国土交通省は、エレベーターの安全確保に関する説明会を全国8会場で開催すると発表しました。
対象は、昇降機を有する建築物の所有者・管理者、マンション管理組合、自治体職員、保守点検業務に携わる方などです。
今回のポイントは次のとおりです。
- 開催内容:「昇降機の適切な維持管理に関する指針」や「エレベーター保守・点検業務標準契約書」の解説
- 開催地:仙台、東京、名古屋、神戸、広島、松山、熊本、那覇の8会場
- 参加費:無料
- 申込期限:各開催日の4日前まで
- 申込先:日本建築設備・昇降機センターの申込ページ
- 関連する安全課題:戸開走行保護装置(UCMP)未設置の既設エレベーターへの注意
説明会の日程は次のとおりです。
| 開催地 | 開催日 | 会場 | 定員 | |---|---:|---|---:| | 仙台 | 令和8年7月2日(木) | 仙都会館 | 30名 | | 東京 | 令和8年7月24日(金) | ビジョンセンター新宿マインズタワー | 150名 | | 名古屋 | 令和8年8月28日(金) | 栄ガスビル | 50名 | | 神戸 | 令和8年9月10日(木) | 神戸国際会館 | 80名 | | 広島 | 令和8年10月6日(火) | 広島国際会議場 | 30名 | | 松山 | 令和8年11月6日(金) | 二番町ホール | 20名 | | 熊本 | 令和8年11月20日(金) | くまもと森都心プラザ | 20名 | | 那覇 | 令和8年12月4日(金) | KEEP FRONT | 20名 |
中小建設業にとって、これは「他人事の設備ニュース」ではありません
今回の発表は、エレベーター業界だけの話に見えます。
でも、自社で事務所、倉庫、社員寮、賃貸建物などを所有・管理している会社であれば、話は変わります。エレベーターの所有者・管理者として、維持管理の責任が発生する可能性があります。
また、建築、改修、設備、保守、管理に関わる会社にとっても重要です。現場でお客様から、こう聞かれる場面があるかもしれません。
「このエレベーター、古いけど大丈夫ですか」
「保守契約はこのままでいいんですか」
「地震や浸水のとき、何を確認すればいいんですか」
そのときに、制度や指針を知らないまま答えるのは少し怖いです。建物を扱う会社ほど、昇降機の安全管理を“専門外”で片づけにくくなっています。
見るべきは、説明会そのものより「維持管理の中身」です
今回の説明会では、次の内容が予定されています。
- 維持管理指針等の策定経緯
- 昇降機の安全性についての講演
- 「昇降機の適切な維持管理に関する指針」の解説
- 「エレベーター保守・点検業務標準契約書」の解説
- 地震対策の取り組み、浸水対策ガイドライン
中小建設業の経営者が特に見ておきたいのは、保守点検契約の中身です。
国土交通省の資料では、昇降機の維持管理について、次のような対応が必要だとされています。
- 技術力のある保守点検業者を選ぶこと
- 保守点検契約に必要な事項を盛り込むこと
- 定期的な保守・点検を行うこと
- 定期検査報告は所有者・管理者の義務であること
- 不具合や事故発生時に速やかに対応すること
- 関係文書を保存すること
つまり、安い保守契約を選べばよい、という話ではありません。
契約金額だけでなく、業務仕様、担当者の能力、会社概要などを総合的に見る必要があります。
これは、建設業の協力会社選定にも近い感覚です。安さだけで選ぶと、肝心なときに現場が苦しくなります。エレベーター保守も同じです。
古いエレベーターでは、UCMP未設置の確認が重要です
今回の関連資料では、戸開走行保護装置、いわゆるUCMPについても触れられています。
戸開走行とは、エレベーターの戸が開いたまま、かごが動いてしまう現象です。乗降口付近で起きると、挟まれや転落などの重大事故につながるおそれがあります。
国土交通省の技術資料では、平成21年9月28日以降に着工するエレベーターには、UCMPの設置が義務付けられているとされています。
一方で、それ以前に設置されたエレベーターの中には、UCMPが未設置のまま稼働しているものがあります。
資料では、令和6年度に定期報告が行われたエレベーター775,705台のうち、UCMPが設置されているものは306,394台、設置率は39.5%とされています。未設置のものは469,311台です。
既設エレベーターでは、まず「UCMPが付いているか」を確認することが、安全管理の入口になります。
自社ビルや管理物件に古いエレベーターがある場合は、保守会社に次のように確認しておきたいところです。
- このエレベーターにUCMPは設置されているか
- 設置されていない場合、どのようなリスクがあるか
- 直近の点検でブレーキや制御系に異常はなかったか
- 不具合発生時の連絡体制は明確か
- 定期検査報告や点検記録は保存されているか
ここは、現場任せにしすぎないほうがよい部分です。経営側が一度、一覧で把握しておく価値があります。
災害対応まで含めて、建物管理の品質が問われます
説明会では、地震対策や浸水対策ガイドラインも扱われます。
建設業の感覚で見ると、ここはとても現実的です。近年は、建物そのものの耐震性だけでなく、設備が止まった後の対応まで見られます。
エレベーターでいえば、地震時の閉じ込め。浸水時の電気設備への影響。復旧までの連絡。利用者への案内。
こうしたことは、事故が起きてから整えるのでは間に合いません。
所有・管理している建物ごとに、「誰が連絡するか」「どの書類を見るか」「保守会社は何分野まで対応するか」を確認しておくことが大切です。
難しい計画書を最初から作る必要はありません。
まずは、次の3つで十分です。
- エレベーター台帳を確認する
設置年、メーカー、保守会社、UCMPの有無、定期検査報告の状況を確認します。
- 保守契約書を読み直す
点検項目、頻度、部品交換や修理の範囲、緊急時対応、再委託の扱いを確認します。
- 不具合時の連絡手順を共有する
総務、管理担当、現場責任者、保守会社の連絡先を整理します。
これだけでも、かなり見通しがよくなります。
建設会社としては「建物を使う側」と「建物を支える側」の両面で考えたい
今回のニュースは、自社の安全管理だけで終わらせるには少しもったいない内容です。
中小建設業は、地域の建物を支える立場でもあります。改修工事、設備更新、マンション修繕、公共施設の工事。いろいろな場面で、既設エレベーターと関わります。
もちろん、エレベーターの専門的な点検や整備は、専門業者の領域です。
ただし、建物全体を見ている会社だからこそ、気づけることもあります。
「この建物、設備台帳が整理されていないな」
「保守契約の範囲が曖昧かもしれない」
「浸水時の電気設備対応まで決まっていなさそうだ」
こうした気づきは、お客様にとって価値になります。
これからの建設会社は、工事をするだけでなく、建物の安全・維持管理まで見通せる会社が信頼されやすくなります。
今回の説明会は、その視点を持つきっかけになります。
自社への影響を整理したいときは
エレベーターの維持管理は、専門設備の話でありながら、実際には経営管理の話でもあります。
契約書。点検記録。緊急連絡体制。管理責任。協力会社との役割分担。
一つひとつは地味です。でも、整っている会社ほど、事故や不具合のときに慌てません。
「うちの建物は対象になるのか」
「保守契約書のどこを見ればよいのか」
「設備管理を総務任せにしていて、全体像が見えていない」
そう感じたら、一度、社内の管理体制を棚卸ししてみるのもよい機会です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業がものづくりに集中できるよう、こうした管理面の整理も一緒に考えます。
「何から確認すればよいか分からない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ち先として必要なときにご活用ください。































