前提

県立学校の設備設計で指名入札が十数件届き、初回受注を目指している少人数の設計会社

首都圏に拠点を置く、少人数の電気設備設計会社があります。これまでは協力会社のもとで公共案件に携わってきましたが、県の入札参加資格者名簿に載ったことをきっかけに、発注者から直接受注する取り組みを始めました。

対象となるのは、県立学校の空調設備改修、自動火災報知設備の改修、運動施設の設備改修などに伴う設計業務です。名簿登録後、県内各地から十数件の指名が届き、その中から事務所との距離や社内の対応力を見ながら、2〜3件の受注を目指しています。

「これまでも設計業務自体はやってきました。ただ、発注者から直接受注するのは初めてなので、いくらで手を挙げればよいのかが見えません」

案件規模は数百万円から1,000万円前後で、比較的大きいものでは1,000万円を超えます。ところが、最初に参加した案件では提示額が高いと判断され、再入札となりました。

業務経験があっても、直接入札を始めた直後は「自社の原価」と「発注者・競合の価格感」の接点がまだありません。まず必要なのは、勘で値下げすることではなく、その接点を案件ごとに確かめられる形にすることです。

1週間で 21件の相談 がありました

  • 9月10日内装工事会社兵庫県人材確保の相談
  • 9月10日外構工事会社神奈川県協力会社探しの相談
  • 9月10日総合建築宮崎県利益率向上の相談
  • 9月9日総合土木兵庫県人材育成の相談
  • 9月9日内装工事会社秋田県人材確保の相談
  • 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
  • 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
  • 9月8日工務店広島県人材確保の相談
  • 9月8日内装工事会社和歌山県高卒採用の相談
  • 9月7日塗装工事会社三重県利益率向上の相談
  • 9月7日総合建築長崎県案件獲得の相談
  • 9月7日防水工事会社三重県業務効率化システムの相談
  • 9月6日内装工事会社東京都協力会社探しの相談
  • 9月5日設備保全会社東京都高卒採用の相談
  • 9月5日総合土木北海道原価管理の相談
  • 9月5日内装工事会社千葉県案件獲得の相談
  • 9月5日設備保全会社茨城県協力会社探しの相談
  • 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
  • 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
  • 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
  • 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
  • 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
  • 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
  • 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
  • 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
  • 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
  • 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
  • 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
  • 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
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課題

600万円前後で積算した案件を、再入札でどこまで下げられるか判断できない状態

一番の悩みは、再入札で価格をどこまで下げるかです。

「こちらでは500万〜600万円程度と見ていますが、発注者はもっと安くしてほしいのだろうと感じています。ただ、どこまで下げれば落札できるのかが分かりません」

入札を始めたばかりの段階では、落札実績を一つつくり、一連の流れを経験したいという考えもあります。そのため、通常より利益を抑えてでも受注する選択肢はあり得ます。

一方で、価格を下げれば落札できるとは限りません。仮に落札できても、現地調査、設計、図面作成、打ち合わせ、修正対応、書類作成に想定以上の時間がかかれば、社内の設計リソースを圧迫します。十数件の指名が届いていても、実際に対応できるのが2〜3件なら、採算の低い案件が次の案件を受ける余力まで奪う可能性があります。

ここで分けて考えたいのは、次の二つです。

  • 落札するために、いくらまで下げる必要があるか
  • 自社の採算を守るために、いくらまでしか下げられないか

この二つは同じ価格になるとは限りません。

再入札で先に決めるべきなのは「いくらなら落札できそうか」だけではなく、「いくらを下回ったら受注しないか」です。落札可能性と撤退ラインを同時に持つことで、値下げが経営判断になります。

背景

協力会社としての設計経験はあっても、元受け価格を組み立てるための入札データが不足している状況

価格設定が難しい背景には、設計技術の不足ではなく、直接受注に必要なデータと経験の不足があります。

これまでは協力会社として業務に入っていたため、実際の設計作業や納品物については理解できています。しかし、発注者との契約、入札価格の設定、提出書類、落札後の手続きまでを自社で担うのは初めてです。

また、指名案件が短期間に十数件届いたため、一つずつ十分に検証する前に、参加意思や入札額を決めなければならない状況も生まれています。

「まずは一件落札して、落札後の流れや実際の利益率まで経験したい」という考えは自然です。ただし、初回案件を単なる安値受注にすると、次回に活かせる情報が残りません。必要なのは、見積時点の想定と実績を比較できる状態です。

たとえば、同じ学校設備の設計でも、次の条件によって必要工数は変わります。

  • 現地調査の回数と移動距離
  • 対象棟や設備の数量
  • 既存図面や設備資料の有無
  • 電気設備以外の設計者との連携範囲
  • 発注者との打ち合わせ回数
  • 成果物の種類と提出形式
  • 修正対応の範囲と回数
  • 業務期間と他案件との重なり

数百万円の案件を一つの相場観だけで捉えると、こうした条件差が価格に反映されません。自動火災報知設備の設計を「高く見積もりすぎたかもしれない」と感じても、どの工数が相場より多いのか、外注費が高いのか、諸経費の置き方が違うのかを分けなければ、適切な修正は難しくなります。

「入札価格が高かった」という結果だけでは、次の価格は決められません。仕様書から積み上げた原価、過去の落札相場、今回の応札結果を分けて記録することが、価格精度を高める土台になります。

解決

仕様書による原価積算、過去の落札相場、最低利益の三つを重ねて入札額を決める手順

入札価格は、原価だけでも、相場だけでも決められません。次の順番で三つの価格を出すと、再入札で下げられる幅が見えやすくなります。

  1. 自社の原価から算出する「撤退ライン」
  2. 確保したい利益を含めた「目標価格」
  3. 過去の入札結果から推測する「落札可能価格」

1.仕様書を作業単位に分けて原価を積み上げる

最初に、仕様書を読んで総額を置くのではなく、業務を作業単位に分けます。学校設備の設計業務であれば、現地調査、既存資料の確認、設計検討、図面作成、数量計算、打ち合わせ、修正、成果物の取りまとめなどです。

それぞれについて、担当者、想定時間、社内原価を設定します。社内原価は給与だけではなく、法定福利費や会社負担分を含め、1時間または1日当たりの原価に直しておくと使いやすくなります。

積算の基本形は、次のように整理できます。

  • 社内人件費:作業別の想定工数×社内原価
  • 外注費:協力する設備設計者などから取得した見積額
  • 直接経費:交通費、現地調査費、印刷・製本費など
  • 諸経費:入札、契約、請求、書類管理などにかかる間接費
  • 利益:案件で最低限確保したい金額

特に移動距離は軽視しにくい項目です。県内全域の学校から指名が届く場合、現地までの往復時間も社内リソースを使います。遠方案件は交通費だけでなく、移動時間を含めて比較する必要があります。

仕様書から工数・外注費・直接経費・諸経費を積み上げた金額が、自社側の価格根拠です。まずこの数字を作らなければ、再入札の値下げが「削減」なのか「赤字化」なのかを判断できません。

2.過去の入札結果から同種案件の価格帯を調べる

次に、発注機関が公開している過去の入札結果を確認します。見る対象は、同じ発注機関、同じ業務区分、似た施設・設備、近い規模の案件です。

最低限、次の項目を一覧にします。

  • 案件名と業務内容
  • 予定価格が公表されている場合はその金額
  • 落札価格
  • 応札者数
  • 各社の入札額
  • 落札率
  • 再入札の有無
  • 入札時期

一件だけではなく、条件の近い案件を複数並べることが大切です。学校の空調設備設計と自動火災報知設備設計では、必要な専門性や成果物が異なるため、同じ「学校案件」として平均を取るだけでは粗くなります。

また、予定価格や最低制限価格などの扱いは、発注機関や業務区分によって異なります。個別の公告、入札説明書、要領を確認したうえで比較します。

過去の落札価格が自社の原価を継続的に下回る場合は、積算ミスだけでなく、自社の進め方や外注構造では採算が合いにくい案件である可能性もあります。その場合は、無理に相場へ合わせるより、別の規模や設備区分を選ぶ判断が必要です。

過去の落札結果は「その金額に合わせるための答え」ではなく、自社の原価構造で勝負できる案件かを見極める比較材料です。

3.最低利益を金額で決めて撤退ラインを出す

初回実績を優先する場合でも、利益を曖昧にしたまま価格を下げるのは避けたいところです。最低利益は、利益率だけでなく金額でも設定します。

たとえば、次の三段階で考えると判断しやすくなります。

  • 通常利益:継続受注を前提に確保したい利益
  • 初回案件の利益:経験や実績を得る目的で抑えてもよい利益
  • 撤退ライン:追加修正などに備える余地を残した最低価格

初回案件で利益を抑える場合は、減らした利益を「入札や元受け業務を学ぶための費用」として社内で明確にします。そうすれば、次回以降も同じ安値を続けることを防げます。

なお、撤退ラインは単純な原価と同額にしないほうが安全です。仕様書を読んだ段階では把握できない修正や調整が発生する可能性があるためです。どの程度の余地を持たせるかは、成果物、発注者との調整範囲、社内経験の有無を見ながら決めます。

4.三つの価格を並べて再入札額を判断する

ここまで整理できたら、撤退ライン、目標価格、落札可能価格を一枚に並べます。

  • 落札可能価格が目標価格以上なら、その範囲で応札する
  • 落札可能価格が目標価格を下回るなら、初回実績として利益を抑えるか検討する
  • 落札可能価格が撤退ラインを下回るなら、原則として見送る

再入札だからといって、必ず値下げしなければならないわけではありません。仕様や契約条件を再確認し、削減できる工数や外注範囲があるなら原価を組み直します。一方、業務内容を変えられないまま金額だけを下げる場合は、利益が減るだけです。

再入札額は「前回よりいくら下げるか」ではなく、「見直せる原価はいくらか」「初回実績に使える利益はいくらか」「撤退ラインを超えているか」で決めます。

5.初回受注後は見積工数と実績工数を必ず比較する

最初の一件は、売上だけでなく次の積算基準をつくる案件でもあります。受注後は、作業別に実績時間、外注費、移動時間、修正回数を記録します。

見積時点との差が大きかった項目を確認すれば、次回から価格を補正できます。たとえば、現地調査より図面修正に時間がかかったのであれば、次回は修正工数を増やします。遠方案件で移動負担が大きかったのであれば、地域別に経費や工数を変えることもできます。

十数件の指名から2〜3件を選ぶ際も、案件金額の大きさだけでなく、想定利益額、必要工数、移動距離、納期の重なりを並べると、自社に合う案件を選びやすくなります。

初回案件の目的は、一件落札することだけではありません。見積と実績の差を記録し、次の入札価格を自社データで決められる状態にすることまでが一つの区切りです。

まとめ

公共案件の入札を始めた直後は、予定価格や競合の価格感が見えず、初回の入札額が高値になることがあります。再入札になったときに大切なのは、落札を急いで一律に価格を下げないことです。

判断の順番は、次のように整理できます。

  1. 仕様書から工数、外注費、直接経費、諸経費を積み上げる
  2. 過去の入札結果から同種案件の価格帯を調べる
  3. 通常利益、初回案件の利益、撤退ラインを決める
  4. 落札可能価格と撤退ラインが重なる範囲で応札する
  5. 受注後に見積工数と実績工数を比較する

落札価格の正解は、相場だけでは決まりません。自社の原価、確保したい利益、受注余力を踏まえ、利益を残して続けられる価格を見つけることが大切です。

自社に合う入札価格と収支管理を一緒に整理したい方へ

指名案件が増えても、「どの案件を選ぶか」「いくらで応札するか」「どこを撤退ラインにするか」が整理されていないと、判断は社長や担当者の経験に集中しやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、案件選定、販路拡大、原価管理、組織体制、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。入札価格そのものだけでなく、積算方法や案件ごとの収支記録を含め、持続的に受注できる仕組みを一緒に考えます。

「うちの場合は、何を原価に含めればよいのか」「初回実績を優先するなら、どこまで利益を下げてよいのか」という段階でも問題ありません。状況を伺ったうえで整理しますので、無理にサービスをおすすめすることはありません。

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