国土交通省は、令和8年4月分の「建設労働需給調査結果」を公表しました。
今回のポイントは、全国の8職種計で、4月の過不足率が0.6%の不足となったことです。前月3月は0.1%の過剰だったため、前月からは0.7ポイント不足幅が拡大しました。一方で、前年同月の0.8%不足と比べると、0.2ポイント不足幅は縮小しています。
つまり、全体としては「極端なひっ迫」ではないものの、前月からは不足側に戻っています。中小建設業にとっては、採用や協力会社確保の温度感を測るうえで、見ておきたい数字です。
4月は「やや不足」。ただし、全体平均だけで判断しない方がよいです
今回の調査では、全国の8職種計が0.6%の不足、6職種計は0.0%の均衡となりました。
数字だけを見ると、「人手不足は少し落ち着いているのでは」と感じるかもしれません。実際、前年同月比では不足幅が縮小しています。ただし、建設業の現場で大事なのは、平均値そのものよりも、自社が使う職種・地域・工程で不足が出ているかです。
職種別に見ると、型わく工(土木)は均衡、左官と鉄筋工(建築)は過剰となっています。一方で、その他の職種では不足となっています。特に、電工は2.1%の不足、鉄筋工(土木)は1.4%の不足、配管工は1.3%の不足です。
全体では0.6%不足でも、ある職種では不足、別の職種では過剰という状態です。ここに、経営判断のヒントがあります。「建設業全体が不足しているか」ではなく、「自社の仕事に必要な職種が不足しているか」を見ることが重要です。
地域別では、中国が過剰、東北が均衡、その他は不足です
地域別の8職種計では、東北が均衡、中国が過剰、その他の地域は不足となっています。
また、前年同月との比較では、北陸が3.8ポイント増で全国で最も増加幅が大きく、九州が1.5ポイント減で最も減少幅が大きいとされています。
地域差は、協力会社の手配や応援の組み方に直結します。たとえば、同じ職種でも、地域によって「声をかければ集まる」のか、「早めに押さえないと厳しい」のかは変わります。
中小建設業では、どうしても日々の現場対応が優先されます。しかし、こうした月次データを見ておくと、見積時点での労務単価の見方、工程の余裕、協力会社への打診時期を少し前倒しで考えやすくなります。
6月・7月の確保見通しは「普通」。それでも油断は禁物です
国土交通省は、全国の8職種の今後の労働者確保に関する見通しについて、6月・7月ともに「普通」としています。
ただし、内訳を見ると、6月の見通しでは「困難」と「やや困難」の合計が24.4%となっています。前年同月の27.5%からは下がっていますが、約4分の1は依然として確保に難しさを感じていることになります。
7月の見通しでは、「困難」が22.7%で、前年同月の22.0%より0.7ポイント増えています。一方、「容易」は11.2%で、前年同月の22.9%から大きく減っています。
ここから読み取れるのは、全体の見通しは普通でも、楽観できるほど容易ではないということです。特に、夏場に向けて工程が重なる会社、公共工事と民間工事の両方を抱える会社、特定職種への依存が高い会社は、早めの確認が必要です。
残業・休日作業の強化現場は2.4%。理由を見ると、工程管理の課題が見えます
手持現場のうち、残業・休日作業を実施している「強化現場」の割合は2.4%でした。前月の2.6%から0.2ポイント減少し、前年同月の3.1%からも0.7ポイント減少しています。
数字としては減っています。ただ、理由の内訳を見ると、現場経営上の大事な論点が出ています。
強化理由は、「その他」を除くと、昼間時間帯の制約が25.4%、前工程の工事遅延が23.9%、天候不順が14.9%、無理な受注が7.5%の順です。
この並びは、中小建設業にとってかなり現実的です。人が足りないから残業になる、という単純な話だけではありません。昼間に作業できる時間が限られる、前工程が遅れる、天候で予定が崩れる、受注時点の工程設定に無理がある。こうした要因が重なって、残業や休日作業につながっています。
経営側としては、「人を増やせば解決するか」だけではなく、受注前の工程確認、前工程との連絡体制、天候リスクの見込み、昼間作業制約の織り込みまで含めて見ておきたいところです。
中小建設業が今回の数字から確認したいこと
今回の調査は、制度改正や補助金のように「期限までに申請する」タイプのニュースではありません。ですが、経営判断には使えます。
まず確認したいのは、自社の主力職種が、全国平均より不足側にあるかどうかです。電工、鉄筋工(土木)、配管工など、不足率が比較的高い職種を使う会社は、案件ごとの人員手配を早めに確認した方がよいです。
次に、自社の地域が不足側にあるかどうかです。今回、8職種計では中国を除く多くの地域で不足となっています。地域別の数字は、自社の協力会社網が十分か、応援を頼める先があるかを考える材料になります。
そして、6月・7月の現場予定と照らし合わせることです。見通しは「普通」でも、「困難」「やや困難」と答える割合は一定数あります。繁忙期や工期が重なる時期に、いつもの感覚で人員を押さえにいくと、思ったより調整に時間がかかる可能性があります。
最後に、残業・休日作業の理由を自社でも分解することです。「人がいないから忙しい」で止めずに、前工程の遅れなのか、昼間作業の制約なのか、受注時の工程設定なのかを分けて見ると、次の改善策が見えやすくなります。
受注・工程・人員確保を一体で見る時期です
今回の調査から見えるのは、建設労働需給が一方向に悪化しているというより、職種と地域によって濃淡が出ているということです。
中小建設業にとって大事なのは、「人手不足だから採用しよう」だけではありません。採用、協力会社確保、工程管理、見積、受注判断をつなげて考えることです。
たとえば、ある案件で必要な職種が不足気味なら、見積段階で労務の確保難度を織り込む必要があります。前工程の遅れが起きやすい現場なら、自社だけの努力で工程を守れるかを事前に確認する必要があります。昼間作業の制約が大きい現場なら、残業や休日作業に頼らない段取りを早めに考える必要があります。
労務需給の数字は、採用担当だけが見るものではなく、経営者・工事責任者・見積担当が同じ目線で見るべき経営情報です。
自社への影響を整理したいときに
今回のような需給データは、単体で見るよりも、自社の受注予定、職種構成、協力会社網、残業・休日作業の発生理由と重ねて見ることで意味が出てきます。
「うちの地域ではどう見ればよいか」「採用を急ぐべきなのか、協力会社との関係づくりを優先すべきなのか」「工程や見積にどう反映すればよいか」といった段階でも、整理する価値があります。
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