国土交通省は、ロードキル発生データに基づく対策を、今年度から全国の地方整備局等で先導的に展開すると発表しました。
国が管理する道路では、ロードキルが年間約7万件、令和4年度発生しています。
これまでの対策は、カルバートの設置など、動物の移動経路を確保する道路構造面の対策が中心でした。今回の流れでは、そこに加えて、ロードキルが多い区間・時期・時間帯をデータで把握し、ドライバー側へ注意喚起する対策が広がります。
道路工事や維持管理に関わる会社にとっては、少し先の発注内容の変化を感じるニュースです。
何が始まるのか
今回のポイントは、ロードキル対策が「経験と現場感覚」だけでなく、「データに基づく対策」へ広がることです。
令和7年度は、北海道のエゾシカ、沖縄のヤンバルクイナ等を対象に、モデル地区で対策が試行されました。
具体的には、ロードキルの多発区間や多発時間帯を特定し、路面標示や看板等による注意喚起が行われました。
さらに、全国の地方整備局等が保有するロードキル情報を集約したロードキルデータベースが構築され、道路データプラットフォーム「xROAD」で公開されています。
今年度からは、全国の地方整備局等で、このデータベースを活用し、ニホンカモシカ、シカ、タヌキなどの多発区間に対して、対策を先導的に実施していくとされています。
対策として挙がっている工事・業務
発表では、今後の対策例として、かなり具体的なメニューが示されています。
大型動物対策では、路面標示、標識、カーナビ等を活用した注意喚起が挙がっています。
小型動物対策では、道路情報板、SNS等での注意喚起、侵入防止フェンスの設置が挙がっています。
その他の対策では、地元高校と連携した意識啓発、動物検知システムによるリアルタイム対策も示されています。
地域別にも、国道38号、国道44号、国道6号、三陸沿岸道路、国道139号、国道49号、国道41号、名阪国道、国道161号、尾道松江線、国道317号、東九州自動車道、国道58号などが例示されています。
もちろん、これだけで直ちに地域の発注がどう変わるかは断定できません。
ただ、道路維持や安全施設に関わる会社から見ると、「動物注意の標識を立てる」だけではなく、データ、路面標示、情報板、フェンス、センサー、ナビ連携まで含めた複合的な対策が検討されている点は見ておきたいところです。
中小建設業が見ておきたい実務影響
一つ目は、道路安全施設工事や維持管理業務の中に、生物多様性・ロードキル対策の要素が入ってくる可能性です。
標識、路面標示、フェンス、情報板、アラーム、センサー。どれも現場の施工・設置・維持に関わるものです。
「これは環境政策の話で、うちには関係ない」と見てしまうと、少しもったいないです。
道路分野では、脱炭素やネイチャーポジティブの考え方が、実際の道路管理のメニューに入り始めています。
二つ目は、データを前提にした提案・施工説明が求められやすくなることです。
今回のロードキルデータベースでは、発生年度、動物種、対策種別ごとの切替表示、発生日時や天候、動物種等の情報表示、CSV形式等でのダウンロードが可能とされています。
これは、発注者側が「どこに、なぜ、その対策を打つのか」をデータで説明しやすくなるということです。
受注側も、現場調査や施工計画の場面で、xROADなど公開データを確認する習慣を持っておくと、会話がしやすくなります。
三つ目は、カーナビ、ナビアプリ、センサーなど、建設以外の企業との接点が増える可能性です。
発表資料では、ロードキル多発区間におけるカーナビ等での注意喚起や、センサー感知式のリアルタイム注意喚起といった官民連携の取組が示されています。
現場では、土木、電気、通信、標識、舗装、維持管理が重なる場面が増えるかもしれません。
「道路脱炭素化推進計画」に位置づけられている点も重要です
今回の対策は、昨年4月の道路法改正に基づき、各地方整備局等で策定した「道路脱炭素化推進計画」に位置づけられているとされています。
ここは大事です。
単発の啓発活動ではなく、道路行政の計画の中に入っているということです。
中小建設業としては、今後、道路関係の案件を見るときに、安全、維持管理、環境、脱炭素、生物多様性が一体で語られる場面が増えると受け止めておくとよさそうです。
「動物を守る話」だけではありません。
大型動物との衝突は、車両や人への影響も大きくなります。道路利用者の安全にも関わります。
つまり、これは環境対策であり、交通安全対策であり、道路管理の高度化でもあるという見方ができます。
いま確認しておきたいこと
道路工事や維持管理に関わる会社は、まず自社の営業エリアで、地方整備局等がどのような対象路線・動物種・対策を示しているかを確認しておきたいところです。
発表資料には、各地方整備局等の今後の取組概要が掲載されています。
たとえば、関東地方整備局では、シカや犬・猫を対象に、注意喚起の路面標記、標識、道路情報板、SNS投稿などが挙がっています。
中部地方整備局では、ニホンカモシカやシカを対象に、カーナビ等を活用した注意喚起対策が挙がっています。
中国地方整備局では、警戒標識や路面標示、動物侵入対策型立入防止柵が挙がっています。
地域ごとに、対策の色が少し違います。
だからこそ、自社の地域で何がテーマになっているかを見ることが大切です。
あわせて、xROADで公開されているロードキルデータベースも、確認できる範囲で見ておくとよいです。
次の現場打合せで、発注者から「この区間、ロードキルが多いんです」と言われたときに、すぐ話がつながります。
小さな会社ほど、早めに言葉を持っておきたい
今回のニュースは、すぐに全社の経営を変えるような話ではないかもしれません。
ただ、道路分野の発注テーマが少しずつ変わっていることは伝わってきます。
これからは、舗装する、標識を立てる、フェンスを張る、情報板を設置する。そこに、「なぜこの場所なのか」「どのデータに基づくのか」「安全と環境にどう効くのか」という説明が乗ってきます。
中小建設業にとっては、難しく構える必要はありません。
まずは、地域の対象路線を見る。
xROADという言葉を知っておく。
ロードキル対策が、道路安全施設や維持管理の一部になっていく可能性を頭に入れておく。
それだけでも、次の一手が見えやすくなります。
道路の仕事は、地域の暮らしと安全を支える仕事です。そこに、動物や自然との共存という視点が加わってきています。
この変化を、前向きに拾っていきたいところです。



































