県立高校の設備設計で15件を超える指名が届き、受注できるのは2、3件という現在地
関東圏で電気設備設計を手がける少人数の会社が、自治体の入札参加資格者名簿に登録されました。これまでは協力会社の下で設計業務に入ることが中心でしたが、今後は自社が受注者となり、公共案件の実績を積み上げようとしています。
名簿に載って間もないにもかかわらず、県立高校の空調設備改修、自動火災報知設備改修、運動施設の空調設備改修など、15件を超える指名が届きました。対象地域は県内全域です。
一見すると、案件を探す手間がなく、恵まれた状況に見えます。しかし、社内は通常の電気設計ですでに手いっぱいです。すべての案件へ対応できるわけではありません。
「指名案件が次々に来ていますが、少人数なので、実際に取れるのは2、3件です。どれに意思表示すればいいのか、まだ手探りです」
この会社に必要なのは案件数を増やすことではなく、15件以上の候補から、自社が無理なく履行できる2、3件を選ぶ仕組みです。
1週間で 21件の相談 がありました
- 9月10日内装工事会社兵庫県人材確保の相談
- 9月10日外構工事会社神奈川県協力会社探しの相談
- 9月10日総合建築宮崎県利益率向上の相談
- 9月9日総合土木兵庫県人材育成の相談
- 9月9日内装工事会社秋田県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
- 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
- 9月8日工務店広島県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社和歌山県高卒採用の相談
- 9月7日塗装工事会社三重県利益率向上の相談
- 9月7日総合建築長崎県案件獲得の相談
- 9月7日防水工事会社三重県業務効率化システムの相談
- 9月6日内装工事会社東京都協力会社探しの相談
- 9月5日設備保全会社東京都高卒採用の相談
- 9月5日総合土木北海道原価管理の相談
- 9月5日内装工事会社千葉県案件獲得の相談
- 9月5日設備保全会社茨城県協力会社探しの相談
- 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
- 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
- 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
案件金額の大きさだけでは、参加すべき2、3件を決められない難しさ
指名案件が多いと、予定価格や案件金額が大きいものから検討したくなります。実際、届いている案件には数百万円規模から1,000万円を超えるものまで幅がありました。
ただし、案件金額が大きいほど、自社にとって良い案件になるとは限りません。県内全域が対象であれば、現地確認や打ち合わせの移動時間が増えます。学校ごとに設備の状況も異なり、空調と自動火災報知設備では必要な知識や外部との連携先も変わります。
さらに、初めて直接受注する段階では、落札後の書類や発注者との調整を含め、実際にどれだけ工数がかかるかを正確に読みにくいものです。同時期に複数案件を受注できても、通常業務と履行時期が重なれば、社内の負荷は急に高まります。
見るべきなのは「いくらの案件か」ではなく、「いつ、誰が、何時間を使い、どの体制で完了させ、どれだけ利益と実績を残せるか」です。
選定基準がないまま個別に判断すると、その都度迷うだけでなく、複数案件の比較も難しくなります。まずは、社内で共通して使える判断軸を置く必要があります。
下請けで経験した業務でも、直接受注では見えない工数が加わる構造
この会社には、電気設備設計そのものの経験があります。一方で、自社名義で入札し、受注者として一連の業務を進めるのは初めてでした。
「デスクワークとしては、これまでやってきた仕事と大きく変わりません。ただ、発注者から直接受けるのは初めてなので、その先の流れがまだ見えていません」
ここに、参加案件を選びにくい理由があります。設計作業の工数は見積もれても、現地調査、発注者との調整、提出書類、修正対応、外部の設備設計者との連携など、直接受注に伴う工数には未経験の部分が残ります。
入札金額についても、一度提示した金額が高いと判断され、再入札となった案件がありました。金額を下げれば受注確度は上がるかもしれませんが、必要工数を把握しないまま下げれば、受注後に利益が残らない可能性があります。
また、候補案件には、事務所から近い学校もあれば、移動負担の大きい学校もあります。遠方案件は、設計時間が同じでも移動を含めた総工数が膨らみます。
少人数の会社にとって、指名件数の多さはそのまま受注余力を意味しません。通常業務を止めずに完了できる件数こそが、本当の受注可能件数です。
受注可能件数を先に決め、8つの判断軸で指名案件を比較する進め方
参加案件を絞るときは、案件一覧を眺めながら感覚で選ぶのではなく、最初に「何件まで受注できるか」を決めます。この会社の場合は、15件以上の指名に対して、受注目標は2、3件です。
ここで大切なのは、2、3件という数字を希望ではなく、履行時期ごとの稼働時間から確認することです。通常の設計業務を含めて月ごとの予定を並べ、公共案件に使える時間を見えるようにします。
そのうえで、各案件を次の8項目で評価します。
- 移動距離:現地までの往復時間、訪問回数、交通負担は許容範囲か
- 必要工数:現地調査、設計、打ち合わせ、書類、修正を含めて何時間かかるか
- 専門性との適合:空調、電気、自動火災報知設備など、自社の経験を生かせるか
- 外部体制:設備設計者など、必要な協力先を履行時期に確保できるか
- 受注確度:競合状況や過去の入札結果を踏まえ、現実的に落札を狙えるか
- 粗利:外注費、移動費、社内工数を差し引いて利益が残るか
- 履行時期:通常業務やほかの候補案件と繁忙期が重ならないか
- 実績価値:完了後、次の指名や類似案件につながる実績になるか
各項目を5段階で採点すると、金額だけでは見えなかった違いを比較しやすくなります。ただし、合計点だけで機械的に決めるのではなく、次のような条件は「参加を見送る基準」として先に設定しておく方が安全です。
- 必要な協力先を確保できない
- 履行時期の社内工数が上限を超える
- 入札価格を下げると最低限の粗利を割り込む
- 移動を含めると通常業務への影響が大きい
- 現時点の経験では品質を担保しにくい
点数の高い案件を選ぶ前に、「受注してはいけない条件」を決めておくと、売上への期待に引っ張られにくくなります。
初年度は小口案件と中規模案件のどちらを選ぶか
直接受注が初めてなら、小口案件には一連の流れを経験しやすい利点があります。ただし、小口であっても遠方で訪問回数が多ければ、利益も学習効果も薄くなることがあります。小さいという理由だけで選ぶのは避けたいところです。
小口案件を優先しやすいのは、次の条件がそろう場合です。
- 事務所から近く、移動負担が小さい
- 自社が経験してきた設計領域に近い
- 履行期間に余裕がある
- 書類や発注者対応を含む流れを一通り経験できる
- 赤字にならない粗利を確保できる
一方、中規模案件でも、専門性との相性がよく、協力体制が確保でき、履行時期が重ならないのであれば、有力な候補になります。実績としての価値が高く、次の類似案件にもつながりやすいからです。
初年度の判断軸は「小口か中規模か」ではなく、「利益を守りながら直接受注の一連の流れを学べるか」です。
受注可能枠が2、3件なら、得意領域の中規模案件を中心に置き、近距離で負荷の読める小口案件を組み合わせる考え方もあります。ただし、複数案件を同時に取る場合は、落札後の修正時期や納期が重なったケースまで確認しておく必要があります。
最初の受注結果を次の選定基準に反映する
初年度から工数や入札金額を完全に読み切るのは難しいため、最初の案件を終えた後に実績を記録します。
記録したいのは、当初見込みと実績の差です。
- 現地訪問の回数と移動時間
- 社内で使った設計時間
- 外部へ依頼した業務と費用
- 書類作成や修正対応の時間
- 当初見込んだ粗利と実際の粗利
- 入札から完了までに詰まった工程
案件選定の精度は、一般的な相場だけでなく、自社の実績データを蓄積するほど高まります。 1件目の経験を2件目の工数見積もりへ反映し、案件ごとの採点基準を更新していくことが、無理のない受注拡大につながります。
まとめ
指名入札が多く届く会社では、案件を探す営業よりも、参加案件を選ぶ経営判断が重要になります。
今回のように、15件以上の指名に対して受注可能件数が2、3件であれば、まず履行時期ごとの社内余力を確認します。そのうえで、移動距離、必要工数、専門性、外部体制、受注確度、粗利、履行時期、実績価値を同じ基準で比較します。
案件金額ではなく、限られた人員で最後まで完了でき、利益と次につながる実績を残せるかで優先順位を決めることが大切です。
初年度は、単に小口案件を選べばよいわけではありません。直接受注の流れを学べること、得意領域に近いこと、移動や書類を含めても利益が残ること。この3点を満たす案件から経験を積むと、次の指名を判断しやすくなります。
自社に合う指名案件の選び方を整理したい方へ
指名は届いているものの、「何件まで受けられるのか」「どの案件を優先すべきか」「入札価格を下げても利益が残るのか」を社内だけで整理するのが難しいこともあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、販路、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。指名案件の評価基準づくりや入札業務の整理など、「うちの場合は何から整理すべきか」という段階からでも一緒に検討できます。
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