国土交通省は、令和7年度末、つまり令和8年3月末時点の建設業許可業者数調査の結果を公表しました。

全国の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度から123業者、率にして0.03%の増加となりました。令和4年度末に一度減少した後、令和5年度末から増加傾向となり、今回で3年連続の増加です。

今回の公表は法改正や補助金の案内ではありませんが、中小建設業の経営者にとっては、自社を取り巻く競争環境、許可更新の管理、事業承継の検討材料として見ておきたい内容です。

許可業者数は微増、ただしピーク時からは約2割少ない

令和8年3月末現在の建設業許可業者数は483,823業者です。前年度比では123業者増、0.03%増と、増加幅はごく小さいものです。

一方で、ピーク時である平成12年3月末時点と比較すると、117,157業者減少しており、減少率は19.5%です。

つまり、直近では増加傾向にあるものの、長期で見ると建設業許可業者数はピーク時より相当少ない水準にあります。中小建設業としては、「業者数が増えているから競争が一気に激化する」と短絡的に見るよりも、地域や業種ごとの増減、自社の得意領域での競争状況を確認することが重要です。

新規許可も失効も増加している

令和7年度中に新規に建設業許可を取得した業者は18,121業者で、前年度比1,957業者、12.1%の増加でした。

一方で、同年度中に建設業許可が失効した業者は17,998業者で、前年度比6,151業者、51.9%の増加です。内訳は、廃業の届出を行った業者が8,273業者、更新手続きを行わずに失効した業者が9,725業者です。

資料では、令和7年度は更新期を迎える建設業者の多い年の1年目にあたるため、失効業者数が増加傾向にあると説明されています。

中小建設業では、許可更新を「いつもの事務手続き」と見がちですが、更新漏れは受注や信用に直結します。特に、公共工事、元請・下請取引、金融機関との関係に影響する可能性があります。自社の許可期限、更新に必要な書類、経営業務管理責任者・専任技術者などの要件確認は、早めに管理しておくべきです。

一般建設業は微減、特定建設業は増加

一般建設業許可を取得している業者は457,617業者で、前年同月比438業者、0.1%の減少でした。

一方、特定建設業許可を取得している業者は50,511業者で、前年同月比772業者、1.6%の増加です。

中小建設業にとって、特定建設業許可はすべての会社が目指すものではありません。ただし、元請としての受注拡大、大型案件への対応、下請発注体制の整備を考える会社にとっては、将来的に検討対象になり得ます。

自社が今後、元請比率を高めたいのか、専門工事会社として特定領域を深めるのかによって、許可戦略も変わります。今回の統計は、その方向性を考えるきっかけになります。

業種別では、解体・塗装・内装仕上などが増加

許可を取得している業者が多い上位3業種は、次のとおりです。

  • とび・土工工事業:184,825業者
  • 建築工事業:140,967業者
  • 土木工事業:130,833業者

前年同月比で取得業者数が増加した許可業種は23業種あり、増加数が大きいものとしては、解体工事業が2,255業者増、塗装工事業が2,064業者増、内装仕上工事業が2,063業者増とされています。

一方で、減少した許可業種は6業種で、建築工事業が2,626業者減、土木工事業が1,056業者減、造園工事業が326業者減となっています。

自社の許可業種が増加傾向にある場合は、競争相手が増えている可能性があります。逆に、減少傾向にある業種では、地域によっては担い手不足や協力会社確保の難しさが強まる可能性もあります。

複数業種の許可取得が進んでいる

1業種のみの許可を受けている業者は221,833業者で、全体の45.9%です。一方、複数業種の許可を受けている業者は261,990業者で、全体の54.1%となっています。

平成12年3月末時点と比較すると、1業種のみの許可を受けている業者の割合は低下し、複数業種の許可を受けている業者の割合は上昇しています。

これは、中小建設業にとって重要な変化です。受注機会を広げるために関連業種の許可を追加する、元請からの一括対応ニーズに応える、維持修繕や改修工事に対応する、といった動きが背景にある可能性があります。

ただし、許可業種を増やせばよいという話ではありません。技術者の配置、施工管理体制、実績、利益率を見ながら、自社の強みと矛盾しない範囲で考える必要があります。

建設業許可の承継制度は譲渡・譲受けが中心

令和2年に開始した建設業許可の承継制度について、令和7年度の認可件数は1,092件でした。内訳は次のとおりです。

  • 譲渡及び譲受け:954件
  • 合併:79件
  • 分割:33件
  • 相続:26件

譲渡及び譲受けが全体の87.4%を占めています。

後継者不足や代表者の高齢化に直面する中小建設業にとって、事業承継は避けて通れないテーマです。建設業許可の承継制度は、会社や事業を引き継ぐ際の選択肢の一つになります。

もちろん、実際の承継には、許可だけでなく、技術者、従業員、取引先、借入、資産、負債、株式、個人保証など多くの論点があります。とはいえ、今回の数字からは、制度を使った譲渡・譲受けが一定数行われていることが分かります。

中小建設業が確認すべきこと

今回の調査結果を踏まえると、中小建設業の経営者が確認したい点は次の3つです。

1つ目は、自社の許可更新管理です。更新手続きを行わずに失効した業者は9,725業者でした。失効理由はさまざま考えられますが、許可を維持する方針の会社では、許可期限や更新要件を早めに確認しておくことが重要です。特に、経営業務管理責任者や専任技術者などの要件に変更がないかも含めて確認しておきたいところです。

2つ目は、自社の許可業種と今後の受注方針です。複数業種の許可を持つ業者が過半数となっている中で、自社も許可業種を広げるべきか、専門性を深めるべきかを検討する材料になります。

3つ目は、事業承継の選択肢です。親族内承継だけでなく、譲渡・譲受けによる承継も実際に認可されています。後継者問題がある会社は、早い段階で専門家や関係機関に相談することが重要です。

今回の公表は統計資料ですが、許可業者数の増減は、自社の競争環境や経営判断に関わる基礎情報です。自社の地域、許可業種、今後の受注方針と照らし合わせて確認しておきたいところです。