国土交通省は、令和6年度に受注された土木工事を対象とした「建設資材・労働力需要実態調査【土木・その他部門】」の結果を公表しました。

今回のポイントは、請負工事費100万円あたりに投入される資材・労働力の量を示す「金額原単位」が、瀝青材を除いて令和4年度より減少したことです。

発表日

令和8年6月8日

調査名

建設資材・労働力需要実態調査【土木・その他部門】

調査対象

令和6年度に受注された土木工事

金額原単位

請負工事費100万円あたりの資材・労働力投入量

主な結果

瀝青材以外の建設資材、ならびに就業者で令和4年度比減少

調査対象工事件数

7,918件

有効票数

4,897件

対象範囲

土木・その他部門

ここで注意したいのは、金額原単位の減少は「資材や人手が不要になった」という単純な話ではないという点です。

金額原単位は、工事費100万円あたりの投入量です。つまり、資材価格、労務単価、工事内容、施工方法、工種構成などの変化を受けます。

「現場の数量感」と「請負金額の感覚」がずれてきている。

そう捉えると、今回の統計は中小建設業にとって、見積と原価管理を見直すきっかけになります。

資料ダウンロード

令和4年度比で、瀝青材以外は減少

国土交通省の資料では、全国の土木合計について、令和4年度と令和6年度の金額原単位が比較されています。

主な数値は次のとおりです。

資材・労働力

令和4年度

令和6年度

セメント

0.924t

0.801t

-0.123t

生コンクリート

1.618㎥

1.189㎥

-0.429㎥

骨材・石材

6.598㎥

4.905㎥

-1.693㎥

鋼材

0.941t

0.243t

-0.698t

瀝青材

0.045t

0.048t

+0.003t

就業者

7.400人日

5.289人日

-2.111人日

国土交通省の参考資料では、土木合計の推移として、令和4年度から令和6年度にかけて、セメントは約13.3%減、生コンクリートは約26.5%減、骨材・石材は約25.6%減、鋼材は約74.1%減、就業者は約28.5%減と示されています。

一方で、瀝青材は約6.7%増となっています。

数字だけを見ると、大きな変化です。

特に鋼材と就業者の減少幅は目立ちます。ただし、これはあくまで「請負工事費100万円あたり」の名目値です。個別工事で同じように減っている、という意味ではありません。

中小建設業が見るべきは「単価が上がった時代の数量感」

今回の統計でまず見たいのは、見積書の中にある数量・単価・人工の感覚が、今の市場に合っているかです。

金額原単位は、分母が請負工事費です。

工事費が上がれば、同じ数量を使っていても「100万円あたり」の投入量は小さく見えます。資材価格や労務費が上がっている局面では、この動きが起こりやすくなります。

つまり、今回の減少傾向は、現場が急に省資材化した、急に省人化した、というよりも、工事費の中身そのものが変わってきている可能性を示す数字として見た方が実務的です。

中小建設業では、昔から使っている見積の型が残りがちです。

「この規模なら、だいたいこのくらい」

「前回工事に少し乗せておけば大丈夫」

そうした経験値は大切です。ただ、資材価格、外注費、労務費が動いている時期には、経験値だけでは利益が読みにくくなります。

過去の歩掛や見積単価を、そのまま次の工事に使うリスクが高まっていると考えたいところです。

就業者の金額原単位減少は「人手不足が解消した」ではない

就業者の金額原単位は、令和4年度の7.400人日から、令和6年度は5.289人日へ減少しています。

ここも読み違えたくないところです。

就業者の金額原単位が減ったことは、人手不足が楽になったという意味ではありません。

工事費100万円あたりの人日が減った、という数字です。労務単価の上昇、工事内容の違い、施工効率の変化、外注構造の変化などが影響し得ます。

むしろ現場感覚としては、少人数で高い生産性を求められる場面が増えている会社も多いはずです。

中小建設業にとっては、次の3点を確認したいところです。

  • 予定人工と実績人工の差を、現場別に確認できているか
  • 職長や協力会社ごとの生産性の違いを、数字で見られているか
  • 労務費の上昇を、見積と請負金額に反映できているか

特に最後が重要です。

人が採れない。定着も簡単ではない。協力会社の単価も上がる。

その中で、見積だけが数年前の感覚のままだと、受注してから苦しくなります。

「忙しいのに利益が残らない」状態を避けるには、人工の見える化が欠かせません。

政府工事と民間工事で数字の出方が違う

今回の資料では、政府・民間別の金額原単位も示されています。

令和6年度の土木合計では、例えば次のような違いがあります。

資材・労働力

土木合計

政府

民間

セメント

0.801t

0.943t

0.432t

生コンクリート

1.189㎥

1.300㎥

0.900㎥

骨材・石材

4.905㎥

5.085㎥

4.439㎥

鋼材

0.243t

0.280t

0.147t

瀝青材

0.048t

0.050t

0.043t

就業者

5.289人日

5.019人日

5.992人日

資材によっては政府工事の方が高く、就業者は民間工事の方が高い数字になっています。

もちろん、工事の種類や規模が違うため、単純比較はできません。

ただし、経営判断としては、公共工事と民間工事を同じ利益管理のものさしで見ない方がよいという示唆があります。

公共工事は積算や設計変更、単価改定のルールをどう読み込むか。

民間工事は契約前の条件整理、追加変更、値決めの交渉をどう詰めるか。

同じ土木工事でも、利益の守り方は変わります。

受注先別に、粗利率、追加変更、実行予算差異を分けて見るだけでも、次の受注判断はかなり変わります。

まず社内で確認したい3つのこと

今回の調査結果を受けて、中小建設業がすぐに制度対応を迫られるわけではありません。

ただ、経営資料としては使えます。

特に確認したいのは、次の3つです。

1. 見積単価が直近の実勢に追いついているか

資材、外注、運搬、処分、労務。

どれも動いています。

「去年の単価表を少し修正」ではなく、直近の発注・仕入・外注実績から見積単価を更新することが大切です。

2. 実行予算と実績原価の差を工事別に見ているか

金額原単位の変化は、現場ごとの原価ズレにも表れます。

材料費、外注費、労務費、機械経費を、工事完了後に必ず振り返る仕組みが必要です。

「赤字だった」で終わらせず、どの費目がずれたのかまで見る。

次の見積に戻す。

ここまでがセットです。

3. 人工の予定と実績を蓄積しているか

就業者の金額原単位が変わる時代は、人工管理の重要性が増します。

現場ごとの予定人工、実績人工、応援・外注の投入状況を残しておくと、次の見積精度が上がります。

紙でもExcelでも構いません。

まずは残すことです。

そのうえで、現場別、工種別、職長別に見られるようにしていくと、利益の見え方が変わります。

この統計は「利益の感覚を更新する合図」

今回の発表は、補助金や法改正のように、期限がある話ではありません。

けれど、じわっと効いてくる話です。

資材の金額原単位が変わる。

労働力の金額原単位が変わる。

公共と民間で数字の出方が違う。

これは、建設業の利益の出し方が、昔の感覚から少しずつ変わっているということです。

現場は毎日動いています。

人も足りません。

見積も急ぎです。

だからこそ、こうした統計を見た時に、難しく考えすぎず、まずは自社の数字に戻すのがよいと思います。

「うちの見積単価は、今の原価に合っているか」

「予定人工と実績人工は、どれくらいずれているか」

「公共と民間で、利益の残り方は違っていないか」

この3つを見るだけでも、次の打ち手が見えやすくなります。

統計は遠い話ではありません。自社の見積と原価管理を点検するための、外部のものさしです。

自社の見積・原価管理に落とし込むために

今回のような統計は、読んだだけでは会社の数字は変わりません。

大事なのは、自社の見積、実行予算、原価管理、人工管理にどう落とし込むかです。

「うちの場合は、どの単価から見直すべきか」

「現場別の利益は見えているが、次の見積に反映できていない」

「Excelや管理表はあるが、経営判断に使い切れていない」

そうした段階でも、整理する価値があります。

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