国土交通省は、令和8年6月24日に「国土交通月例経済(令和8年6月号)」を公表しました。建設分野では、2026年4月の元請受注高が前年同月比で減少した一方、下請受注高、新設住宅着工戸数、建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は増加しています。また、建設工事費デフレーターも前年同月差で上昇しており、受注環境と原価環境を分けて見る必要がある内容です。
公表資料 | 国土交通月例経済(令和8年6月号) |
公表日 | 令和8年6月24日 |
2026年4月の元請受注高 | 6兆7,555億円(前年同月比2.5%減) |
2026年4月の下請受注高 | 4兆2,411億円(前年同月比28.3%増) |
2026年4月の新設住宅着工戸数 | 62,569戸(前年同月比11.4%増) |
2025年度第4四半期のリフォーム・リニューアル受注高 | 3兆7,037億円(前年同期比10.8%増) |
2026年3月の建設工事費デフレーター | 建設総合135.4ポイント(前年同月差6.6ポイント増) |
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- 6月9日設備保全会社京都府
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まず押さえたいのは「元請は減少、下請は増加」というねじれです
2026年4月の建設工事の元請受注高は、6兆7,555億円で、前年同月比2.5%減でした。内訳を見ると、公共機関からの受注高は1兆5,654億円で1.6%減、民間等からの受注高は5兆1,902億円で2.8%減です。
一方で、下請受注高は4兆2,411億円、前年同月比28.3%増となっています。
この数字から読み取れる大事な点は、市場全体を「良い」「悪い」で一括りにしないことです。元請受注はやや減っている一方で、下請側の受注は大きく増えています。中小建設業、とくに専門工事会社や地域の協力会社にとっては、受注機会が増えている領域がある可能性があります。
ただし、下請受注が増えているからといって、利益が自動的に増えるとは限りません。材料費、労務費、外注費、運搬費が上がる局面では、売上の増加よりも粗利の確保が重要になります。受注量が増えている会社ほど、見積条件、追加変更、支払条件、工期の無理を丁寧に確認する必要があります。
工事種別では、土木・建築が減り、機械装置等が増えています
工事種類別に見ると、2026年4月の元請受注高は、土木工事が1兆5,916億円で前年同月比5.1%減、建築工事・建築設備工事が4兆2,430億円で5.3%減でした。一方、機械装置等工事は9,210億円で19.2%増です。
ここでも、建設需要の中身が均一ではないことが分かります。土木、建築、設備、機械装置等で動きが分かれており、自社がどの領域に依存しているかによって、感じる景況感は大きく変わります。
中小建設業が見るべきなのは、全国平均そのものよりも、次の3点です。
- 自社の主力工種が、伸びている領域に近いのか、減っている領域に近いのか
- 元請案件中心なのか、下請案件中心なのか
- 新築、改修、設備、維持修繕のどこに売上が偏っているのか
統計は「景気を当てるため」だけのものではありません。むしろ、自社の受注ポートフォリオを点検する材料として使うと実務に効きます。
住宅着工は増加、特に持家・貸家が伸びています
2026年4月の新設住宅着工戸数は62,569戸で、前年同月比11.4%増でした。利用関係別では、持家が16,296戸で19.5%増、貸家が29,265戸で17.3%増、分譲住宅が16,702戸で3.4%増となっています。給与住宅は306戸で79.1%減です。
住宅関連の会社にとっては、新設住宅着工が増えていることは前向きな材料です。ただし、増加しているからといって、すべての地域・すべての会社に同じ追い風が吹くわけではありません。
地域別では、東京圏が23,880戸で15.4%増、名古屋圏が5,947戸で50.8%増、大阪圏が9,575戸で1.7%増、その他が23,167戸で4.7%増です。特に名古屋圏の伸びが大きく出ています。
住宅関連の会社は、着工戸数の増減だけでなく、地域差と利用関係別の変化を見ることが重要です。持家が伸びるのか、貸家が伸びるのか、分譲が伸びるのかによって、求められる施工体制、価格帯、営業先、工期管理の考え方が変わります。
非住宅は全体として弱め、ただし倉庫は増加しています
民間建築主による建築物の着工床面積は、2026年4月に757万㎡で前年同月比4.5%減でした。非居住用建築物に限ると266万㎡で26.5%減となっています。
用途別では、事務所が31万8千㎡で16.4%減、店舗が31万1千㎡で22.5%減、工場が37万㎡で42.6%減。一方で、倉庫は79万1千㎡で49.8%増です。
ここは中小建設業にとって重要です。非住宅全体は弱く見えても、倉庫のように伸びている用途があります。民間建築を一括りにせず、事務所、店舗、工場、倉庫で分けて見る必要があります。
特に、民間建築に関わる会社は、既存の営業先だけを見ていると市場の変化を見落とす可能性があります。倉庫関連の動きが続くかどうかは今後の確認が必要ですが、少なくとも今回の統計では、用途ごとの濃淡がはっきり出ています。
リフォーム・リニューアルは堅調です
2025年度第4四半期の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は、合計3兆7,037億円で前年同期比10.8%増でした。住宅は1兆1,655億円で27.0%増、非住宅建築物は2兆5,381億円で4.7%増です。
この数字は、中小建設業にとって見逃せません。新築市場だけを追いかけるのではなく、改修・更新・リニューアルを事業の柱としてどう育てるかが、今後も重要になります。
リフォーム・リニューアルは、単発工事に見えがちです。しかし実際には、顧客接点を持ち続けやすく、追加工事や定期的な更新需要につながる可能性があります。特に住宅の伸びが大きいことを踏まえると、住宅関連の会社は、施工力だけでなく、点検、提案、見積、アフター対応まで含めた体制づくりが差になります。
中小企業にとっては、巨大案件を取りに行くよりも、既存顧客との関係を深め、粗利を確保しやすい改修案件を積み上げる戦略が現実的な選択肢になります。
原価上昇は続いています。見積の前提を古いままにしないことが大切です
2026年3月分の建設工事費デフレーターは、建設総合で135.4ポイント、前年同月差6.6ポイント増でした。建築総合は135.0ポイントで6.4ポイント増、土木総合は135.6ポイントで7.0ポイント増です。
これは、工事費の上昇圧力が続いていることを示す重要な数字です。受注が増えても、見積単価や契約条件が古いままだと、利益が残りにくくなります。
中小建設業が実務で確認したいのは、次のような点です。
- 見積単価をいつ更新したか
- 材料費や外注費の上昇を見積に反映できているか
- 長期工期の案件で価格変動リスクをどう扱っているか
- 追加変更工事の請求ルールが曖昧になっていないか
- 売上ではなく、工事別粗利で案件を見ているか
特に、下請受注が増えている局面では、忙しさに押されて条件確認が後回しになりがちです。しかし、原価が上がっている時期ほど、受注前の条件整理が利益を守る最大のポイントになります。
今回の統計から、中小建設業が考えたいこと
今回の月例経済は、単純な好況・不況のニュースではありません。むしろ、建設市場の中で、伸びている領域と弱い領域が分かれていることを示しています。
中小建設業としては、次のように整理すると実務に落とし込みやすくなります。
- 元請受注は減少しているが、下請受注は増加している
- 住宅着工は増加しており、持家・貸家の伸びが目立つ
- 非住宅は全体として弱いが、倉庫は増加している
- リフォーム・リニューアルは堅調に伸びている
- 建設工事費デフレーターは上昇しており、原価管理の重要性が増している
このような局面では、受注を増やすことだけが正解ではありません。どの工事を取り、どの条件で受け、どの粗利で終えるかが経営の分かれ目です。
特に、採算の悪い案件で人員を埋めてしまうと、次の良い案件を取りに行く余力がなくなります。市場の数字を見ながら、自社の主力工種、営業先、見積ルール、原価管理を一度並べ直す価値があります。
自社の受注と原価に置き換えて整理する
国の統計は、全国の大きな流れをつかむには有効です。一方で、最終的に大切なのは、自社の地域、自社の工種、自社の顧客に置き換えることです。
「下請受注が増えているなら、うちはどう動くべきか」「リフォームを伸ばしたいが、営業や管理の体制が追いつくか」「工事費上昇を見積にどう反映すべきか」。こうした問いは、会社ごとに答えが変わります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような統計を自社の受注戦略や利益管理に落とし込む際も、「うちの場合は何から見ればよいか」という段階から一緒に整理できます。
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