国土交通省は、令和8年度「インフラDX大賞」の候補案件募集を開始しました。建設現場の生産性向上に関する優れた取組を表彰し、ベストプラクティスとして横展開することを目的とした制度です。令和8年度は、i-Constructionの取組開始から10周年にあたります。

発表内容

令和8年度「インフラDX大賞」の募集開始

募集対象

インフラ分野で、データとデジタル技術を活用し、建設生産プロセスの高度化・効率化、国民サービスの向上、組織の働き方や文化・風土の改革等につながる優れた実績をあげた取組

応募要件

i-Construction・インフラDX推進コンソーシアムの会員であること

対象となる取組

公的機関を除く発注機関から受注し、令和7年度に完了した工事・業務の取組。元請け・下請けは問わない。その他、令和7年度に各団体が独自に実施した取組も対象

表彰内容

国土交通大臣賞、優秀賞、スタートアップ奨励賞

応募期限

令和8年9月17日(木)12時まで

主な提出物

応募フォーム、取組概要・効果を示すA4 2枚以内のPowerPoint、1分以内のmp4動画

今回の発表は、形式上は「表彰募集」です。ただし、中小建設業にとっては、単に賞を取りに行く話だけではありません。国土交通省が、これからの建設業にどのようなDXを期待しているのかが、かなり具体的に示されています。

1週間で 12件ダウンロード されました

  • 6月18日総合土木東京都
  • 6月18日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月18日防水工事会社岡山県
  • 6月16日配管工事会社青森県
  • 6月16日総合建築神奈川県
  • 6月16日電気設備工事会社東京都
  • 6月15日総合土木千葉県
  • 6月15日内装工事会社島根県
  • 6月15日設備保全会社群馬県
  • 6月14日内装工事会社栃木県
  • 6月14日塗装工事会社神奈川県
  • 6月13日解体工事会社神奈川県
  • 6月11日総合建築和歌山県
  • 6月11日総合土木静岡県
  • 6月11日プラント工事会社京都府
  • 6月11日空調設備工事会社神奈川県
  • 6月11日空調設備工事会社茨城県
  • 6月11日総合土木長野県
  • 6月10日総合建築広島県
  • 6月10日総合土木奈良県
  • 6月10日総合建築東京都
  • 6月10日内装工事会社愛知県
  • 6月9日設備保全会社京都府
  • 6月9日総合土木北海道
  • 6月9日設備保全会社山口県
  • 6月8日防水工事会社兵庫県
  • 6月8日電気設備工事会社神奈川県
  • 6月8日内装工事会社大阪府
  • 6月5日リフォーム会社愛知県
  • 6月5日プラント工事会社香川県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード

今回の募集で見える、国交省が重視するDXの方向性

今回の募集対象には、建設生産プロセスの高度化・効率化だけでなく、国民サービスの向上、組織の働き方や文化・風土の改革も含まれています。

特に積極的な応募を求めている取組として、国土交通省は次のようなものを挙げています。

  • オープンデータの利活用
  • インフラ分野のAI実装
  • 地方公共団体等でのインフラ分野のDX推進施策
  • i-Construction 2.0につながる取組
  • BIM/CIM
  • ICT施工StageII
  • 機械の稼働データや映像データなどの現場データ活用
  • 省人化、生産性向上につながる取組

ここで大事なのは、「DX=大きなシステムを入れること」ではなく、「現場や組織の仕事の進め方を、データとデジタル技術で変えること」として扱われている点です。

たとえば、現場の機械稼働データを使って段取りを見直す。映像データを使って施工管理や安全確認の負担を減らす。BIM/CIMや3次元データを使って、設計・施工・管理の手戻りを減らす。こうした動きが、i-Construction 2.0の文脈では「省人化」「生産性向上」と結びついて見られています。

中小建設業にとっての実務ポイントは「応募できるか」だけではありません

今回の制度に実際に応募するには、i-Construction・インフラDX推進コンソーシアムの会員であることが要件です。また、今回の募集は「i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門」に対するものです。

対象となる取組は、主に次の2つです。

  1. 国や地方公共団体等の公的機関を除く発注機関から受注した工事・業務で、令和7年度に完了した取組
  2. 令和7年度に各団体が独自に実施した取組

公的機関から受注した企業の取組は、別途「工事・業務部門」として発注者からの推薦を募ることとされています。また、地方公共団体の取組は、原則として「地方公共団体部門」への応募とされています。

中小建設業としてまず確認したいのは、自社の取組が「令和7年度に完了した実績」として説明できるかです。

「今まさに始めたばかりです」では、今回の募集対象としては整理が難しい可能性があります。一方で、すでに完了した工事や、社内で一定期間運用してきた業務改善があるなら、応募対象になり得ます。

ここでいう実績は、必ずしも派手なものである必要はありません。募集要項では、有効性、先進性、波及性の観点から審査するとされています。令和7年度からは、特に波及性の観点を重視して選考を行っているとの記載もあります。

つまり、「自社だけで終わる特殊な取組」よりも、「他の現場や他社にも応用できる取組」として説明できるかが重要です。

応募を考える会社が準備すべきもの

応募方法として、国土交通省は次の資料提出を求めています。

  • 応募フォームへの入力
  • 取組の概要や効果を示すPowerPointファイル
  • 取組の概要や効果を示す動画ファイル

PowerPointはA4で2枚以内です。動画は1分以内、mp4形式、アスペクト比16:9、ファイルサイズ120MB以内とされています。応募件数は各会員1件までです。

この条件を見ると、単に「DXをやりました」と書くだけでは足りません。短い資料と短い動画で、取組の狙い、実施内容、効果、他社への広がりを伝える必要があります。

中小建設業で応募を検討する場合は、次の順番で整理すると進めやすくなります。

  1. 令和7年度に完了した工事・業務・社内取組を洗い出す
  2. その中から、データやデジタル技術を使った取組を選ぶ
  3. 省人化、生産性向上、手戻り削減、働き方改善などの効果を整理する
  4. 他の現場にも横展開できる点を言語化する
  5. 写真、図表、操作画面、現場データなど、説明に使える材料を確認する
  6. 動画に映る人の肖像権、個人情報、第三者の著作権に問題がないか確認する

特に動画については、著作権・肖像権・個人情報への配慮が明記されています。氏名、住所、電話番号などの個人情報は映像や音声に含めないよう求められています。

また、提出された動画は、国交省が運営する特設YouTubeにアップロードされ、選考期間中はコンソーシアム会員に限定公開されます。受賞者の動画は一般公開されます。選考されなかった案件についても、各案件の概要等が国土交通省のウェブサイト等で公表される可能性があります。

そのため、応募資料は「審査用」ではなく、「外部に見られる可能性のある広報資料」として作る意識が必要です。

応募しない会社にも関係がある理由

「うちはまだ表彰に出せるほどではない」と感じる会社も多いと思います。実際、その感覚は自然です。現場は日々動いていますし、DXのためだけに時間を取れる会社ばかりではありません。

それでも今回の募集は、応募する会社だけの話ではありません。国が今後の建設業に求める生産性向上の方向が、かなりはっきり出ているからです。

参考資料では、i-Construction 2.0について、建設現場のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化といった方向性が示されています。また、2026年については、AI活用、規模に依らない普及、ICT施工StageIIの試行工事から本格運用へ、といったキーワードも示されています。

これは、大手だけの話ではありません。資料内では、地域建設業での自動化の実装が進展していることや、規模に依らない普及に触れられています。

中小建設業としては、いきなり大規模投資を考えるよりも、まずは次のような問いから始めるのが現実的です。

  • 現場で毎回手書き・二重入力になっている作業は何か
  • 写真、日報、出来形、品質、安全の情報がバラバラに管理されていないか
  • 機械や車両の稼働状況を、勘や経験だけで判断していないか
  • 若手や未経験者にとって、作業手順や判断基準が見える形になっているか
  • 元請・協力会社・発注者との情報共有に、余計な待ち時間が生まれていないか

この問いに答えていくこと自体が、DXの入口になります。DXは、現場の困りごとを見える化し、少しずつ再現性のある仕事に変えていく経営課題です。

採用・営業・社内教育にも使える「実績の言語化」

今回のような表彰制度は、受賞できればもちろん対外的な信用につながります。ただ、それ以上に大事なのは、応募準備の過程で自社の取組を言語化できることです。

「うちはICT施工をやっています」だけでは、外部には伝わりにくいものです。

一方で、次のように整理できると、採用、営業、社内教育で使える情報になります。

  • どの現場課題を解決するために始めたのか
  • 何をデジタル化したのか
  • 現場の誰の負担が減ったのか
  • どの業務の手戻りが減ったのか
  • ほかの現場にも広げられる理由は何か
  • 若手や協力会社にとって、どのように仕事がしやすくなったのか

これは、賞への応募に限らず、会社の未来をつくる材料になります。特に人材採用では、「古い業界だけど頑張っています」ではなく、「現場の負担を減らし、ものづくりに集中できる環境をつくっています」と具体的に伝えられる会社が強くなります。

まずは自社のDX実績を棚卸ししてみる

応募期限は令和8年9月17日(木)12時までです。応募を検討する会社は、コンソーシアム会員であるか、対象となる取組があるか、提出資料を準備できるかを早めに確認しておきたいところです。

一方で、応募しない会社も、今回の募集要項を「自社のDXチェックリスト」として使えます。

令和7年度に、自社はどんな業務改善をしたのか。どの現場で、どんなデータを使ったのか。省人化や生産性向上につながったことは何か。

ここを一度書き出してみるだけでも、次に取り組むべきテーマが見えてきます。DXは特別な部署だけで進めるものではなく、現場、管理、採用、教育、原価管理がつながって初めて経営の力になります。

自社の取組をどう整理するか迷ったときに

今回のようなインフラDXの流れを見て、「うちの場合は応募できるのか」「そもそも何をDX実績として整理すればよいのか」と迷う会社もあると思います。特に中小・専門工事会社では、現場改善、原価管理、採用、教育、デジタル活用が別々の課題に見えてしまい、どこから手を付けるべきか分かりにくくなりがちです。

ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行支援を行っています。今回のテーマでいえば、表彰応募そのものだけでなく、自社の現場改善やDXの取組を、採用・営業・社内教育に使える形へ整理することも大切な一歩です。

「何から整理すべきかわからない」という段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、まずは自社の状況を一緒に整理する場としてご活用ください。

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