国土交通省は、令和8年度も山岳トンネルの省人化施工に関する試行工事を実施すると発表しました。

対象は、国土交通省直轄の5工事です。各地方整備局等で、今後、入札手続きが順次始まります。

今回のポイントは、単なる新技術の実験ではありません。山岳トンネル工事で自動施工技術や遠隔施工技術を試行し、将来的な実施要領、積算基準、管理基準などの技術基準類の整備につなげる取組です。

建設業全体で人手不足が続くなか、国交省は「省人化」「安全性」「生産性」を、公共工事の評価や基準づくりに組み込もうとしています。トンネル工事に直接関わらない会社にとっても、今後の公共工事の流れを読むうえで見逃せない発表です。

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何が発表されたのか

国土交通省は、山岳トンネル施工のオートメーション化に向けて、令和8年度に山岳トンネルの省人化施工に関する試行工事を5件発注します。

試行対象工事は、次の5件です。

  • 東北:R8-12 真室川雄勝道路上院内トンネル工事
  • 中部:令和8年度 熊野道路熊野第4トンネル工事
  • 中国:令和8年度 尾道・松江自動車道下本谷トンネル工事
  • 四国:令和8-11年度 海部野根道路生見トンネル工事
  • 九州:油津・夏井道路西方第二トンネル新設工事

発注方式は、昨年度と同様に、総合評価落札方式の「技術提案評価型SI型」とされています。

このSI型では、一定の範囲内で費用計上することを前提に、品質、環境、安全性、生産性などの向上につながる技術向上提案を求める仕組みです。資料では、当面は予定価格の5%の範囲内とされています。

従来の制度では、仕様変更を伴うような発展的な提案や、導入コストのかかる新技術は提案しにくい面がありました。今回の試行は、その壁を少しずつ崩していく動きと見てよいです。

今回のテーマは「鋼製支保工」以外の作業へ広がる予定

令和7年度の試行工事では、「鋼製支保工作業」を対象に技術向上提案が求められ、4件の工事が契約されています。

令和8年度は、昨年度対象だった鋼製支保工作業以外の新たな作業範囲で、技術向上提案を求める予定です。

PDF資料では、山岳トンネル工事において省人化の対象になり得る作業として、たとえば次のような項目が示されています。

  • 穿孔
  • 吹付けコンクリート
  • 装薬
  • ロックボルト工
  • 覆工
  • 防水シート張り

ただし、令和8年度の具体的な技術向上提案テーマは、各工事の公告等で確認する必要があります。

ここで大事なのは、国交省が切羽近傍など災害リスクの高い作業や、熟練技術員の経験に頼る作業を、省人化の優先領域として見ていることです。

これは、山岳トンネルだけの話ではありません。今後、他の工種でも「危険作業をどう減らすか」「熟練者依存をどう下げるか」「少人数で品質を維持できるか」が、技術提案や現場改善の重要な論点になっていく可能性があります。

受注実績のない企業を加点評価する仕組みも予定

今回の試行工事では、できるだけ多くの自動施工技術等を試行するため、技術向上提案テーマごとに、試行工事の受注実績を有さない企業を加点評価する予定とされています。

対象となる受注実績は、同一地方整備局等の工事に限られません。全国での実績が見られる形です。

また、共同企業体の場合は、構成員のうち自動施工技術等を保有する企業に対して評価する考え方が示されています。

これは、技術を持つ企業にとって大きな意味があります。すでに大手元請だけが実績を積み上げるのではなく、複数の企業の技術を試し、技術基準類づくりに反映させようとする意図が見えます。

一方で、報道発表では、開札日が近接する場合など、入札手続きの状況によっては受注実績の有無を反映できない試行工事が生じる可能性もあるとされています。実際に参加を検討する場合は、個別工事の公告・入札説明書を丁寧に確認する必要があります。

中小建設業が見るべきポイント

今回の発表は、直接には山岳トンネル工事の話です。対象も国交省直轄の5工事です。

ただ、中小建設業にとって見るべきポイントは、対象工事そのものだけではありません。むしろ、公共工事の評価軸がどこへ向かっているかです。

見ておきたいのは、次の3点です。

1つ目は、省人化技術が「現場の工夫」から「入札時の提案テーマ」へ移り始めていることです。

これまで、省人化は社内改善や現場ごとの工夫として扱われることが多かったかもしれません。しかし今回のように、発注者側が技術向上提案テーマとして設定すれば、技術の有無や説明力が受注競争に関わってきます。

2つ目は、新技術の導入コストをどう評価するかが制度側で議論されていることです。

新しい機械、遠隔施工システム、センサー、施工管理のデジタル化。どれも導入には費用がかかります。中小企業にとっては、投資判断が難しい領域です。

しかし、SI型のように一定範囲で費用計上を前提とした提案が広がれば、「良い技術だが持ち出しになるから提案しにくい」という状況が、少しずつ変わる可能性があります。

3つ目は、技術を持つ専門工事会社やメーカーとの連携価値が高まることです。

自社単独で自動施工技術を開発するのは簡単ではありません。特に中小企業では、人材、資金、検証現場の確保が課題になります。

だからこそ、施工会社、専門工事会社、機械・システム会社が組み、技術提案として形にする動きが増えていくはずです。今回の共同企業体に関する評価の考え方も、その流れと相性があります。

自社では何を考えればよいか

トンネル工事に関わる会社であれば、まず確認したいのは、自社の作業のどこに省人化・遠隔化・安全性向上の余地があるかです。

たとえば、次のような整理です。

  • 危険箇所に人が近づく作業はどれか
  • 熟練者の感覚に依存している作業はどれか
  • 人員不足で工程が詰まりやすい作業はどれか
  • 機械化・遠隔化できそうだが、費用面で止まっているものは何か
  • 技術を持つ協力会社やメーカーと組める余地はあるか

トンネル工事に直接関わらない会社でも、同じ考え方は使えます。

土木、舗装、法面、解体、設備、専門工事。どの現場にも、危険作業、重作業、熟練者依存、人手不足の工程があります。これらを棚卸ししておくことが、将来の技術提案や補助金活用、設備投資判断の土台になります。

重要なのは、いきなり大きな自動化を目指すことではありません。まずは、「人を減らす」だけでなく、「危ない場所に人を立たせない」「少人数でも品質を守る」「若手でも再現できる作業にする」という視点で考えることです。

この視点は、採用にも効きます。若い人に選ばれる現場は、きれいな言葉だけではつくれません。危険や負担を減らす投資、デジタルを使った段取り、教育しやすい作業標準。そうした積み重ねが、建設業の魅力を現場から変えていきます。

技術基準類の整備は、将来の「普通」を変える

今回の試行工事の目的には、自動施工技術活用に関する技術基準類を整備することが明記されています。

資料では、技術基準類として、実施要領、積算基準、管理基準等が挙げられています。

これは非常に大きな意味を持ちます。

新技術は、現場で使えるだけでは普及しません。発注者が評価できること。積算に反映できること。管理基準として扱えること。検査や品質確認の考え方が整理されること。ここまで進んで、ようやく公共工事の中で使いやすくなります。

今回の試行は、そのためのデータを集める段階です。

令和7年度に契約した4件の試行工事では、今後、各社の自動施工技術等を試行し、現場実態調査が実施されます。令和8年度の5件も含め、現場で得られたデータが、今後の基準づくりに反映されていくことになります。

中小建設業としては、国交省のこうした試行を「大手だけの話」と見ないほうがよいです。基準が整えば、それはやがて地域の公共工事や民間工事にも考え方として広がる可能性があります。

省人化、安全性、生産性を説明できる会社が、次の時代の現場を取りにいく。

今回の発表は、その流れを示す一つのサインです。

自社の省人化テーマを整理するところから始める

今回のニュースを読んで、「うちは山岳トンネルではないから関係ない」と切り分けるのは、少しもったいないです。

むしろ、自社の現場に置き換えて、どの作業を省人化すれば安全性と利益率が上がるのかを考えるきっかけにできます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。省人化やDXも、機械やシステムを入れる前に、まず業務と現場の流れを見える化することが大切です。

「うちの場合は、どの作業から見直すべきか」「技術投資と採用、原価管理をどうつなげればよいか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する相手が必要なときは、自然な壁打ち先としてご相談ください。

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