国土交通省は、令和8年度「空き家対策モデル事業」について、117件の応募の中から36件を採択したと発表しました。空き家対策を加速するため、NPO、民間事業者、地方公共団体等によるモデル性の高い取組を国が直接支援し、成果の全国展開を図る制度です。

発表日

令和8年7月8日

事業名

令和8年度 空き家対策モデル事業

応募件数

117件

採択件数

36件

募集期間

令和8年4月20日~5月20日

採択内訳

テーマ1:5件、テーマ2:11件、テーマ3:12件、テーマ4:6件、テーマ5:2件

補助事業者

NPO、民間事業者、地方公共団体 等

支援内容

空き家対策に関するソフト事業、ハード事業、ソフト・ハード事業

補助率等

調査検討・計画策定・普及広報等:定額、改修工事:1/3、除却工事:2/5、除却後の土地整備:1/3

今回の発表は、すでに採択対象が決まったというニュースです。したがって、今回分に新たに応募する話ではありません。

ただし、中小建設業にとっては大事です。国がこれからの空き家対策を、単なる「解体」「改修」ではなく、地域再生・二地域居住・相続対策・AI活用・資源循環まで含めた事業モデルとして見ていることが、かなりはっきり出ています。

1週間で 12件ダウンロード されました

  • 7月8日総合土木愛知県
  • 7月8日工務店山形県
  • 7月8日外構工事会社群馬県
  • 7月6日工務店兵庫県
  • 7月6日電気設備工事会社神奈川県
  • 7月6日防水工事会社東京都
  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
  • 7月5日プラント工事会社福島県
  • 7月5日リフォーム会社東京都
  • 7月5日総合土木福井県
  • 7月4日外構工事会社千葉県
  • 7月2日防水工事会社茨城県
  • 6月30日ビルメンテナンス北海道
  • 6月30日ビルメンテナンス福岡県
  • 6月29日総合建築千葉県
  • 6月29日総合建築東京都
  • 6月28日配管工事会社富山県
  • 6月27日リフォーム会社山口県
  • 6月27日内装工事会社大阪府
  • 6月26日塗装工事会社秋田県
  • 6月26日配管工事会社三重県
  • 6月26日工務店宮崎県
  • 6月25日内装工事会社長野県
  • 6月23日プラント工事会社神奈川県
  • 6月23日外構工事会社岐阜県
  • 6月19日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月19日総合建築鳥取県
  • 6月19日配管工事会社東京都
  • 6月18日総合土木東京都
  • 6月18日空調設備工事会社兵庫県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード

空き家対策は「工事単体」から「地域の事業設計」へ移っています

今回の採択テーマは5つです。

  • 官民連携による空き家相談対応の充実
  • 空き家に関連する新たなビジネスモデルの構築
  • 二地域居住など新たなライフスタイルに対応した空き家活用
  • AI・デジタルなど新技術による空き家対策の高度化
  • 相続空き家の急増を見据えた既成住宅地の再編

ここから読み取れるのは、空き家対策の主戦場が「壊すか、直すか」だけではなくなっているということです。

もちろん、現場では解体、改修、耐震、設備、外構、石綿対応、残置物処理などの仕事が発生します。そこは建設業の出番です。

一方で、国が評価しているのは、その前後の仕組みです。

たとえば、所有者への相談導線。自治体との連携。空き家バンク。二地域居住。民泊。移住者向け賃貸。古材の再利用。AIによる空き家判定。相続前の早期アプローチ。

工事を受ける会社から、地域の空き家課題を動かす会社へ。 その方向に一歩踏み出した企業ほど、今後の機会を取りやすくなります。

中小建設業が特に見ておきたい採択事例

採択事業の中には、建設会社や地域施工事業者に近いテーマが複数あります。

特に注目したいのは、福井県勝山市の有限会社北八建設による「沢の家」改修プロジェクトです。

同社は、解体、不動産、設計、施工、木質産廃処理を一気通貫で担う総合建設業者として、空き家を改修し、地域事業者へテナント貸しするモデルを構築します。解体現場から出る古材を主要材料として再利用し、地域に不足する食の拠点として再生する内容です。

これは中小建設業にとって、とても現実味があります。

自社が持っている解体・施工・不動産・産廃・地域人脈をつなげると、空き家は「単発工事」ではなく「継続事業」になります。

また、福島県須賀川市の合同会社ReLinkの事業では、活用困難な空き家から古材・建具等を救出し、別の空き家改修へ直接つなぐ「資源循環型リノベーション」が掲げられています。

建材価格が高止まりする中で、古材や建具を単なる廃材ではなく、改修コストを抑える資源として扱う発想は、地方の改修案件で今後広がる可能性があります。

さらに、東京都中野区・調布市・千葉県松戸市で実証される有限会社グエルパラッシオの取組では、建物状況、石綿等の影響、解体費概算、追加費用が生じ得る条件などを整理し、所有者の意思決定を支援します。

ここも重要です。空き家所有者が動けない理由の一つは、費用が読めないことです。建設会社が「概算」「リスク」「選択肢」を早い段階で見える化できると、工事前の相談段階から価値を出せます。

AI・デジタルは、現場仕事を奪う話ではなく「入口を増やす」話です

今回のテーマ4では、AI・デジタル活用が大きく扱われています。

たとえば、和歌山県田辺市では、車両・歩行者搭載の360度カメラとAIを活用し、建物単位の外観画像収集と空き家判定の社会基盤づくりを進める事業が採択されています。

相模原市では、水道閉栓データ・衛星データ・AI・ストリートビュー解析を活用して空き家候補を抽出し、所有者への利活用案内につなげるモデルもあります。

建設業から見ると、AIという言葉は少し遠く感じるかもしれません。

しかし実務上の意味はシンプルです。

自治体や民間事業者が、空き家候補を早く見つけ、所有者へ早く接触できるようになる。すると、調査、見積、改修、除却、管理の入口が増える。

現場の仕事がなくなる話ではありません。むしろ、眠っていた案件が表に出てくる可能性があります。

そのときに選ばれるのは、ただ「工事できます」という会社だけではありません。現地調査、写真整理、概算見積、法規・石綿・近隣対応の初期整理までできる会社です。

補助率よりも見るべきは「採択される型」です

別添資料では、空き家対策モデル事業の補助率等も示されています。

  • 調査検討、計画策定、普及・広報等に要する費用:定額
  • 空き家の改修工事に要する費用:1/3
  • 空き家の除却工事に要する費用:2/5
  • 除却後の土地整備に要する費用:1/3

ただし、今回の募集期間は令和8年4月20日から5月20日で、すでに採択が決まっています。

中小建設業としては、補助率だけを見るより、どんな提案が評価されたのかを見る方が実務に効きます。

評価概要を見ると、高く評価されたのは、次のような取組です。

  • 空き家所有者の行動を促すプッシュ型アプローチ
  • 空き家を二地域居住先・民泊・災害時避難先として使うモデル
  • 売買が難しい空き家を賃貸で流通させ、その後の売買へつなげる手法
  • ガス閉栓など、空き家発生の兆候を捉える仕組み
  • 廃銭湯や古材を活かした地域型リノベーション
  • AIやGISを使った空き家の把握・意思決定支援
  • 大規模団地で、所有者へ利活用提案を行う仕組み

共通点があります。

所有者が動き出す前の段階に入り、自治体や地域団体と組み、工事後の使われ方まで設計していることです。

自社で考えるなら、まず「地域の空き家導線」を持てるかです

中小建設業がこの流れを自社に引き寄せるなら、いきなり大きなプラットフォームを作る必要はありません。

まず見るべきは、自社の地域で次の導線があるかです。

  • 自治体の空家等対策計画を把握しているか
  • 空き家相談窓口や空き家バンクの担当部署と接点があるか
  • 不動産会社、司法書士、建築士、金融機関、解体業者、産廃業者と組めるか
  • 所有者向けに、改修・除却・賃貸化・売却の選択肢を整理できるか
  • 石綿、残置物、接道、再建築可否などの初期リスクを説明できるか
  • 過去の改修・解体事例を、写真と概算費用付きで見せられるか

特に大切なのは、「見積を出す会社」になる前に、「判断材料を出す会社」になることです。

空き家所有者の多くは、最初から工事発注を決めているわけではありません。売るか、貸すか、直すか、壊すか。相続人で揉めないか。費用はいくらか。誰に相談すればよいか。

そこで止まっています。

この止まりをほどく会社は、地域で強いです。

次の募集を待つ前に、今年整理しておきたいこと

今回の採択は、来年度以降の準備にも使える材料です。

もし次回以降、同様の募集が行われる場合に備えるなら、今年のうちに次の3つを整理しておくとよいです。

1つ目は、自社が関われる空き家課題を一つに絞ることです。

たとえば、相続空き家の除却。古民家改修。移住者向け賃貸。空き店舗再生。古材活用。石綿リスクの見える化。全部をやろうとすると、提案がぼやけます。

2つ目は、自治体や地域団体と早めに会話を始めることです。

この事業は、原則として市区町村の空家等対策計画に沿って行われる取組が対象とされています。自社だけで完結するより、自治体、NPO、不動産、金融、福祉、大学などとの連携が評価されやすい構造です。

3つ目は、工事の前後を記録することです。

空き家の状態、概算費用、設計上の工夫、解体材の扱い、改修後の使われ方、所有者の意思決定の流れ。こうした記録は、次の提案書の材料になります。

現場の記録が、次の事業モデルの証拠になります。

空き家対策を自社の事業にどうつなげるか

空き家対策は、地域課題であると同時に、中小建設業にとっては次の事業領域でもあります。

ただ、補助金情報を見て「何か使えそう」で止まると、なかなか前に進みません。自社の地域では、改修が多いのか。除却が多いのか。相続前の相談が多いのか。移住者向けの住まいが足りないのか。まずはそこを整理する必要があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。空き家対策を新しい受注機会として見る場合も、自治体連携、協業先づくり、原価管理、提案資料づくりまで一体で考えることが大切です。

「うちの地域では何から考えるべきか」「空き家改修や除却を事業として組み立てられるか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ち先として活用してください。

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