国土交通省港湾局は、2026年5月29日、「港湾施設の利用可否判断に係るガイドライン」を改訂しました。

今回のポイントは、発災直後に港湾施設を使えるかどうかを迅速に判断するため、発災前に行う数値解析の考え方と検討項目の具体例が追加されたことです。

背景には、令和6年能登半島地震があります。発災直後、緊急物資の輸送などの支援活動に向けて、港湾施設を使えるかどうかの判断が求められました。その中で、「被災してから考える」のでは間に合わず、事前準備が重要であることが確認されました。

港湾・海上土木、港湾施設の点検、測量、設計、維持管理、災害復旧に関わる会社にとっては、見ておきたい改訂です。

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今回、何が改訂されたのか

国土交通省は、令和7年4月に「港湾施設の利用可否判断に係るガイドライン」を公表していました。

今回の改訂では、海上支援ネットワークにおける支援・受援のためのふ頭を構成する係留施設について、数値解析を行う際の参考となる考え方と、検討項目の具体例が追加されています。

報道発表資料では、主な追加内容として次の項目が示されています。

  • 作用の設定に関する考え方
  • 利用可否の判断基準の設定に関する考え方
  • 数値解析の考え方
  • 結果の整理方法

かなり技術寄りの内容です。

ただし、経営者として見るべき点はシンプルです。

港湾施設の防災対応は、「発災後の応急対応」だけでなく、「発災前の準備・解析・基準づくり」へ重心が移っているということです。

発災前に求められる準備が、より具体的になっています

資料では、利用可否判断の全体フローが示されています。

発災前の事前準備として、次のような項目が挙げられています。

  • 利用方法の想定
  • 基本情報の収集・整理
  • 平面図、標準断面図、土質条件等の整理
  • 事前の計測
  • 事前の数値解析
  • 利用可否の判断基準の設定
  • 発災後の調査への備え
  • 事前準備資料の共有・更新

ここは、現場感覚で見ると大事です。

災害が起きた直後の港湾では、「この岸壁に船を着けてよいのか」「荷役してよいのか」「どこまでの荷重なら耐えられるのか」といった判断が急がれます。

しかし、その場で図面を探し、土質条件を確認し、解析条件を決め、判断基準をつくるのは簡単ではありません。

だからこそ、今回の改訂では、平時から資料を集め、解析し、判断基準を持っておくことが重視されています。

港湾関係の仕事をしている会社にとっては、今後、発注者との会話の中で「事前準備資料」「事前計測」「数値解析」「判断基準」といった言葉が出てくる場面が増えるかもしれません。

数値解析では、地震動・荷重・船舶の牽引力まで見ます

今回の改訂では、数値解析の検討項目の例として、作用の設定に関する考え方が示されています。

具体的には、次のような項目です。

  • 本震・余震の地震動
  • 地震後の施設利用を想定した載荷重
  • 船舶の牽引力

報道発表資料では、載荷重について「設計時と同値」とする例、余震について「本震と余震を一連の地震動として設定」する考え方が示されています。

また、利用可否の判断基準の例として、壁体、つまりケーソンの安定性を確認し、ケーソンが滑動・転倒しないことを施設利用が可能となる条件として示しています。

これは、港湾工事や港湾施設の維持管理に関わる会社にとって、かなり実務的な論点です。

「壊れているかどうかを見る」だけではなく、「どの条件なら使えるのか」を定量的に整理する方向に進んでいるからです。

発災後の点検、緊急復旧、応急対策に関わる会社はもちろん、平時の維持管理、調査、測量、設計補助を行う会社にとっても、関係する余地があります。

経営者が見ておきたい実務影響

今回の改訂は、すぐにすべての中小建設会社の仕事を変えるものではないかもしれません。

ただし、港湾・海上土木に関わる会社には、じわっと効いてくる内容です。

見ておきたいのは、次の3点です。

1つ目は、発注者側の関心が「災害後の対応力」から「災害前の準備力」へ広がっていることです。

災害が起きたあとに動ける会社は重要です。これは変わりません。

一方で、今後は「発災前にどこまで資料を整理できているか」「どこまで点検・計測・解析の準備ができているか」が、港湾施設の防災力として見られやすくなります。

2つ目は、点検・測量・調査・解析・情報整理が一体の仕事になっていく可能性があることです。

港湾施設の利用可否判断には、図面、断面、土質、計測、地震動、現地調査、周辺調査など、複数の情報が必要になります。

現場だけ。図面だけ。解析だけ。

それぞれ単独ではなく、つなげて整理する力が求められます。

3つ目は、自社がどの部分を担えるかを早めに整理しておくことです。

たとえば、次のような切り口です。

  • 港湾施設の現地調査に対応できるか
  • 係留施設周辺の調査に対応できるか
  • 図面・標準断面図・土質条件などの整理を支援できるか
  • 事前計測に関わる体制があるか
  • 数値解析を担う協力会社や設計会社とのつながりがあるか
  • 災害時の緊急対応について、社内の連絡体制があるか

全部を自社で抱える必要はありません。

ただ、どこまで自社でできて、どこから外部と組むのかを決めておくと、発注者への提案や災害時の動きが変わります。

港湾関連企業は、まずガイドライン本文を確認したい

今回の報道発表では、ガイドライン本体は国土交通省ホームページから入手可能とされています。

港湾関連の仕事をしている会社は、まず本文を確認するのがよさそうです。

特に見たいのは、次の部分です。

  • 利用可否判断の全体フロー
  • 発災前の事前準備
  • 事前の数値解析に関する付録
  • 判断基準の考え方
  • 結果整理の例

経営者がすべての技術内容を読み込む必要はありません。

ただ、社内の技術者や協力先に「うちはこの中でどこに関われるのか」「今の体制で足りないものは何か」と聞いてみる価値はあります。

防災・減災の仕事は、単なる緊急対応ではなく、平時の準備を支える仕事になっています。

港湾に関わる中小建設企業にとって、今回の改訂はその流れを確認する材料になります。

自社の関わり方を整理しておくために

今回のようなガイドライン改訂は、すぐに目の前の受注に直結するとは限りません。

それでも、港湾・インフラ・災害対応に関わる会社にとっては、少し先の仕事の形を映しています。

「うちは現地調査まではできる」

「解析は外部と組めば対応できる」

「災害時の連絡体制や資料整理は、まだ弱いかもしれない」

こうした整理だけでも、次の提案や体制づくりに効いてきます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。制度やガイドラインを読んだあとに、「自社の場合はどう考えるべきか」「何から整理すればよいか」を一緒に確認することもできます。

無理な営業はいたしません。まずは考えを整理する場として使っていただければ大丈夫です。

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