前提

売上約1億5,000万円まで伸びる一方、工事延期で職人の待機期間が生まれた創業間もない設備工事会社

兵庫県を中心に設備工事を手がける、創業間もないある建設会社では、初年度から大規模案件と小口案件を積み重ね、売上を約1億5,000万円まで伸ばしました。

社内には数名の職人がおり、専属に近い一人親方とも継続的に協業しています。さらに、必要に応じて動いてもらえる協力業者のネットワークもあり、一定規模の工事に対応できる施工体制を築いていました。

ところが、売上が伸びた初年度の決算は赤字でした。問題になったのは、施工中の案件そのものだけではありません。予定していた大型工事が延期され、約3カ月にわたって仕事の薄い期間が発生したことでした。

「休んでもらっている間も、社員と専属の協力業者には支払いを続けました。売上は入ってこないのに、人件費は出ていく状態でした」

職人を守った判断には、会社として大きな意味があります。いったん離れてもらえば、次の大型工事が始まるときに戻ってきてもらえるとは限らないからです。一方で、経営管理の面では、その待機期間にかかる費用まで含めて採算を見る必要があります。

売上が増えていても、工事の空白期間に発生する人件費を回収できなければ、通期では赤字になることがあります。

1週間で 21件の相談 がありました

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  • 9月11日外構工事会社沖縄県業務効率化システムの相談
  • 9月11日解体工事会社兵庫県人材確保の相談
  • 9月11日電気設備工事会社三重県案件獲得の相談
  • 9月10日内装工事会社兵庫県人材確保の相談
  • 9月10日外構工事会社神奈川県協力会社探しの相談
  • 9月10日総合建築宮崎県利益率向上の相談
  • 9月9日総合土木兵庫県人材育成の相談
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  • 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
  • 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
  • 9月8日工務店広島県人材確保の相談
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課題

案件ごとの粗利だけでは見えにくい、社員と専属協力業者の待機コスト

この会社では、これまで利益率10%程度を一つの目安に受注していました。しかし、数カ月分の待機コストが発生すると、通常の案件利益だけで前期の赤字を取り戻すのは簡単ではありません。

そこで、新たに交渉する案件については、15%程度を確保できるよう見積価格を引き上げ始めました。ただし、価格を上げれば、競合会社に案件が流れる可能性も高まります。

「利益率は少しでも上げたい。でも、高くなるほど競合が有利になるので、仕事がなくなるくらいなら下げる判断も必要です」

この迷いは、単なる値上げの問題ではありません。難しいのは、目の前の案件で得られる粗利と、その案件を取れなかった場合に発生する待機コストを同時に考えなければならない点です。

たとえば、粗利率の低い案件でも、職人の空白を埋めて固定的な人件費を回収できるなら、受注する意味はあります。反対に、売上額が大きくても、追加の応援費や現場管理の負担が膨らみ、他案件の施工まで圧迫するなら、会社全体の利益にはつながらないことがあります。

見るべき数字は案件単体の粗利率だけではなく、待機期間を含めた施工体制全体の採算です。

背景

大型工事の延期と、次の受注まで手放せない施工体制の両立

待機コストが膨らんだ直接の理由は、予定していた複数の工事が延期されたことです。当初は年間売上3億円規模を見込んでいましたが、工事の中止や先延ばしにより、約1億円分が翌期以降へずれ込みました。

一方、数カ月後には大型工事が始まる予定でした。そのため、一時的に仕事がないからといって職人や専属協力業者との関係を切ると、受注済みの工事を施工できなくなる可能性があります。

同社の施工体制は、社員と専属協力業者を中心に、案件が重なったときは幅広い協力業者に入ってもらう形です。仕事がない時期には外部の協力業者に別の現場へ行ってもらえますが、社員と専属協力業者については、できる限り仕事を切らさない方針でした。

つまり、同じ「協力業者」でも、経営上の位置づけは異なります。

  • 社員や専属協力業者は、次の工事に備えて維持する中核の施工力
  • 案件の繁閑に応じて依頼する協力業者は、施工量を調整するための外部戦力
  • 大型工事は売上の柱になる一方、延期すると大きな空白を生みやすい案件
  • 小口・短期工事は移動や段取りが増える一方、空白を埋めやすい案件

同社が求めていたのも、大型工事だけを増やすことではありませんでした。

「5,000万円くらいの現場が一本あって、その隙間に500万円くらいの現場が複数ある状態がちょうどいいです」

大型工事ばかりでは、工程が重なったときに管理負担が集中します。小口工事ばかりでは、複数現場を行き来する負担が増えます。どちらかに寄せるのではなく、工期と必要人数の違う案件を組み合わせることが重要です。

職人を抱える会社では、受注額の最大化よりも、年間を通じて施工力を途切れさせない案件構成が利益を左右します。

解決

待機費を見積原価に織り込み、大型工事と短期案件を組み合わせる採算管理

最初に整理したいのは、職人を「今月稼働している人数」だけで捉えないことです。社員や専属協力業者を維持するために必要な年間費用を把握し、それをどの案件で回収するかまで考えます。

1.年間の待機コストを先に見えるようにする

過去の実績から、工事の切り替わりや延期によって年間にどの程度の空白が生じるかを確認します。そのうえで、社員給与や専属協力業者への支払いなど、稼働がなくても発生する費用を整理します。

確認したい数字は、少なくとも次の3つです。

  • 中核として維持する社員・専属協力業者の人数
  • その体制を1カ月維持するために必要な費用
  • 過去に発生した空白期間と、その間にかかった費用

待機費を年間の必要粗利に加えれば、各案件で最低限確保したい粗利の基準が見えやすくなります。単純に一律15%へ値上げするのではなく、会社全体で必要な粗利額から逆算する考え方です。

粗利率の目標は感覚で決めず、年間の人件費と想定待機費を回収できる水準から逆算します。

2.受注見込みを「金額」ではなく「確度と着工時期」で分ける

契約予定額が積み上がっていても、着工延期の可能性があれば、施工予定は埋まりません。受注見込みは、案件金額だけでなく、契約状況、着工予定、延期の可能性を分けて管理します。

たとえば、契約済みで工程が固まっている案件、受注可能性は高いものの着工日が動く案件、交渉中の案件を同じ売上見込みとして扱わないことが大切です。特に大型工事は、着工が一つずれるだけで複数人の空白につながるため、確定案件だけで人員を埋められる期間を確認します。

受注残が多いことと、来月の職人の仕事が埋まっていることは別の状態です。

3.大型工事の隙間を埋める短期案件を確保する

大型工事は年間売上の柱として維持しつつ、着工前後や工程の谷間に入れられる短期案件を組み合わせます。選ぶ際は、売上額だけではなく、次の大型工事へ影響を残さず完了できるかを見ます。

判断軸になるのは、工期、必要人数、現場までの移動、段取りの負担、工期変更への対応余地です。短期案件の粗利率が多少低くても、待機予定だった職人を稼働させ、人件費の一部を回収できるなら、通期採算にはプラスになる場合があります。

ただし、大型工事の着工が前倒しされたときに抜けられない案件は避けた方がよいでしょう。空白を埋める案件には、金額以上に工程調整のしやすさが求められます。

4.見積価格は粗利率と稼働状況の両方で判断する

すべての案件で一律の粗利率を求めると、受注競争力を落とす可能性があります。そこで、見積時には案件を役割別に考えます。

  • 年間利益をつくる柱の案件は、待機費や管理負担を含めて必要粗利を確保する
  • 工程の隙間を埋める案件は、追加原価を回収できることを条件に価格を調整する
  • 人員が埋まっている時期の案件は、応援費や管理負担を含めて高めに見積もる
  • 延期の可能性が高い案件は、売上見込みへ過度に織り込まない

大切なのは、「競合より高いか安いか」だけで決めないことです。その案件を受けた場合と受けなかった場合で、会社全体の粗利額と職人の稼働がどう変わるかを比較します。

見積価格は一律に上げ下げするのではなく、案件が年間工程の中で果たす役割に応じて判断します。

まとめ

売上が伸びたのに赤字になる背景には、工事原価の超過だけでなく、工事延期による職人の待機コストが隠れていることがあります。とくに社員や専属協力業者を維持する会社では、案件別の粗利だけを見ても、実際の採算を捉えきれません。

整理したいポイントは次の4つです。

  • 社員・専属協力業者を維持する年間費用と待機費を把握する
  • 受注見込みを契約状況、着工時期、延期可能性で分ける
  • 大型工事と、隙間を埋められる短期案件を組み合わせる
  • 粗利率だけでなく、受注後の稼働状況まで見て見積価格を決める

職人を守りながら利益を残すには、「いくら受注したか」より「年間を通じて誰をどの案件で稼働させるか」を管理することが重要です。

自社の待機コストと必要粗利を整理したい方へ

待機コストをどこまで見積価格へ反映するか、大型工事と短期案件をどう組み合わせるかは、施工体制や取引先、受注案件の特徴によって変わります。「うちの場合はどの数字から見ればよいか」「利益率を上げると受注を失いそうで判断できない」という段階からでも整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の収支管理を、現場の稼働状況、受注見込み、原価管理まで横断して整理し、実行まで支援しています。無理にサービスを勧めることはありませんので、次期の必要粗利や案件構成を考える際の整理先としてご活用ください。

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