国土交通省は、令和8年4月分の「建設工事受注動態統計調査報告」を公表しました。建設業全体の受注高は10兆9,966億円で、前年同月比7.4%増です。一方で、元請受注は減少し、下請受注が大きく伸びています。中小建設業にとっては、「全体は増えているが、仕事の入り方が変わっている」と読むべき内容です。

公表資料

建設工事受注動態統計調査報告(令和8年4月分)

公表日

令和8年6月12日

4月の受注高合計

10兆9,966億円(前年同月比7.4%増)

元請受注高

6兆7,555億円(前年同月比2.5%減)

下請受注高

4兆2,411億円(前年同月比28.3%増)

公共機関からの元請受注

1兆5,654億円(前年同月比1.6%減)

民間等からの元請受注

5兆1,902億円(前年同月比2.8%減)

主な特徴

元請は減少、下請・職別工事・設備工事が増加

1週間で 16件ダウンロード されました

  • 6月11日総合建築和歌山県
  • 6月11日総合土木静岡県
  • 6月11日プラント工事会社京都府
  • 6月11日空調設備工事会社神奈川県
  • 6月11日空調設備工事会社茨城県
  • 6月11日総合土木長野県
  • 6月10日総合建築広島県
  • 6月10日総合土木奈良県
  • 6月10日総合建築東京都
  • 6月10日内装工事会社愛知県
  • 6月9日設備保全会社京都府
  • 6月9日総合土木北海道
  • 6月9日設備保全会社山口県
  • 6月8日防水工事会社兵庫県
  • 6月8日電気設備工事会社神奈川県
  • 6月8日内装工事会社大阪府
  • 6月5日リフォーム会社愛知県
  • 6月5日プラント工事会社香川県
  • 6月5日ビルメンテナンス兵庫県
  • 6月5日内装工事会社長崎県
  • 6月4日防水工事会社東京都
  • 6月4日内装工事会社東京都
  • 6月3日総合建築埼玉県
  • 6月3日空調設備工事会社香川県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード

まず見るべきは「全体増」よりも「元請減・下請増」です

4月の受注高合計は、前年同月比で7.4%増でした。

ただし、中身を見ると印象が変わります。

  • 元請受注高:6兆7,555億円、前年同月比2.5%減
  • 下請受注高:4兆2,411億円、前年同月比28.3%増

つまり、建設市場全体としては受注高が増えていますが、増加を強く押し上げているのは下請側です。

現場感覚でいえば、「元請として新しく大きな案件を取る」というより、既に動いている工事の中で、専門工事・設備・下請側に仕事が流れている可能性を見ておきたい局面です。

もちろん、月次統計なので一か月だけで断定はできません。ですが、下請受注が13か月ぶりに増加し、しかも前年同月比28.3%増という数字は無視できません。

中小建設業、とくに専門工事会社にとっては、「忙しくなるかどうか」だけでなく、「利益を残せる忙しさかどうか」が大事になります。

業種別では、職別工事業と設備工事業の伸びが目立ちます

業種別の受注高を見ると、かなりはっきり差が出ています。

業種

令和8年4月の受注高

前年同月比

総合工事業

5兆6,884億円

9.4%減

職別工事業

1兆7,477億円

51.8%増

設備工事業

3兆5,606億円

26.7%増

特に注目したいのは、職別工事業が51.8%増、設備工事業が26.7%増という点です。

一方、総合工事業は9.4%減です。

この数字だけを見ると、工事の需要そのものが消えているというより、受注の重心が総合工事から専門工事・設備工事側に寄っているようにも見えます。

設備工事業については、元請受注でも1兆8,446億円、前年同月比25.4%増となっています。17か月連続の増加です。

電気、空調、給排水、機械装置、通信系などに関わる会社は、仕事量だけでなく、次の点を見ておきたいところです。

  • 人員をどこまで増やせるか
  • 外注先を安定的に確保できるか
  • 材料・機器の納期をどう管理するか
  • 急な受注増で粗利が落ちていないか

忙しいときほど、現場は前に進みます。見積もりも、工程も、人の手配も、毎日流れていきます。

だからこそ、経営側は一歩引いて、「売上が増えているのに利益が残らない」状態を避ける管理が必要になります。

公共工事は全体で減少。ただし道路・維持補修は引き続き大きい領域です

公共機関からの受注工事額、つまり1件500万円以上の公共工事は、4月に1兆4,013億円でした。前年同月比では6.3%減です。

発注機関別では、次の通りです。

発注機関

受注工事額

前年同月比

国の機関

6,390億円

0.6%減

地方の機関

7,622億円

10.7%減

地方の機関では、市区町村が2,493億円、前年同月比34.4%減となっています。

地域密着で公共工事を受けている会社にとっては、自治体発注の波をどう読むかが大事です。

一方で、工事分類別では、受注工事額の多いものとして次が示されています。

  • 道路工事:4,220億円
  • 教育・病院:1,573億円
  • 治山・治水:1,161億円

また、資料では維持補修の再掲もあり、公共機関からの受注工事における維持補修は5,303億円、前年同月比6.1%増です。

ここは中小建設業にとって重要です。

新設・大型案件だけを追うのではなく、道路、上下水、教育・病院、維持補修といった地域インフラ系の継続需要をどう取りに行くか。ここに経営の安定材料があります。

民間建築は大きく減少。ただし工場・発電所は増加しています

民間等からの建築工事・建築設備工事、1件5億円以上の工事は、4月に1兆6,061億円でした。前年同月比では32.3%減です。

工事種類別に見ると、受注工事額が多いのは次の3つです。

工事種類

受注工事額

住宅

4,756億円

工場・発電所

3,239億円

事務所

3,068億円

全体としては減少していますが、発注者別では製造業が4,361億円、前年同月比50.0%増となっています。

また、工事種類別では、工場・発電所が前年同月比22.4%増です。

ここから見えるのは、民間建築全体が一様に弱いわけではない、ということです。

不動産業やサービス業の大型建築が弱含む一方で、製造業の設備投資や工場・発電所関連には動きが残っていると見られます。

元請として大規模案件を取る会社だけでなく、鉄骨、内装、電気、空調、配管、機械据付、外構などの会社にとっても、発注者の業種を見る意味があります。

「民間が弱い」で終わらせず、どの業界の民間投資が動いているかを営業会議で確認したいところです。

民間の土木・機械装置等は6か月連続で増加しています

民間等からの土木工事および機械装置等工事、1件500万円以上の工事は、4月に1兆1,305億円でした。前年同月比では13.7%増です。

6か月連続の増加です。

工事種類別では、受注工事額が多いものとして次が示されています。

工事種類

受注工事額

機械装置等工事

5,601億円

その他の土木工事

2,295億円

鉄道工事

994億円

発注者別では、製造業が3,547億円、前年同月比6.1%増、電気・ガス・熱供給・水道業が2,414億円、前年同月比26.7%増です。

中小建設業の実務目線では、ここも大事です。

機械装置、プラント、エネルギー、インフラ周辺の工事は、引き続き底堅い可能性があります。

ただし、こうした工事は専門性が高くなりがちです。安全管理、資格者、協力会社、工程管理の精度が求められます。

「受けられる仕事」ではなく、「きちんと利益と安全を守って納められる仕事」かどうかを見極める必要があります。

中小企業層の受注増は強い。ただし粗利管理が勝負です

資本金階層別の資料では、3億円以下の法人の受注高が6兆9,941億円、前年同月比33.7%増となっています。

一方、3億円超の法人は3兆9,940億円、前年同月比20.2%減です。

3億円以下の法人では、下請受注高も3兆2,943億円、前年同月比42.9%増となっています。

これは、中小・中堅層に仕事が来ているように見える数字です。

ただ、ここで喜ぶだけでは少し危ういです。

下請受注が増える局面では、現場数が増え、職人の手配が増え、外注費も増えます。短工期や応援要請も増えます。

そのときに、見積もりが甘いまま受けると、売上は伸びても資金繰りが苦しくなります。

特に確認したいのは次の4つです。

  • 労務費の上昇を見積単価に反映できているか
  • 外注費の上振れを案件別に追えているか
  • 追加・変更工事を請求できる形で記録しているか
  • 忙しい現場ほど安全書類・施工体制台帳・請求処理が遅れていないか

受注増はチャンスです。

ただし、チャンスを利益に変えるには、受注量よりも案件別の採算管理が大事です。

経営者が今月の数字から考えたいこと

今回の統計から、中小建設業が考えたいことは大きく3つです。

1つ目は、自社の業種が伸びている領域に入っているかです。

職別工事業、設備工事業、機械装置等工事は数字上の伸びが目立ちます。自社の強みがそこに近いなら、営業先や協力会社との関係をもう一段整理する価値があります。

2つ目は、元請案件と下請案件のバランスです。

下請が伸びる局面では、仕事量は増えやすいです。ただ、価格交渉力や工程の自由度は案件によって違います。元請・一次・二次のどこで利益を出すのかを、数字で見ておく必要があります。

3つ目は、採用・育成・外注先確保を先送りしないことです。

受注が増えてから人を探すと、どうしても高くつきます。無理も出ます。現場代理人、職長、若手、協力会社。どこが詰まりそうかを、早めに見ておきたいところです。

統計は全国の数字です。自社の地域や得意分野と完全に一致するわけではありません。

それでも、「どこに仕事が増えているか」「どこで利益を落としやすいか」を考えるきっかけとしては十分に使えます。

自社の場合にどう読むかを整理する

今回の数字は、受注環境を前向きに捉えられる材料を含んでいます。特に、職別工事業、設備工事業、下請受注の伸びは、中小・専門工事会社にとって見逃せません。

一方で、仕事が増える局面ほど、原価、外注、採用、安全、請求管理が一気に重くなります。

「うちの場合は、どの数字を見ればいいのか」「今の受注は増やしてよいのか、それとも利益管理を先に整えるべきか」。そう感じる会社も多いはずです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用などを一緒に考えます。

「まだ相談内容がまとまっていない」「まずは自社への影響を整理したい」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでお声がけください。

お問い合わせはこちら