、約1年前に立ち上げた首都圏の営業所には、まだ専任者がいません。東京側の担当は社長自身です。
「最初は月に3、4日行く程度でした。それが最近は、月の半分くらい東京にいる状態です」
首都圏で受けているのは、飛び込み営業で獲得した新規案件ではありません。本社で付き合いのある顧客が全国展開しており、「東京の現場も見てほしい」と以前から頼まれていたことが進出のきっかけでした。営業所を開設したと案内してから、依頼が少しずつ増えています。
首都圏では千葉県と都心部など、複数現場が同時に動くこともあります。材料を積むため新幹線ではなく車で移動し、数日後に再訪するなら東京に滞在する。その合間にシェアオフィスへ戻り、見積もりや事務作業を進めています。
既存顧客からの依頼で売上は伸びているものの、首都圏拠点の運営機能は社長個人の移動と現場対応に乗ったままです。
1週間で 21件の相談 がありました
- 9月10日内装工事会社兵庫県人材確保の相談
- 9月10日外構工事会社神奈川県協力会社探しの相談
- 9月10日総合建築宮崎県利益率向上の相談
- 9月9日総合土木兵庫県人材育成の相談
- 9月9日内装工事会社秋田県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
- 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
- 9月8日工務店広島県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社和歌山県高卒採用の相談
- 9月7日塗装工事会社三重県利益率向上の相談
- 9月7日総合建築長崎県案件獲得の相談
- 9月7日防水工事会社三重県業務効率化システムの相談
- 9月6日内装工事会社東京都協力会社探しの相談
- 9月5日設備保全会社東京都高卒採用の相談
- 9月5日総合土木北海道原価管理の相談
- 9月5日内装工事会社千葉県案件獲得の相談
- 9月5日設備保全会社茨城県協力会社探しの相談
- 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
- 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
- 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
受注の増加がそのまま社長の移動・現場管理・見積もりの増加になる拠点運営
この会社の課題は、東京の仕事が足りないことではありません。むしろ、依頼が増えた結果として社長の負担も増える構造にあります。
社長は東京の現場管理だけでなく、営業と見積もりもほぼ一人で担っています。見積もりは少なくとも毎日数件。現場へ行き、職人や他業種との段取りを行い、事務所へ戻って見積もりを作るため、先の予定も読みづらくなっています。
「現場対応で動いているので、空いた時間に事務所へ寄って見積もりをしています。急に現場から呼ばれることもあります」
首都圏の年間売上は、立ち上げから約1年で数千万円規模になりました。ただし、内装仕上げ工事は1件ごとの金額が極端に大きいわけではなく、一定の件数を継続して受注できるかどうかが重要です。現時点では、今後も安定して仕事が埋まるかを判断しきれていません。
そのため、すぐに現地責任者を雇う決断はしにくい。一方で、採用を先送りするほど社長の滞在日数は増え、次に構想している関西拠点の準備にも移れません。
出店判断を「売上が増えたか」だけで行うと、社長が現場を回しているから成立している売上と、拠点単独で継続できる売上を見分けにくくなります。
営業所の本格化を考える際は、売上と同時に次の状態を確認する必要があります。
- 社長が不在でも、現場の初動と段取りを進められるか
- 移動費、宿泊費、車両負担を含めても収益が残っているか
- 継続依頼を見込める顧客と、単発案件を分けて把握できているか
- 現地で直接話が通じる協力会社が揃っているか
- 材料や道具を保管する場所が必要なほど、案件が常態化しているか
営業所の本格化は、受注量ではなく「社長がいなくても品質と収益を保てるか」で判断することが大切です。
元請けの手間を減らす強みそのものが社長の現場対応に集中している状態
社長への依存が強い背景には、この会社が選ばれてきた理由があります。
同社は、職人だけを現場へ送り込むのではなく、営業担当者が最初の打ち合わせから現場に入ります。必要な材料や施工条件を確認し、電気、大工、塗装など他業種との作業順を調整したうえで、職人へ内容を伝えます。
「職人さんから『それは聞いていない』『準備していない』とは言わせません。現場に入って、こちらで交通整理するのがうちのやり方です」
商業施設の現場では、複数業種が同時に作業していることも珍しくありません。そこで「この時間は床を進めたいので、ここを空けてほしい」といった折衝まで引き受けることで、元請けの現場監督が抱える煩わしさを減らしてきました。
価格だけで比べれば、必ずしも最安ではありません。それでも現場側から継続して選ばれているのは、打ち合わせ不足による手戻りを防ぎ、監督が本来の管理業務に集中できるからです。
ただし、首都圏ではこの役割を社長自身が担っています。協力会社を増やしても、間に入る人が仕上げ工事を理解していなければ、かえって打ち合わせに時間がかかります。実際に、職人を管理する仲介者が仕上げ工事に詳しくなく、意思疎通に苦労する場面もありました。
問題は仕事量の多さだけではなく、顧客が評価している「現場の交通整理」が社長の経験と判断に属人化していることです。
協力会社についても、人数の多い会社を求めているわけではありません。クロスならクロス、床なら床を直接施工でき、仕事の話が通じる一人親方でもよい。加えて、ゼネコン現場へ入るための健康保険や労災などを整えていることが条件です。
つまり、首都圏拠点に必要なのは、単なる人員の補充ではありません。
社長が担ってきた現場調整を引き継ぐ責任者と、仕上げ工事の話が直接通じる協力会社網をセットで整える必要があります。
継続案件・拠点コスト・現地体制を見える化したうえで進める段階的な権限移譲
首都圏拠点を本格化する前に、まず「仕事があるか」ではなく、「どの条件が揃えば社長が離れられるか」を整理します。順番は、収益の確認、現地運営の最低条件の設定、権限移譲の3段階です。
1.首都圏売上を継続性と実質収益で分ける
最初に、首都圏案件を顧客別、現場別に並べます。少なくとも、次の項目は分けて確認したいところです。
- 継続的に依頼がある既存顧客か、単発案件か
- 受注件数と、体制不足で断った件数
- 工事粗利と、移動費・宿泊費・車両費を引いた後の収益
- 社長が現場、移動、見積もりに使った時間
- 材料や道具の運搬が必要だった回数
社長の人件費や移動時間を考慮せずに売上だけを見ると、拠点が採算に乗っているように見えやすくなります。反対に、現地に責任者や倉庫を置けば減らせる費用もあります。
「現状の出張対応にかかる年間負担」と「現地責任者・事務所・倉庫を持つ年間負担」を比較すると、拠点本格化の判断が具体的になります。
2.営業所を本格化する最低条件を先に決める
売上が一定額を超えたら出店する、という基準だけでは不十分です。この会社の場合は、次の条件を組み合わせて判断するのが現実的です。
- 継続案件の見通しが立っている
- 複数現場が同時進行しても、現地で管理できる
- クロス、床、塗装など主要工種の協力会社が確保できている
- 現地責任者候補が、仕上げ工事と元請け対応を理解している
- 材料運搬の頻度から、倉庫付き事務所の必要性を説明できる
- 社長が本社へ戻っても、見積もりと現場情報が滞らない
現在のシェアオフィスを倉庫付き事務所へ変えるかどうかも、見栄えや拠点らしさで決める必要はありません。材料の運搬回数、保管量、車での移動負担が継続的に発生しているかを基準にします。
人材、協力会社、保管場所のうち、どれか一つだけを先に整えるのではなく、拠点運営に必要な最小単位としてまとめて設計することが重要です。
3.社長の仕事を分解し、一現場ずつ権限を渡す
現地責任者を採用しても、初日から社長と同じ判断を任せることはできません。特に、この会社の強みである他業種との交通整理や元請けへの対応は、経験だけでなく、自社の仕事の進め方を理解する必要があります。
まず、社長の業務を次のように分けます。
- 現地調査と元請けとの初回打ち合わせ
- 見積もり作成と受注判断
- 協力会社の選定と発注
- 工程、材料、他業種との調整
- 施工中の確認と変更対応
- 完了確認と次回案件への引き継ぎ
そのうえで、最初は同行、次に一部工程の管理、最後に一現場全体の管理へと任せる範囲を広げます。金額、工期、追加工事など、社長確認が必要な条件もあらかじめ決めておくと、責任者が判断に迷いにくくなります。
見積もりについても、社長がすべて作り続けるのではなく、現地責任者が数量や施工条件を整理し、社長は金額と受注可否を確認する形から始められます。
権限移譲は、社長の仕事を丸ごと渡すのではなく、「情報収集」「段取り」「判断」を分け、一現場ずつ任せる範囲を広げる進め方が現実的です。
4.次の地域へ進む前に、首都圏を社長不在で回す
この会社には、関西圏からも仕事の依頼があります。大阪を拠点にすれば、京都、兵庫、奈良、和歌山までカバーできる構想です。しかし、首都圏を社長が担当したまま関西へ進めば、社長の移動先が増えるだけになりかねません。
関西進出の前に、首都圏で次の状態をつくる必要があります。
- 社長が一定期間不在でも現場が動く
- 現地責任者から本社へ必要な情報が上がる
- 協力会社への発注と現場調整が現地で完結する
- 社長は重要な見積もりと例外判断に集中できる
複数拠点展開の順番は「東京の次に大阪」ではなく、「東京を社長不在で回せるようにしてから大阪」です。
まとめ
既存顧客から遠隔地の依頼が増えることは、会社への信頼が商圏を越えて広がっている証拠です。一方で、立ち上げ期は社長が動けば動くほど仕事が増えるため、拠点が成長しているのか、社長の稼働が増えているだけなのかが見えにくくなります。
今回のようなケースでは、次の順番で整理すると判断しやすくなります。
- 継続案件と単発案件を分ける
- 移動、滞在、車両、社長の稼働を含めて収益を見る
- 現地責任者、協力会社網、資材保管場所の最低条件を決める
- 社長の現場管理業務を分解する
- 一現場ずつ権限を移し、社長不在で回る状態を確認する
拠点展開のゴールは営業所を持つことではなく、社長が移動し続けなくても、その会社らしい品質と対応を再現できる体制をつくることです。
首都圏拠点をどこまで本格化するか整理したい方へ
「仕事は増えているが、現地採用に踏み切る基準が決まらない」「協力会社、責任者、倉庫のどこから整えるべきかわからない」という段階では、売上だけでなく、現場管理の流れや社長の稼働まで並べて考える必要があります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。拠点展開についても、案件の継続性、現地体制、協力会社網、権限移譲の順番を一緒に整理できます。
「うちの場合は、まだ出張対応を続けるべきか」「何から数字にすればよいか」といった段階でも構いません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先としてご活用ください。































