国土交通省は令和8年5月28日、自然災害時等における住宅のレジリエンス性を高める先導的な取組を支援する「2050先導型住宅推進事業」の企画提案募集を開始しました。
応募期間は、令和8年5月28日(木)から6月25日(木)18時までです。採択事業は、評価委員会による評価を踏まえて国土交通省が決定し、7月上旬を目処に公表予定とされています。
今回の事業は、工務店や住宅会社にとって、単に「補助金が使えるかもしれない」という話にとどまりません。これからの住宅提案で、地震・台風・火災などのリスクに対して、入居者が住み続けられるか、生活を続けられるかが、より明確な価値として問われていく流れを示しています。
何が支援対象になるのか
今回の「2050先導型住宅推進事業」は、2050年を見据えた良質な住宅ストック形成を目的に、住宅のレジリエンス性の確保に向けたモデル事業として創設されたものです。
対象住宅は、資料上では次のように示されています。
- 新築住宅および既存住宅
- 注文住宅、分譲住宅(建売住宅または分譲マンション)、賃貸住宅のいずれも補助対象
事業主体は、民間事業者等とされています。別紙資料には「HM・工務店」と記載されており、住宅を扱う中小工務店にとっても検討対象になり得る制度です。
補助については、50万円/戸の定額と示されています。補助対象工事は、資料上では住宅要件のうち、蓄電池または燃料電池の設置と、レジリエンス性の向上に資する措置に関する工事とされています。
住宅に求められる6つの要件
補助を受けるための住宅の要件として、国交省資料では次の6項目が示されています。
- 耐震性
- 劣化対策
- 断熱性
- 省エネルギー性
- 蓄電池または燃料電池の設置
- レジリエンス性の向上に資する措置(事業者からの提案)
ここで重要なのは、今回の事業がモデル事業であり、特に6つ目の「レジリエンス性の向上に資する措置」がポイントとされている点です。
つまり、既存の性能項目を満たすだけではなく、事業者側が「この住宅は、災害時にどのように居住継続・生活継続に役立つのか」を、自社の考えとして提案する必要があります。
提案には「災害時のストーリー」が求められる
今回の募集で特徴的なのは、単に設備や仕様を並べるだけではなく、想定するリスクと、そのリスクに対してどのような効果を発揮するのかを、ストーリー性を持って説明することが求められている点です。
国交省は、レジリエンス提案の要件として、次のような内容を示しています。
- 住宅の入居者における「居住継続」や「生活継続」に資する内容であること
- 地震、台風、火災など、想定するリスクを明確にすること
- リスクの発生防止・低減、被害からの回復に向けて、どのような効果をもたらすかを具体的に説明すること
- 平常時、発災時、発災直後、発災後の回復期のどのフェーズに対応する措置かを明確にすること
- 一戸単位の措置なのか、複数住戸単位の措置なのかを明確にすること
これは、住宅提案の考え方として非常に大事です。
たとえば、これまでは「断熱性能が高い」「省エネ性能が高い」「蓄電池を設置している」といった説明で十分だった場面も多かったと思います。しかし今回の制度では、その仕様が、災害時に入居者の暮らしをどう支えるのかまで説明する必要があります。
住宅の価値が、平常時の快適性や光熱費削減だけでなく、災害時の安心、在宅避難、避難所負担の軽減といった社会的な価値に広がっている、という見方ができます。
応募時に注意したい戸数要件
モデル住宅の計画戸数は、10戸以上50戸以下の範囲で、事業期間内に着工予定の戸数とされています。
また、グループ提案を行う場合は、グループを構成する各事業者における着工予定戸数の合計とされています。
ここは中小工務店にとって、かなり実務的な確認ポイントです。
自社単独で10戸以上の計画を確実に組める会社であれば、単独提案を検討しやすいかもしれません。一方で、年間着工棟数や対象商品の構成によっては、地域の事業者同士でグループ提案を考える余地もあります。
ただし、資料では、事業期間中に着工した戸数が計画戸数に満たなかった場合、次年度以降の申請において、十分な体制が見込まれない事業主体として評価を引き下げるとされています。
ここは背伸びをするところではありません。採択を狙うあまり過大な戸数を出すよりも、確実に着工できる範囲で計画することが重要です。
効果検証まで設計する必要がある
今回の提案では、レジリエンス性の確保に係る措置の効果を検証する方法も求められています。
別紙では、災害が発生した場合を想定して、採用したレジリエンス措置の効果を検証できる方法を提示すること、さらに、消費者へのインタビューやアンケートによる意識調査など、災害が発生していない場合でも実施できる方法も合わせて提示することとされています。
これは、工務店の実務に引き寄せると、住宅を建てて終わりではなく、入居後にその価値をどう確認し、どう次の商品改善につなげるかまで問われているということです。
たとえば、自社の住宅商品について、次のような整理が必要になります。
- どの災害リスクを想定するのか
- そのリスクに対し、どの仕様・設備・設計上の工夫が効くのか
- 入居者にとって、平常時と災害時にどのような違いがあるのか
- 効果をどのような方法で確認するのか
- その結果を、今後の商品開発や営業説明にどう活かすのか
補助金申請のための資料づくりで終わらせず、自社の商品力を言語化する機会として使えるかが、今回の制度活用の分かれ目になりそうです。
中小工務店はどう考えるべきか
今回の制度は、すべての会社がすぐに応募すべきもの、というよりも、住宅事業の次の方向性を確認するための重要なサインとして見るべきです。
特に、地域密着の工務店にとって、災害への備えは抽象的なテーマではありません。地震、台風、大雨、停電、断水などは、地域ごとに実感のあるリスクです。お客様から見ても、「この家は災害時にどう暮らしを守ってくれるのか」という問いは、今後さらに重みを増していきます。
今回の募集を見て、自社でまず確認したいのは次の点です。
- 自社の商品は、災害時の居住継続・生活継続を説明できるか
- 蓄電池や燃料電池などを、単なる設備提案ではなく暮らしの継続価値として説明できるか
- 耐震性、断熱性、省エネ性を、災害時の安心と結び付けて語れているか
- 10戸以上50戸以下の計画を、無理なく組める見込みがあるか
- 入居者アンケートやインタビューなど、効果検証の仕組みを持てるか
このあたりが整理できる会社は、応募の検討に進みやすいと思います。逆に、まだ整理できていない会社でも、今回の制度をきっかけに、自社の住宅が提供している安心を言葉にすることから始める価値があります。
応募する場合の実務確認
応募は、評価・交付事務局宛に、所定様式の提案書を電子データで送付する形です。
応募期間は、令和8年6月25日(木)18時までです。募集要領や様式などの詳細は、国土交通省の「2050先導型住宅推進事業について」のページで確認する必要があります。
また、提案書の提出件数については、別紙で1事業につき3件までとされています。
実際に検討する会社は、少なくとも次の順番で確認するとよいです。
- 自社の対象住宅が制度要件に合うか確認する
- 10戸以上50戸以下の計画戸数を現実的に組めるか確認する
- 想定リスクとレジリエンス措置を整理する
- 効果検証の方法を設計する
- 募集要領・所定様式を確認し、期限までに提出できる体制をつくる
特に今回は締切までの期間が限られています。応募を検討する場合は、まず募集要領を確認し、社内で「出せる提案か」「無理のない戸数か」を早めに判断することが大切です。
住宅の“安心”をどう商品に落とし込むか
今回の制度を、自社にそのまま使えるかどうかは会社ごとに異なります。ただ、制度の背景にある流れは明確です。これからの住宅事業では、平常時の快適性に加えて、災害時の暮らしをどう守るかが商品価値になっていくということです。
「うちの場合、応募できるのか」「レジリエンス提案をどう言語化すればよいのか」「住宅商品や営業資料にどう落とし込めばよいのか」といった段階でも、整理してみる価値があります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、住宅・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで伴走しています。今回のような制度をきっかけに、自社の商品力、提案力、体制づくりをどう整えるかを一緒に考えることもできます。
無理な営業はいたしませんので、「まずは自社への影響を整理したい」「何から確認すべきかわからない」という段階でも、必要に応じてご相談ください。

































